歌舞伎町シャーロックを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
阿蘭陀人形は良い人形、秘密を咥え離さない。
謎の女、アイリーン・アドラーの盗み出したUSBを巡り、持ち込まれたS級の依頼。
変装、推理、騙しにハッタリ。手練手管を駆使した狸芝居に、絡む秘密の過去。
さて、蒔かれた謎は、どう種を出す?
そんな感じの、本筋に関わる出題編である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
モラン大…区長にマイクロフト、アイリーン・アドラー。原典でお馴染みのキャストが顔を出し、なにかあった風味を香らせつつ、その内実はまだまだ見えない。
切り裂きジャックと区長の娘。序盤からはられていた伏線が、少し絡んでなお続く。
そんな感じのエピソードである。探偵長屋のボンクラたちを、賑やかしに総動員したことで、原典組の得体のしれなさ、隠された二枚底、三枚底がクッキリと見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
そこに何が隠されているか、ティッシュの用途が理解らぬワトスンのように、僕らは首をひねり放しだ。
©歌舞伎町シャーロック製作委員会 pic.twitter.com/n78dBNEbIg
今回は次世代ベンチャーと艶笑譚を絡ませた、いわば『歌舞伎町の醜聞』とも言うべきエピソードでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
寂しいあなたの花嫁を、売りさばく会社の名前からして『IN←→OUT社』である。
ひっそり”時計じかけのオレンジ”引用してくるの、クレバーで好きよ。(ナッドサットで”性交”を意味する)
今回は謎と疑念を蒔くのがお話の仕事で、スッキリした解決はどこにも現れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
ワイフの製造目的…ティッシュの使用目的は明言されないし、パスワードに隠された真実も知れない。
切れ者オーラを出してる原典勢が、どんな過去を共有し何を考えているかも判らない。
ただ、そこに謎があるのは判る。
出題編というのはそういうもんで、何かが怪しいと知りつつ、何が知りたいかは解決編を待つ、というのが、ある意味正しいミステリの読み方だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
同時に色々推理をめぐらし、当たったの外れたの、考えるのも楽しい。そんなサービス精神に満ちた目配せが、今回非常に多い。
ホームズの勘所をキッチリ抑えた実兄、マイクロフト。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
オマケで十分釣れると、読みを働かせた通りに弟は事件に首を突っ込んでいく。
小夜師匠を求めてやまぬ、噺家志望の成れの果て。その過去に何があったか、それはまだまだ伏せ札である。
©歌舞伎町シャーロック製作委員会 pic.twitter.com/VL02qm4LBn
ただそこに、ワトスンくんが知らぬ事情があることは判る。ここにモリアーティも首を突っ込んで、巨大な感情をくゆらしていることは、これまでも描写されてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
個別の紹介をはさみ、キャラにも作品世界にもなれてきたところで、作品の芯になるミステリが、おぼろげに描画されていく。
謎なのはハドソン婦人の憂鬱、アイリーンとの過去も同じである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
第一話ではあんだけの爆超テンションだった七五調も、今回はしっとりアンニュイな風情。その理由が一体なんなのか、今回明示はしてくれない。
©歌舞伎町シャーロック製作委員会 pic.twitter.com/i9Tcj8UVPg
今回原典に名前を背負ってない者たちは、軒並み無力な兵六玉だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
小林は未来のイブに夢中だし、姉妹探偵は婦人の陰りを見抜くだけ。京極は未熟な変装を見破られ、ベルモントが明日明日と言っているうちに、事件はあっという間に制圧され、それどころか追い抜かれて謎を深めていく。
この歌舞伎町オリジナルどものボンクラっぷりが、話の軸になる大きなミステリの輪郭を描くため、あえて陰りに入れた形なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
はたまた、原典の恩恵を受けない追加キャラは、引き立て役として歌舞伎町のカオスを彩るだけなのか。
そこら辺は、なかなか読みきれない。
とまれ、ボンクラ共を後景に追いやることで、ホームズとアイリーン、マイクロフトの切れ味はより強くなっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
ワトスンくんが探偵まがいの潜入を果たせるのもの、ホームズがお膳立てしたお陰だ。用意された偶然に背中を押されて、彼はやっぱり”ピンク”を着る。
©歌舞伎町シャーロック製作委員会 pic.twitter.com/81ypskmOS6
そこにパーソナル・カラー以上の意味を見出すのも、エロスに頭が濁った眇ってもんだろうけども、彼は本気を出した探偵の人形として忠実に動き、USBの在り処を探り出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
事件が解決してからの、後出しの一席。普段と少し違うスタイルが、妙なシリアスさを連れてくる。
仏蘭西人形の股ぐらから、いい塩梅に排出される卵。彼女たちがけして子供を産まない、機械の花嫁であることを考えるとなかなかな皮肉だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
書き換え不能…精子と結合することのないUSBには、幾重にも嘘が詰まっている。
©歌舞伎町シャーロック製作委員会 pic.twitter.com/nenEoGhn6a
ワトスンくんは花嫁の本当の仕事も、依頼に隠された意図も、事件の全体像もわからないまま駆け抜けて、ヌポンと卵を抜き取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
京極くんのような『騙してやろう』という意図がないことが、イースターエッグを掴む愚者の特権を彼に与えるわけだが、それは謎の女の手のひらの上だ。
噺の仕上がりに感心しているのか、はたまた事件の総体を明確化する推理に聞き入っているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
顎を擦るワトスンくんの前で、ホームズはもう一つの真実に気づく。
ハメたつもりがハメられて、道化芝居を見抜かれた。探偵としては痛恨のミスである。
©歌舞伎町シャーロック製作委員会 pic.twitter.com/RcnlohtCoK
上をいかれたままでは引けぬと、追いかけた先に凶刃。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
切り裂きジャックを巡る物語も、輪郭だけを描かれてまだ総体が見えない、大きなミステリだ。
そこに巻き込まれているのはワトスンくんの、未だ切り出せない依頼。歌舞伎町に来た意味。
そして被害者たる区長の娘と、蜘蛛愛でるモリアーティーか。
そこにアイリーン・アドラーも絡んでくるんじゃないかというのが、街頭のナイフ芝居である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
顔を隠した凶漢が、一体誰か。なぜUSBを狙うか。
謎をそのままに、ロマンスの気配がピンクに輝き、ホームズの瞳が見開かれる。
変人探偵に、恋の予感…?
©歌舞伎町シャーロック製作委員会 pic.twitter.com/yjWjM4yYWz
ここで見開かれた瞳は、今回提示された材料だけだとUSBをスリ取れた手応えに見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
しかしどうにも、アイリーンとホームズの間には(原典を正しく睨みつけながら)ロマンスの気配がある。
これもまた、輪郭をなぞりつつ明言されない、不可思議なミステリだ。色々勘ぐりたくなる。
とは言え、首筋から血を流す女にハンカチを差し出すようなジェントルマンシップは、変人探偵にはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
兄貴を担いで手に入れたオマケ、彼にとっては本命を愛でつつ、次の一手を差し込んでいく。
愛とAIとKAIKAI。地口だねぇ…艶笑はエスプリが要るからな。
©歌舞伎町シャーロック製作委員会 pic.twitter.com/7isz5gk7an
花嫁に触れるとなぜKAIKAIなのかってのも、今回は理解らなかったりする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
消えた花婿の行方、マイクロフトの視線の先。本当に、わからないことの多い出題編だ。
弟が差し出した、還らない偽卵。その真相に、どこまで知った上で乗っているのか。
©歌舞伎町シャーロック製作委員会 pic.twitter.com/8mB11JkqPs
区長たるモランの思惑が分からないと、その第一秘書であるマイクロフトの狙いも見えてこない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
”そこ”に焦点があると教えることが、今回の狙いなのかもしれないが…やはり気になる。
ここら辺の焦らしが巧いのは、ミステリをやる上で大事なことだ。マクラが下手だと、サゲまで聞けないからねぇ…。
仏蘭西娘の股ぐらを、触って赤く染まった手のひら。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
それを睨みつけつつ、ホームズはアイリーンに謎を突きつける。卵の殻を開けて、真実を知る鍵はどこにあるのか。
露骨に”続く”で、今回のお話は幕である。来週早速拾うか、しばらく卵を暖めるか。
©歌舞伎町シャーロック製作委員会 pic.twitter.com/yh3ePZsFYr
そこは読みきれないが、なかなかに魅力的な出題編であったとは思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
ホームズの思考スピードについていけるキャラがほぼいなかったところに、アイリーンにマイクロフト(と、背後に要るモラン)と、同等のプレイヤーが顔を出してきた感じ。
指し手が知略を乗せるボードには、過去と秘密も置かれている
それが何なのかは、ジワジワ焦らして、一枚ずつ脱がして盛り上がる所なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
ど真ん中に当てないけど、なかなかエグいところを攻める艶笑が今回豊かで、結構好みだった。このぐらいのクスグリ方だと、品はないが知性があって善い。
歌舞伎町の猥雑と混沌に、ギロリ牙を剥く野望と知性。
それに翻弄されるボンクラと、僕は同じ位置にいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
高座でコン・ゲームを演じる凄腕が、何を隠し何を狙っているか。さっぱり解らないまま、巻き込まれ惹かれていく。
ワトスンくんは読者の代理人として、独特の魅力を持ちつつ、適度に凡人であるな。まさに理想的な”ワトスン役”なのだ。
殻だけが見えて、中身がさっぱりな過去と因縁。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
それをパカッと開いて、真実をかき混ぜる日が楽しみです。
同時に、そこにたどり着けないボンクラ共の人生も、独特の味わいと魅力があるのが良いんだよな…。ここは、寄り道エピソードをしっかり作ったおかげだ。
探偵長屋のボンクラ領域と、原典勢の切れ味がどうにも混じり合わない感じだが、謎の輪郭が鮮明になるにつれ、そこはかき混ぜられるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
はたまた目玉焼きのように、白身と黄身がハッキリしたまま、猥雑と鮮明は切り分けられるのか。
そこら辺の料理の仕方も、なかなか楽しみである。
今回蒔かれた謎の種が、いつ、どのように発芽するのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
それを楽しみに待ちつつ、本筋以外の歌舞伎町絵巻をじっくり吸い込みたい気持ちにもなった。
なまくら共の悲喜こもごもが、妙に居心地いいんだよな…。それはホームズ・パスティーシェの枠を超えた、この作品独自の魅力だと思う。
歌舞伎町イーストという”街”の魅力、そこを生き場に定めたボンクラのドラマを大事に、怜悧なミステリをどれだけブン回せるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月23日
今回、そしてその前から丁寧に積んでいる本筋がどういう色合いで輝くかが、とても楽しみになる出題編でした。
こういうクールな味も、なかなか面白いね。来週も楽しみ。