ドロヘドロを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
ホールに降る雨は、涙混じりの黒い雫。血みどろの狂った日常の中で、カイマンは食って働き、己を鑑みる。
一方煙ファミリーも、妙な人間味を漂わせる日常を歩く。極彩色の悪夢の中に、滲むヒューマニティ。
だが、そんなものは微かな一呼吸。衝突の気配に、街の大気は静かに震える
そんな感じの、クレイジー・ケオティック・マジカルロマンス第二話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
溢れかえる混沌と、センスに満ちた小汚さが血みどろでご挨拶してきた第一話に比べると、登場人物の人間性がちらほら見える、落ち着いた展開となった。
…落ち着いてんじゃん前回と比べればさぁ!!
お話はホールと魔法使いの世界、カイマンと心をザッピングしながら進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
群像劇としての側面を色濃く持つこのお話、魔法使いだから人間性がないとか、ホールにすんでるから人間性があるとか、そういうシンプルな区分で動いてないのは、先週もご承知の通り。
出てくる輩、軒並み人でなし。
なんだが、ベタつかない友情も、一緒に飯を食う温かみも、ゴアゴアの超暴力と一緒に存在している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
命もノリも極端に軽い、タチの悪い冗談のような重たい現実。その渦中を、二組のチームがそれぞれ進み、衝突寸前で次回に続く話である。
カメラを二つ用意したことで、上手く奥行きが出た感じ。
前回ラスト、衝撃の超暴力でヒキを作った心と能井は、妙に良い距離感を見せつける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
極彩色の悪夢と、温かい豚汁。不気味な魔術師マスクと、しっとりと艶のある声色。場面をバキッと割る街灯の光が、善悪定かならぬ混沌を照らす。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/30B3NBUMDM
ゴリゴリのガタイを誇る彼らは、凄くいい声をしている。細谷佳正&小林ゆうがベストマッチという感じだが、見た目から推察されるグロウルやら、デスヴォイスではけしてない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
能井は少年のような爽やかさで、心先輩によく懐き、気にかけ、面倒を見る。心もまた、口でいうほどイヤじゃない。
拒否するべき血塗れに首まで浸かってるのに、二人を取り巻く雰囲気は凄く良くて、少し羨ましくもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
忌避しなければいけないものに、不思議な引力を感じた時に生まれる、奇妙な酩酊感。人でなしの人殺しと、確かな温もりを同時に受け取った困惑。
それを強めるのが、今回のエピソードだ。
飯を食い、ダチを気にかけるのはカイマンも一緒だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
ホールに降り注ぐ、魔術師の生んだ呪いの雨。それにやられたニカイドウを思いつつ、カイマンは労働に勤しむ。
苦しむ姿を、友達に見られたくないニカイドウのプライド。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/IgjTwJJ7DE
そこに安易に踏み込まない心配りを、トカゲ人間も持っている。ニコニコ顔で死体を洗い、大葉餃子をほうばりもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
記憶を無くし、人の顔を失っても、ユーモアとヒューマニーティーは残る。だからといってその暖かさが、『マトモ』な生き方を保証するわけでもない。
『ゴミ掃除』でカイマンの世界と、心の世界を繋げる演出の切れ味は尋常ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
カイマンに投げつけられたのは、心の魔法で”人間の断片”んに堕ちた存在で、心が片付けるのも魔法つかいにとっての”ゴミ”…どちらも血腥い、ありふれた屑だ。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/J3lqVPNrQb
心は心臓マスクを外して、整った素顔を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
しかし魔法使い(暴力を生業にする存在)の仮面をかぶり直して、ネイルハンマー以上の凶悪さで暴れる黒い霧を、情け容赦なくぶっ放しもする。
その両方が、彼の”素顔”なのだろう。矛盾した混乱は、混ざり合うことなく同居し、複雑な色合いを生んでいく。
心が情け容赦なく、煙ファミリーの敵をぶっ潰す裏では、カイマンは憎むべき魔法つかいの残骸と対話し、その中身を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
そこには”ゴミ掃除”の冷たさよりも、火葬の情感、人間相手の奇妙な後悔が漂っている。黒い煙のように。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/uYwaRG3QaC
あるいは、滴る涙のように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
カイマンは記憶と顔と一緒に人間性を失ったようにみえて、存外感受性がある。
先週情け容赦なくバラバラにした魔法使いと、相手が”ゴミ”になって初めてマトモに対話するのは、この作品らしい転倒だろう。人間をゴミにしても傷まない心が、ゴミと話すとシクシク痛む。
活かして情報を聞き出すよりも、『殺してくれ』という願いを叶えて焼き殺す。それがトカゲ人間に残った、最後のヒューマニティ…というわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
陰鬱な気持ち、降り注ぐ黒い雨を晴らす輝きは、ニカイドウからも降り注ぐ。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/UetdiV2VuA
カイマンが訪ねてくれたことで、ニカイドウの体調不良は良くなっていき、ホールにも日差しが戻る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
彼女と共にあることが、カイマンが見た目通りの冷血存在にならなくてすむ…少なくとも、それだけがカイマンの全てにならなくてすむ、大事な足場なのだ。
それは恋愛とは少し違う距離感で、同様に濃い。
ただでさえ血糊でベタベタなのに、ここに甘ったるいロマンスまで持ち込んだら胸焼けしちまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
男女でキャラを扱いつつも、生き死にと同じくらい恋の気配もサラリと扱って、風通しの良い友情が息づいているのは、作品の大きな魅力だ。フツーじゃない街なら、フツーじゃない関係もフツーになるのだ。
妙に爽やかな距離感は心と能井も同じで、子供みたいにはしゃぎつつ、いい関係を見せてくれる。いや、悪趣味でドロドロだけどさ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
能井はゴツい外見と超暴力→爽やかで幼い気質→マスクを取ると超美人と、印象が三段階くらい味変するなぁ…。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/knmUnEoAuC
無邪気で明るく嘘がない能井のパーソナリティは、マジで血みどろな陰惨さから上手く血生臭さを抜いて、狂ったユーモアと不思議な生活感を味あわせてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
みんなそういう、不思議な魅力を持ったキャラなんだけども、能井は特に『この作品らしさ』が詰まってると思う。中身ショタだよなー能井…。
そして、彼女たちが戯れる血塗れの暴力もまた、世界の真実の一つだ。このお話の舞台はとてもポストモダンで、真実は複数あって、混じり合うことなく共存する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
バラバラでありながら、まだ生きている魔法使いのように。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/Ab5IJzbfef
モノクロのシルエットで、超暴力にクッションをかけ、スタイリッシュに見せる演出はマジでキレてる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
影しか使わないことで、具体的にどうなってるかは視聴者の想像に任され、想像してしまうと血臭が自然と立ち上がってくる。
その温気も、風通しのいい友情と同じく、この世界の息遣いだ。
煙ボスは大物ぶった態度、スタイリッシュな外見に負けない、本物のマフィアだ。器もデカいし、部下の面倒見も良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
その分敵対するものには容赦なく、ツバを吐いたらレバーは煙のお夕飯である。マジおっかねぇ。
身内に優しく、敵にはノー容赦。これがこのお話の、一つのルールかもしれない。
下っ端の藤田もこのルールに従い、狂っちゃった恵比寿の面倒をよく見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
パズルのようなジッパードレスを上手く着せれず、おっぱい丸出しだけども。
根本的に人のいいヤツなのだ。それが、仇となるか強みとなるか。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/pHnSfcpcpK
心と能井も、マスクを外して素顔を見せる。はー…心先輩も能井も美形だなぁ…。隠してるからこそのインパクトが、このコンビにはあるよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
顔を見せる。人との繋がりを見せる。飯を食い着飾る”人間”だと理解らせる。
今回のお話は、だいたいそんな感じで進む。
まぁ口に入れるのは、死体で出来たキノコだったりすんだけどさ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
楽しく食事をしていても、強敵との命の取り合いとなったら、凶暴な牙がむき出しにもなる。心の変貌にスイッチはない。暴力と平和は、この町では同居できるのだ。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/HwSaNnd3R3
無駄が嫌いな煙ボスも、ジッパーを開けて飯を食う。刺客に一切動じず、魔法一発でキノコに変える実力は、ボスにふさわしい貫禄である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
おまけにそれを食っちまう。全く尋常じゃないが、フツーのやつがノンキできるほど、この街もフツーじゃないのだ。
カイマンも調子を戻したニカイドウと一緒に、顔を戻せるかもしれない可能性に踏み込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
ビールを飲み、テントを張り、バイクで肩を並べる旅は妙に楽しそうだ。
絵面だけなら”ゆるキャン△”だけども、目玉飛び出してるからなぁ…。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/iMewvj9Yao
『お餅の入った熱々豚汁』という、妙にシズル感のある食事で腹を満たす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
その先で出会った針師を、カイマンは相変わらず腹に入れて、しかし食べない。
ゴミ袋に入った魔法使いと同じく、『魔法使いを殺す』というカイマンのアイデンティティが、機能不全を起こすお話だ。
針まみれになったり、脱皮したり。狂ったユーモアで笑いを取りつつ、ニカイドウに投げかけられた『心臓に注意』。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
それが心と能井、もう一人のクレイジー・バディとの遭遇を意味していることを、物語をザッピングしてきた僕らは知っている。
©ドロヘドロ©2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会 pic.twitter.com/qxQkQdgIQb
お互いに友情と実力、狂ったユーモアとヒューマニティを兼ね備えた、魔法使い狩りと魔法使い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
それぞれ一筋縄ではいかない存在感を備えた連中は、混ざり合うことなくゴツゴツと、不思議の国で出会うだろう。
そこで生まれる、暴力まみれのカオス。その先にある、新たなドラマ。
カイマンと心の日常、彼らを取り巻く人たちと世界を丁寧に掘り下げつつ、次なる展開に期待が膨らむエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
やっぱ”人間”が(その狂気や暴力も含めて)見えたほうが、それがぶつかり加速していくお話は俄然面白くなるなぁ…。
ヤバい奴らがぶつかって、混沌は更に加速する。次回も楽しみ。