22/7を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
運命のお披露目ライブは、2/27日と定まった。
みうはアイドルと自分に信を置けないまま、借り物のセンターを背負い続ける。前髪越しの視界は暗い。
迫る期日と上がる幕。待ったなしの本番で、狙いすましたように起こるトラブル。
そして激しい風が、龍を目覚めさせる。
という感じの、新時代アイドル風雲録第三話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
『三話で勝負をかけろ』という、深夜アニメの鉄則に則ってか、お披露目ライブをドゴッとぶつけてきた。
ステージングや歌も良かったが、ウジウジ前髪伸ばしてたみうが、ピンチを前に”真ん中”としての資質を見せて、居場所を見つけたのが良かった。
このお披露目ステージを序盤の勝負どころにするために、アイドル世界を冷たく遠く、みうの”家”を暖かく近く書き続けてきたのかな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
かなり計画的な犯行で、僕らは『アイドル胡散臭い。お母さん大好き』というみう…作品世界への窓たる主人公に、シンクロするよう誘導されてきたのではないか?
かなり意識して画面を作り、芝居を入れているアニメだとは思うので、それがピタッと的を射ると、なかなか面白いものが見れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
今回の重たさと試練、覚醒と突破の描写は、そういう感慨が強くなる仕上がりだった。ニコルのデレ期到来、かーちゃん目線での応援など、温もりのある描写が多い。
ナナニジメンバーは”壁”の前にぬいぐるみを置き、理不尽な無茶振りを投げてくる装置を、どうにか擬人化しようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
それはそこから発生する”アイドル”に近づこうとする努力であり、不条理に振り回される違和感よりも、少しでも親近感を欲しての生存戦略だ。
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黒縁メガネに細い瞳、少し太っちょな猫人形。まぁ露骨に秋元先生なのだが、人形を置こうが置くまいが、壁は何も答えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
巨大プロジェクトは少女を置き去りに、あるいは巻き込んで、”壁”の指令を絶対視し突き進んでいく。
ビジネスに疑問も情熱も不要。ソニー系列関係者、少しは悩め。
ナナニジを覆う環境は清潔で豊かで、人数も多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
弱小事務所の成り上がりとか、廃校寸前の逆転劇みたいな、分かりやすい『弱者の物語』ではない。
それはアニプレックスとソニー・ミュージックがデカい資本を投入し、優秀なクリエーターを多数抱き込んで動いた”22/7”という現実、そのものの強さだ。
そんなメタな強さは、みう(以外のメンバーも)にとっては借り物でしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
顔のない”壁”から投げつけられる、強制された真ん中。自分の至らなさ、暗さを思い知らされるレッスン。
やればやるほどストレス地獄、前髪で世界が見えない!!
その閉じた窓を、兎クリップでこじ開けろ!
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アイドルとしての資質、モチベーションとこなれ方は、ニコルのほうが断然上だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
理不尽なセンター指名を『そういうもの』と受け入れた上で、不甲斐ない”真ん中”が少しでも勝てるよう、アプローチを仕掛けてくる所に、彼女の強さと貪欲さが見える。
しかしみうは、貰った兎クリップをなかなか付けない。
ニコルが掴み取りたい”アイドル”としての成功が、自分の世界と上手く重ならない以上。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
運命共同体として、”22/7”を仲間だと思えない以上。
みうはずっと後悔し、後ろ向きに進み続ける。
重たい暗い湿っぽい。なかなか斬新なセンター像だよな…少なくともアイドルアニメだと。
他のメンバーがいかにも”アイドル”なレッスンを重ねる中、みうは弾くあてもないキーボード、失われた自己実現を追いかけ、そんな自分に気づいて拳を握る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
自分がどこにいるのか。どこにいていいのか。やけっぱちで飛び込んだは良いが、自己肯定には程遠い、前髪の地獄。
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そんな暗い世界で、唯一救いになるのが優しい優しい桜ちゃんである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
レッスン中も彼女の瞳を探し求め、密閉空間の空気穴のように、明るいウィンクで励まされる。
やっぱネクラは優しくされなれてないから、ちょっと迫ると”コロッ”なんだよなぁ…。
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同時に厳しくも真剣なニコルにも視線が向いていて、思わず背中を眼で追ってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
でも、そこに飛び込んでいく勇気はまだない。桜ちゃんの優しさに溺れる踏ん切りもつかない。中途半端なグダグダのまま、レッスンが積み重なり時間は加速していく。
みうを中心においた女と女北風と太陽絵巻は、なかなかいい。みうが心情を言葉で説明しないことが、独特の奥行きを持って関係性を広げていって、叙情性があると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
桜とニコル、両極端な二人に同じくらいの強さで惹かれつつ、なかなか踏み込めない中途半端。これが次回以降動くか、楽しみだ。
何かを隠している愛娘に、カーチャンの重力視線が向けられつつ、運命の2/27。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
箱の小ささに比べ、動いてるスタッフが異常に多いところが、大手肝いりの企画なんだなー、って感じがする。『恵まれていることの不幸』みたいのは、結構面白い視座。
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ステージが動き出す実感も持てないまま、みう達は戦闘服としての制服に身を包み、お披露目ライブに挑む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
この規模で既にカメラが入ってるアンバランス、硬い笑顔を必死に貼り付けて踊る人形っぽさ。相変わらず、不均衡で不気味な描写が独特だ。
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やっぱり桜ちゃんの視線を追い求めつつ、みうは緊張の中を必死に泳ぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
巨大な資本が背中を押す、”アイドル”という機械。その中心にいつつも、実感が持てない浮遊感が訥々としたモノローグで展開されていく。
主役の徹底した内向きな感じ、陰気な内面性は、やっぱロボットアニメっぽくもあるな…。
エヴァに乗る代わりに、アイドルになった碇シンジ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
ならば母との関係性が大きな傷になるのも、ある意味当然、という事か。
観客席に母を見つけたことで、みうは崩れていく。硬いなりに必死にMC頑張る仲間から離れ、言葉を見つけられないまま立ちすくむ。
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長く伸びた前髪が、覆い隠す世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
それをぶっ壊すパンクスな血潮が、第一話ラストで吠えたわけだけども、今はそれが縮こまっている。ニコルがくれた兎型の爆弾も、桜ちゃんの優しいフォローも、彼女を上手く動かさない。
そんな彼女の硬直を置き去りに、プログラムは先に進んでいく。偶像は止まれない
しかし機材トラブルにより、今度はステージのほうが歩みを止めてしまう。うろたえる仲間、泣き出す桜ちゃん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
全員が足を止める中、何も出来ない後ろ向きの”真ん中”だけが、暗闇の中の光明に向かって走る。
ウジウジ後ろ向きモノローグでタメた分、こっからの爆裂は非常に良かった
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視界を覆い隠す前髪で、鍵盤が見えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
”私達”が勝つための道筋、失われた自己表現の場所。それを掴み取るために、みうはニコルが与えてくれた爆弾で、自分の視界を切り開く。
これをニコルがしっかり見てるのが、感情濃くて良い。”みうニコ”…あるッ!!
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センターの大暴走を真っ先に引き受けて、ステージをステージの形に整える強さは、やっぱりニコルにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
光を受けて、”アイドル”らしく輝くニコルの、陽の強さ。
想定の範囲外に飛び出して、とんでもない科学反応を生み出すみうの”陰”の強さ。
このツインエンジンで、”22/7”は前に出る。
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似合わない向いてないと、延々現状否定していた”センター”を、プロジェクターへ堂々投影される形で引き受けるのは、なかなか面白い表現だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
合田ちゃん眼が虫みたいで怖いけど、現場勘は結構良いよね…ママンも娘の晴れ舞台に、ようやくニッコリである。
STAGE始まってからここまでは一連のシーケンスで、みうの内面垂れ流しでストレスをかけて、ここのカタルシスで一気にアゲる構成なんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
あんな自虐するほど、みうも仲間たちも”出来てない”わけではなくて。必死に顔を強張らせつつ、たった一ヶ月のレッスンで現場に立つ。頑張ってる。
そういう気持ちを強くさせるために、みうに自己否定(現状否認)を積み上げさせて、ママンを観客席に置いたんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
ここまでこの作品、”アイドル”を徹底的に遠く冷たく胡散臭く書き続けてきた。信頼できない、体重を預けられない場所だと描いてきた。
居場所がないケツの座りの悪さは、つまり作中のみうの心境だ。そんな彼女…に乗っかった視聴者が安らげるのは、いつでも”家”だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
そこは異常でもなく、色彩も雰囲気も暖かく、”普通にいい感じ”だった。アイドル信用できないが、ママンは信用したくなる。狙ってそう作っていたのだと思う。
みうの”家”に体重を預けていると、自然あのお披露目ライブはママン視線で見てしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
我が娘が極大の緊張に巻き込まれ、バキバキに自虐している姿は痛ましい。そのいたたまれなさ、『自分のことでも言い過ぎでしょ…』感が、ピアノという自己表現、度胸一発危機脱出でグッと炸裂する。
ここら辺の上げ下げは素直に気持ちよく、良いコントロールだった。なんだかんだ三話まで見ると、デビュー成功して欲しい気持ちになってるしね…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
窮地を見せ場に変えた”センター”に、仲間が駆け寄る中。
ニコルはみうの手を引いて、光の当たる場所へ引っ張り出す。
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仕事と呼ぶには不確かで、夢と呼ぶほど前向きでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
”アイドル”をそういい切る、アイドルが嫌いで向いてないセンター。
それでも彼女は前髪を上げて、『ここが居場所だ!』と吠える。そう思えたなら、この舞台は成功だし、”アイドル”は向いているのだ。
追い込まれた時に、とんでもない瞬発力を出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
これが”壁”が、みうを”真ん中”に据えたもう一つの理由なのだろう。今後も覚醒を促すべく、仕組まれたアクシデントが次から次へと、22/7に襲い来るんだろうなぁ…。
女の子が可哀想なんで、過酷リアリティーショー路線、やっぱやめません?
って思ってても、少女が”化ける”瞬間は最高(そして最悪)の娯楽であるし、それがウケるならば幾らでも”壁”は迫ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
そういう現実の大手束ものアイドル商売のシビアさを、物語に取り込むためのデスゲーム風味、ロボアニメ味なんだろうなぁ、やっぱ。
みうは舞台裏で、母からの叱咤と激励を受け取って微笑む。嘘の仮面の先にある、確かな光と自己表現。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
みうを通情のコミュニケーションが苦手で、鍵盤で繋がることしか出来ない”詩人”にしたのは、やっぱ面白いと思う。
内向的で、愛に飢えてる感じが妙に冴える。
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ようやく到達したニコルのデレ期に、前髪チョロ蔵この笑顔である。ホントちょろいなー…そこがいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
いうても、ニコルはツンデレというか、ただただ”アイドル”に真剣なんだと思う。自分の夢が乗る船を、しっかり動かしてくれるなら褒めるし、サボってるなら怒る。
過剰に素直な子なんだな。
物言わぬ”壁”に、少女たちは色んなペルソナを貼り付ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
AIが生み出した自動的なプログラム。中に人が入っている、ヒューマニスティックな存在。
どんな幻想を投げかけても、ただただ”壁”はこなすべき課題を与え、理不尽に立ちふさがる。それを乗り越えて進む先に、何が待つか。
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ともあれ、最初の壁は超えた。苦しい時に優しくしてくれた女に、みうはすっかりズブズブであるが、桜ちゃんの方は何かを隠している風味。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
っしゃキターーーー!!!!!
…申し訳ありません…優しさを狡猾に振り回し、何かを隠しているズルい女が大好物なものでして、思わず吠えてしまいました。
カメラをナメる椅子のシルエットが、桜を無邪気に信じるみうに待つ暗雲、二人の心理的距離を上手く表現して、鋭いカットだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
”壁”の象徴たる黒縁ネコに微笑む桜ちゃんは、一体何を伝えたいのか。みうを散々ズブズブにして、何を狙っているのか。苦味と愛でネトネトにしてくれ!!
個人的な願望はさておき、一難去ってまた一難、アイドル稼業は色々大変そうである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
波乱含みのデビューをなんとか乗り越え、センターは自分の居場所を手に入れた。ステージで見せた”アイドル”の脂質は、八人をどう繋ぎ、どう変えていくのか。
前髪を上げた先にある、世界の色はどんな色彩か。
その先が見たくなる、いい勝負回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月26日
みうが自分を肯定できたことで、主人公である彼女と、彼女が背負うこの作品がグッと好きになれた感じあるな…。
同時に冷たく突き放したシャープな画角も、オリジナルな魅力があります。
アイドル青春物語と、メタな冷たさ。今後どう活かすか、次回も楽しみ。