ID:INVADEDを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
井戸の中の井戸に囚われた本堂町。
彼女の救援作戦を行うために、二人の名探偵が砂漠の世界に投入される。緩慢な死が襲い来る地獄で、酒井戸と穴井戸は一歩ずつ、親交を深めていく。
そこに待つのは、地獄か罠か真実か。
答えはいつでも、井戸の底に。
…本当に？
そんな感じの名探偵S With ションベン臭い服 IN 砂漠！ なお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
大量の物語的鬼札を切り、スペクタクルのラッシュで押し込んできた前回に比べると、間延びしたマッタリ進行…にも思える。
無意識の生み出す異常な世界の冒険にも、人は慣れる。恐ろしいことだ。
しかしミステリと同じくらいこのお話を既定する、オルタナティブなジャンル…”寓話”として見ると、なかなか味わい深く、示唆に富んだ話だとも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
これは作品全体のテーマ性とかモチーフとかだけでなく、キャラの微細な内実、それが噛み合って生まれる関係性と対比にも及ぶ。
足取りを緩めてじっくり、一見本筋と関係がなく思えるネタをこねくり回すことで、見えてくるものがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
それは今後物語が加速した時、大事な足場になって僕らを支える…かも知れない。
酒井戸と穴井戸の、奇妙なふたり旅をマッタリ追いかけたかっただけかも知れない。その視点でも面白いのは良いこと
さてお話は、あんま名探偵っぽくな穴井戸、幾度目かの死から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
聖井戸や酒井戸は足を止め、俯瞰で世界のルールを覗き込むことを常態としているが、穴井戸は把握を早々に諦め、二分前後で死ぬ。
自分を突き動かす衝動に対し、そこまで耐性がないのだ。
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というか、衝動の方向性が違う、というか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
穴井戸は世界を自分の足で進むことを優先し、警察系名探偵は世界を把握することを優先する。
それが名探偵の資質を持った連続殺人鬼と、連続殺人鬼の資質を持った名探偵の分水嶺…かも知れないし、その壁は存外薄いかも知れない。
未だパイロットとして機能せざる、アナアキの未完成。それはミズハノメという基底システムが要求する資質と、彼の性質が噛み合っていない、というだけかも知れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
黙秘を続ける百貫さんは、『全てが罠だ！』とだけ叫ぶ。井戸の景色だけが、世界の全てではない…
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かも知れないし、そうではないかも知れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
今回は徹底的に思考の種を蒔くエピソードで、それを刈り取るのは今後の話になる。
しかし疑念や伏線を蒔いておかないと、物語の花は…特にミステリは成立しない。
ミズハノメは果たして、信頼できる語り手か。そこも引っかかっとく部分だろう。
そういう目線で見ると、何でもかんでも暗号に見えてくるのでそれも善くないけど。パラノイドに陥ると、ミステリ読むのしんどいんだよなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
冒頭の井戸端で、国府くんだけ一人離れてる理由とか色々勘ぐりたくなってしまう。こういう疑念を加速させるために、葬儀場で裏切り者の話したんよな…。
さておき、まーた同僚が連続殺人鬼になった松岡さんが採取した思念粒子により、名探偵達はコンビで砂漠に投入される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
名探偵が多すぎて、謎はたった一つ。名探偵をコンビで投入すれば答えを読み間違えた愚か者が、必ず生まれる。
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アナアキの指摘は、今後加速する物語の中で刺さるだろう。ホント舞城、DCD大好きだな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
この後の砂漠の世界で見るように、キャラがたった名探偵が沢山いる状況は面白い。名探偵 VS 名探偵のシチュエーションも。
推理合戦をやりつつ、名探偵失格の愚か者を作らないためにはどうすればいいか？
ミステリは色んな答えを出してて、断片的な真相を複数の名探偵がつなぎ合わせて一つの答えに至るとか、過ちに見えた答えが真相を別角度から観察した結果だったとか、全ての真実が同時に真実であり得るような無茶苦茶な状況を作るとか、推理に合わせて世界のほうが変わるとか、まぁ本当に色々ある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
酒井戸、穴井戸、聖井戸。既に三人の名探偵が顔を見せているこの物語が、果たしてどういう結論を目指しているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
情け容赦なく”失格”の烙印を押す結末含め、今回は最終的な推理伽藍をおっ立てるための青写真を、視聴者にそれと知られず焼き付ける話…な気がする。サブリミナル的、というか。
同時に今回、答えらしい答えは色んなものに出ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
時計泥棒が盗んだのが本当に時計かも、時計泥棒が誰であるかも、カエルちゃんの死の謎も、推理らしい推理はほぼない。
あるのは名探偵二人、緩慢な死の中での道行きである。白紙の探偵だからこそ、色々見えるものもある。
二人は記憶も名前もなく出会い、一人のカエルちゃんを観測することで自分たちが”名探偵”であることを思い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
自分も他人も知らない同志、距離のある間柄。それが一歩ずつ進む中で繋がっていく（ように見える）のが、今回の話だ。
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酒井戸は沈思黙考の書斎派、穴井戸はとにかく前に進む行動派。手を差し出すのも穴井戸からだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
”名探偵”が明晰なる殺人鬼のある種の真実を抽出する、彼らが潜る”世界”と同じような構造を持っているとすると、この対比はなかなか面白い。
酒井戸≒鳴瓢は謎を前に立ち止まり、穴井戸≒アナアキは進む。
二人だからこそ強調される差異は、多分結構根本的なものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
酒井戸は犠牲者であるカエルちゃんに膝を曲げて寄り添い、穴井戸は立ったままだ。
行動にはキャラクターが宿る。行動がキャラクターを浮き彫りにする。真実が少なく、日常が多い今回、読むべき謎は、いつもとちょっと違う場所にある…か？
まぁサスペンスとグロテスクの奥に、キャラを理解らせる微細な仕草がたっぷり仕込まれていた物語ではある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
そういう人間という謎がちゃんと描かれているから、僕はこのお話に前のめりになっているし、展開されるサスペンスを上滑りさせないグリップもまた、そこにある。
例えばションベンまみれの上着を、酒井戸はガッツリ顔面に密着させ、穴井戸は距離を開けてかぶる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
娘と妻の復讐のため殺人者となった鳴瓢は、汚れることを恐ない。既に血に塗れているのに、排泄物がなんぼのもんじゃい。
そういう刑事根性が、アナアキにはない。
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酒井戸が足を止めてカエルちゃんを見つめるところを、穴井戸は先に進み、しかし酒井戸に追いつかれてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
穴井戸の焦った行動主義は、沈思黙考の速度よりも”遅い”のだ。
思考よりも早く迸る稲妻は、この世界にはない。そう考えると、鳴瓢の”世界”で鳴り響いていた雷鳴は、鋭敏過ぎる知性でもあるか
世界の構造を思考する手がかりすらない、広漠とした無限の砂。そこで酒井戸は天を見据え、足元が疎かになって流砂に飲まれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
地獄にハマってもがく彼に、地獄の歩き方を教えるのは実行主義者・穴井戸だ。
穴に落ちきるまでには時間がある。焦らず、静かにとびだせ。
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自分の頭に空いた穴に落ちたアナアキ…その転写たる穴井戸は、地獄の歩き方を応用して、流砂から酒井戸が抜け出すヒントを与える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
それは多分、ミズハノメの奥にある陰謀、鳴瓢の中でなり続ける雷鳴からサヴァイブする未来への寓話でもあるのだろう。
衝動に押し流されるまま、頭に吹く風に押されるまま進んでも、深い井戸に落ちるだけ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
絶望に囚われつつ生存するためには、落ち着いて周囲を見ることが必要。
これは語ってる穴井戸の流儀というより、酒井戸のスタイルだったりもする。闇雲に進んでも、井戸からは出れないのだ。
しかしそのスタイルを取り戻すためには、真逆な実行主義者の助けが必要だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
穴井戸は手を差し伸べないし、一緒に落ちるリスクも侵さない。しかし知恵は出す。
あくまで最終的にはたった一人、地獄は飲まれたり出たりするものだ、とでも言いたげな立ち回り。その奥に、僕はアナアキの人格を幻視する
だんだんアナアキの頭部に開いたドリルホールに見えてきた流砂の先に、二人は進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
お互い凸凹のスタイルを噛み合わせ、元刑事と殺人犯という現実も忘れ、一歩ずつ、一歩ずつ。
穴から出れば忘れられる、一瞬の共闘。でもそれは、砂漠の幻影ではない。
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はずだ。若鹿くんが視聴者の代理として『ブロマンスは良いから、ミステリやれよ…』と呟くのは、このアニメらしいユーモアで好き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
いや、一生キャッキャでも良いんだけどさ…ここでボーッとしてても、本堂町くんも百貫さんも帰ってこれないしね…
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世界の謎も時計泥棒の正体も、カエルちゃん殺害事件も置き去りにして、名探偵は井戸の中の井戸に潜る。惹き寄せられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
全てがそうであるように、既に定められているという直感。
謎は解かれるためにあり、名探偵はそのために存在する。ミステリを既定する根本原理。
混沌を名付け、秩序をあるべきものに戻す根源的な快楽へ、酒井戸は奉仕し続ける。そしてそれよりも、犠牲者や犯人や犠牲者でもある犯人にたどり着き、声を聞き隣り合うことを重視している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
イドの中のミズハノメに、疑問なく座る全自動。鳴瓢の愛と殺意は、名探偵システムに突き刺さったノイズなのか
そこら辺も、今後掘り上げるネタなのだろう。酒井戸が一人ではなく、井戸から引っ張り上げるバディとして穴井戸がいる（反転すると、聖井戸が一人で潜り、帰ってこれていない）意味とかね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
今後も孤独と他者性、人間の根源についての話になると思う。いつもの舞城じゃん…（歓喜）
という感じの、寓意性の高い男男砂漠旅でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
名探偵適性の高い酒井戸を”勝ち役”にするのではなく、流砂という現実への対処を穴井戸に任せることで、二つの視点、スタイル、名探偵が並び立つ構成になっていました。
あくまで仮想の夢なんだが、描かれたキャラクター性が今後の現実で、どう生きるか
そこに、露骨な布石である今回の真価も現れてくると思います。まぁ二人でキャッキャしてるだけでも面白いがな！ ションベンまみれだがな！！
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
今回の英字サブタイは、『奈落から逃れようとするほど、より深く囚われてしまう』と言ったところ。
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”a hell hole”は鳴瓢のイドで鳴り続けている不条理な雷鳴であり、そこからはみ出す殺人衝動であり、ミズハノメというブラックボックスに仕組まれた謀略であり、他者の脳髄に潜るシステムそれ自体でもあるのでしょう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
そこから抜け出し、何かを掴むヒントが描かれるエピソードだったのかな、と思います
かくして命綱を握るバディを置き去りに、酒井戸は井戸の中の井戸へと落ちていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月17日
深く、もっと深く。既に定められていた真実に向けての旅路は、地獄への一方通行か、天へと帰還する遍歴か。
予断を許さぬサスペンスは、砂漠の休息を経て更に加速していきます。次回も楽しみ。
