ドロヘドロを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
カイマンの過去を探るべく、煙の屋敷に殴り込みをかけたニカイドウ。激戦は痛み分けに終わり、二人は”ホール”へと戻る。
そこで聞いた、心の過去。マンホールの下で、魔術ワナビーが育てる哀歌。
ゴミ溜めの街に、涙雨が降り続いている。
そんな感じの、偶数回は三本立て、ドロヘドロ第六話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
真実の一端を掴んだと思ったら後戻りし、どん詰まりかと思えば前に進む。カイマンの記憶探求を軸に回る混沌が、ある種の方向性を持ちながら行きつ戻りつ、地道に進んでいることがよく判る回だった。
今まで見るだけだった”路地”の奥、マンホールの底に踏み込めた第3エピを見ても状況は進んでいるのだが、立ち込める煙で見通しは悪く、混沌の次には別の混沌が待っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
軽いノリでぶん回される暴力と、微かに湿った哀愁もジワリ、滲んで、相変わらずこのアニメは巧い。
多分毒なんだが、止まらない
お話はニカイドウ殴り込みの結末を描くところから始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
ノンキに善良に、メシを作ってニカイドウの帰りを待つカイマン。『何やってんだよー!』という叫びを追いかけるように、暴力と顔が強い女達は殴り合う。
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能井はバトルマニアの喜悦に夢中で、ニカイドウは勝ちが第一目的じゃない事実を見据えている。片目をえぐって視界を塞ぎ、その隙に栗鼠を探し、カイマンの過去を探る目的へと近づいていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
単身ボコボコにされつつ、友のため死地を走るニカイドウの誠実が、血塗れで滲む。
愛。友情。狂った世界の中で一番高値の宝石を、何も持たない白紙のカイマンはそれと知らず、しっかり握り込んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
トカゲ男の喉に潜む栗鼠は、自分を殺した”仲間”に凶相を押し付ける。
利己と純粋が錯綜する混沌の只中で、ニカイドウは飛ぶ
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栗鼠の両手をとって、相対する煙ボスとニカイドウ。片方は友情のため、片方は組織の利害のため。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
どちらにしても、栗鼠それ自体を思ってくれる存在はいない。あるのはぶっ殺された記憶と、他人に情を寄せない冷酷…この世界のスタンダードだ。
みな、そのリズムと踊る。おかげでシッチャカメッチャカだ
ダブルチェックの状態で、煙ボスは相手の素性を知ろうとして、ニカイドウはノータイムで暴力をぶん回す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
マスクが壊れ暴走した煙ボスは、コミカルな”死”を自分の城に撒き散らしていく。
クールに見えるボスだって、一皮剥けば凶気そのものだ
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栗鼠は元”仲間”を、恨みと疑念を込めてあっさり見捨てて、キノコの苗床にする。
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藤田はぐったりした恵比寿を心配し、心先輩は下半身をエノキに変えられながら、能井に希望を託す。
ニカイドウの乱入で始まった、この大混乱。存外、色んな連中の”情”を見せる鏡になってる気がする。
カイマンがのんびり”椎茸”に舌鼓打とうとした所で、ニカイドウは背中にキノコを生やし、死にかけで戻ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
白紙の記憶にふさわしく、あまりに気軽にやってきた魔法界。その対価はあまりに大きく、シリアスなものだった。
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今のところは痛み分け。お互い太い友情アリ、狂った暴力性アリ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
栗鼠の存在だけは確認できたけど、それが過去にどう繋がるかは確定できないまま、カイマン達の第一回マジカルツアーは終わる。
キスの構図なんだが、湿り気ないのが心能井の良いところだよなぁ…。
あわや身内全滅の大暴走から、人よりキクラゲをまず心配する心ボスの描写は、理性的で理想的な上司に見える彼もまた、十分この世界の住人だと教えてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
綺麗で正しい”マトモ”なんてのを探しても、どこにも見つからないのがこのお話。全ては歪み、傷つき、再生し損なわれる。
行ったり来たりを繰り返しているようで、少しずつ前に進んでいるのもまた、この話の特徴で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
たとえばカスカベ博士が病院に腰を落ち着け、カイマン陣営に知恵を付けてくれるのも、魔法界旅行の副産物だろう。
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ベビーフェイスで吹き散らかす、苦い煙。それは街の過去、心の過去に繋がって、彼がまだ魔法使いではなかった時代を語っていく。ここのサブタイの出し方はセンス満点、非常に良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
心もまた、死から蘇り、決定的に歪んでしまった存在であることが、過去語りから見えてくる。
”ホール”が今のような実験場ではなく、人間がモルモット扱いされていなかった時代…と書くと、ヒューマニティを担保する黄金期のように見えるが、魔法使いに抵抗する”町内会”は人非人の集団だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
この町では、あらゆるモノがそうなるしかない。
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心先輩が魔法界に行かず、狂った心臓マスクをかぶらず、バラバラのツギハギでもなかった時代。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
魔法使いの首を掲げて、”町内会”が練り歩いていた時代。
狂気は昔っからこの街のデフォルトで、しかし小さな暮らしと幸せ、親子の情があり…それはバラバラに砕かれてしまう。
今でも愛用するネイルハンマーに、ズタズタになってしまった心と情を叩きつけて、心先輩は掃除屋になった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
おそらく殺人道具としては非効率的な、釘打ちの道具。それを継続して使っているのは、ツギハギにしても治らないものの代理だ。
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『そろそろ楽しくなってきたぜ!』ってのがある種の強がりであり。真っ赤な涙を垂れ流しながら、殺し殺されするしかねぇ状況を心先輩は飲み込んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
”ホール”じゃ命もノリも軽いが、そこでバラバラにされるものに痛みがないわけではなく、壊されたら終わるほど生易しくもない。
取り返しがつかないほど壊れてしまっても、壊れたなりに続いてしまうタフな悲劇。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
それを生存するために、心先輩は自分の腕を切取り、カスカベ博士はマッドな好奇心で彼を助ける。
腕が動かなかろうが、餃子食ってパワー付けて、生きていく。
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幼年期ニカイドウが非常に可愛らしいが、それを追っかけるように輪切り死体(死んでないから”輪切り生体”か)が押し寄せてくるのが、このお話らしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
可愛さもある。友情もある。それで覆い隠せないほどの悲惨と崩壊と再生がある。そういう話。
輪切りにして、なお活きる。心先輩の煙には、執念が滲む
『すぐ腐るよ』と注意された腕が、能井との出会いで繋ぎ合わされ、機能を回復したのだとしたら。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
真っ赤な復讐心をそのままに、溢れる殺意を乗りこなせる足場が、二人の出会いにはあったのかな、とも思う。
生き延びて殺したのは心先輩の強さ。
それをツギハギに繋ぎ合わせるのに、能井の存在はデカい
カイマンが過去を奪われたことで今のカイマンになったように、心先輩は過去を砕かれ、ツギハギに繋ぎ直して今の心先輩になった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
記憶も情も存在していようが、白紙に漂白されようが、凄くろくでもないものと、妙に温かいものを生み出してくる。
かつてツギハギ少年を救った医師達は、彼と殺し合いをするトカゲ人間からメシを受け取り、その噂に大きく、心先輩はクシャミをする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
親が惨殺されても。両腕をバラバラにしても。血の涙を流しても。
狂ったまま、どっこい生きてるのさ。
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そんな繋がりと、記憶喪失のカイマンは無縁…のようでいて、縁は色んな場所に繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
今までは見るだけだった”路地”の奥へ、攫われたニカイドウを助けるために、カイマンは踏み込む。
そこには確かに、友情がある。死体と巨大ゴキブリも
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ぶっ殺すべき魔法使いでしかないニカイドウに、冷たく染み入る”ホール”の雨。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
その只中を疾走しながら、カイマンは記憶と真実に一つ近い場所へ踏み込む。
何かが判るわけでもない。誰かが救えるわけでもない。老廃物を宝石と崇め、どこかへの希望を最後に燃やし、死ぬ命があるだけだ。
巨大ゴキブリ・ジョンソンくんと破茶滅茶やってるあたりは、いつもどおりのバイオレンスコメディであるけども、ニカイドウを攫った男に対峙したあたりで、画面の湿り気がグッと濃くなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
ただ、この狂っちまった世界から、どこかへ出たかった
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”扉”で自由に行き来する心先輩たち魔法使いや、カスカベ謹製の悪趣味ドアで魔界トリップキメたカイマン達とは違い、ホールの狂気に飲み込まれた男には出口がない。突破していくのに必要な、スタイルも暴力もない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
それでも、どこかに行きたかった。当たり前の幸福がある、雨の降らない場所へ。
あるいは記憶を無くす前のカイマンも、おんなじような事を考えていたかも知れない。街に適応して、超暴力をぶん回すタフな悪漢だったかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
どっちにしても、壊れて白紙になった記憶の上、今のカイマンは、ガスマスクに涙雨を貯める。
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血みどろのツギハギで『面白くなってきたぜぇ!』と、修羅のように嗤うしかなかった心先輩と、同じように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
カイマンは降りしきる悲劇の雨を避ける傘を持たず、涙を真っ当に流す機能も持たない。
色んなものがぶっ壊れて、しかし決定的な終わりには至らず、壊れたまま続いてしまう物語。
そこから退場した男は、街の狂気に対抗できなかったモブであり、『壊れてハイおしまい』の普通人だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
この話の主人公たちは、死んだ程度、壊れた程度では終になれない。魔法に彩られながら、人生は続く。
あるいは友情こそが、心の破片を繋いでくれる最後の秘薬…というと、メロウが過ぎるな。
そんな感じの、痛み分けと男二人の過去のお話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
心先輩のオリジンが見えることで、彼がぶん回す風通しの良い狂気、どこか爽快な暴力が裏打ちされて、ジワッと哀しみが滲んだ感じがしました。
当然あの街にも情とか痛みとかあって、でもその大切さを誰も鑑みてはくれない。
カイマンも大事な友だちを攫った男に、なにか感じ入った様子を見せる。回想するべき過去、自分を支える土台もないまま、トカゲ男は雨の中を彷徨っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
その歩みが、いつも戻ってた”振り出し”の奥へ進んだ。
骨折り損で終わったように思える魔法界襲撃も、知らぬ場所で何かを繋げ、何かを暴くか。
そんな混沌の本道に、凄惨な哀しみが染み渡るエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月18日
このしっとりした空気から! 次回はみんな大好き野球回だよ!!
Web予告の段階で、MAPPA渾身の作画が唸っており、期待が膨らみつつ、『力点そこ…?』とも思いつつ。
それが……ドロヘドロ! マジ楽しみ。