歌舞伎町シャーロックを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
劇場政治の踊り手が、人気欲しさに仕掛けた舞台。
踊るバカ共の裏側で、探偵たちが知恵をば絞り、爆弾探しに東奔西走。
言葉一つに踊らされ、実のあるものは何も掴めず。
他人のの人生おもちゃに変える、探偵ゲームの虚しさは、果たして如何な真実を、歪な若葉に与えるか
そんな感じの、最終章開始の号砲が鳴り響く第19話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
今まで楽しく物語を彩った、悲喜こもごもの探偵ゲーム。知恵を絞り、犯罪という不幸を娯楽に変えうるその歪みが、作品に追いついて牙を剥く感じの話である。
理性と遊戯の入り混じった、モリアーティというキマイラの牙。
それは変わってしまったホームズに、変えられなかった自分に噛み付いて、酷く痛む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
しかしそれが本当にモリアーティの牙なのか、まだ謎と真実が待っているのか、なかなか読ませてくれない。
とても辛い気持ちで、茶番の時間が終わっていくのを眺め、新しい茶番が始まるのを見ていた。
この後(第1クール終盤がそうであったように)作品はシビアさを深め、街は容赦のない牙をキャラクターに向けていくだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
人間の醜悪を煮て固めたような残酷は、しかしずっとあの世界にあったものだと、僕らは既に知っている。
来るべき時が来たのだとも、優しい夢が終わったのだとも。
色々言えるだろうけど、今回モリアーティが見せた露悪の奥に何が残っていて、何が変わり果てていて、何が消えてしまっているかを見定めないと、確たる事は言えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
一つ確かなのは、始まったものは終わるし、終わった後でも続く、ということだ。
人間の美醜を貪欲に飲み込む街と、その住人の物語。
その終章は、自分たちが打ち立てた『探偵長屋』の無力さを刻みつけることから始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
英雄と持ち上げたその手で、すぐさま地べたに叩き落とす。身勝手な世評を掴まなきゃ、勝ちが拾えぬ選挙という闘い。
モリアーティーはスーツの鎧で、その中心を泳ぐ。
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当たれば一発ドカンの、”ふぐ刺し弁当”に仕込まれた罠。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
芳忠さんの声がよく届くので、ここで大体の仕掛けは判るわけだが。
探偵長屋の面々は、ホームズを司令塔に謎解き遊戯に勤しみ、散々間抜けを晒していく。そこで暴かれるのは、遊戯でしかない推理の無力さだ。
『犯行声明文に隠された暗号を読む』『犯人はメッセージを伝えてきている』という、推理が乗っかる構造。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
それ自体をパロディして、上から嘲笑うモリアーティーの仕掛け。
浮かべた涙は心の毒薬、人情逆手に人を刺す。
そんな悪党なら、俺らも彼らも楽なんだがな…。
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この事件は『アルバートが劇場型犯罪者であり、派手な仕掛けを好む』というホームズの見立てを、モリアーティーがハックすることで成立している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
最終的に爆発する、人の命を奪う本物の悪意。それにモリアーティーの遊戯が触れていないことが、救いなのか、絶望への誘いなのか。
モラン区長のポピュリズムが、本質それ自体を無化させる巨大なサーカスであるように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
モリアーティが中心に立つ…あるいは組み込まれ、望まず利用されている犯罪遊戯は、推理の枠組みを壊していく。
あるいは犯罪と推理の間にあった溝を、ワトソンくんの補助でホームズが乗り越え、置いていかれた形か
ホームズは次々流れ着く謎掛けに必死に答える。『それが推理装置の責務だ』とばかりに。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
しかし、身内にしか届かないポケベルに次々犯行予告が届いている時点で、”推理”というシステムは破綻している。
情報は上流で握り込まれ、探偵たちは黒幕の掌の上で踊る。
この時『推理する知恵者/事件を起こす愚者』という構造は反転し、探偵たちは事件を解決しえない。”ヒーロー探偵”でもあるモリアーティは、だからこそ探偵機構に毒を流しうるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
読んでも読んでも終わらない謎を投げ捨てて、ホームズは犯人を呼び付ける。
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離れてしまった二人の距離と、既に知っている事実の確認。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
モリアーティがここで供述する”真実”は、今までの描写を全て吸い取るには少し足りない…気がする。
あんだけ演出リソースを吸っていた自殺暗号が、ただの記念番号ってのはアンフェアが過ぎるだろう。
まだ、何かある。
あるいは、何かあると思いたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
そういう心理を逆手に取って、疑念の種を蒔いているのかも知れないが…なかなか、読みきれない。
ホームズが探偵装置であるように、モリアーティも犯罪装置に自分を押し込んで、自動的な推理ゲームを延々と楽しみたいのだろうか?
そんなに、人情のない変人探偵が好きだったのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
ジャック事件で…あるいはその前にあった、下らなく愛おしい日々の中で彼が見せた感情の濃さは、推理機械とは別のものに焦がれていたように、僕には見える。
だから、違和感もある。
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跪いて靴を舐める仕草が、ホモセクシュアルな屈服…オーラルな奉仕を睨めつけているのは、多分間違いない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
そうやって”しゃぶられる”関係を、下に落として踏みつける距離感を望んだわけじゃないから、顔を歪めて膝を入れた。
それは判る。憬れの対象には、隣か上にいて欲しいものだと思う。
しかし情のない推理機械に、自分が変え得なかった変人探偵にノスタルジーを感じるのは、納得しつつも微かな違和感がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
彼自身、感情がないわけじゃない。殺人がゲームではないことを、他でもない妹の血で、自分の手を汚したカインの印で、十分知っているはずだ。
それでも、ゲームがゲーム足り得る構図を望み、他人の命の値段を軽んじる生き様に、ホームズを引き込もうとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
そう願うようになったのは、一体何が原因なのだろうか? 彼自身うそぶくように、元々そういう人間だったのだろうか?
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落ちた偶像を前に据えて、ワトソンくんは人生の衝突現場に、なんとか追いすがる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
ホームズを中心に置いた、感情の綱引き。異質とマトモさに引き裂かれる探偵が、背負ってしまった十字架。
人間の命は、話のネタじゃあない。
それは、ワトソンくんが与えたもの…
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ってだけでは、僕はないと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
モリアーティを始めとした人々との触れ合い、そもそも他人を見ようとしたホームズ自身の心が、膝を折ってでも事件を解決し、命を救おうと駆け回る変化の根っこだと思う。
モリアーティは頑なに、その変化を拒もうとする。
「結局俺たちは、推理する機械だ』と。
地獄に呼び込むその手を、ワトソンくんは体を張って止める。『怒るぞ!』と、酷く不器用で真摯な言葉を投げかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
それはモリアーティの中にある、一番大事なものを呼び覚まし…その記憶が、自分ではなし得なかったものを教えもする。
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自分にとってのアレクが、ホームズにとってのワトソン。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
人の生きる意味を教え、人倫の崖っぷちから落ちそうな時手を差し伸べてくれる存在に、自分はなれなかった。
その痛みが、モリアーティの鉄面皮に罅を入れる。
とてもマトモな、情のある交流。
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そこに、自分の居場所はない。決定的に変わってしまったモノを前に、少年は立ちすくみ、消えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
ホームズは己の内面を、何も語らない。推理装置は何も感じない。
果たして、そうであろうか。
何故、ワトソンに告げなかったのか。
何故、推理の内側に入っていったか。
語られない人情こそが、この錯綜する状況を突破する鍵のように思えるし、それはこのお話が選び取った”落語”という題材に、熱い血を通わす最重要パーツでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
おそらく、ホームズが名探偵の領分を飛び越え、噺の形を借りずに己を語りだした時、もう一度物語は大きく動くのだと思う。
しかしそれまでは、あるいはそうして”人間”を掴み取った後も、推理落語はホームズが世界と繋がる、大事なメディアだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
ワトソンくんは『こんな時に!』と言うけども、こんなときだからこそ、ホームズは”人間”を固く、不器用に演じるのだ。
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鼻ァ潰されてるのに道化芝居、傍から見りゃ滑稽だろう。過剰な情報に踊らされ、全体の構造を読みきれず、不要な炎に命を燃やす。探偵、敗北す。情けない限りだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
しかしホームズには情報を読み、その結実を”噺”の形で世に伝える方法しかない。それ以外の器用な生き方が出来るなら、変人探偵やってない
だから窓ガラス前の、高座すら幻視しない語りは酷く必死だ。ホームズがバラバラになりつつあるものをなんとかつなぎとめるための、唯一の闘争なんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
それが通じる時間は、既に終わってしまったのか。『毎度バカバカしいお話』にうまく収まるのか。
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分かりきらないまま、モリアーティは笑顔の仮面、スーツの鎧でグラン・ギニョルの主に語りかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
その表情は自信満々の劇場型犯罪者というには、あまりに虚ろだ。
その虚無が何処から生まれたのか。
モリアーティは虚無に語りかけ、何を欲するか。
謎は虚しく木霊し、状況は加速していく。
今回の事件は、醍醐院の命を狙ったシリアスな犯罪と、誰の命も奪わない大掛かりな遊戯が同時進行している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
その両方をモリアーティが握り込んでいるのか、はたまた別の装置が動いているのか。
妹を守ってくれなかった父に、至近距離で復讐を果たすのが狙いっぽいのは、まぁ判るんだが…。
かくして、混沌がより色を強めていくお話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
やっぱ刑務所の中で何が起こったか、それがモリアーティにどんな影響を及ぼしたかを知らないと、なんとも判りかねるな…。
語られざるホームズの変化と気持ちは、身勝手ながらなんとなく察しが付く…気がする。
冷静に情報捌くには、ちとあの世界の連中に愛着がありすぎて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
厳しく冷たい世界だってのはご承知の上で、どうにか幸せな結論にたどり着けないものか、儚い夢も見たくなる。
いなくなったメアリを必死に探す姐さんだけで、かなり心が痛いからね…誰も死なんと良いなぁ…。
肉親を呼ぶ必死の声に、モリアーティは一瞬、動きを止めていた。ワトソンが占める立ち位置の意味も、正確に見抜いていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
僕らが見ていた…見たいと思っている少年は、おそらくまだ死んでいない。だが、それ一本じゃ渡れない”何か”が、彼をせき止め変えている。
そこに、変人探偵はたどり着くことが出来るか。モリアーティが駆動させる犯罪の装置は、いかなからくりで動き、どんな悲しみを絞り出していくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年2月23日
最終章もまた、重く苦しく、だからこそ人の情が幽かに輝くお話になりそうです。いやー…褌締めてかからんといかんなぁ、やっぱ。
次回も楽しみです。