22/7 を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
大船に乗っかるように、壁の指令に導かれるまま突き進んだ一年。ナナニジは一周年ライブへ向け、温泉で英気を養っていた。
それなりに大変で、それなりに潤腸なアイドル活動を、少し離れた距離から見るセクシー担当・立川絢香。
その視線が、枯れ葉の奥に見据える記憶とは。
そんな感じの、個別回第六回(であり、恐らくラスト)な絢香エピ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
素顔も過去も、メンバーに共有されないのはいつもどおり。
ベルトコンベアでサクセスが流れてきて、なんとなく繋がった風情で、節目のビッグイベントに向けて気合を入れる。その感触が、布一枚遠いのもいつもどおりだ。
この離人した感覚がこのお話の特色であるし、わかりにくさと一緒に奇妙な気持ちよさを感じればこそ、この話数まで見ているのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
そろそろ終盤戦が見えてきた話数で、いきなり手応え満点の王道熱血ストーリーになられても、逆に戸惑うわな。
『解散』の二文字がのしかかる終盤、この味をどう使うか。
それが楽しみだったりするが、今回は絢香の過去である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
彼女は妙に醒めた視線でナナニジを見て、しかし浮きすぎるでもなく…例えば第6話で麗華に見せたような、体温の高い顔も時折見せていた。
そんな印象と、今回見せられる過去とはそこまでギャップがない。
眼鏡の奥に一家離散の痛みを秘めた自称ロボットだったり、軽い仮面の奥に家族の涙とか”死”とかを隠していたり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
何かと劇的で重い連中が多いナナニジのなかでは、結構例外的に普通に幸福で、普通に不幸な人生の果て、”アイドル”に流れ着いてきた様子が淡々と語られる。
季節が一巡りし、たどり着いた秋の風とその語り口は妙に噛み合って、独特の面白さがあったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
嵐の前の静けさ、解散ライブの前の温泉旅行っつー状況に相応しく、パワーで押すというよりただただ静かに、立川絢香の個人史を語り、振り返っていく。
その筆致が、彼女らしくて良かったと思う。
漫画を描き、姉を泊まらせ、頭を撫でられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
絢香の私生活はごくごく普通で、”アイドル”としてのセクシーなキャラとは、微妙にずれている。
”素”を一人も出していない、仮面人格の寄り合い所帯。それでもなんとか回って、分かりあえた気分になれる。
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その半自動な手応えのなさ(にもかかわらず、レコ大新人賞取れてしまう資本のデカさと、半自動なりの努力)の只中で、みうは相変わらず居場所に悩み、絢香は”居”の成り立ちから語り始める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
世界と自分を、ちょっと引いた位置から見れる静かな知性。
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作り上げたキャラクターという鎧を着込んで、くたびれ果てるまでアイドル稼業。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
姉に照れ隠しで語っていた腰掛け感は、みうを前にした絢香にはあまりない。
グラグラ煮立つ熱血ではないけど、自分なりこの一年、アイドルをやってきた。
窓に書いた”居”に、静かなプライドと意志が滲む。
みうの個人史も、同じように静かに当たり前に熱い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
どこの家庭にもあるようないがみ合いと、母の優しさ。見つけ出した輝くもの。摩擦と挫折と変化と復調。
指しゃぶりとママの歌で己を慰める少女は、如何にしてクールな観察者/表現者へと成ったか。
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※訂正
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
×みうの個人史
○絢香の個人史
これが(いつもの如く)セミオートで流れる現代と、重なり合いながら編まれていくのが今回のお話だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
オフタイムということもあって、現実も過去もそこまで派手にうねりはしない。
照れくさいけど、隠しようもない本当の愛。それを心に刻んで、たどり着いた一周年。
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アイドルを始めるまでの道も、アイドルを始めてからの道も、絢香にはどこか遠く、しかし諦めるには静かに熱のある歩みで刻まれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
それを例えば第3話、第5話、第7話のようなダイレクトな手応えで描かない今回は、ある意味一番ナナニジっぽい。
大切なのはいつでも妙に遠くて、共有され得ないのだ
ニコルの雲丹ボケに、周囲は『アイドル一筋やし…』と生暖かい視線を送る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
前髪を上げて世界と他人を見るようになったみうが、まだ『アイドル向いてないかも…』と悩むように。
少女たちは一年である程度分かり合い、その繋がりは全てを突破しうるほど、熱くも強くもない。
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はしゃぐ七人が、それぞれ複雑な過去と想いを抱えていることを、透明な神である僕らだけは知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
やはり遠い距離感でそれを見据える絢香の過去を、メンバーは知らないし、メンバーの過去も絢香は知らない。
それが共有されなくても、人間は繋がれるし、特別な存在になりうる。
この非・劇的な人間関係のリアリティは作品を貫通する背骨であるし、特色でもあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
フィクションである以上劇的で分かりやすいものを望まれるが、”アイドルアニメ”という枠の中でその路線は、血の池並みのレッドオーシャンだ。
直球勝負で埋もれるくらいなら、リアル連動の強みを活かす。
その判断で、キャラのドラマをキャラが知り得ない仮面の構造。虚像と分かりつつ、グループ内部で、その向こうにいるファンに演じ続ける職業。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
それを支えてきた壁からの指令が、ナナニジ自体を壊す未来を知らないままの、最後の日常。
そこに、絢香は過去を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
姉と確認した絆は別に、”普通”で安全な学生生活を保証してくれなかった。
涙代わりに濡れたトイレから、彼女は自分の生活と夢を再構築し、アイドルに出会う。
その語り口は、非常に静かだ。『こんなに淡々としてていいの?』と、一瞬思うくらい。
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同時に結構雄弁でもあり、17歳でプロだからこその落ち着きとか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
いじめの衝撃でドロップアウトせず、人生を掴むタフさとか。
それでも、誰かが黒い便箋で見つけてくれた瞬間の喜びとか。
色々伝わってくるものがある。この静かな語り口が、今回とても良い。
一緒に風呂に入る仲になっても、少女たちは何も知らない。あかねが眼鏡を外さない理由も、みやこがガサツどころの話ではない感情の生き物であることも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
しかし一年を共有する中で、確かに何かを感じているのだろう。そういう非言語・非劇的なる共有が、日常を回していく。
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絢香が場を収めた星の子守唄と、こっ恥ずかしい本音。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
それは遠い過去、暖かな家庭で手に入れた思い出であり、恐らく学校で生まれた摩擦の中、彼女を支えてくれた柱なのだろう。
信頼できるものだから、壊れそうな局面で頼った。そういう個人史を、仲間は知らない。
でもなにか、己に鑑みて感じ入るものがあったから、じゃれ合いのような解散ごっこをやめて、仲間に戻ることにした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
温泉旅館での小さな軋轢の、裏側にうねるキャラクターの奥行き。それを対峙するキャラではなく、観客席の僕らだけが知っていて、色々裏を勘ぐれる。
作中の現実に一切触れることを許されない、特権的な無力。それをモニタの向こう側に押し付けつつ、”知る”という一点においては超越的である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
この隔離が、それなりの体温で当事者には必死であるらしいアイドル生活一年間を、冷たい客観に追放し続ける。
やっぱ変なアニメだ…解散爆弾以降変わるのか?
みうはそんな遠さを素直に語って、絢香は仮面を作って受け止める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
遠くて近く、弱くて強く、理路整然と大間違い。矛盾だらけの自分と世界を、絢香は静かに見据え、その只中を泳いできた。
確かに、その黙考主義はみうによく似ている。基本ナナニジの子ら、一皮剥くと詩人だからなぁ…。
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温泉旅行は静かに暖かく、楽しく過ぎていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
大きな克服も事件もなく、暴露される過去と現在に強いギャップもない。
その緩やかな繋がりが、絢香の靭やかな知性と、それを生み出した結構傷のある人生とシンクロして、奇妙に心地よかった。凄くナナニジらしいエピソードだと思う。
世間は(かつてあかねの家族を吊し上げたのと同じ)オーロラビジョン越しに、ナナニジ一周年を待ちわびる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
すっかり慣れ親しんだ、壁の指令。
それに乗っかっていれば、万事順調、成功も充実も友情も約束された、顔のない神様。
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そこから吐き出された指令は、”解散”の二文字。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
『壁のいうこと聞いてれば、ずーっと安泰だ!』とフイてたみうのモノローグが、逆向きに突き刺さる展開で次回に続く、である。
いやー…良いじゃない。そらーここまでセミオートで進んできたなら、この指令が出てくるのは必然だわな。
誰とも知らない存在から手繰られ、見知らぬ者たちと乗った”アイドル”という船。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
用意された波風と、約束された成功に揉まれながら、それなりに繋がった絆。
それを全部捨てて、全部壊せと、神様が言う。
この先に待つのは従順な破滅か、反逆の決意か。それとも、もっと曖昧で不確かな”なにか”か。
ここからの舵取り次第で、”アイドルアニメ”の王道に全力で背を向け、露悪にも走らず奇妙な遠さで描かれてきたこのお話、その値段が決まると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
どういう結末にも走れるし、どういう描き方も出来るこの爆弾。
今まで積み上げてきた仮面劇、秘めた”アイドル”への思いを、活かすか殺すかぼやかすか。
そんな分岐点を前に、静かに一年目のナナニジ、その中心…から少し離れた場所に立つ絢香をスケッチする、静謐なエピソードでした。俺好きだな、この話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月9日
残る個別回はニコルだけだが、どう活かしてくるか。
選び取り積み上げてきた独自の語り口を、どう使うか。
次週以降、非常に楽しみです。