BNA ビー・エヌ・エー 第一話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
人間と獣人が混ざり合わぬまま隣り合う、残酷で当たり前な世界。
タヌキの獣人、影森みちるは追い立てられるように、獣人の街・アニマシティへと身を寄せる。
祝祭に浮かれるそこもまた、楽園ではなく。
差別と打算と暴力に満ちた世界で、少女は何を望むのか。
そんな感じの、吉成曜&TRIGGER最新作である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
まー暗い! TRIGGERくんが持ち前の陰気っぷりを全面に押し出してくれた感じで、僕としてはなかなか嬉しい仕上がりである。
差別、暴力、打算と悪意。薄暗いものに満ちた世界を、人間と獣人はいがみ合いながら生きている。
第一話は説明なしで、みちるが投げ込まれた世界と当惑を視聴者が追体験する形だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
分からないことは多いが、それはおいおい見えていくだろう。判らない状態だからこそ感じたものを、ちょっと大事にしたくなる出だしだった。
同時に判るものも沢山あって、そこを手がかりに作品に分け入りたい。
きれいな建前が、剥き出しの悪意で上書きされる出だし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
みちるは影に潜み、バスにも普通には乗れない。獣人であることは、駆り立てられ排斥されるケモノであることとイコールだ。
なんとかフードを外して、見つめる夢の街。
© 2020 TRIGGER・中島かずき/『BNA ビー・エヌ・エー』製作委員会 pic.twitter.com/ip5vqE43y4
そこも完璧な理想郷には程遠いことがおいおい判っていくが、差別に追い立てられるみちるにとって、『アニマシティがそこにある』という事実が、ある種の救済である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
獣人が追い込まれている被差別の象徴として”バス”が出てくるのは、ちょっとアメリカ公民権運動との重ね合わせを感じる。
”公共”交通機関であるはずの乗り物に乗れず、私財を引き出す自由もない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
獣人であることはなかなかに生き苦しく、理想郷への脱出路も悪意で封鎖され、暴力で開放されていく。
夢にたどり着くにしても、銭はいる。
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群衆が暴力へと急き立てられる、獣人への悪意。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
それがどういう経緯で生まれたかは未だ伏せ札だが、デモという(比較的)穏当な形でも、クロスボウと鉄パイプという形でも、それはゴロリと作品世界に転がっている。
当然、獣人も対抗手段を用意する。こっちでも繰り返された、生っぽい暴力史。
大胆に色調を統一し、主線を崩したたカラーリングは、”プロメア”中盤辺り(あるいはその源流たる、マイク・ミニョーラ?)を思い出すが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
光と闇、人間の偽装と獣人の実相を行き来しながら、みちるは新しい生活へと踏み込んでいく。
手渡したマネーは、夢への代価か、三途の川の渡し賃か。
ここで明暗は一端明るい方に転がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
獣人が獣人らしくいられる、建国十年の祝祭。みちるもローブを脱ぎ捨て、獣人としての自分を堂々暴き立てる。
己が己でいるという、最も基本的…だからこそ、町の外では認められない特権。
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それを生み出したはずの市長は祭に浮かれることなく、政治の闇の中、小さな祝福を奏でる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
喜びも誇りもそこにあるが、しかし全てを塗りつぶすほどではない。闇を抜けた先に光はあり、しかし必ず影は追いついてくる。
この行ったり来たりは、一話で終わらず作品全体に伸びる気がする。
『人間の国』たる日本の首長と向き合う時、市長は人間のナリを着込む。それが、政治が駆動するための正装だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
そこには不可逆なアンバランスがある。
ケモノは人を装うが、人はケモノに変わらない。スタンダードはあくまで”人”にあって、”獣人”はそこに”獣”という余分をはっつけたイレギュラーだ。
アニマシティが建国され、ケモノがケモノのままあることが(問題山積ながら)許される前。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
ケモノは人という異物に包囲されながら、どうやって生きていたのだろうか?
”1000年”という永い単位を、大神さんが持ち出してたのを見るだに、結構根が深い問題なのか?
そこら辺の歴史的奥行きはおいおい描かれるとして、今はみちる主観の旅路である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
祝祭の裏側で、仕掛けられる爆弾。金銭を媒介に、人に飼われるケモノ。
みちるは迫りくる破壊を前に、素朴な善意で立ち向かおうとする。
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結局それは窮地を前に無力で、大神に助けられることになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
イヌ科の嗅覚で時間を遡り、事件の真相を見抜く。
ここの表現は『形が変わる』という、アニメーションの根本的な気持ちよさを全面に出して、非常に良かった。
”源・アニメーション”的な表現、意識して入れるよねTRIGGERくん…。
続く三人組とのガン・コンバットも、結構凝った殺陣でビジュアル的には楽しい。赤と緑の、大胆な塗り分けも気持ちいいし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
のだが、『楽園も一枚岩ではなく、当たり前に卑劣と暴力が横行する』という事実を突きつけられ重くもある。
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大神は人間と獣人を相容れぬ存在と捉え、誇りを人に売り渡したケモノの角を奪う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
爪というケモノの証明を振るうほどの価値もない、恥ずべき売獣奴。
そんな彼らも、『角だけはやめてくれ!』と暴力を前に懇願する。同胞を売り渡しても、ケモノであることは大事なアイデンティティなのだ。
剥き出しにされる爪(あるいは、誇りのため潜められる爪)は、みちるが脱ぎ捨てた(あるいは被っていた)コートと同じなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
己が己でいることの、隠蔽と解放。迫害を惹きつける聖痕であり、プライドの源泉でもある私らしさ。
生まれたときから引き剥がせぬ、血に染み付いた存在証明。
そういうものを、多分この話は追っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
そこには悪意と暴力と銭金がつきまとい、暗くて生臭い。
あんまスカッとはしないだろうが、獣人というクッションをかけても、”差別”を扱うのならその重たさは大事だと想う。
市長が楽園を作り、なんとか埋めようとする人とケモノの溝。
その理想は10年保って寿がれ、祝祭の裏庭では裏切り者が吠えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
理想と現実の間で軋む理不尽を、大神さんは迷いなく蹴り飛ばす。人間は敵。人間に飼われるケモノも敵。
しかし我らが主役は、その二分法に異議あり! らしい。
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かつて人間であったが、今は獣人である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
みちるが吠えるアイデンティティが、どれだけ特別なものなのかイマイチ分かんねぇのがちょっと困るけど。
この世界では、獣人と人間は不可逆に分断されてて、その境界を越えてるみちるは特別な存在…でいいんだよね?
みちるの激発が生み出した力が、タヌキらしく”人を化かす”なのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
狼ほど戦闘的でも、鼬ほどの奸智があるわけでもない。
タヌキのぼけたキャラクター性を背負った少女が、山盛りの差別と暴力に満ちた作品世界を、どう渡って変えていくのか。
あるいは、無力な善意は何も変え得ないのか。
そこら辺を地道に、今までの得意手だったケレンを別角度から差し込みながら刻んでいく話なのかなー、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
第一話の陰気でハンディな手触りはかなり好みだし、”差別”という湿って重たい題材を扱うならこの切り口はいい感じだと思うので、上手く持続させて欲しい気持ち。
おそらく意識して、みちる個人の視界に絞ったスタートから、獣人の社会における立ち位置、その歴史をどの程度見せてくるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
覆面をした悪意に追い立てられたどり着いた楽園にも、陰りはある。どっちにしても、社会が付きまとわざるを得ないテーマではある。
そこを適度に重く、そして重くなりすぎないよう、これまたみちるの目を通し当事者性を込めて見れたら、より作品のことが判る気がします。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月15日
人から獣に落ちたみちるが、理不尽な断絶の只中で何を見、感じ、変えていくか。
その歩みに、期待大です。次回も楽しみ。