デカダンスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
バグ矯正施設の名を借りた、この世の果ての牢獄に流されたカブラギ。叛逆の対価は、クソの海で溺れる日々だった。
最悪の毎日に腐らず、天を睨み続ける彼に見えた、一筋の光明。それは予期せぬ再会へと繋がっていく。
さぁ、ニューゲーム開始だ…ッ!
そんな感じの第二章幕開け、理想郷のハラワタに潜るデカダンス第6話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
システムを乱す反乱分子(バグ)と切り捨てられた連中が、あの世界でどういう生き方をしているのか。そこで腐り果てるものはなんなのか。
お綺麗な世界をガバリと切開する、どん底からの再挑戦開始である。
天上と地べた、ギアとタンカー、遊戯と現実。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
二分割されたこの作品はどうしても、思いが公平に通じない歪みを宿している。そこを乗り越える一歩目として、今回描かれた”汚さ”は大事だと思う。
クソを臭いと感じる、あるいは魂を腐らせる毒に壊されていく、唯一絶対の身体性。
それはナツメが腕と一緒にもぎ取られ、埋め込まれたチップによって他人にコンテンツ化され続けているものでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
生き方はおろか死に方、壊され方まで、自分の自由にはならない奴隷。そういう立ち位置が、ようやくカブラギとナツメで対等になった感じもある。
まぁ言うたかて、その身体の構成要素、隠された真実、社会構造の断絶と、乗り越えなきゃいけないものはまだまだ沢山あるのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
クソにまみれてなお腐りきらない意志を、与えてくれたのが誰か。それを描く今回は、断絶と搾取を超えていく一歩目を、確かに踏んだ感覚があった。
カブラギはフギンが望んだスクラップではなく、生かしてバグ矯正施設送りとなる。圧力をかけたのが誰かは気になるところだが…ミナト司令なのかなぁ?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
書き換えてしまったシナリオの先にある、ナツメの赤い血。悪夢にうなされ流されたのは、悪臭渦巻くこの世の果て。
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世界を残酷に律し、娯楽を搾取するシステムが天上の神に擬されているのは、見ていて分かりやすいものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
高い所から落とされ、泥にまみれて死んでいく。堕天のモチーフは、後にクソに押しつぶされる最悪の死に様として、もう一度顔を見せる。
しかし天を浮遊しているのが、そんなに上等だろうか?
地べたに足を打ち付けて、一歩ずつ進む。システムに保証されない自由と危険を、己のものと引きつける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
今の体制では許されない叛逆を、人間の証と受け止めたからこそカブラギは落ちる。
そんな物語が、フワフワとした反重力戦闘を描いているのは、個人的には結構面白い。
軌道上に高く浮かぶ、神の居城。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
そこでは清潔に切り捨てられていた”排泄”が、バグ矯正所では主任務になる。
明るく朗らかな歩調でケツに燃料をツッコみ、電撃を浴びせ心を痛み付けるラーゲリでは、クソが降り注ぎクソを噛み砕く日々が、心を腐らせていく。
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ブーブー文句をいうだけ(そしてあっという間に、クソまみれの現実に押しつぶされ文句も言えなくなる)のモブとは、カブラギは最初から一線を画したポジションに置かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
ケツの穴を侵され、クソの始末で日が暮れる。尊厳はドン底まで落ち、希望はどこにもない。まさに牢獄、この世の果て。
サイボーグをクソまみれにすることで、あるいは犯される身体を擬似的に獲得させることで、そこに”人間味”を与えていく話運びは中々フーコー的で面白かったりする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
自分の性をどう使うか、あるいはクソをどこでして、誰のクソを始末するかという、最も根源的な権利を、この糞便学的な描写は彫り込む。
誇り高く死ぬ自由も、経済に関与するやりがいもない、『奴隷がぐるぐる棒を回す仕事』の最新版。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
端っこでやり過ごしていれば、なんとか生きていける。そういう奴隷根性は、形だけの警告の後降り注ぐクソに押しつぶされて、あっという間に否定される。
過酷で劣悪な環境は、自然人間の条件を暴いていく
カブラギが差し出された手は、戯画化されたサイボーグ世界には存在し得ないリアリティで描かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
それはタンカーたちの世界で差し出された、生きるものの手。諦めないものの手だ。
そのリアリティは、すぐさま消えてしまうけども。
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それと同じものを掴んで自分は落ちてきたのだし、どうにかそこに戻らねば、生きている甲斐もない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
そんなことを思いながら、カブラギは己の手を握る。
リアルに描かれた”あっちの世界”と、描線は違うとしても。たしかに同じものを、自分は見つけたのだ。
それが、叛逆の狼煙になる。
狂気が渦巻く、奴隷たちの寝床。そこで出会った、片足を損壊したクソ酒売り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
どこにも出口がなく、未来もない現実に適応して、一瞬の夢を見ることにしたサイボーグ・サルコジ。
それはカブラギ自身の、そして機械の腕を持つナツメの陰画だ。
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システムが強要するものを諦め、差し出されたクソで酔っ払う。地の果てに追い込まれて、デフォルメされた腐臭に満たされても、ここにあるのは天の街を取り巻くどんずまりと同じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
システムが用意する一瞬の酩酊に、身を任せて歯車で居続けるか。掌に掴んだバグを、握りしめて立ち向かうか。
立ち向かった結果がこの糞溜めなわけだが、しかし掴んだものを離さないカブラギのほうが、光には近い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
その諦めない生き様に、サルコジも何かを感じ、光に近づいていく様子がねぐらでは描写されている。
燃料切れで死ぬことすら許されない、奴隷の現状。
それを諦めない強さ。クソ酒を飲まない強さ。
カブラギがナツメから受け取ったのと同じものを、今度はカブラギが知らず放つ立場になっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
そしてそれだけが、どん詰まりから人を解き放つ…と、語る話になるのか。
ここまで書かれたシステムのスケール、抑圧と同時に保証するものの大きさを思うと、精神論一本で突破するのは、中々難しそうだ。
そこに地歩を築いていく第一歩として、今回のクソ地獄のたくり祭りもあるわけだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
ガドルが”生産”される様子を描き、つかの間の平和を謳歌するデカダンスを切り取る。話は、まだまだ終わっちゃいない。
鞭で虐待されるガドルと、可愛がらえるパイプの対比が残酷。
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つーか家畜として資源として、娯楽用の生贄として”生産”されるガドルを見てしまうと、コイツラぶっ殺して世界平和で自己実現っつー方向には、どうも転がりそうもなく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
タンカーもギアもガドルも、巨大なシステムの犠牲でしかないもんな現状。
奴隷 VS 奴隷! どっちが勝っても痛み分けッ!!
まぁそんなクソシステムに一発入れて、束の間とは言え平和を呼び込めたのは、カブラギの叛逆無駄じゃなかったね、という感じだけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
でもあくまで気休めで、システムは復旧し戦いは続く。よりエクサイティングに、より麻酔効果を高めるように、闘争は苛烈になっていくだろう。
そこに流れる赤い血は、カブラギが地獄に落とされて気づいたように、嘘ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
それを確かめるために、もう一度”現実”にログインする。たどり着いたのは、昔なじみが管を巻く監獄の果てだ。サルコジの戯けたアクション、見てて面白いな…。
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システムの矛盾を突き詰めたこの牢獄で”王”になったドナテロは、無頼を気取りつつシステムに取り込まれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
死をかけたクソの上の死闘は、あくまでシステムが用意した最悪の遊戯…反転したデカダンス、というわけだ。
死のスリルだけが、終わりのない退屈を終わらせてくれる。
それは天の上の街でも、クソまみれの地獄でも変わりがない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
そしてカブラギは、そういうところから抜け出すべく、魂の種火をもって真っ直ぐ、巨漢を睨む。
やっぱ”眼”の演出に力入れてるアニメだな、サイボーグ側も人間側も。
カブラギとドナテロの闘いは、ガドルとの”ゲーム”がそうであったように三次元的に展開する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
ここに落下を防ぐ反重力はないけども、サイボーグはゲーム的身体ではなくコミカルな”生身”でもって、死亡遊戯にしのぎを削っていく。
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カブラギにとってそれは、あくまで目的を掴み取るための途中経過でしかない。ゲームそれ自体が目的にはなりえないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
しかし地の底で腐っていたドナテロにとって、これが世界の全てである。
何もかもが退屈しのぎ、死のスリルだけが存在証明。そういう生き方しか、サイボーグには許されない。
『そうじゃない』と、カブラギは旧友に命をかけて伝えていく。剥き出しの頭蓋を守る巨大な…マッチョでファリックな角を奪い取ることで、カブラギはドナテロの魂に火を入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
『続きは地獄でだ!』というドナテロの言葉は、命がけのゲームの相棒と、カブラギを認めたラブコールに聞こえた。
ドナテロにとって、ゲームの終わりはすべての終わりだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
しかしカブラギにとっては、全ての始まりでしかない。
それを証明するように、カブラギは背中のブースター…サイボーグだからこそ獲得できた特別な力で、クソの海から再誕する。
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どん詰まりに焼け付いた魂を、死闘の中受け止めてもらったことで、ドナテロも腕の銃(ナツメの義腕との対応に注目したい)をぶっ放し、サイボーグ特有の機能を回復させていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
胸に詰まったクソを吐き出し、ゲームじゃ使えない力を取り戻す。男たちは、お互いの炎でサビを落としたのだ。
そんなやり取りからターキーが少しのけものにされてるのが、見てて面白いのだけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
ターキー、卑劣なサディストではあるんだけどドナテロに向ける感情はマジのマジで、カブラギと二人で”男”になっちまった想い人に、むっちゃ拗らせそうな感じはある。
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ミナト司令に死んだマイキーも合わせて、男たちの巨大感情がこの世の果てで渦を巻くブロマンスめいてきたけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
こういう心の熱量、関係の火花がバチバチ言い出すと、コミカルな外装関係なく渋めのいい匂いが漂ってくるので、ドラマの力は偉大だな。
地の底から放つ、叛逆のNEW GAME。アバターを乗り換えた先に待っている新たなシナリオは…というところで、次回に続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
ふーむ…面白いッ!
コミカルなサイボーグ側だからこそギリギリ成立する、クソにまみれた最悪のリアリティ。糞便以下に貶められた尊厳を、それでも燃やす叛逆の狼煙。
『狼のクソ燃やすと垂直に煙出るから、”狼”煙っていうんだよ』というクソトリビアをぶん投げつつ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
ケツにクソを突っ込まれ、クソ喰らう最底辺の奴隷として、サイボーグを書き直すお話であった。つーか今回”クソ”って言いすぎコバヤシくんッ!!
ハイすいません。糞便文学好きなんです、アルトーとか。
ナツメの生き様に再燃したカブラギの魂は、バグたちを巻き込みながら燃え広がる。熱血のradiatorで温められた思いは、世界を覆うシステムに突き刺さるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
二章、どうなるか相変わらず読めねぇ。だがこのアニメ、”デカダンス”…おもしれぇぜッ! 次回も楽しみッ!!
追記 糞便への忌避感と、裏腹な高揚感、生々しさ。これを活用して作中にリアリティ出してくるのは、結構仏文っぽくて好き。フランスのインテリ、ウンコ好きすぎなんだよなぁ……。
クソの生々しさと身も蓋もなさで、どうやっても身体性が欠けがちなアニメーションにフィジークな感覚をねじ込んでいくという意味では、”さらざんまい”の後継作ともいえるか、デカダンス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
ウンコする存在として、二次元の嘘を塗りたくる。それもまた、演出闘争の立派な武器だと思う。
追記 クソまみれの存在としてサイボーグを同質化しようとしても、世界の構造自体が彼らに這い沿わせる”原罪”みたいのがある。
システムの奴隷でしかないけど、同時にシステムの一部であり養護者である彼らが、システムの外側にいる被搾取者(否受益者)相手に人間として向き合う時、何を用意しないといけないのか。ここの飛翔は、倫理的にも物語構築的にも、非常に難しいジャンプになると思う。
デカダンス追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
昇るためには堕ちなければならず、天を壊すためにはその存在を知らなければいけない。
前者を象徴化するべく今回、カブラギは地の底のクソだめに(二回)落ち、背中のロケットと違法アクセス基地から飛び上がっていくことになる。
となれば、ナツメもまた飛ぶためには自分が地べたに叩き落されているのだと、透明な天が世界を覆い窒息させているのだと知る必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
極めて残酷な真実をナツメにどう教え、その衝撃で折れさせず、飛翔を決意させるか。
カブラギが飛んだのは、ナツメがいたからだ。さて、ナツメが飛ぶためには?
上位種として(タンカーにとっての)現実に”ログイン”してたカブラギが、どれだけ生の実感と反骨を掴んでも、その存在自体が不公平なギャップを抱えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月13日
クソにまみれ、地べたに落ちればそれは埋まるのか。生来の違いにどう橋をかけて、断絶を飛ぶのか。
今僕の眼目は、そこにある。どうなるか。