憂国のモリアーティを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
”モリアーティ”が夢見る、犯罪による英国改革。
その最初の舞台に選ばれたのは、方舟の名を冠する豪華客船。
移動する密室、圧縮された階級の中で、狩人気取りが獲物に変わる。
陰湿な罠が閉じられ、残酷喜劇(グランギニョル)の幕が上がる。
さて探偵、貴方の配役は?
そんな感じの第1クール折り返し、色々転換点になりそうな方舟の残酷劇前編である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
演出された貴族犯罪による、英国の意識改革。
ウィリアムの憂国が一歩先に進み、人狩り気取りの貴族を罪に追い込む裏で、宿命のライバルとの邂逅が果たされる。
結構てんこ盛りの回だった。
ここまでウィリアムはあくまで他者の願望を手助けするコンサルタントに、遠く冷たく徹している感じがあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
しかし『あくまで手段』と手にとったはずの犯罪は、金色の堕天使の手を確実に汚し、彼は埒を超えていることに自覚のないまま、悪徳の坂を滑り落ちていく。
その危うさ、ろくでもなさ、傲慢をやっぱりこのアニメは、かなり遠くからじっくり見据えつつ、一味の華麗な犯罪を切り取っているように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
それが正当化される手段なのか、目的化していく矛盾なのか。
ヒリつくような自己矛盾と破滅の予感をスパイスに、残酷は踊る。
その歩みの大事な羅針盤になりそうな、”シャーロック・ホームズ”との遭遇。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
今回の事件をウィリアムがどう手繰るのかと同じくらい、名探偵がそれをどう認識し、”モリアーティ”がどう利用するかも気になる所だ。
何しろ、ホームズ・パスティーシュだからねこの話。
『ホームズを原案にした漫画を原案にしたアニメ』という多重のネジレを、解消しようとしない冷厳な視線が、”モリアーティ”の傲慢と残虐…人として根源的な愚かさと業をどう描き、あるいは裁くつもりか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
僕の興味はそこにあるので、今回の犯罪スケッチを見、その先を想像するのはとても興味深かった。
貴族が腐りきってるから、炎の決意があるから、麗しい絆を持ってるから、あるいは美青年で退廃的だから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
そういう言い訳で彼らの悪行を見逃そう、という気配が薄い所が、僕がこのアニメの好きなところだ。
これが勝手な思い込みなのか、匂わされた必然なのかを知る意味でも、最後まで見ないとなぁ…。
というわけで、ノアティック号の事件は赤い殺意から幕を開ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
エンダース伯爵は狩場に人を追い込み、殺戮に舌鼓を打つ人面の獣だ。そんな彼が、豪華客船という出口のない場所で、ウィリアムの蜘蛛の巣に絡め取られる。
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狩るものが狩られていく悲惨と滑稽は、伯爵の殺害手段に既に予告されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
上位種と思い上がって、他人の命を踏みにじるなら、お前も狩場に追い込まれて死ね。ここでも、モリアーティの同罪思想が顔を出す。
全ては用意され、仕込まれた脚本と知らぬまま、演じられる残酷な喜劇である。
しかし伯爵が”モリアーティ”の鏡としても置かれているような、ザラツイた感覚もまた覚える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
他人の要不要を判別し、心理を操り人を殺す。犯罪人形劇の繰り手が、ネメシスの測りに乗っからない理由は、やはりどこにもない。
いつか、猛烈な反動をその実に浴びるのではないか。
否、浴びろ。
そういう薄暗い悦楽とともに、僕は”モリアーティ”の計画を聞く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
腐った貴族の腸を、公衆の面前に引きずり出し、その血みどろに石を投げさせる。
犯罪による国家改革に、アルバートだけが動じない。その衝撃は、とうの昔に彼を貫いている。
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ここまでは法が裁かぬ悪を殺し、報われぬ思いを代理してきた”モリアーティ”であるが、前回あたりから歯車が狂いだしてる感じがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
誰かの犯罪は彼らの犯罪となり、その上で自分の手を汚さず、悲惨を弄び目的を達成する危うさが目立ち始めた。
まぁ、邸宅炎上の時点で周辺被害そこまで気にしてないが
階級構造の転覆という目的のためなら、どんな傲慢も悲惨も受け入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
随分な御高説に基づいた倫敦劇場化計画と聞こえるが、彼ら自身が『貴族を狩る貴族』として己を特権化している現状に、はたして自覚的なのか。
残酷も傲慢も、忌み嫌うクズ共と似たりよったりではないか。
悪虫を喰う毒蛇と、人倫から外れ、悪の最も悪たる制御不能性を自覚しながら突っ走っている気配もあるし、そこから美麗に身を躱してる…と、自分は思っている感じもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
果たして”モリアーティ”は、神も恐れぬ己の不遜をどう評し、どう裁くか。知りたいが…描かれるのは当分先かな?
物語の倫理が彼らの業をどんだけ飲むのか、まだまだ判らん部分もある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
踏みつけにされる存在を開放したいから始めた悪行が、気づけば誰かを踏みつけにしてる矛盾をつくのか、つかないのか。そこも気になっている。
惡の華が咲き誇るのも、天意に打たれて萎れるのも、どっちも面白そうだが、どうなるか
ウィリアムの劇場計画は、『善なる目的は、悪なる手段を肯定するのか』『悪なる手段は、善なる目的を決定的に瓦解させるのではないか』という問いに、直接つながっているように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
まぁ、人殺しで人が笑える国作るってのは、根源的な矛盾よな…それ以外を選べない業が、彼の黄金の輝きを生むのか?
なぜ、犯罪なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
『クソ貴族を天誅してスカッと爽やか!』で終わらせるには、このアニメの筆は陰湿で怜悧なので、そのうちその中心議題も取り上げるのだろう。
犯行手段には、人格が出る。”モリアーティ”が選ぶしかなかった社会変革の凶器を、徹底的に掘って欲しいな、と思う。
貴族が特権的に、人混みを避けて乗り込む方舟。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
そこで得られるはずだった優越は伯爵の手を滑りぬけ、彼に異常なストレスを生んでいく。殺人に至るほどの苛立ちは、全て仕組まれた罠だ。
偶然を装い差し出される、微笑みの奥、冷えた緋眼。
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傀儡師は冷たく糸を引き、グランギニョルの初演を操っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
伯爵様のメンタルが”北斗の拳”のモヒカン並で、基本線としては犯罪神拳で悪漢退治なんだなー、と再確認。
”強敵(とも)”と呼べる互角の犯罪者、あるいは探偵も、そろそろ顔見世する頃合いか。
闇の中で編まれる脚本に気づかぬまま、卑劣漢/脅迫者/犠牲者も踊る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
所詮クズの命、花と散って劇場を飾れ。大量殺人者が、よくもまぁ他人の命の値踏みしますなぁ…。
こういうところの強調が、(アニメだと)しっぺ返しされそうな予感の源
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綺麗な顔した禽獣以下、天使の顔をした猛獣。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
”モリアーティ”は軒並みクズで、しかしクズの話を見たくないかと言われたら、彼らがクズではない部分も含めて良く書けているので、タップリ見たい。
『自分かなりヒネた精神で、この作品見とるなぁ』と、感想書きながら再確認しておるね…あんま善くないか
踊る大舞台の裏で、果たされる邂逅。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
一瞬の観察から真実を射抜く合理の怪物が、闇に微笑む黄金の蜘蛛と出会う。
シャーロック・ホームズ。一般的なイメージよりも、結構がらっぱちか。髑髏の指輪がよく目立つ。
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よくよく考えると穴がある推理を、ハッタリで押し通す原作再現引っくるめて、なかなか面白い”ホームズ”だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
秒速の人間観測返しで、スルッと一本取替されるのもご愛嬌。
知性の怪物を”モリアーティ”は見逃すが、さて、豪華客船の殺人事件に探偵はどう絡むのか。
というか、絡んできた後、ウィリアムがどう評価し、利用するのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
ホームズ聖典を逆しまに照射するこの作品にとって、そこが結構大事だと思う。劇場計画の表の顔として、その”才”を取り込んでいく形かなぁ…。
ワトスンが語るホームズ活劇、を煙幕にするモリアーティの憂国、か…。多層メタ構造。
それは事件の後のお楽しみとして、華やかな表層から伯爵は取り残され、仕組まれた苛立ちをつのらせ続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
彼が貴族の楽園と思い込んでいた場所はその実、開かれた社会の縮図であり、下層民も上層民もないまぜに、肩を触れ合わせる。
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それがロマンスと感動に繋がってたのが”タイタニック”だったりするのだが、この方舟の中では狩人気取りが狩られ、脅迫者気取りが無残に殺され、捕食者が蜘蛛の巣にかかることとなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
悪徳の道具を、ことさら美麗に飾り立てる倒錯。前回の阿片パイプと、似通った金ピカの醜悪。何もかもが転倒している
『こんなはずじゃないのに…』という違和が殺意に繋がるところは、アルバートとも似てるなぁ、とも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
長兄は殺して湯悦に浸り、死体を踏みつけに煙草を飲む分かりやすい悪徳はやんないけど。
でも、後悔もしてない。
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弟の犯罪計画に微笑んで乗り、家族の血の上に屍を積んで、国を変えんと企む大望。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
それは常に、伯爵の卑近な衝動主義、他人を尻に敷く傲慢と鏡合わせ…なんだと思う。
ジゼル…貴族アルブレヒトが村娘ジゼルに、身分を偽って恋と戯れたことで生まれる悲劇と奇跡。
死を超えて報仇の精霊・ウィリとなったジゼルはアルブレヒトを死ぬまで踊らせ…朝の光がそれを遮る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
この豪華客船で踊る”貴族”は、そら伯爵だろう。愚劣で、傲慢で、醜悪な行いの報いを受ける。朝の光は差し込まない。
んじゃあ、その脚本を描く”モリアーティ”はどうなんだろう。
全ては計算通り、死ぬべきクズは殺され、クズを殺したクズは蜘蛛の巣の中に落ちた。初演は華麗に踊るだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
だが、”モリアーティ”が殺す貴族、その必要経費たる様々な血(あるいは返り血)が、いつか報いを求める…気がする。
その時、救命の朝日がさすか、ささないか。まだ、”ジゼル”の幕は開かない
という所で、洋上を行く密室の殺人、前半が終了である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
どーも主役である”モリアーティ”に、自分が気を許していない…そうなるよう、アニメが画面を作ってると感じているので、ヒネて冷えた見方になるね。
でもアニメだけ見ると、やっぱ生きてちゃいけないクズとして主役書いてる気がすんだよなぁ…。
モリアーティは手段と選び取った”悪”を、卓越した知性で制御しているように見えるけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
倫理が介在しない(あるいは、それを徹底して考え抜く知的営為を放棄/曲解した)必要悪は、必ずそれを扱うものを汚していく。
傲慢なる犯罪計画は明らかにやり過ぎで、しかしその過剰こそが彼の業であろう。
そうなるしかない愚かしき必然が、汗をかかない美青年の華麗なる犯罪から、上手くこぼれてくると好みかな、という感じがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
必死さを見せたら、蜘蛛の巣の主などやってられないだろうから、しばらくは冷たく傲慢な金色の堕天使顔が続くかな。それも好きなんで良いけど。
そこに名探偵、冷や汗一つかかせられるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月18日
ホームズが伯爵の事件(に関わる”モリアーティ”)をどう推理するかも楽しみです。道化か、怪物か。どう描くかなー。
人間心理を追い込む、洋上の密室。悪魔の脚本はどう踊り、なにを見せるか。
次回も楽しみですね。