裏世界ピクニックを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
怪異が彷徨く奇怪な廃墟、裏世界。
内向的な大学生・空魚はそこで、行方不明になった友人を探す少女と出会う。
この世ならざる異界の誘惑、出逢ってしまった不思議な相棒。
空魚の奇妙で危険な日々は、かくして幕を開けた!
そんな感じの、百合! 廃墟! 怪異! 拳銃! オタク(特大主語)の好きなもの全部盛りアニメ第一話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
モチーフに選んだものに統一感を出すセンスと手腕が鋭く、ゴロゴロ転がる状況も楽しく見れた。
関係構築と変化、怪異と冒険、揺れる情緒。
色んなモノが見れそうで楽しみである。
原作未読ながら好みのジャンルであり、半径5mでの評判も上々の上。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
さてどうアニメになるか、と思っていたが、監督・シリーズ構成・音響監督・音楽プロデューサーを兼ねる佐藤卓哉のセンスが随所に行き届いて、独特でまとまりのある第一話となった。音響、キモくていいね。
特級の顔立ちをした”陽”の女に、生来の”陰”の女が人生滅茶苦茶にされていくバディアクションとしても。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
おぞましくも美しい廃墟にさ迷い、禁忌に隣接しながら生き延びる冒険譚としても。
正体不明の怪異のわけの解らなさを、ゾクゾクと楽しませる怪談としても。
色んな角度から楽しめそうだ。
というわけで、物語は女と女が出会うところから開始である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
地面にポッカリと口を開けた会陰から、水にまみれて空魚は再出産される。産婆役は金色に輝く、ゴージャスで無茶苦茶な女。
女と女がこの出会い方して、黒担当が”勝てる”わけないんだよなぁ…。
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俺が土俵際で百合相撲を見守る審判委員だったら『五輪砕きの形…勝負ありッ!!』って裁定してるけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
ウジウジと影に潜み後ろ向きに歩く空魚と、その手を引いて前に出まくる鳥子の関係性はこのファーストコンタクトから、既に見えている。
唐突で、しかし気持ちよく横っ面を張る。好きな出だし。
『この話はこういう話、コイツラはこういう連中、ここは綺麗な地獄』と、初手で説得力込めて見せてくれるのはありがたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
廃墟探訪モノでもあるので美術の仕上がりは大事だと思うが、裏世界のヴィジュアルは大変力強く、人の絶え果てた静寂と、その隙間にうごめく妖しさが息づく。
霧と底なしの穴。水気に満ちた世界は境界の向こう側であり、ひっそり人を食って表には返さない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
そういうヤバい所に陰気な女を引っ張り込み、また救い出す光の女。鮮烈な出会いは、二人が陰陽相補の関係であることをよく見せてくれる。
なら鳥子も見た目通り、輝きだけに満ちてるわけではないだろう。
影の女たる空魚の中にある光、彼女を暗い水底から引っ張り上げた鳥子の影。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
ここらへんが入り混じりだすと、なかなか面白くなってくると思う…し、魚蹴先生なら確実にネトネト混ぜるだろう。”期待”だッ!
出会いの第一声が『オフィーリアかと思った』なのも、スカしてていい感じ。
それは鳥子(が代表する作品全体)のインテリジェンスを見せるだけでなく、この話が狂気にまつわる物語になるという、一つのサインだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
父の復讐に取り憑かれたハムレットの対応により、恋人オフィーリアは狂気に堕ち、溺死する。
亡霊という怪異と、伝染する狂気。この話と似通った古典への言及。
ハヤカワレーベルで流通するこのお話が持つ、少し浮世離れした雰囲気をどうアニメに練り込んで、楽しませてくれるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
そこら辺もまた、楽しみの一つである。
ゲロは吐くし鉄砲は撃つし、サタスペっぽいのは第一話で分かったぞ! かなり好みだ!!(なんでもTRPGで分解マン)
というわけで、運命的に出逢ってしまった二人は”視る”ものと”触る”ものに別れ、意識しないままお互いを補って怪異を祓う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
くねくねがどんな存在で、どんな因果が背景にあるのか、一切説明がないのがネットロアっぽくて良い。別に清めの塩じゃなくても死ぬし。
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空魚を水から引き上げた鳥子の足元は、ひどく危うい。”鳥”たる彼女にとって、安定した地上は居場所ではないのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
そこに手を差し伸べ、危ういところですくい上げるのが、水の住人たる空魚の役目なのかもしれない。
彼女自身も名前に”空”が入るから、鳥子と同じ地平にいれるのかな?
つーかこの金髪華やぎ娘、どうも別の女を探して裏世界に入り浸ってるっぽいので、確実に拗れるだろこれ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
百合五輪砕きをキメられてしまった空魚の人生と情緒がメッタにされるのは、まぁ確実として。
その滅茶苦茶力が、別の女(ひと)を見てる鳥子にも平等に伸びて、相互メッタにされて欲しい。
そんな希望を込めつつ、裏世界の冒険は奇妙なプライズを回収し、なんとか現世に戻ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
表と裏の危うい境界、それを踏み越えるヤバさ。
鳥子の『お宝回収』の即物性は、タフな浅はかさと、震えるだけの犠牲者じゃない強さを印象づける。
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境界に立つボロ部屋にも独特の風情があり、裏世界の澄んだ静寂とはまた違う魅力が匂い立つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
後に協会となるビルもそうだけど、ある意味トマソン的な視線というか、ありふれた日常にある”異界”を切り取る筆が、色んな所で元気だ。
境界の話なので、そういう視力はマジ大事。
ここでも空魚はドア越し異界を”視”て、鳥子は銃に”触”る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
初回からチャカが顔を出すきな臭い百合に大興奮であるが、観察と行動という側面でも、空魚と鳥子は相補的である。
異界の謎に向き合い、生き延びる。ヒトの身の丈を越えた脅威に震えるだけでなく、ちゃっかり何かを持ち帰る。
そういうサバイバルアクションの楽しさ、バディの頼もしさが、陰キャが陽キャに引っ張られるだけではない平等性、そこから混ざり合う関係性の器として、上手く機能しそうなのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
今後キャラや世界が掘られていくなかで、何がお互いの空虚を埋め合うのか。二人の関係を見守るのも楽しそうだ。
というわけで現実に帰り来て、しかし空魚が行き交ってしまった怪異は収まらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
閉塞して孤独だった自分の世界に、ズケズケと踏み込んでくる華やかな女。
鳥子は”くねくね”とは別の角度から、空魚を異界に誘っていく。
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青く染まる瞳と指先のように、異界は現実に侵食し、変化を促す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
消えても悲しむヒトなどいない空魚の孤独は、マジでグイグイくる鳥子と出逢ってしまったことで侵食され、変化していく。
そんな日常的な怪異、出会いと運命という冒険が、表世界でも展開する。まー”上”取られっぱなしだがな…強すぎる。
鳥子は恐怖のネジがぶっ壊れたただのクレイジーではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
一週間共犯者候補を観察し、その資質を睨む慎重さもある。そうまでして異界に踏み込まなければいけない、理由もある。
パッと見の印象を超えて、キャラの内面、世界の奥行きに触れていく。
このアニメを見ること自体が、”裏世界ピクニック”か
さておき、行き交ってしまった女達は地下の闇をくぐり抜け、エレベーター操作盤をヴィジャーボードにして、裏に続く扉を開けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
水、地下、扉、電子化された階段。
境界の描写が山盛りなのは、怪異譚として正統で見応えがある。
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ここでも境界を先行して乗り越え、それを操作する特権は鳥子にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
物怖じせず進み、手で触れて動かす。それが彼女の特質ならば、陰気な空魚は待ち、見つめるだけか。
陰陽の境界もまた、見た目ほどハッキリしたものではないことを物語は示していく。
通常ではありえない上下動を繰り返す、少しレトロなエレベーター。それが駆動する原理を、”触る”役である鳥子も理解しているわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
それでも進む。
天と地を繋ぐ危うい梯子に、震えず足をかけて先駆ける。
その真っ直ぐな強さに、動く心がある。
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『も…もうズブズブのハチャメチャになるしかない…』と、秒で解らせる構図である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
普通ではありえない異界探検を二人で乗り越えていく中で、二人は相棒…というより、世界で一番親密な”共犯者”になっていくのだろう。
足りない部分を補い合い、相手に学び少しずつ変わって。
ジュブナイルでもあるか
ならば試練があるのは当然だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
二度目のくねくね遭遇で二人は適切に”視”、適切に”触る”ことが出来ない。お互いが背負う役割が何なのか、一度目は偶然と運命が補ってくれた知恵が足らない。
それを知ろうと怪異を見過ぎれば、ヒトデナシの死体に変わる。
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それでもなお、見て知ることが怪異を乗りこなす…ことは不可能としても、その法則を自分に都合よく利用するためには必要なのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
空魚は審神者として、正気と狂気の境界ギリギリまで瞳を行使して潜り、世界の真実に触れていく。
溺れるようなら、鳥子が殴って連れ戻す。
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視ることと、触ること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
知ることと、行動すること。
敵を撃って殺すとこと、味方を護ること。
潜ることと、戻ってくること。
空魚と鳥子が異界で果たす役割は、常に境界の縁を危うく歩き、そこから帰還することで成立する。
正反対の二人だからこそ、異界巡りが成り立つ。
この凸凹噛み合うバディ感は秀逸で、彼女たちを主役とする物語も楽しく駆動するだろうな、という確信が得られた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
鳥子のキャラデザが『生来の華を持つ、生まれついての”陽”です!”』という説得力に満ちてて、空魚とキッチリ間逆なの、とても良いと思います。
背景も含め、シンプルな”絵”の強さがある
ヘンテコ女と出会って潜り抜けた、危険な裏世界ピクニック。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
鏡の結晶に反射するのは、美しすぎるオレンジの空。
そこが二人の、不思議な青春の舞台だ。
生き延びるだけで満足せず、むしろ前のめりにマネーつかもうとするタフさが、大学生主役にした意味あって好き。
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還る場所も悲しむ人もいないと孤独に身を投げていた空魚が、隣りにいてもいいかなと思える人と出会えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
それが裏世界の冒険がくれた一番の宝物…なんだろうけど、二人に漂う適度な浅はかさが上手くクサさを抜いてて、食べやすい感じに仕上げた。
硝煙とゲロとマネー。百合をかき消す現世の匂い。
それはとても心地よく、この異様な世界で育まれる二人の関係を彩ってくれるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
眼と手。認識と行動。
比翼連理と出逢ってしまった二人が今後、どんな異界に潜っていくか。どんな関係を作っていくか。
醸し出された尊さを、どんな生っぽいダイナシ力で蹴り飛ばしてくれるか。
今後の物語が、とても楽しみになるスタートだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月5日
『これは境界の話だ』と、レイアウトとモチーフが一生喋ってる第一話なの、最高に良かったな…。
表と裏、陰と陽、貴方と私。その境目は危うく溶け合い、確かに分かたれ離れている。
女二人の陰陽交差、異界にどう転がるか。
次回も楽しみですね。