スーパーカブを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
親なし、趣味なし、金もなし。
何もない灰色の世界を泳いでいた小熊は、ある日普段の通学路を逸れてスーパーカブと出会う。
三人の命を啜った魔の機械は、小熊に新たな世界を教える。
かからないエンジン、窓越しのワクワク、新たな色彩。
小さな原付が、大きな世界を連れてくる
そんな感じの本田技研全面協力! ないない少女が”全世界の足”とともに、己の青春を踏破していく物語の開幕である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
大変良かった。
非常にストイックで美麗な絵作り、シャープでソリッドな演出の中に、小熊がカブと出会い何が変わったのか、鮮明にわかる話運び。
静謐だが退屈ではない、彼女の人生をクローズアップ&スローモーションで覗き込む面白さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
北杜市の情景も大変綺麗で、しかしその美しさで全部を飲み込んでしまうわけではなく、小熊が飲み込まれている灰色の虚無もしっかり描く。
だからこそ、カブと歩く世界、カブと変わる小熊が良く見える。
ドビュッシーの旋律も心地よく、小さく静かな変化の物語が空冷4ストロークSOHC単気筒で動き出す気持ちよさが、スッと胸に届く第一話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
PVでメッチャ期待値上がっていたのですが、コンパクトで猛烈な実感がドラマに乗っかってて、上げたハードルしっかり飛び越えられました。カブは空を飛ぶ…ッ!
物語は非常に静かに、スムーズに滑り出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
北杜市の風景は大変美麗で、山肌に映える朝日が眩しい。川面は穏やかに流れ、世界は輝きに満ちている。
そう、世界は青信号で小熊を待っているのだ。
しかし、ないないの女の子はそうは思えない。
(画像は"スーパーカブ"第1話より引用) pic.twitter.com/LVhi8SMiii
小熊の心境、状況を反射してこの後世界は薄暗く、モッタリと切れ味が悪く転がっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
BGMは絶え、モノトーンでサイレントな情景が彼女の現状を語っていくことになる。
しかし主役にカメラが寄る前に、作品はまず世界の美しさを切り取った。
それは、小熊の思いとは関係なくそこにある。
事情はわからずとも両親もおらず、朝食も切り詰めた小熊のミニマムな世界が、この広く輝く世界と接合する瞬間を、このアニメは追いかけていくのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
小熊がカブに出会うまでの荒廃…というには、あまりに抑圧の効いた静寂。
(画像は"スーパーカブ"第1話より引用) pic.twitter.com/TV62cTo9xC
変化も喜びもなく、恨み言も哀しみも表には出てこない、のっぺりと進む日常が移り変わるまで、時間をたっぷり使ってカメラは小熊を追う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
自転車でひーこら言いながら坂を登る、額の汗。
なにもない日常を諦めたように乗りこなしながらも、何処かで変化を期待しているその表情。
小熊は自分を語らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
ないない少女には、己が感じていることを受け止めてくれる相手もいないから、喋るだけ無駄だ。
しかし、何も感じていないわけではない。灰色の世界が、変わってほしくないわけでもない。
何処か遠く、力強く自分の足で進める機械を、無いない少女は待っている。
流し込むように昼食を終えて、いつものように帰ろうとした時、原付に乗ったクラスメートが彼女を追い抜いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
多分それは何度も繰り返された当たり前の光景で、追いつけないのは当然と諦めてきた道なのだろう。
しかし小熊は頬を膨らませ、その道を進まない
(画像は"スーパーカブ"第1話より引用) pic.twitter.com/2n1UUP23fd
負けたくないと、追いつけない惨めさを味わいたくないと揺れる心が、ひどく乾燥した日々の中まだ息をしているのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
そういう心情を、小熊は語らない。
しかし細やかな仕草にしっかり宿って、彼女がないないな暮らしの中で息をしていること、その心臓が動いていることをアニメが教えてくれる。
普段と違う道を進んで出会った、小さなバイク屋。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
何処へでも行けるきっぷは高価で手が出ないと、諦めかけたところで差し出された、一万円の小さな原付。
それと出会った瞬間、鏡は青空を反射し、世界は色彩を変える。マジで緑の”冴え”がチゲー!
(画像は"スーパーカブ"第1話より引用) pic.twitter.com/8ij699zpmZ
ないない少女が偶然であった、新たな”私の足”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
それにまたがった時、彼女の世界に色が乗り始める。その予兆のように、バックミラーに映り込む空は青く高い。
元々青かったのだが、カブの視界を借りることで小熊はその高さに気付く。走りながら、自分を確かめながら気付いていく。
そういう予感が、未だナンバープレートも免許もないカブには満ちている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
当たり前の生活に埋め込まれた、小さな苦労と変化。その確かな手触りを一個一個手彫りするように、事態は静かに、しかし心地よく転がっていく。
微かな起伏だが、確かに話の盛り上がり。
(画像は"スーパーカブ"第1話より引用) pic.twitter.com/PlGEod3cb5
それを撫でていく手触りが、優しく力強く大変良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
もっとまったり雰囲気形で行くのかなー、と思っていたが、コンパクトに課題と克服を日常描写に埋め込んでいて、見ていて『頑張れ!』と言いたくなる変化がちゃんとあるのは良い。
バイク屋のオジジが、優しいんだけど優しすぎない火加減なのも良い。
オジジがメットとグラブを差し出すのは、完全な善意ではなく”キャンペーン”だからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
そういう事になってるから、ないない少女に何かを差し出す。呪われた事故車だから一万円で売る。
しかしのったりと当たり前の温度で、オジジは十分優しい。その塩梅が良い。
カブと出会ったことでないない少女は原付試験に挑み、メットとグラブを装備し、キックスタートのやり方を学ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
50ccの小さな振動は、たしかに世界が息づきだした産声として響いて、くすんでいた色合いが一気に鮮明になる。マジで壁の黄色がチゲー!
(画像は"スーパーカブ"第1話より引用) pic.twitter.com/WuBuuZQSZa
ここで世界に音が満ちて、物語が動き出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
カブと一緒に小熊が、世界と自分を見つけていく物語。元々美しかった世界の色を、小熊が自分のモノとして引き寄せ、その”足”としてカブが大活躍する物語。
何しろ英語で小熊は”Bear Cub”だから、名前からして一心同体で進んでいく運命なのだな。
オジジに見守られて、小熊の旅が始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
あの時は惨めで進めなかった道も、今は青信号で堂々道を開ける。
大型トラックが隣を通る時は怖く、愛車は間近に引き寄せて、カーテンを開けて見つめたくなる。
小熊の世界は、カブと出会って変わっていく。
(画像は"スーパーカブ"第1話より引用) pic.twitter.com/UGWpUZ4cfh
朝の支度では閉ざされたままだったカーテンは、そのまま小熊の心であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
閉じたままでは、光は入らず世界は見えない。
しかしカブを手に入れたことで、彼女は自分の周囲にあるものを見る窓を開ける。
そこから見えるのは、”ないない”の世界ではない。
確かに、私の小熊がそこにいる。少女は微笑む。
いつもならただ食べ、ただ眠るだけだった夜に落ち着かず、月光に誘われて漕ぎ出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
別に、夕食のメニューが変わるわけではない。金無し親無しの現状が動くわけではない。
しかし一万円のカブは、小熊の心と世界を確かに揺り動かし、共に進んでいく。
(画像は"スーパーカブ"第1話より引用) pic.twitter.com/sCoFG1QvBs
窓の向こうのスーパーカブが、魔法のようにドビュッシーを鳴らしながら小熊を誘ったように見えるけども、その実動いているのは、動こうと思うのはいつでも小熊だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
彼女が普段の道に背を向け、一万円払ってカブを買い、免許とメットで武装し窓の向こうに据えたから、夜のドライブが始まる。
流されているように見えて、小熊が小さく決断し、その身で変化を受け止めているからこそ、彼女の世界は変わっていく。変化の触媒として、小さな原付は特別な仕事をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
この書き方が徹底していることが、小さく静かな書き方に確かな実感、見ごたえを生んでいるのだと思う。
かくして小熊は自分の足で夜のコンビニにたどり着き、エンジンはうんともすんとも言わなくなる。月は陰り、小熊は困り果てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
しかし当たり前にその有様を心配してくれる人はいて、一瞬のふれあいが彼女にヒントを与える。
(画像は"スーパーカブ"第1話より引用) pic.twitter.com/Pxf9EzZcvD
ここのオッチャンの心配の仕方、別に問題解決を直接助けはしない塩梅も良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
あくまで、小熊の世界は小熊が変える。カブが特別な”私の足”として、その助けをする。
しかし彼女は彼女が思うほど孤独ではなく、世界はそこまでないない少女に無関心でもない。
そういう事を、カブと進んで学び取る話
落ちた小銭の音を導きに、小熊はマニュアルを引っ張り出して解決法を見つける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
自力でガソリンを補充し、カブとより良く進んでいく方法をまた一つ、自分のモノにしていく。
他人から見たら、つまらない当たり前の風景。
でも、小熊には偉大な一歩だ。
(画像は"スーパーカブ"第1話より引用) pic.twitter.com/bvXs1GaYih
カブと出会う前には何の色もなかった場所で、エンストの恐怖を超えて小熊は”帰ってきた”という。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
親なし、色なし、面白いこと何もなし。
そう思って過ごしてきた場所は、しかしやはり”家”なのだ。
そう実感出来るのも、小さな夜の冒険をくぐり抜け、ちょっとの苦労と成長を掴めばこそ。
自分を何処にでも連れて行ってくれる、カブという乗り物あってこそだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
タイトルに関する小さな巨人を、そのサイズ感に見合った確かな充足感で、少女の相棒と描くことに成功してて、大変良い。
時速20キロでいい。特別なツーリングでなくても良い。日常の足として、当たり前の日々に寄り添う。
この小さな原付きはそういうプロダクト・ヒストリーを積み重ねて、全世界1億台販売の偉業を成し遂げたのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
そういう手触りがしっかり描かれ、作品が何を切り取っていくのかガッチリと焦点を合わせていくのは、”スーパーカブ”の物語として大変良いと思う。
いつもと変わらぬ朝。いつもと同じ、乾いた朝食。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
しかしそこにはカブがいて、カブと一緒に進んでいく私がいる。
燃料計はしっかりチェック。一度間違えたことから、しっかり学んで自分を変える。
小熊の朝は、そこから拡がる世界は、大きく色を変える。
(画像は"スーパーカブ"第1話より引用) pic.twitter.com/ouN7IxRhep
辛い坂道に視線を落とし、歯を食いしばって自力で漕いでいたときには、見えなかった空の色。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
ないない少女が手に入れたのは、小さな原付と大きな世界。
そこに刻まれるのは、彼女の物語の題名であり、特別なみんなの相棒の名前。
”スーパーカブ”
(画像は"スーパーカブ"第1話より引用) pic.twitter.com/WdYvDTCL4h
堂々と己を語りきって、このアニメの第一話は終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
大変素晴らしかったです。
どういうサイズで世界を切り取り、何に足場を置いて物語を進め、どういう実感でお話を取り回していくのか。
物静かな語り口、確かに宿る情感と努力。
特別でありふれた私のカブ、カブに乗る小熊。
『これを描くぞッ!』という気合が力まず、しかし確かにアニメに乗っかって、非常に見ごたえのある24分でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
内面を全然喋られない小熊がしかし、自然に豊かな表情でもって何を感じているか、どうなりたいかを語ってくれるのが、彼女と作品をとても好きになれる運びで良かった。
デカい音量で感動をかき鳴らさないストイックさが、逆に世界で一番売れてる乗り物がどれだけ特別か、”ないない”だと思っていた少女にどれだけ人の息吹があるかを教えてくれて、凄く品良く力強かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
『こういう調子だと良いな~』と思ってたところ、全部ど真ん中で抜かれました。つええ。
今後カブを足に、小熊の世界は広がっていって、変わっていくのでしょう。友達も増えるかも知れないし、カブのことをもっと知っていくかも知れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
キックスタートやガス欠みたいな、ちょっと困ったことはあって、でもなんか当たり前に色んな人が助けたり、ヒントをくれるのでしょう。
そういう手触りのある世界に小熊とカブがいて、青い空に漕ぎ出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
そういう話なのだと、しっかり伝えてくれる第一話でした。ウマ二期に続いて、二作目でこれ出せるスタジオ櫂スゲーな…。
最高の相棒とともに小熊が進む世界に、僕も同行できるのが、大変ありがたい。次回も楽しみです。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月7日
運転シーンにCG使ってることから、ツーリングの面白さもどっしり作画で支えて見せてくれんのかなー、みたいな期待感もあり。
沖縄GONZOがそのまま移籍してっから、CGも自前でつえーんだよな…スタジオ櫂、かなりのモンスターか?