Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
世は愛につれ、愛は涙につれ。
どれだけ尽くしても独り占めできない辛さが、涙雨となって降りしきる。
報われぬ想いに流れる涙を、正しさの仮面の奥に隠して、うるうは今日も断罪の鞭を振るう。
汝、咎あり。
そう告げて欲しいのは、本当は誰なのか。
そんな感じの、清純と汚濁が混じり合う現し世浪漫、うるうくん主役の第3話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
前回焔くんの真っ直ぐなヒロイズムを描いた対比で、清らかな外面と濁った内面に分断され、真実の自分に(まだ)到達できない貴公子の物語が展開された。
泣きたいのに泣けない、正しさを捨てたいのに捨てれない。
燃え盛る突破力で自分も他人も一歩幸福に導いた焔くんに対し、うるうくんは敵も味方も断罪し、自分すらも責苦に投げ込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
正しさを第一とする一族の掟に幼い心を傷つけられ、扉の向こうに見つけた傷を隠し、色のない清らかさで己を縛り付ける青年。
うるうくんは凝り固まった正しさから抜けられない不自由と、そこから抜け出したい想いの狭間で歪む、非常に人間的なキャラであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
蘭丸の純真、焔くんの純情と、人間の良い部分を真ん中に据えたキャラの話が続いた分、彼の隠せない濁りは面白く響く。
人の想いは、正しくない汚れ。
そう教えられたとおり生きようとしても、湧き上がる嫉妬や束縛への憎悪は湧き上がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
果たしてうるうくんは、泣いてる自分を抱きしめられるのか。
焔くんの物語が一つの結末にちゃんとたどり着いたのに対し、今回は中途保留のフラストレーションが、しかし楽しく揺らいでいる。
せっかく五人も美☆男がいるので、色んな角度からキャラ個別の物語を彫っていくのが、群像を活かせて良いと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
蘭丸は白紙の自分、焔くんは純情なヒロイズム、うるうは清純と汚濁の融和と。
業渦巻く人間界(と夭聖界)を駆け抜けながら、それぞれ向き合っていくのだろう。
お話はうるうくんの複雑な間合いを、イケメン2.5次元俳優のドロドロ恋愛と対照しながら進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
相手とどういう立ち位置、距離感で向き合うか。
レイアウトは心理と力関係を反射し、歪な美しさを宿す。
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第3話より引用) pic.twitter.com/BrcN2dLfme
幼少期、うるうの両親は遠い場所にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
何かを為し遂げても褒められず、愛された実感が無いこと。
正しさだけを押し付けられ、縛り付けられる苦しさ。
女を弄ぶ宗次が胸に秘めているものは、実はうるうと強く共鳴している。倒すべき敵の歪みは、うるう自身の鏡だ。
そこを突破可能な激しさは、うるうが激しく嫌う焔くんの中にこそある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
罪人とされた父から受け取ったものを、自分の胸から湧き上がるものを彼は隠さない。
水潤族の規範である正しさに焼かれたとしても、己の熱さで悪を焼き払い、誰かを温めるように活きたい。
そんな願いが前回、女の怒りを抱きしめ、より良く燃やした。その逢瀬は記憶に微かに残り、新たな表現を世に問うた。良き”炎”となりえたのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
そういう実りが、うるうのあり方にはない。清らかさ、潤いを表面に貼り付けつつも、心の奥に宿るのは濁りと冷たさ…悪しき”水”である。
嫉妬は、己が欲しいと思うものにこそ燃える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
うるうが焔くんに”正しくない”思いを燃やすのは、彼が隠そうともしない燃え盛る思いを、”水”だけでは成し得ない強さをうるう自身が持っていて、しかし上手く発露できないからだろう。
なりたい自分になれないからこそ、その水鏡を憎む。
この時点で、彼は見た目通りの清廉潔白などではなく、ひどく人間臭い濁りに支配された存在である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
愛著を生み出せない矛盾なき存在と規定されている夭精が、様々な業と矛盾を抱え、だからこそ正しく在れる”人間”に他ならないこと。
断罪し、略奪する対象と己が、実は同じであること。
それにうるうは気付いていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
…というか、気付いていても認められない。それは水潤族のプリンスであり、正しく父母に愛された己のイメージを損なうからだ。
そんな彼もまた、愛されなかった過去に強く傷つけられている。それを、何も持たない(からこそ)蘭丸は見抜く。
潤んだ瞳は、涙をこらえているから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
果たしてうるう少年は、扉の奥に何を見たのか。
それが明かされぬまま、彼は一時女に傘を差し出し、純愛の奥に秘められた濁った独占欲、報われたいと願う想いに濡れていく。
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第3話より引用) pic.twitter.com/w7RvGczqiN
女王様の言動とか焔パパの末路とかで、相当ろくでもない事を示してる夭精界であるけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
幼い瞳に焼き付いた父母の秘密も、まー相当なモンなんだろうな、と思う。
ここで深い傷を追ったからこそ、うるうは正しさの奴隷となり、表面的な優しさと、罪への冷淡さに縛られてんのかな…。
罪は罪であり、贖えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
うるうの理論には”赦し”がない。一度落ちたらお終いと、見捨て投げ捨てる冷たさがある。
これは人間の怒りを俺の怒りと引き受け、犠牲者を戦いの場に引っ張り出す焔の共鳴と、正反対の態度である。
焔くんは自分が罪人になる可能性を、強く意識している。
火焔族はそんなもん、あの父の子なら罪まみれ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
そういう偏見に擦り切れつつも、罪とされるものの中にこそ生の実感、人間の証明があるのだと思い続けてきた。
だから彼は、罪を恥じず恐れない。怒りの中にある正しさ、正しい怒りを肯定し、悪を燃やし人を温める。
対してうるうは自分が罪を犯す存在だと考えず、人に寄り添わない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
傘を差し出すのはあくまで義人だからであり、底に潜む濁った嫉妬を見た後は、冷たい正しさで距離を取る。
しかし、彼は罪人と同じ雨に打たれ、その濁りもまた己に引き受けて戦いに挑む。
雨に濡れる女と同じ冷たさに、身を浸す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
この行為に、うるう一筋の光明がある気がする。
これから断罪する人間と同じ、嫉妬と束縛、報いを求める心があると、何処かで認めるからこそ、冷たい雨にあえて打たれたのではないか。
同じ境遇に身を置けばこそ生まれる”赦し”の、欠片に触れたのではないか。
ずっと誰かと距離を開けてきたうるうはここで初めて、愛の奥にある醜さ、献身に報いを求める(当然の)身勝手に間近に寄り添う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
彼が男に、女に奮った鞭は彼自身にも襲いかかり、咎を受けることになる。
だがそれは、彼が自身を正しくないと思えばこそ…不完全と誹る”人間”と同じだからこそ…
求め引き受ける罪なのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
彼の行動に”赦し”がないのは、自身を許せない何かが過去に突き刺さり、自分も他人も凍りつかせているからかなー、とも感じるけど。
なかなか答えにたどり着けない男だからこそ、その行く末が気になるな…焔くんとは別の角度から、面白い男だ。
まぁそういうシリアスなキャラ描写を挟みつつ、絵面はブッチギリに狂っていくんだけどさ…なんだよ、そのM字開脚…あと北斎漫画。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
今回のバトルフィールドが”海”なのも、宗次が苛まれている業と苦しみが、うるうに近いからだと思う
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第3話より引用) pic.twitter.com/9jOYfLG62T
彼は思い上がりの蛸壺に閉じこもりつつ、『束縛される苦しさをお前も味わえ!』と吠える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
過剰な愛の鎖、投げかけられた重荷。
それは大きな水のうねりとなり、水潤族の規範、過去のトラウマに縛り付けられたうるうを取り巻いていく。
この変態空間は、うるうの内面でもあるのだ。
前回焔くんが槍で突き刺したのは、己自身の影だった。その炎から誰かの力を借りて…そうしないと抜け出せない弱さを認めて、彼は戦いに勝った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
うるうもまた過去を蘇らせるが、それに冷笑を返し、清らかさではなく誰も認めない冷たさでもって、うるうは苦境を脱していく。
『お前も同じ罪人なんだろ!?』と問いかけてくる触手を、跳ね除けて距離を取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
誰かの怒りを抱き、弱さを抱きしめてもらうことでヒーローとなった焔くんとは、やはり正反対の決断を、ここでうるうは為し遂げている。
冷たき氷となったうるうはしかし、水の清純をまだ残している。
罪は罪、罰は罰。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
そう苛烈に正しく判断する”水”の特性は、クライアントも自分も例外にはしない。
破滅を呼び込む嫉妬に鞭をふるい、掟からの逸脱に己を縛る。
うるうの正しさは、自他を区別しない。
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第3話より引用) pic.twitter.com/gAlBKaKAw6
この公平さは彼の強みであり、誰かに寄り添う炎の暖かさでは到達できない美質でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
謎の黒い光がヤバゾーンを覆い隠す牢獄に、まずやってくる焔くんの”情”が良い。やっぱアツくなることしか出来ねぇ男なんだよなぁ…。
それを冷たく跳ね除けて、うるうは正しき裁きに酔う。
その自縄自縛の奥にあるものを、天聖となった蘭丸は正しく見抜く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
泣いている。心の奥で、いつでも幼い子供が泣いている。
その無垢なる叫びを無視し続けることが、果たして”正しい”のか。
問いかけは闇に消え、物語は続いていく。
やっぱ蘭丸の特質は、無垢故の真実喝破なんだな。
携帯電話越しに事件の顛末が語られるが、宗次は己のゲイ・セクシュアリティを包み隠さず世間に告白することとなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
これはイケメン俳優としての立場を危うくするだろうが、自分に偽りなく、他人に濁りを押し付けない純粋な決断でもある。
うるうの鞭は、そういう行いを引き寄せもしたのだ。
彼がもたれかかる女を重荷としか感じず、誰かに正しく優しくできなかった性の偽りを、うるうの一撃は砕いた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
それは彼が蛸の触手に嬲られ、束縛される苦しさに苛まれているのは自分だけではなく、鎖を冷たく砕く正しさが世にはあるのだと、闘いの中で教えた結果なのではないか。
己がゲイであるとカムアウトした宗次は、もう女を騙すことは出来ない。真実のパートナーも、堂々世間に公開した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
タコツボに身を隠し、誰かを食い物にする歪んで濁った生き方から、水の裁きで確かに這い出すことが出来たのだ。
うるうの歪んだ正しさは、そんな再出発を引き寄せもした。
宗次のカムアウトは突然かつ強烈(『今後はゲイの道に精進します!』じゃないんだよ)なんだが、己の顔面に引っ張られる形で『女に求められる俺』を内面化して、自分の中にある真実を表に出せなかったと考えると、相当にシリアスな苦しみでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
イケメンであったほうが、銭も稼げるし承認も得れる
でもそうじゃいけないと思ったからこそ、彼は鎖を解いて一歩を踏み出した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
それは冷たい氷が生み出した、水の奇跡なんじゃねぇかな、と僕は思う。
苛烈な正しさで間違えまくっているように見えて、うるうの行いにも誰かを救うヒロイズムが宿っている。
それ故の、この結末なのではないか。
そんな感じのする第三話であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
初回のカオスな衝撃が抜け、作品との向き合い方が解ってくると、やっぱ土台のしっかりした生真面目な作品であると感じる。
それがこうもトンチキな方向にぶっ飛んで表現されるのは、菱田監督の業というか手癖というか…男の裸身好き過ぎるんだよなぁマジ!
一族の掟に縛られ、己の中の人間性を認めないうるうの氷が、いつか溶けるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
先が気になるエピソードでもありました。
焔くんは完成度の高いヒロイズム、偽りのない体温でまとめてきたけど、うるうは矛盾しまくり間違えまくり…だからこそ新たに正せる可能性を魅せてきた。
キャラごとにドラマの方向性、”正しさ”との向き合い方がかなり違ってて、記号ではない個性がちゃんと宿ってるの、この作品のとてもいいところだと思います。トンチキばっかじゃないのよッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月22日
いやまぁ随時狂ってるし、そこが好きなアニメだけどね。次回も楽しみッ!
追記 倫に悖ると水さされても、消えぬ心の恋焔。親父さんも、厄介なものに殉じたね……。
F蘭追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月23日
焔とうるうはエピソード単位で対になってるキャラだと思うが、それぞれの幼年期に瞳に焼き付いたものを思うと、互いの父母が許されぬ恋に殉じた過去で繋がってそうだなぁ、とも思う。
世の規範が許さずとも、己の心に燃えるもの。
それが大事な話にドンピシャなトラウマだし。
となるとソリの合わない二人はある意味”兄弟”なわけで、また業の深い繋がりだなぁ、と思ったり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月23日
ここら辺のネトネト地獄は女児向けだった(はずの)RLですらやってたので、菱田監督の譲れない業なんだと思う。
どんっどん浮かれポンチに楽しむだけのアニメじゃなくなってるが、そこが良いわなヤッパ。