MARS REDを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
紅殻格子は浮世の檻。
花簪に着飾った女郎囚徒が、ガラスの向こうに楽土夢見る吉原。
『一皮剥けば鬼の住処』は例えではなく、”零”は郭に拡がるヴァンパイアを追う。
猩々緋をぞろりと引っさげて、遊び人調子のスワは果たして、洒脱に都々逸捻れるか!?
そんな感じの公式遊郭パロ! 別にパロじゃない!! なMARS RED第四話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
山上さんがかわいそうオーラをムンムン出しながら総受けだったり、秀太郎が覚醒したり、前田さんが過労死したり、色々起きた回である。
メッコメコにされつつも持ち前の教養で、闇血液の出どころ探る山上さんが良い。
現場と政治が切り離されつつ連動し、表向き繁栄と軍縮に追い立てられつつ、先に待つ震災と軍国化が不気味に待ち構える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
第十六特務を巡る状況は、なかなかに複雑怪奇である。
場面も現場で右往左往する”零”と、その上層部と、裏で糸引くイギリス製の吸血鬼に分割されていく。
ここの間をフラフラと彷徨うのが葵ちゃんで、民間モガの気楽さを活かして、帝国ホテルの怪しい邂逅とか、軍人さんの秘密の任務とかに行き交う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
組織と立場に縛られた男衆では、出来ない闊達な歩みが彼女の持ち味なのだろう。
彼女が行き合うものを通じて、大正吸血譚の輪郭がおぼろげながら見えてくる
中島中将の後ろ盾ぶってる沖村が、イギリスのヴァンパイアと通じて何をしとるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
彼らのいう”理想の国”が、どんな状況を指すのか。
バリバリの異能集団に見えて、世知辛い財政事情にギッチギチに縛られた”零”の未来は、そこに足場を乗っけている。
しかし今は国民を吸血禍から守るために、現場で必死に走り回ってる段階である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
このズレがどんな悲劇を呼んで、どう対処していくかは楽しみでもある。
昼夜を問わず働き続ける前田さん、日常と非日常の狭間を行き来する葵ちゃん。
境界線上のキャラが重要な位置にいる物語だ。
前田さんは秀太郎に深夜の練兵を行ったその足で、特務を指揮して吉原を封鎖する。あからさまに働き過ぎである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
ぞろりと片手持ちに剣先を下げて、吸血鬼の高速攻撃を居着かせた上で拳で殴りつける。
達人級の剣技…闘争の運び方を知るほどに、これに不意を打った岬の凄みも判る。
岬だから虚を突かれた男と、殺せたのに殺さなかった女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
初見では特異な挨拶かと思えた第1話だが、つくづく後々よく響く仕上がりになっていて面白い。
薄暗い特務の闇に身を置きつつ、前田さんとにかく仲間が死ぬの嫌な人だよね…だから、秀太郎も鍛える。真面目だ。
そんな前田さんに率いられ、足を運ぶのは吉原郭。紅殻の紅、妖しい灯火が面白い色彩を読んで、なかなか雰囲気のある話となった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
夜の華やかな色合いが、雨に烟るとモノクロに落ちて、なんとも味気なくくすんでいく落差が、とても面白かった。
(画像は"MARS RED"第4話より引用) pic.twitter.com/rTHfTEqdIG
夜にこそ華やぐ吉原は吸血鬼にはうってつけの場所であるが、そこも自由区などではけしてなく、官憲の封鎖も受ければ、女郎は夢と知りつつ春を鬻ぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
夜なのに不夜城めいた明るさと、昼なのに真夜中めいた寂しさが同じ場所に宿る、不可思議で奇っ怪な面白さ。
これに遊び人ぶってるが歌を知らないスワさんと、大正娘の明里のかすかな触れ合いが混じり合って、独特の哀れみが出てくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
前をからげた遊郭の普段着、狐めいた拘束具でバッチリと決めても、スワさんは白粉に馴染まない古い気質の三百才だ。
(画像は"MARS RED"第4話より引用) pic.twitter.com/uCq5xh8w6I
明里も擦れっ枯らしの手管というわけではなく、世慣れた風情に幼さを滲ませ、無邪気に遊ぶように人としてのスワを覗き見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
遊びと知ってて交わす約束、寝かす女郎が逆に寝る。
色んなものがあべこべになる吉原迷宮は、ふわりふわりと芯がなくて、だからこそ面白い。
窓辺に身を預け、盃を己を反射して一息、素顔を見せるスワさん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
それが吸血鬼固有の超音波会話で揺れて、赤く優しい夢が終わっていくのはとても良かった。
飲んでも酔えない酒に、それでも一瞬夢を見た。女郎が歩けぬ天井を、軽やかに駆ける夜の若駒。
モダンな電線と古式な装いが同居する吉原の、夜に縛られるものと、ひらりと舞い落ちるもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
客の立場で自在に夢を買うのだと思いきや、スワさんも特務の立場、吸血鬼の業に縛り付けられ、何処にも行き場はない。
大正育ちの哀しさと、時代に置き去りにされる少年の悲しみが、かすかに擦れて音を立てる
そんなロマンスと並走して、”零”の奇妙な調査も進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
弱いからこそ臆病センサー出来て、ランク外だから吸血鬼通信できない。山上さんの不憫可愛さがよく唸るエピソードである。九官鳥みたいな声出してたな…。
(画像は"MARS RED"第4話より引用) pic.twitter.com/NHX1V46Y9F
山上さんが吸われ死ぬ寸前までいって、秀太郎はようやく貴種の本質に目覚める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
兵士としてA級ヴァンパイアとして、圧倒的に”殺せる”存在となっていくことが、果たしてぽやっとした青年にとって幸福なのか。
殺戮の巷に佇んでなお、ヘラヘラと笑ってる表情を見てると少し、怖くもなる。
スワさんは明里の窮地にヒロイックに駆けつけることなど出来ないまま、ただその最後を看取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
殺す能力が必ずしも、守る力に繋がってはくれない事を、狐面に流れる涙雨は教えてくれる。
300年。
長い夜を過ごしてなお、歌一つ歌えない。
(画像は"MARS RED"第4話より引用) pic.twitter.com/GS8au3uNMs
女一人守れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
それを思い知ってなお泣くことすら出来ない寂しさは、何処か岬と前田さんに通じている感じもある。
生と死の岸に、引き裂かれていく男と女。多分、そんなロマンスが大事な物語なのだ。
…秀太郎と葵ちゃん、接触したときが怖いなコレ。
前回山下さんと奥さんを見守った灯篭流しの夜は、柔らかく暖かかった。そうなるよう、秀太郎は吸血鬼の異能を優しく使った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
今回郭に降る雨は、なんとも残酷で…だからこそ美しい。
夜にも色んな色があり、触れ合いにも様々な形がある。話数を追うごとに、その複雑さを楽しく味わっている。
山下さんが夫婦だからこその心地よい絆を描いたのに対し、スワさんは一夜の夢の儚さを体現する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
生まれた時代も、縛られる鎖も違えど、何かが通じて…でもそんなもの、何にもならなかった虚しい夜。
それもまた、”零”を取り巻く世界なのだろう。
山下さんの鼻が効いて、”零”は横浜に乗り込んでいく感じだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
その周辺に蠢くものを、葵ちゃんは昼の側から見つめ、行き合い、手渡していく。
後数ヶ月すれば、もうモガとか言ってられない大災害が待つ帝都。
(画像は"MARS RED"第4話より引用) pic.twitter.com/USymkhajZj
世界の暗部に近づきつつも、それを知らない彼女の無邪気は、大正という時代が見た最後の夢なのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
劇場に住まうデフロットと、暗躍するグレンの繋がり…吉原を餌場に変えた輩の目指すもの。
まだまだ、夜闇は深いようだ。特務は何処まで踏み込めるものかねぇ。
グレンが政府の委託を受けて、英国からヴァンパイアの血を伝播させてるのが個人的には面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
文化的・技術的輸血として、富国強兵を目指す日本帝国に入り込んだ御雇外国人の文脈なんだよね。
日本を太らすはずの異国の血が、その実闇から国民の血を啜り上げている構図。
それを知らぬまま、”零”は影から影、血臭を追う! …て話なんだが、その前に前田さんが死んだッ!!(死んでません)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
いやまー、あんだけ寝てないとそら心臓に負荷もかかるよ。鋼鉄の神兵でも、無敵の吸血鬼でもないんだから…。
(画像は"MARS RED"第4話より引用) pic.twitter.com/z2Q2K0LUsF
無邪気で圧倒的な殺戮に使われた秀太郎の高速移動が、ここでは倒れ伏す前田さんを支える杖になってるのは、ちょっと面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
常理を超えた”A級”であることは、守るためにも殺すためにも使える。
吸血鬼であることに馴染めない秀太郎が自分の力をどう使い、”零”であることにどういう意味を持たすか。
それは今後、結構大事になるのだろうなと思う第四話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
多彩な顔を見せる吉原が、前回の情の河原とはまた違った色合いで美しく、とても良いエピソードでした。
あくまでサラリと、スワさんが仮面の奥に押し殺したものを感じさせてくれる話運びも、また良かった。
帝都に伸びる長い影を追う物語と、その裏でうごめく世情と謀略を追うカメラも、いい感じに脂が乗ってまいりました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
獅子奮迅の働きで”零”を支えてきた前田さんがぶっ倒れ、さてボンクラ吸血鬼どもの運命や如何に!!
次回も楽しみです。
追記 超伝奇組織の隊長でも、寝ないで働いてると心臓に負荷がかかりすぎてぶっ倒れる。そういうリアリズムで人間と吸血鬼、大正って時代を見てるのは、俺としてはかなり安心できるポイントなんよね。
しかし頼れる隊長が戦線離脱するのが『過労』なの、すげー独特でマズレっぽいな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
いや、アニメでしか解ってねぇんだけども、人の死に方とか触れ合い方が、いい意味で淡白でサラッとしてる印象なんよな。
吸血鬼ネタなのに妙に手触りがあって、生き死にが生っぽい。けど、ベタついてはいない。
そういう話だと思い始めてたから、ここで前田さんがぶっ倒れてチームがピンチになるの、トンチキっつうより納得なんだよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月27日
彼がそこまで自分を追い込んだ理由も、その裏にある使命感と情も、第1話で書いてあるからね。
でも、それがあまり表立っては書かれない。描写の裏を覗き込ませる。そこが良い