ブルーピリオドを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
藝大一次試験、×印を置き土産に走り去る龍二の運命を知らぬまま、八虎の鏡は割れていた。
アクシデントを奇瑞に変えて、得意の構図で描いた自画像。
積み上げた努力が形になる実感と、不定形の便りなさを抱えたまま、”息抜き”で訪れたのは博物館。
無数の骨は、何を語るのか。
そんな感じの一次試験終了! でも受験も人生も終わんないよー!! な、ブルーピリオド第8話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
モノローグの多い素描試験と、それが運命の扉を叩いたのか不鮮明な生煮えの時間と、そこから半歩踏み出して見えてくる景色を描く、一連のエピソードである。
試験は終わり、試験は続く…と。
倦んだ表情で試験会場から駆け出した龍二と対象的に、八虎は悩みつつも課題に取り組み、必死に筆を走らせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
鏡に映る自分と、今世界にある自分。
テーマと作品、思念と具体、イデアと表現。
優等生の頭脳は、必勝の一枚を探して高速回転していく。
(画像は"ブルーピリオド"第8話より引用) pic.twitter.com/JfhJdbvkHF
絵を描く人は何を考え、美大受験生はどう戦っているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
この一次試験と、次に続く二次試験は表現の具体にかなり緻密に踏み込み、内面を細やかにスケッチしていく。
書き連ねられるアイデア、思いがけないアクシデント、そこから生まれる着想。
脳内で渦を巻く”出来ねぇ”と、指先を奔る”やれる”。
八虎は受験…というか試験の基本に忠実に、自分が向き合う課題の奥、出題者が何を見ているかをまず掘り下げていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
自分に求められているものは何か、鋭敏に感じ取ってふさわしい自分を取り出せる。
時に嫌悪した器用さは、己が試される瞬間に道を作ってくれる。
きねみちゃんのデカケツが粉砕した鏡も、ありきたりなアイデアを文字通りぶち壊してくれる切っ掛けとなり、八虎は着想を形にしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
何を見せるか。何が自分の強みなのか。
ここで八虎の絵を前に進めていくものは、ここまで散々彼を苦しめ、向き合ってきたものだ。
このお話はずっとそういうモノを描いてきて、この一次試験も二次試験、その先にある大学生活、あるいは人生なるものに連続している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
結果は過程であり、変化する金属を鍛える一擲となっていく。
そしてそれは、ここに行き着くまでの過程を血みどろに、青臭く這いずったものにしか掴めない。
鏡のうちが和の自分を見つめる時、ふと湧き上がってくる言葉と技術。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
あの時天使にウインクされて、楽しくて苦しい日々の中教えられ、身に付けたものが八虎の言葉になっていく。
『俺はこれだけ、自分を描けます』
その証明は、熱意と技術の合金だけが果たす
(画像は"ブルーピリオド"第8話より引用) pic.twitter.com/w6u0618hBa
藝大入試は物語のクライマックスであり、ある種今までの”答え合わせ”のような側面を持つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
美術と出逢ってから積み上げたもの。
出会う前から、八虎の中にあったもの。
出逢ったからこそ、新たに見つけられたもの。
あるいは、蘇り直したもの。
色んなものが、試練に鍛えられ形を為す。
八虎はアスリートでいうところの”ゾーン”に入り、脳味噌に直接手を付けたような万能感に背中を押され、殺意と恍惚に浸りながら、自分なりの絵を書き上げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
昼休みに入る直前、残り時間で何をやりきるかしっかり課題を定め、道筋を明瞭にしているのが、大変彼らしい。
佐伯先生から教えられた立体感の技法も、持ち前の分析能力も、分割を活かす横長の構図も、お母さんのお弁当も、全てが渾然一体と八虎を支える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
高速に、明瞭に迸る思考。
それを受け取って、奔る筆先。
八虎がとても気持ちよさそうに、自分らしくスケッチできて、良かったな、と思う。
会心の一筆を仕上げてもグダグダ悩むのがこの青年で、やればやるほど見えてくる至らなさを、どこから埋めたものか、思考は腐っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
そんな風に曝け出された青春の臓物を前に、一瞬冷える大葉先生の視線が、やっぱり好きだ。
(画像は"ブルーピリオド"第8話より引用) pic.twitter.com/f4ExRPrdvp
ずっとこの顔でいないのが、この人の善さだし強さだし凄さだな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
己の弱さに向き合い、それでも描き続ける教え子の辛さにしっかり想像力を伸ばして、両手を広げてデカイ声を出し、空気を作る。
それが自分の責務だと考え、極力自然に明るく振る舞うのは、見た目よりも厳しいことだ。
その厳しさを生徒に背負わせず、気楽な息抜きと新たな学びを差し出すのは、やっぱりとても偉い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
一周目は、張り詰めた作家の視線を外して気楽に。
二周目は、画材を鵜の目鷹の目で探るクリエイターの目線で。
博物館巡りは、一次試験後の弛緩した患部を抉る
(画像は"ブルーピリオド"第8話より引用) pic.twitter.com/AzBXwriQM3
十人十色様々と、解ったようなことを思い浮かべて絵筆を握れば、知らず似通った絵が生まれてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
選択のパラドクスに飲まれる卑小な自分と、そこからはみ出した二人。
ここで”優”を取った二人が、一次試験突破してないのは残酷で、優しいなと思う。
優れた発想も、諦めなかった強さも、大葉教室の六人全員にあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
でも結果は残酷に誰かを選び、誰かが落ちる。
そしてそれはただの結果であって、人間の値段はそこだけでは決まらない。
桑名さんのエピソードで、脱落するものに視線を向けた理由が、ここでも鈍く光る。
群像を描けば、勝つものも負けるものもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
受験をテーマにしたこの物語なら、受かったやつが勝者…に見える。
でも、そうじゃない。
大葉先生が、最後になるかも知れないエールに心を込めたように、闘いきった者たちも膝を屈した者たちも、皆が勇士だ。
その歩みには、価値がなければならない。
我らが主人公は己の未熟を再確認し、そのマゾいキモさに橋田も微笑む。お前は本当に八虎が好きだねぇ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
前途には青信号。
試験の結果を予期するように、幾度も通った帰り道は明るめだ。
奇妙に分裂した魅力に満ちた、戦友の肖像画。
(画像は"ブルーピリオド"第8話より引用) pic.twitter.com/VnC20hzeIw
それを前に、橋田が微笑んでいるのはやっぱり良いな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
予備校を去っていった世田介との縁もまだ繋がっていて、相変わらずの不遜をぶん回しつつ、それぞれの胸に変化する金属が、複雑な顔で笑っている。
ここに至り、ここから続く道は、無駄じゃない。
そう思える結末が、はたして青年たちの前に広がっているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
三人受かったということは、三人落ちたということだ。
でもそれはそれぞれの結末であり、人生のチケット争奪戦ってわけじゃない。
そう思えるような道が、はたして皆の前に広がるのか。
試験も人生も、まだ続く。
そんな感じの、一次試験とその後先でありました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
人生が決まる一枚を前に、八虎が使える武器を総動員し、強みを必死に引っ張り出しながら筆で戦う姿に、強い熱量があって良かったです。
やっぱどっしり時間を使って、具体的な制作過程を追えるのは良い。
今までの全てが結実する正念場も、また新たな出発地でしかなく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月20日
×印のミステリを残したままの龍二をどーするのかっつう、デカい課題も残ってるしなッ!
二次試験まで後数日、待ち構えるのは光か闇か。
次回も楽しみですね。