ブルーピリオドを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
藝大二次試験最終日、八虎は己の全てを絵筆に乗せて、”裸”を描ききる。
一筆重ねるごとに、見えてくる自分。
臆病で尊大で無様で必死だと見えたものを、刻み届けた先にあるのは、どんな景色か。
長い戦いが、遂に終わる。
辿り着いた”今”に、天使は微笑んでくれるのだろうか?
そんな感じのブルーピリオド最終回、みんなもお疲れ! な大団円である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
大学入った後も人生は続くし、むしろその後の山あり谷ありに八虎もたっぷり翻弄されていくわけだが、それはそれとして地獄の受験戦争の物語としては、ここが一つのピリオドである。
大変良かった。
作品が主題と定めた”受験”に、八虎が差し出した一枚のタブロー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
そこに込められた技芸と意図、出会いと努力がどんな風に宿っているのか、見る側のリテラシーがしっかり上がって終わるのが、いい作品だなと思っている。
ここらへんは、未熟で努力家で理屈臭い主役の強みか。
八虎は自分の考えていること、出逢った衝撃、それが残響し染み渡る過程を、徹底的に言語化する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
そうしてロゴスで世界を切り分け、生身のダイレクトな感触を掴みにくい所が彼の生き苦しさだ。
だが、あくまで(恋ちゃんや龍二や世田助が肯定した)彼らしさを武器に絵に向き合う内、見えるものがある。
彼だけに見えている青い渋谷が、どんな色合いだったか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
言葉では伝わり得ないそれを、絵筆に託し伝わってくれたことが、全身ガタガタになってまで藝大を目指す根源にあった。
”解ってくれること”が、彼にとってどれだけの快楽であるかは、三日目の世田助とのマゾ会話でも判る。
そういう外向きの表現は同時に、自分の内側…客観視出来ているようで、全く理解できていない己にもしっかり向いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
絵筆を握った瞑想のように、八虎はこの土壇場で”自分”を掴み、描き、答案用紙に書き付けていく。
(画像は"ブルーピリオド"第12話より引用) pic.twitter.com/6sfdA5u4j7
紙にテレピン油を垂らすことで、素材に宿る透明感。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
それを活かして裸の違和感を浮かび上がらせる、アートの技法。
そういうモノを一個一個、生真面目に己に積み上げていたことが、自分の言いたいことがしっかり描け、自分とは何なのかを掴む助けになっていく。
自分とはどんな存在なのか、思い悩んで戦い掴む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
青春物語の王道を強くひた走ってきた事が、作品を支える支柱であったのだと、この最終決戦でちゃんと分かる…作品に焼き付くのは良いことだ。
解った顔で優等生やってた青年は、不定形の衝動に突き動かされ、溶鉄の縁に導かれて、自分を探す。
理解不能で交流困難な異物だからこそ、胸に突き刺さって抜けない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
そんな相手の形を探るなかで、そうはなれない自分の形も見えてくる。
皆がそんな風に自信なく、手探りで自分を…世界との境目を探っている。
そんな歩みの中では、自分も時に他人だ。
つまり他人の中に、どこか自分の名残を探してもいるわけで、圧倒的な実力が一切自分を支えない世田助にビビり、天使を吸引して心を落ち着ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
この正念場で森まるの残滓に縋るあたり、マジで”信仰”してんなー、って感じだけども。
生身で語り合う世田助とは、ちょっと違う間合いよね。
相手ごと色んな距離感と手触りを取り混ぜて、自分を探り支えていく歩み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
重圧に崩れそうな自分の輪郭を、思い出が薫る一枚を抱きしめる仕草には、ずっと見守ってきた脆さと強さが、同時に宿る。
そんな一枚一枚が、若き芸術家のリアルな肖像画なのだ。
そんな彼が思いを込めて差し出したものも、また誰かの特別な一枚になっていて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
息子を送り出す母の手に、握られた一枚。
今全霊を込めて仕上げる、この一枚。
もがき苦しみながら、必死に考えて積み上げる一個一個が、全部本当になるなら…。
(画像は"ブルーピリオド"第12話より引用) pic.twitter.com/u2y2Ht672I
何故このテーマと題材に、この画風や構図、素材や色彩を選び取るのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
3Dの表現力を的確に活かし、絵肌が伝わる裸婦像は、八虎が学び視聴者も受け取った講座の答え合わせでもある。
こういう絵を仕上げるために、色んなことを勉強してきた。
最後のマテリアルが、そういう存在に昇華するのは良い。
龍二との小田原旅行を経て…あるいはそこに至るまでの青春くねり道を歩いて、八虎が見つけた”裸”の意味。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
それを伝えるべく、今まで出逢ったこと、見知った知識は役立ってくれる。
自分を見つけ、伝えるためのメディアとして、挑戦と意志と努力は意味を持ちうる。
生々しい青春の苦しみをしっかり描いてきたからこそ、勝ちを引き寄せる最後の一枚に全部が乗っかるのは、充実感がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
何もかもが、無駄になっていない。
この感慨を補強するように、世田助がムカつき八虎が泣く。
本当にキミは、静物に包囲された構図で画面に立つねぇ…。
八虎にとってそうであったように、世田助にとって八虎はムカつくが無視できず、深く心に刺さればこそ自分を教えてくれる、大事な他者だったんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
色々壊れたところがある彼には、そういう存在は希少で、だから殻を破ったらしからぬ歩み寄りも、思わず口をついて出る。
大天才と身近に仰ぎ見ればこそ、そういう人間的な身じろぎがなかなか目に入らなくて、その波紋がようやく心底に届いたのが、この昼休みなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
ようやく、俺を見てくれた。
八虎はそう啼くが、しかしずっと前から世田助の視界には、どっしり腰を下ろしていたと思うよ。
友情だなぁ…。
血のように熱い青を頬に刻みながら、八虎はスケッチブックに/スケッチブックで語りかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
己を評価する存在に、あるいはそこまでのし上がってきた自分自身に。
描くほどに見え、また見えなくなっていくもの。
外側にあるはずの他人に、私を重ねる。
(画像は"ブルーピリオド"第12話より引用) pic.twitter.com/nIG56XLBMS
優等生が覆い隠し、溜め込んでいた思いは堰を切って溢れ出し、八虎は思いの外お喋りな自分と出会う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
それは透明で頼りなく、目の前に在るモデルに…私以外のすべての人とどこか似通った、普遍としての”私”に重なっていく。
服を着て己を守っても、脱いでさらけ出しても、どこまでも頼りなく透明。
そんな自分についた色を、率直に作品に預けて問いただす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
俺は、こういう俺なんだ。
八虎にとって美術とは、その一言を言うためのメディアなのだろう。
彼はそれと出会い、練磨し、辿り着いた。
それは答えでも終わりでもなく、どこかに続くための一つの頂き。
そこに主人公を押し上げた青年が、”あたし”の外骨格に頼らず、制服で学校に来れているの嬉しいな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
結構やるやつと見込んだ男を、龍二は信じて待つ。
別れていく道の先で、また合うこともあるだろう。
(画像は"ブルーピリオド"第12話より引用) pic.twitter.com/wYnlx4jEQI
反省はあっても、後悔はなし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
そんな成長を恩師に届けてなお、八虎は世田助との対話を鏡にして、『受かると思っていなかった自分』を見つけ直す。
長い長い木漏れ日の季節が終わって、光に満ちた場所に漕ぎ出していく。
合格。
それが、このお話の結末だ。
あんだけの作品を仕上げてなお、全く己に自信がないままフラフラ進んでいくのは、大変八虎らしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
迷い道をフラフラくぐり抜けて、まだまだ続く旅路を進む。
そのとき美術は杖であり、彼自身を刺す凶器にもなるだろう。
それでも、八虎は描き続ける。
そんな道程を見据えつつ、ともかく合格目出度いッ!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
恩師大葉最後の言葉を受け取り、友に抱擁される裏で、流れる涙。
勝者の影になる敗者を描くからこそ、それが誰かの”せい”ではないと強調してきたのかな、とも思う。
(画像は"ブルーピリオド"第12話より引用) pic.twitter.com/ecc0Jfpza9
予備校で共に学んだ者たちも、それぞれの道へと進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
青春の頂点を超えてなお続くものに、視線が延びる終わり方…であると同時に、しっかり”完成”した満足が漂うのは、やっぱ良い。
つーか橋田、なんだその女達は…。そら世田助も電話切るわ。
お話の最後は、天使の総評で終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
あんだけ焦がれた森先輩と、やっぱり会えないのが運命的で好きだ。
溺れるものに手を伸ばすような距離感も、会えないまま作品で繋がっていく間合いも、どちらも豊かでいい。
(画像は"ブルーピリオド"第12話より引用) pic.twitter.com/B3Ec0JCROn
『久々に色ついて動いて声が乗ると、森まる反則的に可愛いなッ!』と、八虎の気持ちも判る…判るのか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
外野席から愛でてるのとは、明らかに異質な熱量と執着、それを飛び越えた清廉で八虎にぶっ刺さっとるからな、このチビッ子。
そういう意味でも、八虎を美に導くミューズなのだろう。ほんと可愛い。
『この絵をどう思うかな』と、恋文のように虚空に投げた思いに『いい絵だね』という答えが返っていることを、八虎は知らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
でも森先輩がそう思ってくれる絵を描けたことは、八虎にも伝わっているだろう。
このお話は、透明な自分に色を付けたかった青年が、そんな絵を描けるようになるまでの物語だ
というわけでブルーピリオドアニメ版、無事完結いたしました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
大変良かったです。
僕はアニメ化の報を聞いて原作を読んだ読者ですが、色々取りこぼした部分はありつつ、八虎の青春奮闘劇にしっかり的を絞って、語るべきを語れたアニメだったと感じます。
八虎が描く絵、出会う絵それ自体が答えであり問いかけになる作風なので、3D表現を最大限に活用し、その質感や体温がしっかり伝わるよう整えていたのは、とても良いことだと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
八虎と一緒に、良くわかんねぇ所から一歩ずつ”美術”解って、でも解りきらねぇ道程は、見てて楽しかった。
やっぱ八虎の造形が、大変良くて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
何かと感性で描かれがちなアートに優等生が切り込んでいくことで、新鮮味とわかり易さが生まれていました。
等身大に思い悩みつつも、出会いと恩義を忘れぬ清廉な人格が、彼を中心に回る物語に爽やかさを与えてくれました。
自分だけが出逢った感動を、他人にそのまま伝えられる青い渋谷の絵。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
心地よいものだけが大事ではなく、己を引っかき傷つけるものも縁なのだと、赤く伝えてくる溶鉱炉の絵。
そうやって縁取られた輪郭が、透明で頼りない自分に少しづつ色がついていく、泣けるほどの喜びを宿す裸婦の絵。
八虎が話の要点で描き出す絵それ自体が、彼の人格、成長、境涯を伝える見事な表現となっていて、雄弁だったのはとても良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
美術家の物語として、作品で語る無言の説得力がちゃんとあるのは、凄く強い背骨でした。
そんな伝え方が、生きるの下手な八虎に良くあってんだ、また。
周囲を彩る群像もまた個性的かつ生き生きとしていて、皆魅力的でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
『そらー人生狂うわ』と納得する森先輩の存在感、魅力的な異物としての世田助と龍二。
同年代の仲間たちの書き方もいいけど、彼らを守り導く大人の描画も、プライドと優しさがあって大変良かった。
作画面では色々苦心が滲む部分もありましたが、絵画的なレイアウトを活用し、青年たちを包囲する世界の息苦しさ、そこから開放されていく光の眩しさが、要所要所ちゃんと生きていたのは良かったと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
正直崩れてる部分もあったけど、伝えるべき所では勝負できてたので、まぁ良いんじゃねぇの。
色と動きと声がついて、漫画で見た物語がヴィヴィッドに動き出すアニメ独自の喜びは、上手くうねっていたと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
特に八虎と龍二、森先輩はドンピシャの声が上手く刺さって、大変良かった。
やっぱ花守ゆみりの掠れた演技、ズバズバ心をぶっ叩くんだよなぁ…いくらでも摂取したい。
優等生の人生を捻じ曲げる、美術の引力を主題に据えた物語なんですが、”芸術”とされるものの外側にある輝きを、忘れず描いたことは良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
八虎の社会性の高さ、パット見のチャラさへの反発もしっかり彫り込みつつ、龍二や世田助を通じて”芸術”一本の危うい脆さも、ちゃんとフォーカスしてた。
そしてやっぱ何より、苦悩し燃え上がる青春の血潮が赤く青く、鮮烈に描かき抜かれたのが、一番強いわな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
色んなモノに道を塞がれ、それをぶち壊す希望を偶然であった運命に、惹起する己自身に見つけて、体当たりで挑む輝き。
それはやっぱり、とても好ましく眩しい。みんなキレイや…。
大学に進んだ八虎が、まーたどんな場所に足取られて悶えるかをアニメで見たい気持ちは、勿論ありますが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月21日
ともあれこの一つのピリオドまで、アニメを運んでもらえた喜びに感謝しつつ、お疲れ様を言いたいと思います。
ありがとうございました、面白かったです!