よふかしのうた を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
”普通”からドロップアウトしかけの中学二年生、夜守コウはある日深夜の街に繰り出し、謎めいた女と出会う。
吸血鬼・七草ナズナとの出会いが、少年の人生をどう変えていくのか…というお話。
”ヴァニタスの手記”に引き続き、変則な吸血鬼譚を板村監督がアニメ化である。
ややスローペースな漕ぎ出しで、コウくんが”夜”に滑り出した記念すべき一日を、丁寧に追いかけるスタートとなった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
様々に色を変える”夜”の描き方が大変鮮烈で、やはりヴィジュアルの圧力と説得力が頭抜けて高い。
(画像は”よふかしのうた”第1話から引用) pic.twitter.com/OOUObEVd2B
世界と軽薄に、適当に適切に上手くやれていたはずの少年が、初めて足を突っ込んだ失敗体験。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
自分は生きるの上手くないという、痛みある発見。
灰色をしていた夜は、微かなタブーをスパイスに様々な色に輝き、吸血鬼という異形の存在に、七草ナズナという女に出会ったことで、グッと輝きを増していく。
そういう異郷としての夜、テーマパークとしての非日常で筆を止めずに、ナズナさんとの関係が構築された後、ビカビカ過剰に輝いていた世界が緑色の落ち着きを取り戻し、コウくんの新たな日常として動き出す所まで、画面は精妙に制御され続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
世界を満たす輝きと闇は、少年の心の反射だ。
夜更かし、お酒、オンナ、エッチな誘惑。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
EDでCreepy Nutsが歌い上げる歌詞そのままに、面白くもない日常を飛び越えて、なにか特別な体験をくれそうな美しい夜。
その怪しい魅力が、とても良く作画されていたと思う。
夜の街それ自体を、主役として立てる第一話…というか。
家族も学校も受け止めてくれない、なんとなしの違和感。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
14歳という年齢設定が絶妙に、押し付けられた普通からはみ出して、でも自分だけの答えが見つからない夜の散歩を下支えする。
ヨルくんが優等生のレールから足を踏み外したのは、恋の対処をミスったからだ。
眠れない、居場所がない、何を間違えたかわからない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
そんなフラストレーションを溜め込んで、街に繰り出した少年はアルコールよりもっと危ないものと出会う。
吸血鬼であるナズナさんは、彼の不安定と逸脱を肯定し、軽やかに合法的にトバしてくれる。
…いや、法とかを大きく飛び越えた存在だけどさ
吸血鬼という特別な存在になるためには、コウくんはナズナさんに恋をしなければいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
しかし彼は、恋が分からないからこそ日常から逸脱した迷子だ。
自分の内側に生来、恋する機能が備わっているかもまだ確かめていない14歳の子供は、”将来の夢”を叶えるために頑張って恋しようとする。
この感情やや置き去り、世間の定形かなり無視な、ラブコメディというには冷笑的で幻想的で思弁的なお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
コートを脱いだナズナさんの、スラッとした身体が示すように、ありがちに見えてかなり独自の角度から青春を狙っている…と思う。
(画像は”よふかしのうた”第1話から引用) pic.twitter.com/ZCNVkcJWty
この第1話で強烈に示され、おそらくアニメ全体を貫通するモチーフとして扱われているのは、上下の転倒だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
吸血鬼の異能は常識と重力を引きちぎり、お姫様のように少年をエスコートして、軽やかに天地をひっくり返す。
白けた教室では見えなかったものを、両手を広げて差し出してくれる。
OPで歌われ、また見事にヴィジュアライズされている”堕天”とは、通り一遍の意味をちょっと超えた使われ方をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
天から堕ちるのではなく、天に堕ちていく。
重力がさかしまになり、価値観がひっくり返り、昼に生きるはずの動物が夜を彷徨う。
逆立ちして魅力的な世界へ、コウくんは飛び込む。
そういう逆しまな体験から、迷えるコウくんは何を学んでいくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
恋がわからないのに恋をしようとして、異形の怪物にリードされて、破滅的なドロップアウトなのに面白くて。
怪物との終わらない祝祭、延々回転を続ける眩いテーマパーク。
そこに、思春期真っ只中の少年は魅入られた。
それがただ異様なだけでなく、ダウナーでコミカルな、新しい日常としての味わいを持っていることも、ナズナさんとの肩の力が抜けた掛け合いとか、ただ眩いだけでない夜の書き方とか、色んなとこから見えてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
ナズナさんに導かれて舞い上がる心は、ゆっくり眠るための準備運動でも在る。
昼夜逆転の世界に安らぎを覚えるのなら、それは逸脱者としての資質が元々、コウくんにあった…ということで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
ツルンと可愛らしいショタ顔の奥で眠ってる獣を、どう書くかも楽しみである。
超越者ッ面を頑張って作ってる、ポンコツ吸血鬼の弱い部分もね。
ぐるぐる上下を入れ替える、真夜中のローラーコースターに慣れてきたら、自分をエスコートしてくれたかっこいいお姉さんが、吸血鬼なりの悩みとか苦しみとか、けして超越出来てない人間臭さを持ってることと、ちょっとずつ向き合うことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
その手触りを、アニメがどう切り取ってくるか。
そこが今回のスペクタクルの次に来る、大事な焦点かな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
転倒し、価値逆転を果たし、何もかも生まれ変わったように思える世界にも、安らぎを求める心と、それを乱すヒトの宿命ってのはやっぱりあって。
その予感をしっかり、緑色の公園で作画できてたのは、自分的に良かった。
こうして書いてみると、僕はコウくんが天と地、昼と夜、日常と超越の間でフラフラ迷いながら、恋がよくわからない自分、特別な存在になりたい自分に向き合っていく部分を、作品の核と捉えているようだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
第1話の落ち着いた滑り出しは、そういう所に向き合ってくれる予感を、心地よく強くしてくれる。
コウくんから眠りを奪っていた、真っ白な違和感が夜に溶け出して、初めての夜が輝いて見える瞬間を切り取った後に来る、おもしれー女との危険な夜遊び。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月8日
そこに在る安らぎと変化を、どう描くか楽しみになる第1話でした。
次回も楽しみ。