よふかしのうた を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
君には早朝で、僕には深夜。
空が白む頃にもう一度であった幼馴染が、少年と吸血鬼に微かなノイズを生み出す。
何に怒って、何処を目指すのか。
夜以外の場所を思い出してくると、眩く見えてくるものが、確かにあるのなら。
そんな感じのミッドナイト・アーバンライナー、胸騒ぎの第3話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
ってもド派手なことは起きず、友情とも愛情とも同情ともハッキリしない感情が、少年と女二人の間に流れ何かを選ぶわけでもなく、しかし口づけは為される。
作品の魅力である、境目を明瞭にしない曖昧さ。モラトリアムの微温。
二話描かれることのなかった昼の街、当たり前の風景が思い出とともに削り出されていくことで、わざわざ夜を選び留まる理由、なずなちゃんの隣にいる意味が、しっとり見えてくるような回だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
アキラは当て馬ポジなんだが、花守さんの声も活きてしっかり独特の存在感残しているのがグッド。
コウくんは夜(を象徴するナズナちゃん)の非現実性に惹かれ、通常ではありえないライトアップを施されたテーマパークとして、高揚しながらそこを駆け抜けてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
天地が逆さまになり、闇こそが眩しく見えるような時間。
このアニメの風景は、全て情景だ
(画像は”よふかしのうた”第3話から引用) pic.twitter.com/U3MvKBwjWb
哀しみのトランシバーを通じて、そんな夜の申し子(候補)を当たり前の光の中に引き戻しかけるのが、縁の切れかけていた幼馴染である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
前回の演出を引き継ぎ、コウくんはアキラと向き合う時も、光から離れて影の中にいる存在として描かれ続ける。https://t.co/MVvWL7SUKJ
そこに宿っているのはまっとうな人間の幸福、離人した感覚がしっくり合致する瞬間であり、理由もわからないまま離れていったしまった現実感を、もう一度取り戻せるかもしれない期待だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
ナズナちゃんが光の側に立つのは、良く解る。
恋人候補だし、エロいし、面白いし、ハンサムだと書かれてきた。
しかしせっかく出会ったそういうモンを引っ剥がし、コウくんを白けた昼に戻すかもしれないアキラもまた、光の側に立つ存在として描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
それは彼女が女で、未だ輪郭定かならぬ恋の対象になりうるから、輝いて見えるわけではなかろう。
たとえ、そういうわかりやすいラベルが付かないにしても…
世の青少年が皆思い悩むような、ありふれてだからこそシリアスな不安定を、繋ぎ止めてくれる稀有な存在。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
幼さを込めたトランシーバーで、古ぼけてしまった関係性を蘇らせて、今自分がたしかにここにいる、ここにいて良いんだという感覚を与えてくれる友だち。
そんな(あるいは、そうなりうる)存在として、アキラはナズナちゃんに負けないくらい魅力的に描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
どこかエロティックな香りを残しつつも、性差と欲望を超えた不思議な温もりが全面に出て、あり物の”恋”ではなく彼ら独自の関係が脈打っている筆は、やはりこの作品の魅力だ。
コウくんは恋に対してと同じくらい、友情に対しても生真面目に考えすぎて、足踏みをする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
世間一般に与えられてる答えを、思考停止して自分に引き寄せることが出来ない。
そういう自分が確かにいることを、学校での事件、ナズナちゃんとの出会いが暴いてくれた。
しかしその先に何があるかは未だ理解らず、それでも答えを知りたいと、夜と昼の間をウロウロし続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
『好きにならなきゃいけない』という義務感が、どうしても視線に混ざるナズナちゃんとの関係。
今回アキラを間に挟んで、コウくんの生真面目な青春散歩が描かれることで、その画角も少し変わる
翻弄し、追いかけさせ、あるいは助言を与える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
トランシーバーを置いたということは、誰かと繋がりたい気持ちが確かにあったからだ。
コウくんは上手く捕まえられない自分の輪郭を、ナズナちゃんと向き合う中でチョトずつ見つけていく。
そこには恋も性欲あるだろうし、名前のない不定形の感情もある
分かりにくいけども確かにそこにある、不確かな怪物をそのまま抱きとめて、確かな自分の輪郭をなぞっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
コウくん二人の異性に挟まれ、性別を問わないモヤモヤした道を進んでいく中で、眩しく見上げるもの。
三人目の存在が関係性を撹拌する中で、それが見えてくる。
露骨なエロネタで心の柔らかな部分に触れてくるのを避ける、おどけて臆病なナズナの仕草。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
SDも可愛い即物的な距離感の裏で、朝焼けの街で逢引する幼馴染の秘密が、紫色に踊る。
そこはもう現実の色彩ではなく、夜の高揚感、その延長線上で塗られている。
(画像は”よふかしのうた”第3話から引用) pic.twitter.com/HQ21b3KHin
久々なのに色んなモノを瑞々しく思い出し、己を預けられる関係の間には、確かに境目がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
ベンチに刻まれた小さな手すりは、コウくんとアキラの気持ちが隔たりなく、完全に通じ合うにはまだ遠いことを語ってくる。
その時、間を取り持つ”三人目”の立ち位置には、ナズナちゃんが座る。
自分が何者であるか、彼女とどんな関係であるかを三角測量するために必要な、触媒としての第三者。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
図られる第二者と同じく、それは入れ代わり立ち代わり、相手がいればこその変化を促進していく。
アキラという第三極が現れたことで、コウくんとナズナちゃんの距離感は新たな顔を見せ…
あるいは停滞していたコウくんとアキラ、思い出、友情、昼間の当たり前の生活との関係も、描かれ直していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
今コウくんとアキラの狭間にあるものは、エロい格好した変な女がいればこそ変容していくものであり、そういう立場に立つことで、ナズナちゃんも己の思いを活性化させていく。
女達が入れ替わりながらコウくんと己を照らしていく中で、主人公は世界を観測する第一者としての立場を動かさない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
世界の色を己の高揚感で染め、思い悩み考える主観はつねに、コウくんにある。
彼が夜に(あるいはアキラとの朝焼けに)見ている高揚の紫は、女達の視界でも同じ色なのか?
これの答え合わせを、この作品は(おそらく、まだ)しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
あくまで生真面目に自分と人生に思い悩み、それ故憂鬱にも高揚にも踊れる青年の主観が、目の前の存在と重なり合っているか。
その答え合わせ…自分が一人ではない実感は、まだ先の話である。
しかし確かに、予感はある。
恋だの陳情だの逸脱だの、七面倒くさい事を考えていなかった…死体を運ぶ堂々虫を見ていられた子供時代、コウくんの昼はそこに隣り合うアキラと合わせて、とてもまばゆかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
自然な色彩で、当たり前に幸せな二人だけの友情、満たされた幼年期。
(画像は”よふかしのうた”第3話から引用) pic.twitter.com/Bk1dqiHRiO
それを連れてきてくれるはずの存在との思いがズレてて、しかし哀しみのトランシーバーはたしかに、もう一度音を拾った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
自分を心配してくれた存在と、深夜と早朝にすれ違いながらも出会い直して、その手触りを確かめるチャンスが来た。
それは、魅力的な夜から出ていくことを意味するのか?
答えは何も定まっておらず、全く異質で異様な夜の気配が、午前四時にはまだ満ちている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
見せつけるよな吸血行為に、フードをあえて外しての欲望の発露に、ナズナちゃんが何を感じているか。
それは、コウくんからは見えない。探らなければいけない。
(画像は”よふかしのうた”第3話から引用) pic.twitter.com/j2jVQObZE7
これみよがしにジョッキをあおり、お互いの関係性を図り合うカフェの景色も、赤い色合いに染まっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
それは実は(これまでの情景が全てそうであったように)コウくんの見ている世界ではなく、ナズナちゃんの怒りと嫉妬と情欲…と、わかりやすく割り切れない、複雑な感情の色だろう。
一見コーヒーに見えて、良く見るとネコ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
カフェに立てかけられただまし絵は、彼女が懐き押し付けてくる感情と欲望、それが生み出す関係性の魅力的なあやふやさを、上手く図示している。
勝手にまくし立てて、追いかけるのを待っている、ズルい存在。
猫もまた、夜の一族である。
吸う/座れる、夜に居残る/昼に戻る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
/で切り取られた選択は奇妙な不協和音を呼び込み、ナズナちゃんは金も払わずカフェを飛び出す。
それはアキラではなく自分の側に、コウくんを引き寄せたいからのズルい仕草で、しかしそれが恋であるなら、『吸血鬼になる』という夢は、この物語はもう終わってる
”吸血鬼化”という、コウくんの奇妙で真摯な夢が、恋を判断する機構としても機能しているのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
彼が夢を叶えられない間/人間でいる間は、ナズナちゃんとの間柄は恋ではなく、そこに分かりやすいラベルはつかない。
逃げているのに追いかけて欲しくて、恋ではないのに追い求める。
そんな奇妙な関係性の只中で、自分たちをお互い照らしながら探っていく時間を、少年と少女と吸血鬼は贅沢に楽しんでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
その曖昧な豊かさこそが、コウくんが真夜中の空気に惹かれた理由かもしれない。
コウくんは優しく、自分の顔を見ながら昼への帰還を誘うアキラを置き去りに、夜を駆ける。
その色合いは赤から紫、緑、黄色と複雑に変位し、Creepy Nutsのいい曲を背後に流しながら、現実的な総天然色へと落ち着いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
なぜ追わせて、なぜ追いかけているのか。
自分の心と、相手との距離を探りながら、街に迷う真夜中の散歩。
(画像は”よふかしのうた”第3話から引用) pic.twitter.com/rFZAoHfW2N
美しい遠景にぽつんと、小さくたった一人コウくんを置く構図が、彼の自由と孤独、それを埋めうる存在への渇望を照らして、大変に良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
ナズナちゃんは星空に一人、遠く高く手の届かない場所に飛び上がって、コウくんから距離を取る。
その超越的遠さが、今や彼の夢でもある。
このアニメの風景が現実そのものではなく、登場人物の心象として投影されている以上、描かれているものは思われているものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
そこで一瞬、コウくんが未だ鏡に映る存在だと示すカーブミラーのカットがあるのは、自分的にはとても興味深い。
七草ナズナは、このように鏡には映らない存在だからだ。
必死に走り追いかけながら、アキラが差し伸べた優しい掌をなぜ置き去りに、なぜナズナちゃんを追っているのかを、コウくんは考えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
ナズナちゃんが連れてきてくれた夜の色が、まだ世界に残っていること。
そこに/彼女に、自分が惹かれていることを思い出し、鏡に反射して認識し直す。
こういう動的で美しい形で”内省”を描くのが、このアニメの筆致なのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
原作を現代伝奇ジュブナイルとして、凄く尖ったセッティングを活かした普遍的探究として捉えてるからこその筆致だと考えると、好感であり期待も高まる。
そういう話だと思うんだよなぁ…”よふかしのうた”。
追いかけ走って転んでも恨めない、翻弄されることすら楽しい、面白い女(ひと)。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
ナズナちゃんとの距離感探究は、昼と夜の間にとても綺麗な色を載せて、しかしそれはこれまでコウくんが世界を染めてきた極彩色とは、また違うナチュラルな色だ。
(画像は”よふかしのうた”第3話から引用) pic.twitter.com/UkPA26kkuF
河のように都市を流れる道路を横切る、陸橋という境界線。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
その端と端に位置する二人を鳥瞰で切り取りつつ、その距離は迷ったからこそ見つけた光によって、追いかけたからこそ流れる血によって縮まり、口づけがなされる。
昼の友だち、夜の友だち。
どっちもとても大事で、本当のことだ。
それを確かめたから、ナズナちゃんと再会する朝焼け自然の色合いのまま、あの魅力的な夜にも負けないくらい、本来の自分でいられたアキラとの思い出のように美しくて…特別な予兆を孕んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
友達同士ではしないチューは、血の匂いを宿して摂食でありまぐわいでもある。
その行為にナズナちゃんが、どんな感情を込めたのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
あの公園での、これみよがしな吸血行為とは何が違っていて、何が同じなのか。
コウくんは今後も、唇越しに送り込まれた爆弾を抱え込みながら、色んなものに迷い、探る。。
赤い空間に置き去りにした、アキラとも再会するだろう。
夜の友だち…と言い切るには、内面も行動も規格外で、簡単には名付けられない存在だけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
アキラとの出会いで乱された、ナズナちゃんとの距離感を、真夜中の追いかけっこで整理したことで、触媒となったアキラとの…彼女が背負う”昼”とも手を繋ぎ直して、新しい距離感を構築できる。
したいと願う。
そんなスタートラインへと、コウくんを引っ張り出す話でもありました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
ともすれば魅力的な真夜中/面白くない昼間と切断されてしまいそうなセッティングに、優しく橋をかける三人目として。
吸血鬼と少年の関係と感情をかき乱して、そこに宿ってる真実を引き出す触媒として。
あるいは微かに、恋の予感を孕んだ青春の当事者として。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
アキラの存在感をしっかり描き、それをテコに主役二人の陰影を深めていく、良いエピソードでした。
色んな人がいて、色んな思いと関係が化学反応するから見えてくる、色んな色合いの情景。
アキラが居るから生まれた景色は、とても良かった。
主役二人の間柄があまりに完成度高く魅力的なので、そこで延々足踏みしてしまいそうな閉じた危うさも宿すこの話ですが、アキラという初の第三者を上手く描けたことで、転がっていく面白さ、変化していく活力も宿っていると、しっかり示せたと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
それでも、永遠の夜にとどまりたいのは何故か。
そういう問いかけが意味を持つのは、夜だけじゃなく昼も魅力的なのだと、女達に象徴させながら描けているからで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
そういうモノが入り混じって描かれる、このお話だけの、コウくん達だけの思いと関係性。
”恋”とか”友情”とか、あるいは”怪物”とか。
そういう””付きの固定観念で思考停止して、自分だけの瑞々しい感覚を、それが溢れ出した夜の色合いを諦めたくない子どもたちの物語は、いい具合に加速を始めています。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
こういう重たい思弁性、青臭い青春味をスタイリッシュに都市的に切り取れるのは、やっぱ板村監督の作家性とセンス…かなぁ。
想定した以上に『Creepy Nutsのアニメ』でもあると、新曲のPVとしてもいい仕上がりで使って教えてくれたこの話数から、どんな夜と昼が踊っていくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月23日
次回も大変楽しみです。
やっぱナイーブな筆捌きと、ポップで小気味いい笑いを同居させてるバランス感覚好きだな、俺は。