リコリス・リコイルを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
リコリコで共に暮らしながら、縁を深めていく千束とたきな。
買い物に水族館、楽しいこといっぱいの日常の裏で、きな臭い闇が蠢き始めていた…というエピソード。
竹内哲也コンテ演出、つえーアニメーターが山盛り参加し、三話以上の勝負回…だった気がする。
色んな意味で手際がよく現代的なこの作品、お話の進みは無駄な淀みがなく、シャープでクイックだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
フツーの話なら超天才少女クルミちゃんが店に馴染むまで、一話使っちゃいそうなところだけど、そういうのはサックリ済ませ、彼女の適応能力の高さ、ダウナーな外面に似合わぬ社交力を活かす。
今回の冒頭も、前回好きになったDAコンビとの関係性をゲームを通じてサクッと描写して、余韻を残しつつ先に繋げている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
リコリコとDA、自由と秩序。
立場は違い、顔合わせればいがみ合いばかりだけども、少女たちは魂の深い部分で繋がっている。
そういう何気ない絆は、今後待ち構える危機で生きる。
サクサク物語を転がして、生まれたスペースで何をやるかというと、キャラクターの心情を景色に反射させながら、じっくりと染み込ませるのに時間を使っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
DA以外に居場所がなかったたきなが、千束とリコリコに出会い、自分で進む道を選ぶことで、何を見つけて何を喜ぶのか。
そんな風にたきなを変えていくことで、強く見えて脆い部分のある千束はどう成長していくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
この人間模様はサクッとは終わらせず、時に湿り気を宿し、時に爽やかに明るく、出会えたからこその奇跡を丁寧に眩しく積み上げていくのが、このアニメのスタイルである。
上手くメリハリが効いているね。
全体的なデザインがモダンで垢抜けているので、日常描写が嘘っぽくならず、しかし埃っぽい現実感を半歩飛び越えて、なんかキラキラしているのも良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
こういう筆で描かれる日常には、眩しく見上げたくなる明るさが宿って、そこに身を置く子どもたちがとても幸せに見える。
あの世界のろくでもなさを考えると、この幸福はひどく儚いもので、銃弾と爆薬で簡単に壊れてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
地下鉄の瓦礫に埋葬された、名もなきリコリス達は、たきなや千束の明日の姿かもしれないのだ。
そういう明暗を、明るいデート回にしっかり埋め込んでくるのは、銃を扱うお話としてかなり大事だと思う
千束はたきなの人生全領域を背負う気合で、不器用な戦闘用サイボーグと向き合ってる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
コミカルに描かれるおパンツ騒動は、友だちというには踏み込み過ぎな部分まで、千束という人が自分に引き寄せ面倒を見る…けど、その重たさをたきなに押し付けない軽やかさを、上手く演出してくれた。
超天才で軽薄な千束は、さじ加減間違えると凄い塀と稼ぐキャラなのだが、適度にバカで適度に優しい所が、上手く毒ッ気を抜いて可愛げに変えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
これは安済さんの声と芝居がキャラにベストマッチしていて、声と動きがお互いを引き立て合う最高の座組なのも、強く影響しているだろう。
千束のキャラが良いので、たきなが彼女に惹かれ、彼女によって変わっていく事に納得がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
こういう人が隣りにいたら、殺伐とした人生を強いられてきた孤児にも、明るい光が見えるだろう。
そう自然と思える造形なのは、キャラ単品で終わらず物語全体に敷衍する、作品の強みである。
騒がしくも楽しい、私服で過ごす日々。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
たきなはDAでは見せなかった柔らかな表情で空を見上げ、自由に飛ぶ鳥と、崩れてなお美しい電波塔に微笑む。
その視線の先にはいつも千束がいて、その引力にずっと引き寄せられている。
(画像は”リコリス・リコイル”第4話より引用) pic.twitter.com/QuTgwbXkQz
たきなが何を見ていて、何が見えるようになって、そうやって広がった世界を、変えてくれた相手をどう感じているか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
ここをずっしり見せるために、他の要素を小気味よく展開させ、スペースを作っている構造だ。
二人の関係性とその変化が話の主エンジンである以上、正しいリソース配分である。
変化のキャンバスとして、不器用ながら率直で誠実なたきなには、強い魅力がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
変えてくれる千束も好きになれるが、変わっていくたきなも可愛くて、この幸せな日々の先に永遠を約束して欲しくなる。
しかし眩い光の裏で描かれる影は、そんな期待が簡単には叶わないことを暗示している。
浅はかな願いを裏切り、やって欲しくないことをやる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
裏切りのない物語は退屈だが、期待に応えてくれない作品は醜悪だ。
想像していなかった展開を、必然と食わせる。
この難しいバランス取りを、主役たちの魅力に見てる側を引き込み、穏やかな幸福をどっしり追体験させながら、見事にやってのける。
創作の基本であり理想でもある話運びを、かなり精妙なライン取りで実現しつつある強さが、第4話までのリコリコからは太く感じられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
感情移入の作り方、展開の予測のさせ方、期待感の高め方と答え方。
どれも精妙で泥臭くなく、良く作られたアニメだなー、と思う。つえーわ。
今回のデートは二人が同じものを見つめ、お互いの顔をよく見て、そこに浮かぶ色が思わず自分を動かすさまを、丁寧に描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
なーんも考えていないように見える千束が、求める”あしながおじさん”の影。
それを払ってあげたいと、たきな似合わぬ道化の仕草。
(画像は”リコリス・リコイル”第4話から引用) pic.twitter.com/jLA0Damznk
あの『タツノオトシゴ!』は、楽しいこと何もなかった女の子が、自分を楽しい気持ちにしてくれた大事な人のために、不器用に誠実に自分に今出来ることを選び取った瞬間で、あんまりに優しく強くて、泣いてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
それは千束が、今まで自分にしてくれたことの反射でもある。
自分の苦しさに寄り添って、おどけて明るくしてくれるとどれだけ、気持ちが楽になるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
たきなは身を以て教えてもらったから、教えてくれた千束にそれを返した。
そういう事ができる存在に、たきなは変わりつつある。
それはDAを追い出された原因が、仲間を守りたい優しさにあった事と通じている。
あのときは銃弾で全てを薙ぎ払うことでしか、優しさを体現できなかったたきなは、千束とリコリコで過ごす中、優しさの使い方を覚えつつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
それは千束にただ手を引かれ、パンツを買ってもらう一方的な関係から、その手を自分も引いて、肩を組んで一緒に進んでいく道に繋がっている。
千束のオリジンと目的が見えたことで、彼女の根っこにある脆さ、それをいつか護り補うだろうたきなの存在意義も、穏やかな日々の中強く描かれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
あまりに幸福で、永遠であってほしいと心から願う、美しい空と水の時間。
しかしそれは、東京を覆う暗雲と常に重なる。
千束に殺しの天才を見出し、陰日向に彼女を導くシンジの影が描かれるのは、少女たちがデートするのと同じ、水と魚のある情景だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
テロルによって東京の欺瞞を暴こうとする男も、たきなが見上げたのと同じ空を睨みつけている。
(画像は”リコリス・リコイル”第4話から引用) pic.twitter.com/ieHswWL711
制服を着ていなければ、私たちはリコリスじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
そううそぶいても、暴力と謀略の長い影はふたりに強くかかって、幸せな時間が長く続かないことを上手く暗示している。
最高の女女デートを演出するセッティングを、ヤバいオッサンのヤバさ書くのに活かす演出巧いよなぁ…。
冒頭、命中率最悪の特製弾をあえて使ってる描写を入れたことで、シンジが千束に求める”殺しの天才”がひどく残酷に、彼女にまとわりついていることも際立つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
DAに言われるまま殺し殺されをしてたら、才能を発揮していたら、白色テロリストとして千束は歴史に残っていただろう。
だがそれはとても嫌なことで、そう感じたから千束はDAを離れ、殺さないリコリスとして生きようとしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
その決意を後押ししてくれた相手が、千束に最悪の殺戮者であること、”才能”を花開かせる事を望んでいると、少女は知らない。
残酷な構図である。ヒドいコトになるんだろうなぁ…(わくわく)
制服を着ていなければ、世間はリコリスの暴力を看過してくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
私服デートを楽しむための魔法に思えた『制服を着てなければ、リコリスじゃない』は、たきな達が囚われた歪な檻を、DAを離れてなお継続する庇護を、上手く照射する。
人しれぬ地下で行われ、死体ごと隠蔽される暗闘。
最高に楽しいデートが成立した、穏やかで平和な社会を成り立たせるため、積み上がっていく嘘と血。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
東京に咲く徒花を裏路地から見上げながら、さらなるテロルを誓う男が、そこに穏やかな幸福を見たたきなと、どう交わるのか。
外野席からテロルの現場を見過ごしたからこそ、激突の予感は強い。
第2話でいい味出してたロボ太も再登場し、癖の強いヴィラン連合が今後暴れそうな気配も香って、なかなかいい感じである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
ただのデート回としてまとめても最高だったと思うけど、抜け目なく情報開示と謎の提示、展開予測の種まきをやり遂げてて、時間の使い方が上手いなぁ、と思う。
各種素材の活かし方、重ね方がやっぱ上手くて、冒頭ではリコリコ組とDA組の絆を描くVRゲームが、後半ではクルミちゃんが事件の真相に迫るための武器として、顔を変えて再登場したりする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
幸福な遊びに思える場所の側に、剣呑な危機が常にあって、それでもこの幻を失いたくはない。
そんな二人の現状を、凄まじい精度で描き切るエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
千束とたきなはイチャイチャしてお互いの生き様を示すのが仕事なので、その裏側でひたすらクルミちゃんが情報を調べ、真相に近づく仕事してる構造が面白い。
完璧なPC3だよぉ…(FEARゲー脳)
実際クルミちゃんが規格外の情報処理能力をフル回転させて、調査を自分のモチベーションにしてくれてるおかげで、超人が集うリコリコの格も際立つし、ハッカーとしての彼女のキャラも立つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
国家機関が太刀打ちできない情報を、ガジェット駆使して踏破していくクルミちゃんは、なかなかかっこいい。
このクールなキャラ立てが、お互いを強く見つめ合い湿度高く惹かれ合ってる主役二人と、上手く棲み分けしているのも良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
メインキャラの属性が上手く切り分けられているので、お話が狭くならず、風通しが良いんだよな。
これはたきなが、新たに出会う世界の魅力でもある。広範さは大事なことだ。
一個一個のパーツの削り出し精度も凄いんだけど、それを連動させて高いトルクを生み出す手腕が、特に良いんだな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
たきなと千束のイチャイチャが、この薄暗い世界でどんな意味を持つのか。今後どう試されるのか。
そういう風に、描写の活かし方を考えて話を編んでいる。好みのタイプだ…。
言葉の裏の意味とか、美しい情景を薄暗く描き直す筆とかが元気なことで、個別の描写の存在意義もより強くなるしね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
仕上がりの良いパーツが全体を構成し、よくまとまった全体構造がパーツの機能を理解させる。
そういう共犯が、大変的確で精密なアニメだと思う。
というわけで、大変楽しいエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
千束とたきなが掴みとった日常の輝きを、コミカルに流麗に描くだけで終わらず、明暗半ばする世界観の提示、幸福の裏にある火薬の匂いを、しっかり伝えてきました。
ここから彼女たちの運命が、どう転がっていくか。
次回も楽しみです。
追記 雰囲気づくりのための空言と思わせておいて、こういう形でお話のフレームを見てる側に染み込ませていく手腕、巧さのカドを徹底的に取ってて、プロの仕事だなーと思う。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年7月24日
メシにまつわる日常会話にひっそり『DAは宮内庁から人が降りてくるくらい、政府中枢とべったり』という情報を混ぜ、リコリスに国権をアウトソースすることで成り立ってる”東京”のヤバさ歪さが見えてくる脚本。
情報圧縮力と伝える力強くて凄いなぁ、と思う。