メイドインアビス 烈日の黄金郷を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
旅は出会いと別れ、学びと喪失の繰り返し。
道に迷ったレグはガブールンに助けられ、リコはマアアさんを伴に村の文字を学ぶ。
町外れ、成れ果てを拒む奈落の底で出会った存在が、導くは”三賢”ベラフのねぐら。
そこは欲望の揺り籠、災厄の褥。
旅と夢の最果て。
そんな感じのえ!? 底値だったはずのボ卿の株が更にどん底に!? という、烈日第5話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
価値と欲望を尊び、夢を残酷に奪い妖しく叶える母なる揺り籠、成れ果て村。
かつて瞳に宿る意志こそが、人の証明だと語っていたベラフの眼窩に宿るもの
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第5話から引用) pic.twitter.com/hzHMgkNi9X
それは何かを見たり、視線を通じて意思を伝える一般的な”眼”ではもはやなく、不死なるミーティーを捕食し喫する器官であり、そんな願いを叶えるためにえぐり出された虚無の穴である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
”ガンジャ”が人間だった時代を前倒しして描くことで、光なき血の色の闇のおぞましさ、悲しさはより際立った。
あんなに立派なことを言っていた人が、今ではミーティーを引きちぎっては食べ、それを餌に子どもたちをおびき寄せ、邪悪な対価を要求する存在へと変わり果ててしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
奈落とは、彼らの村とは、まぁそういう場所である。
人ではいられないほどの苛烈な環境で、それでも消えない夢のカタチ。
それが尊厳や倫理、理性や情愛を押し流し、人を心身ともに怪物へと変えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
ベラフ(と、彼を醒めない夢に落とした母なる村)がおぞましいのは、人が獣になっているわけではない、ということだ。
彼は異質な身体と価値観を手に入れ、人間だった時こだわっていた瞳の光を、確かに失った。
しかしそこには歪ながら計算高い奸智と、捻くれた形ながらコミュニケーションがあり、あの賢き瞳の残滓を、確かに感じることが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
リコが二度と進めぬほどの対価を、ナナチの代金として欲するベラフは、間違いなく人でなしであるが、極めて人間臭くも見える。
一方的に奪うのではなく、全てを捧げても構わない価値を掲げた上で、公平に簒奪する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
自分自身も、ミーティーを複製するために対価を支払う。
弱肉強食とはまた違う、極めて残忍で公平なルールに基づいて、怪物は悪夢をささやき、子どもたちから推進力を奪う。
この揺り籠の中で、たった1つ残った欲望を撫で回しながら、永遠に眠ろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
そんな囁きを届ける側へと、ベラフは落ちた。
なぜ、何があって?
それはこの村の文字を学び、歪んだ異質性の奥にあるものを、自分の目で確かめなければ納得しない奈落の落し子が、暴いていく過去だ。
過去への視線はガブールンとレグ、ワズキャン、ヴエコとリコにも響き合っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
思いの外優しいおじさんだった干渉機に助けられて、レグは村へと戻ってくる。
彼の言葉は謎めいて、その真実は読み難いが、しかし何かを確実に知っている。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第5話から引用) pic.twitter.com/7bvlyxSXar
一方ワズキャンは、人間時代と変わらぬ奇妙な態度でリコを煙に巻き、重なるはずだった手のひらも弾き飛ばされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
成れ果てとしての外見、仕草の一つ一つがロクでもなくて、なかなか信じきれない造形になっているのは大変面白い。
さー彼はどんな欲望に導かれ、こんな存在に落ちたのか。
”ガンジャ”の仲間だったはずのヴエコが禁足地に押し込められ、罪人紛いの扱いを受けているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
他の二人が人の形を捨てているのに、ヴエコが比較的保っている理由は?
過去と現在が交錯する出会いの中で、疑問は深まっていく。
それに応える間もなく、運命は転がっていく。
ヴエコの洞穴へ続く道を拓いたのが、リコの飽くなき好奇心、学習への意欲であるのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
叡智の光はヘッドライトに宿って、闇の中に沈んでいたヴエコを強く照らす。
いい人だろうが悪い人だろうが、友だちの居場所を教えてくれるなら、縛鎖を解く。
そんな燃え盛る欲望も、発破の仕事をする。
リコはヴエコが可愛そうだから、為すべき正義が果たされていないから、泥に潜って鎖を解きはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
ただそこに未知があり、友だち(リコにとっての欲望と価値)を救える可能性があるから、村に囚われた住人が踏み込めない場所へと、足を進めた。
封印された存在を開放し、運命を変えた。
愛と欲こそが大きなものを動かしていくのは、臓物吐き出すほど塩梅良くないのに、リコに同伴したマアアさんも同じである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
思わず壊しかけるほどメーニャに焦がれ、引きちぎられて対価を支払い、それでも立ち止まらずに追いかけた。
成れ果てて傷ついてなお、消えない光。
そういうモノがヒトを導くのならば、闇の奥足を止めていたヴエコに欠けていた眩さは、リコのヘッドライトが彼女を照らすことで、再び燃え始める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
沢山の後悔と罪悪を詰め込んだ、村の醜聞の捨てどころに縛り付けられ、欲望と価値のシステムに同化し、現実は色なき信号としてしか感じられない牢獄。
そこから這い出すことで、ヴエコは”ガンジャ”時代の歩調を取り戻し、探窟家として再度歩みだすことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
そして夢はキレイで正しいものばかりではなく、破滅や残酷を否応なく引き寄せることも、このお話はずっと描いていた。
ヴエコの再起動も、また同じく闇を呼び寄せるだろう。
しかしそれは、欲望に突き動かされ不帰の旅を突き進む者たちには、関係のないことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
己の望む未来を引き寄せ、人倫を踏み倒してでも突き進む力強さは、奈落で先に進むのなら必須である。
しかしそれ”だけ”になってしまったからこそ、成れ果て達は欲望そのものとなり、この村で微睡み続ける。
黒い獣による残酷で圧倒的な精算システムを背景に、欲望を貨幣化しやり取りし、価値を回転させる、閉鎖された村。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
薄い膜一つ隔て、アビスの呪いを遮断する代わりに自閉し発酵し、外側の価値観とは全く異なる夢の揺り籠、悪夢の子宮と化した場所。
その、始まりでありどん詰まりでもある場所。
ベラフの塒に踏み込む強さは、未だヴエコには再生しておらず、過去の鎖も弱きためらいもないリコは、輝く闇の中へと踏み込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
”眼”を残したヴエコが暗い影に閉じ込められ、失ったベラフが眩い光の奥に微睡むのが、面白い対比。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第5話から引用) pic.twitter.com/gscP6z1CjV
ボンボルドが見せつけた本物の不死に魅入られ、己の身体…世界を見つめる目、進むための足、探窟家としての道具を村に捧げて手に入れた、ミーティの完璧な複製。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
村はその死も不死も蹂躙して、対価に見合った夢を叶える。
この奈落で命が絶対などではないのは、死産から蘇ったリコ自身が強く示している
ナナチの酔生夢死、リコに突きつけられた避け得ぬ不具。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
死にはしないけど死ぬより酷そうなものを、ベラフはなんの躊躇もなく、公平な取引として持ちかけてくる。
摂理を捻じ曲げ不死をコピーし、それを餌に子供の人生を奪う事自体が、とうに狂い果てている自覚は、勿論ない。
あの強い瞳に宿っていたもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
リコがミーティと眼球を突き合わせて、魂を通じ合わせ感じるもの。
成れ果て村は、そういうモノをこそ奪う。
そういうおぞましさが、”ガンジャ”時代を描いておいたことで、より際立つ構成でもあろう。エグッ!!
ミーティを手に入れるためにベラフが捧げたもの(村に食われた彼には、もう不要なもの)を、ナナチの対価としてベラフがリコに求めているのが、なんとも皮肉である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
もはや探窟家ではないベラフにとって、足も内蔵も、絶対の価値ではない。
それが喪われれば、先には進めない。
そういう危惧は、村が差し出す永遠の夢に堕ちたベラフには、もう無いのだ、
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
そんな彼に、欲望にふさわしい犠牲を求める公平さがしっかり残っているのは、人間時代の名残か、”三賢”として村のシステムを強く内面化しているからか。
異質なる存在の内側は、なかなか図り難い。
狂ったように突き進み、先が見たいと強く望んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
その意志をくじき、柔らかいものをふみふみしたいとか、不死を永遠に摂取していたいとか、ただただ静止した願望を叶え、奪い、閉じた回転を続ける成れ果ての村。
これが生まれ、成立している理由の深奥には、一体何があるのか。
一体何がどうなって、”ガンジャ”はそれぞれ、人でなしに成れ果てたのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
出会いが深まる今回、そんな疑問も強くなっていく。
リコが自発的かつ積極的に成れ果て文字を学び、知らないことを知ろうとする存在なのは、やっぱり面白い。
やっぱその衝動に突き動かされて、ここまで堕ちてきたのだ。
しかしその歩みを決定的にせき止める簒奪を、ベラフはナナチの対価として求めている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月6日
支払って、ここで立ち止まるか。
支払わず、友を喪うか。
どちらを選んでもおそらく大間違いな決断が、リコの前に差し出されている。
さて、少女は何を選ぶのか。
それとも、選ばないことを選ぶのか。
次回も楽しみ