メイドインアビス 烈日の黄金郷を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
ナナチを取り戻すべく明日を売り払おうとしたリコを、忠告と轟音がせき止める。
村に”呼び込”まれたオオガスミが振るう暴威は、ヒトを喰らい街を飲み込んでいく。
狂える祝祭にただ、震え奪われることしか出来ないのか。
その時魂の白い笛が、高く否を叫んだ。
そんな感じのマジャカジャ株爆上がり! 奈落のアクション巨編な烈日第6話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
異様な村の事情とか、しっとり暗い過去の暗喩とか、スカッとしない展開が続いていた所で、暴れ狂う暴力と暴力。
ワズキャンが”祭り”と形容するのも納得な、強襲オオガスミであった。ジェロイモーYoeeeeッ!!
魅入られたように、探洞家としての未来を差し出しナナチを助けようとするリコだが、悪魔との契約はマジャカジャによって遮られる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
ナナチ自身の静止と、”祭り”の始まりを告げる轟音に引きずられる形で、ベラフから友を奪還するのはお預けだ。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第6話から引用) pic.twitter.com/vjgx9MiyNG
もふもふの可愛い奴らに囲まれ、閉ざされた楽園で生きる無眼の蛇は、”地獄のすみっコぐらし”て感じで妙にメルヘンである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
かつて瞳に宿る志を何より大事にしていた男の末路を見ると、村と欲望に未来を食わせた元探窟家は、数多いるのだと良く理解る。
膜に守られ呪いを受けない代わりに、村の外に出ることも出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
生まれ出る日がけしてこない、閉じた子宮の中で成れ果てたちは、己が価値と思うもの、己の欲望の形によって心と体を変質させ、様々なものを切り捨てていく。
リコがナナチの代金に、己の身体を売り飛ばしていたら…
進めなくなった彼女は(かつてのベラフと同じように)、延々欲望を反響させるだけの幽鬼へと成れ果てていただろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
数多の困難が待ち構え、腕だの良心だのを削り取られ、それでもなお人のまま深奥へと至る、強い決意。
すんでのところで、リコはそれを手放すところだった。(ナナチは愛故に手放した)
これをせき止めたマジャカジャにとって、リコが成れ果てではなく人の子で、欲望の迷子ではなく探窟家であり続けることは、眩い価値になっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
それが彼がかつて人であった頃、望んで奈落に突き進んだ理由…忘れ果てた憧れを反射しているかは、判然としないけども。
ともあれ、地上語を語りつつも不気味なモンスターであった彼は、ここから急速にヒューマニティを宿していくことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
この歩みはリコが村の言葉を学び、村のために外部の知恵、人が人であるがゆえの賢さを活かし始めることと、シンクロしながら進んでいく。
その起爆剤になるのが”祭り”である。
新陳代謝がなくなった生命が死ぬように、村もまた外部から危機を招き入れ、価値の総量を増やす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
生きるも死ぬも埒外の、人倫を超越した村は、人体がドロドロ溶かされ貪られる闘争を”祭り”と言祝ぐ。
それは異様でグロテスクで、力強い。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第6話から引用) pic.twitter.com/xVzrPPUGyU
欲望を反復し続ける村の暮らしは、欲望以外のものを忘却で包む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
過去を記憶し、流れていく時間の中で何かを積み上げることは、この村では難しい。
戦うための知恵も同じで、オオガスミが過去の経験から学んでいるものを、村は置き去りにして微睡み続けている。
それでもその永遠を回し続けるためには、外部から価値を摂取/接種し、闘争し勝利する必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
マレビト…あるいは来訪神のように、外側から訪れるものこそが、停滞している村の価値総体を刺激し、変化を促すのだ。
ドロドロに溶かされる犠牲者達は、そのための聖餐…といったところか。
無論それは村の価値観であり、マレビトとして外部の(人間らしい!)価値観が残っているリコは、破壊も変化の一部と達観は出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
大事な大事な白笛を回収し、これ以上の破壊が広がらないよう、自分が価値だと信じるもののために勇気を振り絞る。
それに呼応する存在も、村には在る。
プルシュカを略奪したように思えて、その真価を発揮するべく研ぎ上げた成れ果ては、工房と一体化して動けない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
迫りくるオオガスミの脅威、逃れ得ぬ個体としての終わりを前にして、白笛を磨き上げたことこそが己の価値であり、欲望達成の絶頂でもあったと嘯く。
己の身勝手な欲望で最高の逸品を作り上げ、それが継がれ冒険の中で生きることで、研師は村のルールからちょっと外れた場所へと、己を押し上げていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
個体の生き死には、”祭り”を飾る花火でしかないこの場所で、自分が自分だった証、それ故どこにもいけなくなった欲望を、自由に移動できるリコへ託す
そこには一方的な価値の簒奪ではなく、譲渡と継承がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
プルシュカという、物品であり魂でもある存在を通じた、変則的なコミュニケーションとも言える。
対話はムーギィ姐さんとも成立し、『市場を守りたい』という欲望が彼女たちを奮い立たせ、リコを守らせる。
欲望と価値だけが乱反射する、短期的で永遠に繰り返す、村の倫理=世界観。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
そこには過去も未来もなく、知恵も戦略もない。
デカい剣を持ち出し、巨体を揺すってあっさり負けたジェロイモーの、ウドの大木っぷりはその限界点を、よく示している。
村で循環する価値だけでは、危機は突破できない。
なので、外なる人たるリコが突破口を拓くことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
貴重な髪を差し出し、光速の新機体に乗り換えたマジャカジャとともに罠に追い込む。
野放図な火への欲望を武器に変え、知恵を駆使して強敵を追い込んでいく。
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第6話から引用) pic.twitter.com/EsRQpAZWLM
市場の軍勢に指示を出す時、リコが村の言葉を使っているのは、とても意義深いと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
それは興味をそそる異質な知識であり、同時に自分と何処かに通ったところがある(はずの)成れ果てと、コミュニケーションを取るための手段だ。
リコはこの異様な村で、誰かと通じ合い、何かを守ろうと願った。
彼女は(結構イカれているが)人間だから、そうしようと願えば意を重ねる必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
こちらの思いを伝え、相手の気持ちを受け取って、相互に何をするべきか、何が大事かを探っていくための手段。
言葉こそが、火や知恵と同じくらい大事な武器なのだ。
そして、もう一つヒトには力がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
擬死からの不意打ちでマアアさんが、なんか聖なる存在の犠牲かのような雰囲気で死にかけた時、形を変えた友達がくれた力。
白笛の響きという異形の言葉によって、呼ばれ強くなった白いレグ。
ケツ汚かったり、勃起しまくりだったりの生臭は、一旦据え置きだッ!
プルシュカが石になるまでの悲劇とか、それが笛に変わるまでの物語とか…色んなモノが相まって、白レグ無双はマジカッコいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
優しいおじさんに保護されたり、ナナチを触りまくったり、何かとダッセェ部分が目立っていたが、キメる時はキメるのが奈落のサイボーグである。頼れるぜ…。
”祭り”が終わり、村はオオガスミの遺骸を解体して価値へと変えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
リコの奮戦がなければ死に絶えていただろう個体が、傷を癒やされて命を繋ぐ。
誰かを慈しむ姿には、欲望の乗り物以上の価値が見えるが…それはヒトの感傷だろうか?
(画像は"メイドインアビス 烈日の黄金郷"第6話から引用) pic.twitter.com/ga6Gre1MR6
愛しさと欲望が加熱するあまり、暴力的な出会いで相手も自分も傷つけたマアアさんが、大好きメイニャに看病されている様子は、なんとも微笑ましい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
しかし状況は震動を続けていて、ムーギィ姐さんにヴエコの異質性がバレる。
お前は誰で、何処から来たのか。
村の古参も知らぬ、真実の深淵。
知ってしまえば変えることが出来ない、決死隊”ガンジャ”の旅の成れ果て。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
その闇に飛び込む時、リコの瞳は好奇に輝く。
あの時ベラフの眼が宿し、自分にもあったはずの、未来を求める意志の光。
それを確認して、ヴエコは昔語りを決意する。
彼女だけが感じ取った、ワズキャンの恐怖を思い浮かべながら
瞳なき異貌の奥で、”三賢”の一人は何を感じていたのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
それを嗅ぎ取れるのは、彼が人間であった時代を知り、その限界も欲望も、身近に感じてきたが故か。
この欲望の揺り籠を維持するためのシステムを編み上げた男が、なぜレグに恐怖するのか。
その真実も、言葉の中にこそある。
かつての自分や積み重ねた罪、成れ果てる前の歴史を覚えていることが、この暗い揺り籠の中、人に近い形と中身を保つ、一つのコツなのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
村の中枢に近い場所に閉じ込められながら、ヴエコは村の成り立ち、”ガンジャ”だった自分を忘れられない。
それは苦悩であり、希望でもある。
あの闇の中一人抱え続けていたものを、かつての自分(たち)に似た星を宿す少女に語り、託し、引き返せぬ道へ押し出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月13日
その決意が彼女と村を、”ガンジャ”かつての仲間をどう変えていくのか。
この奇妙な奈落で過去に立ち戻ることは、未来へ進むことでもあろう。
次回も楽しみ。