シャドーハウス 2nd Seasonを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
真夜中の同期会を経て、亡霊騒動解決に力を貸すことになったルイーズとパトリック。
失われた影の貌を映し出す道具であり、個性と意志を持った人間でもある生き人形と、共に歩む館の生活。
そこに照らされる影も、複雑な色合いで揺らめいていく…。
そんな感じのそれぞれの人格と思春期! ジュブナイル群像劇の真骨頂たる第7話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
同期二人にグッとカメラを寄せ、生き人形との関係、館のルールとの距離感、人格の成熟度、思いの在り方などを、精妙に描くエピソードとなった。
こういうお話があると、作品の立体感がグッと増す。凄く良かった。
AパートとBパート、それぞれ主役権限を貰うことで、二人が何を思い何に気づいていないのか、どう変わりつつあるかがより深く見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
このお話は他者がいればこその自我構築、その関係に宿る尊厳をとても大事に進めているので、他人の心は見えない。
それは推測し慮り、尊重しなければいけない秘密だ。
自分の気持ちをモノローグに載せ、揺るがない真実として語る権利はあくまで己にしかないわけで、出番の多少というより情報の構造として、誰が主役(≒一人称キャラクター)になるかは大事な作品だといえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
ミステリ解決が近づく中で、己を語る権限を二人に与えたこと。
そうすることで、生き人形を道具としてしか見ない存在や、かけがえない他者として尊重できる人…色んな可能性が館の中、大人と子供の中間にいるルイーズとパトリック自身にあることが見えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
顔になってくれる生き人形だけでなく、年長のシャドーも己を鑑み、生き方を改める指針となる。
支配や抑圧だけでなく、敬意や感銘といった絆によっても繋がり、変化していく心。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
それは蜘蛛の巣のように繋がりながら広がって、相互的変化をもたらして行く。
それがケイト達の革命にどう影響するかという、大局的な目線からも楽しい描写…なんだが。
何より、同期の二人がどんな人間であるか、どんな人間になっていくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
その顔が鮮明になったのが良かった。
ナルシストながら無邪気で、人の心に忍び込むのが上手いルイーズ。
傲慢なようでいて臆病で思慮深く、純情で誠実なパトリック。
その魂には、眩い個性が溢れている。
縁がなかったはずのベンジャミンやマーガレットとの出会いが示唆を与え、彼らの世界が確かに変わっていく様子も、風通しがよく素晴らしかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
クソみたいなルールで蓋をされて、館の換気最悪だからな…せめて被害者同士はいい影響を及ぼし合って、前向きに進んで欲しい。
さて前半、快楽主義者であるルイーズは『同期会が楽しかったから』という理由で、ケイトの亡霊騒動解決に協力することになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
彼女は見た目ほどワガママな悪女ではなく、ただただ素直で幼く、自分が大好きである。
全ての行動基準は、『自分が楽しいと思えるか』だ。一貫性がある。
あざとい百面相と甘えた言動を駆使し、様々なシャドーから情報を引き出す手管は、頭で考えてやっているわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
ただただもっと楽しく、心地よい居場所に歩を進めるためには、どんな声を作って顔を見せれば良いのか、直感できるタイプなのだろう。
可愛いを尖らすため、修行も怠らないけどね。
現状ルイーズにとってルウは自慢の生き人形だが、それは自分が望む顔を形にしてくれる便利な道具だからで、尊厳と意思を持つ他者としてではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
ある意味、館のスタンダードに則った立ち回りと言えるが、ここにも悪意があるわけではない。
気づかないと、ただそれだけである。
この無邪気な危うさは、ルウのあざといパフォーマンスだけで満足し、その奥で辛そうにしている生身を見落とすところによく現れている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
同室者を気にせず熱気ムンムンでトレーニングしているようでいて、ベンジャミンは主が気づかぬ不調を気に留めた。
護るために、他人をよく見ているのだろう。
強くなければ守れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
”星付き”の重責を背負うベンジャミンが、そう己に定めるに至った過去は解らない。
だがルイーズの無邪気な幼さを隣に置くと、過酷に己を追い込む姿勢の奥にある決意と後悔…大人の証明が際立つ感じがある。
大人になれば滋養のある食事を食べて、素敵な服を着れる。
そうシンプルに思い込むルイーズから、けして見えないどす黒い闇を、ベンジャミンは知っているのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
だから自分を鍛えるし、他人と自分が違うことを見つめる。
自分が大切に思うものを、他人や世界が守ってくれるとは限らないことを、幾度も思い返している。
そんな痛くて重いことを考えなくても、いい具合に他人という川の中を泳げてしまうところがルイーズの才覚なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
彼女は別に他人を傷つけて、自分だけが良い立場を独占したいわけではない。
常に優先順位は自分にあって、それに利するか否かが、他人の判断基準…というだけだ。
しかしそのシンプルな価値基準では、渡りきれない大きな試練が多分、この館には待っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
キレイで、チヤホヤされて、毎日楽しい。
刹那的で即物的で、嘘のない素直なルイーズの欲望が、より良い形で叶う社会ではないのだ。
俗人でいることにすら、ここでは苦労する。
ルイーズのナルシスティックでエゴイスティックな願いを叶えるためには、館のシステムに迎合・同化し、他者を食い物にする簒奪者になるのが一番早い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
しかしあの無邪気な子供は、手前勝手なだけで邪悪ではなく、決意を持って他人を食い殺すことは出来ないと思う。
ルイーズは賢くないので、館がどんなふうに動いているか、表層の奥で蠢いているものを見つめはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
ルウが大好きな彼女の影のために、笑顔で覆い隠す辛さにも、言ってもらわなきゃ気づけない。
しかし、言ってもらえれば気づくのだ。
そんな彼女が、ベンジャミンに『言ってもらえた』こと。
他人は他人であり、自分を好きになるかどうかも、勝手には決められないこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
無軌道に伸延しがちな自己の境界線に、しっかりと線を引いて生きていくことの意味。
そうして初めて見えてくる真実と、生まれてくる力。
子供が無邪気になるのならないの、軽々しく口にする”星”の重たさ。
バービー(と、やっぱ同期だったマリーローズ)が、無邪気でいられた幼年期を終えて、苦悩のすすを溜め込みながら学んだものを、ルイーズも見つけていくだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
そういう目の良さ、素直さがファッションにしか興味ねぇアーパー娘の青春活劇に、しっかりと宿っていた。
ケイトの同期四人が、性格も価値観もバラバラなのが、僕は凄く好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
同じにならなくてもお互いを尊重は出来るし、一つの目標に向け力を合わせ、絆で繋がり、良い影響を与え合うことは出来る。
洗脳コーヒーでひとまとまりに、心を消すことが連帯の足場ではない。
相手の気持を慮ったり、自分のエゴを抑えたり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
人としての器量と成長もそれぞれで、でもお互い育つ余地がある。それぞれの良さがある。
そういう一団として同期会を描けると、全てを黒に塗りつぶす館のやり方とは、違う答えを描くことに説得力も出てくる。
これを見事に体現したのがBパートのパトリックで、”お披露目”での経験を経て変わりつつある人格が、瑞々しく描かれていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
彼は自分が至らない存在であり、道具であるはずの生き人形に補佐されていることを、強く自覚している。
弱さを認め、強くなろうとする意思があるのだ。
”お披露目”まではそんな弱さに背を向け、世間が悪い他人が悪いとスネる幼さがあったのだが、素敵な恋が彼を変えたッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
エミリコとあの庭で出逢ってしまったことで、彼は生き人形にも内面があり、つまりは尊重されるべき個性があることを理解してしまったのだ。
これが解ってしまうと、自分の生き人形だけが特別(なぜなら、特別であるべき自分の生き人形だから)という狭いトートロージーが成立しなくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
目の前にある他人の道具は、顔を写そうが写さなかろうがとても素敵で、恋するに足りる存在なのだ。
ならば、それに相応しい対応が必要だ。
これは外部にある他者に対してと同じくらい、内部で隣り合う自分自身に及ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
エミリコに恋する自分は、それに相応しいくらい優しく、賢く、誠実な存在でいなければならない。
ジョンがケイトに恋したことで己を変えたのと、ほぼ同じ力学がここでは作用している。
…というより、『誰かが好きだから、それにふさわしい自分であろうとする」動きは、この作品にはとても多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
賢くなるエミリコと強く情け深くなるケイト様の関係もそうだし、主の意思を組んでトレーニングに勤しむベン、影の苦悩を一人知るバービーもそうだろう。
倫理の欠片もないこの腐れ抑圧社会で、微かでも人らしさの輝きがあるとすれば、それは他人に己を照らし、より善くあろうとする意思を反射して貰った時にのみ生まれてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
不定形の怪物を”人間”にする生き人形システムは、否応なく倫理の種子を育てもするのだ。
これが野放図に伸びると館が運営できなくなるので、”お披露目”なり洗脳コーヒーなりで摘む…って話なんだろうが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
パトリックが偉いのは、システムが設えた『自分だけの人形』で価値を留めるのではなく、他人の人形に恋をし、そこを足場に世界と自分を広げつつあることだ。
エミリコを思って花を好きになり、自分を先回りして補佐してくれる優秀な人形とは、違う人を好きになってしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
館のシステムにおいては恥ずべき逸脱は、外の価値に照らせば豊かな意思、精神の自由そのものだ。
影と鏡は二つで一つ、道具と主人はいつでも一緒。
個人の尊厳を踏みにじるそんなルールかあ、リッキーは豊かな内省と決断を武器に、正しく逸脱しようとしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
ルイーズが未だ囚われている、自我境界線の重力圏から抜け出し、他者と自分がより良く響き合う星図を描く一歩目に、しっかり踏み出しつつあるのだ。
優秀なリッキーの存在を、後ろめたく思いつつコンプレックスに潰されることも、当然とふんぞり返ることもないのが、パトリックの善良さだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
これもまた、エミリコと庭園で出会い、恋をして己を鑑みた結果、生まれた謙虚さかもしれない。
自分と他人は違い、それは悲しいことじゃない。
そう実感しつつある彼は、白い芍薬…そこに秘められた恋心を背中に隠し、愛する生き人形にせめて恥じない己であろうと、健気な嘘を選び取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
幸せな結婚。
ホワイトピオニーの花言葉は、今の彼にとって館のシステムに誓うものではなく、心の奥底に伏せる花びらなのだ。
サラが語っていた館の婚礼システムは、大人の証明として恋を形にすることに覚悟を求める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
それは過酷な選抜システムに生き残る能力だけでなく、誰かを食い物にしてでも誰かを選ぶ、残酷なエゴイズムへの覚悟だと思う。
結婚という、祝福されるべき愛の成就すら、誰かから奪うことで成り立つ。
それがこの館のハラワタなのだろう。ホント腐りきっとるな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
ジョン様やパトリックの純情、それ自体は微笑ましく甘酸っぱいんだけど、館がそういう綺麗なものを取り扱う手付きがクソすぎて、暗澹たる気持ちになるな…。
館って人間を人間たらしめる輝きを、どうすれば簒奪して都合良く使えるかに関してよくシステム化してて、婚礼システムも特定個人への愛情を人質にとって、他者を犠牲にしないと大人になれない社会への恭順を求めてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
お前の好きな相手と添い遂げたいなら、共感を殺して”俺たち”になれ。
そういう制度化された脅迫が、館にガッチリ組み込まえていることもわかったけど、パトリックが背中に秘めた花は、そーいう泥には飲まれないで欲しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
飲まれず戦える、真実の強さも確かに宿ってるわけでね。
…生き人形の顔を食った大人にも、制度に食われた元キラキラ少年、沢山いるんだろうなぁ。
というわけで、普段あまり脚光を浴びない同期二人の人格を描くエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
こういう形でその資質を見せ、成長の余地と同義語である至らなさと個性を味あわせてくれると、作品とキャラをもっと好きになれて、とても良いです。
バラバラな価値観と能力が、それでも大きなうねりにまとまっていく。
それこそが群像劇の醍醐味だと思うので、ルイーズとパトリックが何を大事に思い、何処に強さがあるかを教えてもらうのは嬉しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
それがどうやって、ケイトが紡ぐ叛逆の物語に生きていくか、期待し想像することが出来るからね。
こういうところを耕してるか否かで、コクが全然違うもんなー。
同期の助けも借りて、亡霊騒動の真実を暴く材料も揃ってきた感じです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
哀れな凶器として選ばれた双子の命は、もはや風前の灯。
他人の尊厳を使い潰す理由は、ローブの亡霊にあるのか。
そこに秘められた、館の深き闇とは。
次回も大変楽しみです。
追記 権威化したアンバランスを暴力的抗議でぶっ壊すのがパンクスの存在意義だと思っているので、ケイト様はわりと最上級のパンクス。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
自分と同じ顔だからこそルウが大事なルイーズと、敬愛するリッキーと恋に落ちて変わってしまった事を嘆くパトリック。
自己愛と他者性をそれぞれ投射し、今回の二つのエピソードは好対照を為す。
同時にその二つは根っこで繋がっていて、違えばこそ正しく愛せるのだ。
ルイーズの無邪気なエゴイズムは、パトリックの清廉なる他者尊重に比べて幼く、正さなければいけない未熟にも見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
でもパトリックの恋の根っこには、自分を愛する心、愛するに足りる自分でいたいという自尊欲求がある。
エゴと博愛、両方のバランスを取って大事にしなければ、人はより善くなれない
ここら辺を最悪の形でさかしまに、真善美の価値を蔑ろにしまくって成立しているのがシャドーハウスであり、ケイト様の物語が気高き革命になっていくのは、まぁ必然だよな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月19日
不当に歪み奪われたバランスを正し、人のあるべき形を取り戻す。
最もベーシックな、英雄物語の形だ。