リコリス・リコイルを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
刻まれていく命のリミット、別れ戻っていく運命の旅路。
二ヶ月。
告げられた余命を前に、たきなが選ぶ道は…というお話。
そろそろ最終コーナーが見えかけてきたタイミングで、千束と過ごした日々が少女の何を変えたか、じっくり染みる造りとなった。
やっぱ情報を出して話を転がしていくテンポが迅速で、千束のリミットを必要以上に引っ張らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
大事なのはそれが物語をどうスウィングさせていくかであり、過去と未来をいかに照らしていくか、だ。
なので、事実自体はサクサクと明かされ、余命宣告を前提に状況が動き始める。
DA手動の真島との決着は、たきなが望んでいた帰還を叶えるチャンスだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
しかしここまでの物語を経て、もはやDAという場所が自分を満たす唯一の故郷ではないことを、彼女はよく知っている。
大事なのは人であり、場所は常にその入れ物だ。
この結論を与えたのが、笑顔集う喫茶店なのは好き。凄く好き。
悲劇を笑ってまるかじり出来る、千束の朗らかな人格は確かに、たきなに特別な影響を与えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
千束なくしてたきなは今回、健気ながら哀しくもある最後のデートに踏み込みはしなかっただろう。
それは千束が自分に与えてくれたものを、不器用に生真面目に手渡す、ある種の人間卒業式である。
しかし千束が手を引き門を開いてくれた、銃を握らず偽物の平穏に暮らす人達との触れ合いがあって、たきなは自分をDA所属の機械ではなく、誰かを愛し愛される人間として、認識し直すことが出来たのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
そういう意味でも、今回のデートは日常の終わり…優しさの総決算なのだろう。
クールな進行役としての責務を存分に発揮し、くるみちゃんはミカとシンジの過去に潜る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
圧倒的な才を有しながら、先天性心疾患によりたおられかけていた殺しの才能を、育み世に出す。
そこに、ゲイカップルが愛の結晶を求める博愛のエゴイズムがあるのが、生々しくて良い。
ミカが『家族ごっこ』と自嘲する日々は、リコリスを闘争の道具として、それを導く自分もなにかの代用品としてしか見れなかった男の人生に、潤いを与える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
家族として千束とずっと共にいたミカは、甘っちょろい人間味を手に入れ、残酷な神様になりそこなった。
そういう家庭的な温もり(たきなが殺戮機械である自分から、距離を取れた要因)から自分を引き剥がして、シンジはアランの本分を自分と愛娘に強要する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
神様に見込まれたものは、人として生きることを許されない。
シンジ自身、『才能を見出す才能』に呪われているのかもしれない。
神と人間、地上と天上に隔てられたイマージュは、磔刑の救世主へと繋がっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
ミカの回想の中で、窓枠が生み出す十字架…あるいは逆十字は巧みに影を投げかける。
人を活かす善行と、それが殺戮につながっている悪徳の、行き着く先。
(画像は”リコリス・リコイル”第9話から引用) pic.twitter.com/57mzO5FB0G
自分の手で人工心臓を埋め込み壊し、二ヶ月というリミットを傲慢に推し進めるシンジも、その始まりを共に進んだミカも、罪を背負っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
父親たちの罪悪は、血の繋がらない無垢なる存在に、受け継がれていくのか。
幼い千束はひどく無邪気に、背景に十字架を背負って父/恩人/救世主を抱く。
シンジは千束の才能を開花させるために、真島を雇って東京にテロルを蒔いた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
真島自身アランの子供だから、ラストの叛逆はある種の父親超え…神殺しなのかもしれない。
自分を善と生に導いてくれた存在こそが、自分を殺し、人を殺させようとする。
そんな真実を知ってなお、千束は無垢でいられるか。
彼女の叛逆と存在証明は、その反存在(反救世主)である真島とは、別の道を往くのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
贖いとしての死は避けられず、乙女は無垢なるまま、世界を愛して捧げられていくのかもしれないし、愛の奇跡が十字架の定めを超えていくかもしれない。
ここはどっちでも収まり良くて、だからこそ読みきれない。
ポップで明るい雰囲気を保ちつつ、この作品が見据える世界はいかさまロクでもなかったし、漂う死と抑圧の匂いは、百合の香気では隠しきれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
…というより、女と女の感情がぶつかり合う火花で、自分たちが作った世界の生臭い実在感を殺さず、むしろ照らす方向に話を編んでいった。
ここら辺、年齢も関係性のこじれも主役二人より重たい、シンジとミカのロマンスがいい仕事していると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
娘たちを思わせる純粋さで出会い、しかしそのときめきのままには進めず、銃を突きつけ因縁と新年に揺らされて、それでも愛している。
そして、愛だけでは何も動かない。
この粘性の高い重さがあったことで、そんな因縁を超えて若き世代が運命を変えていく期待感も、より強くなっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
あくまで真っ直ぐ揺らぎなく、千束を家族ではなく『殺しの才』として見ようとするシンジを見てしまうと、ミカ先生の悲恋に哀しみも深い。
こっちは、色々どん詰まりだ。
しかし光溢れるDAのロビーで、真っ直ぐに愛を伝え共に進んだ二人は、大人と世界が背負う十字架を跳ね除け、未来へ踏み出せるかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
いつかの”東京観光”を再演するように、たきなと千束のデートは楽しそうで、鳴り響くアラームが悲愴でもある。
それは避け得ぬ別れを、運命の重さを静かに告げる
とても楽しい思い出だから、最後に一緒にもう一度、魚を見たかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
そんなたきなの真っ直ぐな気持ちを、世界は冷たく裏切る。
しかしそのままならなさを丸かじりして、笑って前に進むことこそが、人間に出来る唯一の行いなのだと、たきなが好きな女の子は微笑む。
What's done is done。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
過ぎたことは過ぎたことで、いつか死ぬ宿命が自分に追いついたとしても、二人が出逢ったこと、それ故変わっていった心は嘘ではない。
千束は眩く、最後の瞬間まで今を生きるだろう。
たとえ死ぬとしても、才能の神に捧げられた贖いではなく、一人の少女として生き抜くだろう。
そのまばゆさは他ならぬシンジが手渡したもので、彼が愛するミカが優しく育んだものでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
そうして揺籃されたものが、たきなに手渡され、DAでは上手く使えなかった優しさとして、明るく今を生きる心を宿して、東京を駆けていく。
二人のデートは死を前に、ただ悲しいものではなかった。
雪待ちの夜九時、祝福は天から降らず、二人は各々の道へと別れていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
この時千束はより天に近い場所に立ち、たきなは暗い地上へと歩を進めている。
生と死、無垢と銃弾。
二つの極に引き裂かれていく恋人たちに、雪が降る。
(画像は”リコリス・リコイル”第9話より引用) pic.twitter.com/pDswQIw2yE
銃弾のプレゼントを愛娘に手渡し、シンジとミカが別れたときにも、雪が降っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
この淡く美しい離別が、親世代の永訣のように終わっていくのか、それとも雪解けの後の優しき春に繋がるものか。
最終章を前に、予感と不安が交錯するとても良いシーンだ。
シンジが殺しの楽器として手渡した銃に、ミカは赤い不殺を込めて、千束が望むまま戦えるよう力を貸した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
結果千束はシンジへの信頼…崇拝を捨て去ることなく、自分が殺しの道具ではなく人を愛せる存在なのだと、守れる人間なのだと信じて、ここまで進むことが出来た。
誰かの思惑や、定められた運命を引き剥がして、在りたいと願う己を掴むこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
その価値は、こんなに綺麗な場所を死での別れに、自分を変えてくれた存在に手渡せたたきなの変化が、良く教えていると思う。
たとえ平和と日常が、欺瞞と犠牲の上に成り立つとしても。
銃口が切り開けるものは、結局血みどろの未来でしかなくとも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
それでも人には、背負わされた十字架を跳ね除ける意志があり、魂が触れ合うことで生まれる光がある。
そういう事をずっと書いてきたお話が、クライマックス前にもう一度、自分たちの真実を刻む回だった。
今千束の間近にあるたきなを強く書くほど、遠く離れてなお彼女を思うフキの存在感が強くなり、細かいパンチが上手いアニメだという認識を新たにする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
色んな人との縁と愛こそが、死の宿命に縛り付けられた私たちを購うのだとしたら、特別な救世主は…多分いらない。
それを生み出すべく己と、己以外のの全てを捧げてきたシンジは、飼い犬に手を噛まれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年8月28日
この叛逆もまた、欺瞞を引っ剥がし才能を使命に投げ込む計画の一部なのか…それとも、アランの子供は親を超えたのか。
風雲急を告げる終章は、けして見逃せないものになるでしょう。
次回も楽しみです。