菜なれ花なれ 第3話を見る。
第3話にして特殊EDでもって、主役六人がたどり着いたチアの一歩目を描くエピソード。
この速度感だと『遅い』と感じてしまう、今の自分の肌感覚に正直ビビりつつも、前回までで気になってたポイントをだいたい回収してくれる話運びとなり、満足度は高かった。
かなたのイップス、小父内さんの内面、チアをする意味。
初手からパフォーマンスの仕上がりが相当だったり、あんだけの事故を見せられて石畳の上で翔ぶ安全面での納得だったり、まだ気になる部分が無いわけではないが、暗くて重い部分へのこのアニメなりの向き合い方も見れて、自分の中での作品の置き場所へ、ピタッとハマった感じがあった。
想像していたより遥かに湿度も温度も高かった小父内-谷崎ラインと、内に溜め込むよりクリニックに行く奇妙な健全さを見せたかなたのイップス治療の、二軸で進んでいく今回。
鉄面皮の奥に相当なオモシロを秘めていた小父内さんが、どう自分を開示していくかは難しいな…とか思ってたんだが、かわいいSDキャラにダイレクトに内面語らせるという剛腕演出で、パワフルに乗り切ってきた。
絵に動きなくブツブツモノローグしているより、ぴょこぴょこ動いてかわいい”内心”をイジりつつキャラ見せるのは、独自の可愛げがあってなかなか良かった。
まー飛び道具的な感覚もあるが、そういう異質さが独自性になってるのは作品の強みだろう。
ミニ小父内でしか本音を語れず、後悔も感謝もなかなか表に出ていかない、猫系少女の憂鬱。
感情表現の難しさが、チアの道を一回諦めた経験に繋がっている様子には、小父内さんのキャラクター性が作品の主題と響き合う、力強い手応えがあったと思う。
どれだけパフォーマンスが卓越してても、見るものを勇気づけず、メッセージを宿せないなら”チア”じゃない。
小父内さんの怪物的身体能力と、お粗末な感情表現力のギャップは、かなたとは違う角度から作品がテーマと選んだものを、上手く照らせていた。
身体技芸であると同時に感情芸術でもあるところ、笑顔の作り方も巧さの内なのが、チアの難しさで面白さで素晴らしさよなぁ…。
好きなことを好きだと伝えられない不器用少女が、内心何を考えてここまでの話を逍遥していたのか、待ってましたで見届けると今までよりもずっと、小父内さんを好きになれたのも良かった。
かなたが飛べない様子をしっかり見てたり、分かりにくいだけで相当優しい子だし、麗しの谷崎さんへの感情が湿って熱かったり、かなり好みのタイプなんだよなぁ…。
恵まれた体格をベースで活かす谷崎さんと、身軽な身体をトップで輝かせる小父内さんの体格差が、約30cmのド迫力で見栄えが良い所も好き。
ポジション適正を明確にするべく、六人並べた時にシルエットにメリハリあるの、かなり良いなと思うね。
過去の経験からチアに二の足踏んでいる小父内さんが、かなたに付きまとわれ杏奈に突っつかれ、他人のおせっかいでもう一度向き合い直して、その過程で谷崎さんへの”好き”が伝わる様子も、なかなか良かった。
不器用人間どもがすれ違いながら、ちょっとずつ自分を変えたり思いを伝えたりする、ややコトコト煮込んだ関係性の描写は結構好みの味付けで、ここらへんがこの作品の強みなのかな、とも思った。
いい意味でプラスチックな萌えキャラ味をしたキャラが、生っぽい陰りや難しさを抱えた上で、ジワジワ向き合っていい方向に自分や仲間を向けていく足取りは、ゆったりと焦ることがない。
だからこそ、描けるものも確かにある。
あんだけツンツン跳ね除けていたチアに、渋々ながら向き合うことで、小父内さんはずっと伝わらなかった気持ちを少し手渡せるようになる。
そんな試みが彼女自身を鼓舞して、なりたい自分に近づけていく様子は、イップス克服という分かりやすい変化があったかなたとはまた違った面白さで、チアが持つ強さを描いていた。
どっしりした語り口ながら、複数人物が自分たちなりのやり方で、それぞれ抱えた課題を乗り越え変わっていく様子は、群像劇としても面白い切り口で、ここもこのアニメの強みかなと思う。
次回以降、例えば杏那の無遠慮な踏み込みだとか、各キャラの個性に切り込んでいった時どういう面白さが出るか、楽しみな部分だ。
小父内さんが谷崎さん好きすぎてかなり具合悪い女であり、その好意が空回りしていい感じにキモいの、メチャクチャ良かったな…。
谷崎さんも思わずLOVEソング作るくらいにまんざらではないので、今後このお嬢様学校不器用人間コンビがどういう味わいだしてくるか、大変気になる。
必ず窓から入ってくる奇行といい、オレの大好きなタイプの美少女型珍獣たる小父内さんと、完璧な女神に見えてチャーミングな歪さがある谷崎さんは、今後グツグツ煮込むと絶対美味しいダシ出てくると思うので、ニコイチでゴリゴリ押し込んでいって欲しい。
蓋開けてみたら想像以上のオモシロ人間だったの、小父内さんありがたいな…。
これと並走する形でかなたのイップス治療も進んでいくが、なかなか一気には解決できないジリジリ感が、心に抱えた傷の重たさ、それを羽ばたかせるチアの強みを際立たせていて、まとまってみるとかなりいい感じだった。
仲間には言い出せないけど家族にはバレてて、クリニックにも行ってる生っぽさの作り方は、結構他のアニメでは見ない感じであり、このアニメ独特の面白さだなと感じた。
誰かを責めるほど無責任ではなく、全てをさらけ出せるほど強くもなく、大好きな夢を諦めれるわけでも、自力で全て解決できるわけでもない。
半端で煮えきらない、だからこそ生っぽい手触りのある主人公の足取り。
それを支える仲間の存在感と合わせて、かなたが飛べたこと、飛ばせれたチアの強さが、くっきり見やすくなったのは良かった。
優しく相手を慮って遠ざける、極めて日本的な”優しさ”から半歩踏み込み、力強く勇気づけて決断を後押しするチアな価値観が、杏那主導でわかり易くなってた。
そういうパワフルでチアフルな、ある種の強引さだけが開く扉ってのが確かにあって、かなたもそれに惹かれてチアを選んだ。
遠巻きに見ていたその準備の輪に、応援される当人が、自分自身を応援することで入っていく描写は、演者と観客を二分する境界線を上手く消し去って、この作品が描く”チア”に独自の一体感、躍動感を与えていた。
朗らかでパワフルな応援を受け取る側だけでなく、それを手渡す側の心も弾ませ、信頼と活力を生み出す。
バキバキにメンタル折れてたかなた自身が、誰よりも”チア”を必要としてて、だからこそ自分で自分を鼓舞し、自分だけでは出来ない最高の応援を形にしていける。
特殊EDにしっかり描かれたパフォーマンスの仕上がりと合わせて、作品の主題がどういう強さや善さをもっているのか、しっかり描けていたと思う。
いやまぁ、万が一が起きたら後遺症間違いなしの環境で、ポンポン飛んだり跳ねたりするのはどーかと、未だに正直思うが。
ここら辺は創作ゆえの独自のトーンとして、割り切って飲む違和感だろうなぁ…。
あと一旦距離を置くことになった鷹ノ咲チア部を、厳しいながら思いやりと責任感のある『もう一人の主役』として扱い続けてくれるのは、かなり好きな描き方だ。
今後部が挑んでいる競技チアとは違う方向に、かなた復活を機に動き出した六人のチアは進んでいくんだろうけど、信頼を足場に飛び勇気を後押しする、チアの精神は皆同じなわけで。
順位がつく”競技”だからこその厳しさと、それだけじゃない優しさを背負い、彼女たちなりに自分たちのチアをやっていく鷹ノ咲チア部の描写が、主役たちの歩みと並走して描かれると、かなり立体感のある視点でもって、主題を扱うことが出来るかなー、と感じた。
というわけで、やや長めの導入をしっかりまとめきる、楽しくも手応えのある第3話でした。
課題を一話で解決しきらず、不安定な震えをあえて持ち越してじっくり向き合う姿勢が、ちゃんと納得できる解決を迎えると示してくれて、大変良かったです。
結構独特の語り口だけども、だからこその味わいや面白さがしっかりある感じで、皆で飛ばしたかなた心の飛翔の先にある、彼女たちだけの”チア”がどうなっていくかを、しっかり見届けたくなりました。
やっぱこういう、作品の輪郭を自分の指で確かめて、ハマる部分を探す手触りは楽しい。
そしてそれがしっかり果たせると、もっと作品を好きになれる。
次回も楽しみです。