ラーメン赤猫 第6話を見る。
今日も今日とて赤猫は、まったり進行問題なし!
ともすればイヤ展開になってきそうだったラヲタ襲来も、同行者二名がいい人だったお陰で穏便に収まり、従業員の詮索もクリシュナちゃんの自己開示で軟着陸。
お隣さんとの顔合わせもいい感じに進み、サブのやる気も試食担当の助けを借りて見事結実と、順風満帆な展開である。
気づけば製麺補佐までやってる、社さんの職場への馴染みっぷりを改めて感じる回であった。
試食担当の美味語彙が豊富じゃないの、あくまでラーメン店経営漫画であってグルメ漫画じゃない、作品独自のスタンスが垣間見えて面白い。
特に大きい事件が起こるわけじゃない…というか、起きそうなところを先回して平穏になるよう努力している味わいは、ここまでと同じ感じで。
厄介ごとの気配がビンビンしてたラヲタへの対応から、経済的成功をそこまで求めていない経営方針が見えてきて、それが後に明かされる佐々木CEOの過去、人間社会へのアダプターとしての赤猫に繋がっても行く。
自立心と勤労意欲に満ちた、猫の世界のマイノリティを”職場”という形で補佐し、自分らしく生きられる手助けをしていく。
文蔵くんという現場担当との関係も極めて良好で、赤猫のコーポレート・アイデンティティは大変明瞭である。
塩分強すぎる人間向きの食事を、自分たちの舌で味わうことは出来ない。
だから”接客一番”なんだけども、その権化たるハナちゃんの見事な仕事ぶりを描きつつ、裏方気質なクリシュナちゃんと一番仲が良い様子に、やっぱホッコリする。
語られてみると想像以上に世知辛かった、猫が喋る世界での動物園での”仕事”に、どうしても向いてなかった内気な虎。
種族一般に求められる個性を果たせなかったとしても、順応していたとしても、自分らしく生きられる助けを、公私両面から手渡していく。
ラーメン赤猫の第一義はそこにこそあり、人間が稼ぎに汲々として本質を見失いがちなのとは、一線を画しているわけだ。
為すべき責務が最初にあり、そのためのメディアとしての職場がある。
本末が転倒していない”仕事”の理想が許されるのは、やっぱ”喋る猫”の異質性と可愛げが、一種のファンタジーを下支えしているからだと思う。
RATのママとの関係とか、社さんの”気になる”の解消法とか、飄々としていながら職人気質を出しつつあるサブの立ち位置とか。
色んなモノが摩擦なく良いところに収まって、まったり幸せな状況が穏やかに流れ、努力が無駄にならず善意が善意を呼ぶ理想郷を、この作品は描く。
それ全部人間でやってたら、どっか白々しい雰囲気は必ず出てたと思うんだよな。
しかし賢く正しい猫たちが、そういう理想を猥雑で楽しい日々に交えて描いてくれると、喉に引っかかる感じなくスッと飲み込める。
あるいはそういう理想を描くための画材として、現代の妖精の如き猫たちを主役に選んだ感じもあるけども。
ともあれここまで育んだ関係性に支えられる形で、社さんの疑問にクリシュナちゃんは自分の過去を開示して答えてくれるし、それを通じて佐々木さんの人となりも解ってくる。
疑問や興味が下衆の勘繰りで終わらず、スムーズなコミュニケーションと段階的な踏み込みに受け止められ、さらに絆を深くしてくれる。
ラーメン赤猫、とにかく職場の風通しが良い店である。
しかし思い返してみると、話の最初っから”猫の店の人間”という異物を、皆が受け入れていたわけではない。
社さんの生真面目な仕事ぶりを間近に見ることで、クリシュナちゃんは持ち前の怯えを引っ込め、ハナちゃんはプロ意識ゆえの厳しさを収めて、気さくな関係を許してくれるようになった。
この穏やかだけど凪いではいない、ジワジワした関係構築を見ることが、善因善果の嬉しさをゆっくり味わう楽しさの、根っこにあるのかなぁと思う。
前の職場だと、クズ人間どもに踏みつけにされてきた社さんの気質が、赤猫だといい結果しか生んでないからなぁ…。
猫だけでなく、人間にとっても赤猫は”一番自分らしくいられる場所”なのだ。
佐々木さんの高邁な思想が、CEOなのに現場で接客するのを厭わない気さくな人格を通じて、構えることなく自然と従業員に染みてて、赤猫のいい空気を作ってる所も良い。
立場とか経済力とかを、上から構えて殴りつける”人間らしい”経営者像ってのが、佐々木さんは全然性に合わないんだと思う。
このナチュラル善猫っぷりが文蔵くんからのリスペクトを引き出し、経営の上流と下流がぶつかり合わない…むしろ相互に高め合う理想的な状況を生んでもいる。
「得意なことが違うからこそ、大事な居場所を守れているのだ」と、職人頭と経営者が互いに思えているからこそ、赤猫の空気は猫を自由にしていくのだ。
虎らしからぬ虎だったクリシュナちゃんが、無理くり誰かが求める”虎”にならぬまま幸せに暮らせている、私たちの居場所。
それを作り上げるのに結構、色んな工夫をそれぞれ頑張っているってのも、話数が進む中で見えてきてる。
サブのメニュー改良、撮影禁止の経営方針、お隣さんとの良好な関係。
ただ座って幸運が舞い込んでくるのを待つのではなく、自分たちなり考えた上でなにかに挑み、形にしていく努力の成果。
そういう、当たり前に泥臭い場所としての赤猫の顔も、じんわり見えてくる回でした。
ここら辺の程よい生っぽさも、理想の職場をスルッと飲ませる大事なスパイスなのだろう。
次回も楽しみッ!