デリコズ・ナーサリー 第1話を見る。
不死を失った吸血種の華麗で壮大な物語が、遂にアニメ化…その第一話、らしい。
”らしい”と書いたのは、僕が原作たるTRUMPシリーズを全く見ていない状態で、超ふわっとしたアニメにわか野郎だからである。
舞台での実績と評判を受けてのアニメ化ってことらしいが、歴史あるシリーズを門外漢の立場でどう食ったもんか……フタを開けるまで、正直ビビっていた。
しかし実際見てみると、凄惨な闘争と微笑ましい子育てのギャップに推進力があり、イケてる吸血ダディの個性豊かな勢揃いにも、先を見たいと思わせる牽引力があった。
今まで食った創作から、強いて例えを挙げるなら”ACCA13区監察課”と”MARS RED”の合せ技かな~って感じだが、勿論このお話独自の魅力も色々感じられ、楽しいスタートとなった。
まずなにより、ヴィジュアルが大変いい。
華やかで清潔な綾絹に包まれた、生来の貴族たるべきヴラド機関の麗しき捜査員達。
そのお子達も乳母日傘の恵まれた立場で、大変丁寧に育てられてる感じがあった。
このノーブルでハイソな雰囲気が、真祖を中心とした秩序を乱す捜査対象に切り込んでいく中で、どんくらい下層階級の泥に汚れてくるかは、結構楽しみだ。
連続殺傷事件の裏に、吸血鬼の階級闘争が隠れてそうな匂いを勝手に感じている。
イケメンパパ達のドタバタ育児コメディと聞いていたので、初手血みどろの大虐殺から始まって、大層びっくりしたが。
話の構造としては捜査と子育てを同時並列でやっていく感じで、水と油なはずの二つが根っこで繋がってる作りなのかなぁと、ダリくんと奥さんの因縁が匂わされてる様子を見るだに思った。
ダリくんが貴種の定めより育児を優先する裏事情は、まだまだ全然見えないけども、なんか複雑なものがあっての昼行灯だってのは、なんとなく感じられる。
ここらの事情に、これからナースリーの四人が切り込む陰謀が絡んでいると、なかなか面白い運びなんじゃないかなぁと思う。
つか絡まないと、二大テーマがバラバラのまま浮く。
年は取るし子どもは生むし、陽光の下でカフェも嗜める。
不死を奪われた吸血種はあんまヴァンパイアっぽくなくて、一体どこに血吸の獣たる根本があるのかは、今後明かされていく部分かなーと思っている。
冒頭の大虐殺も異能とか使わず、フツーに剣で殺してたので、不死性の簒奪と並走する形で、特殊な力は奪われてる感じなんかなぁ…。
やっぱヴァンパイアを話の中軸に据える以上、思う存分調子ぶっこいた超人要素はどっかで摂取したいわけで、今後調査が深まるに連れ暴力の必要性が出てきて、大暴れしてくれると個人的には嬉しい。
そういう怪物が、我が子を愛でてこそ映えるわけだしね。
そこら辺のシリアスな塩梅は横に置いて、ヴラド機関の三人は育児に全くコミットしておらず、ダリの子煩悩に引っ張られる形で、ワーク・ライフ・バランスと強制的に向き合わされる。
奥方含めた家族の問題のはずなのに、同僚をひとつ屋根の下にまとめ、”女”を排除して直接子どもと繋がるセッティングが亜音速で整っていく手際に、ある種の恐怖を感じたりもした。
たしかにクールで高貴なイケメンたちが、小さい天使たちに翻弄される様子には農耕な栄誉素があり、見ててメチャクチャニチャニチャ出来る。
なのでその夾雑物となりうる要素は、徹底して排除して”純度”上げてく方針なんだな~と、勝手に納得して見ている。
第1話は世界設定と主役たちのポジション、物語が転がる舞台建ての説明に使った感じで、子どもたち&パパたちの細かいキャラ性は、まだ見えてない感じだけども。
そこをこそじっくり煮出して面白い話であるし、それはおいおい楽しくやってくれるだろうと期待しつつ、第1話では小西声のゲルハルト卿が、堅物な自分と真逆なダリくんにだからこそ惹かれ、巨大すぎる感情寄せてる様子が印象深かった。
アイツマージライバルのこと好きすぎだろ…当人が「やらねー」言ってんのに、執拗に食い下がって「出来るはずだ…仕事と育児の両立もッ!」とブッ込んでくるの、ちょっと尋常じゃないよ。
誰かを好きすぎて頭おかしいやつ、俺は好きだ…。
吸血貴族最古の名家でありながら、貴種たるTRPUMPに不敬な態度を隠さず、秩序を維持する責務に背を向けてるダリくん。
名誉ある貴族の務めに正しくその身を捧げ、我が子の世話は乳母に任せきりな他のパパたちが、この反貴族的・反中世的・反男性中心主義な価値観の具現とどう付き合っていくかは、結構楽しみだ。
ヴラドの男たちが内面化しているヴァンパイア的な価値観に、全力で水ぶっかける反・吸血鬼的なキャラが、吸血鬼の物語の主役であることの意味。
それは今後、貴族たちが慣れない育児にどう翻弄され何を学んでくるかで、色々見えてくると思う。
ここら辺上手く照らすと、面白いもの浮かび上がってきそうな配置なんだよなー。
子育てする側のパパたちもムッツリ仕事人間からC調お気楽ガイまで色彩豊かだが、される側の子どもたちも泣きじゃくる新生児から七歳の本読み児童まで、発育段階にグラデーションがある。
何しろこの世界のヴァンパイアは歳を取れるようなので、年齢と性格がバラバラの子どもたちが、それぞれ抱えた難しさと面白さを活かしていくことで、ドタバタ子育て物語にもいい塩梅の多彩さがでてくると思う。
それぞれの家族、それぞれの子どもたち独自の悩みや難しさ、それを乗り越えて生まれる絆や尊さがあるはずで、それを今後掘り下げていってくれると、なかなか面白い話になりそうだ。
ここのほんわかドタバタ家族劇に、不死なる真祖を巡る陰謀がどう絡んでくるか……どう混ざりあって独自の面白さを出すかも、気になるところだが。
ここら辺は水と油な2つの要素に、どう展開で橋をかけ設定で繋ぎ合わせるかが勝負なので、意外でありながら得心も行く、見事な仕掛けを期待しておきたい。
そういうギミックがあればこそ、真逆に思える子育てと謀略を同じ皿に乗っけたはずだと思うので、調査が進むにつれて”ナーサリー”が話の舞台になった意味合いが、滲んでくる作りだと嬉しい。
8月開始の全6話にしては、ブッ込んだ要素がやや多い感じもあるが…そこら辺は冴えた手際を拝見、といった所か。
(※訂正 公式の円盤情報見るだに、きっちり12話やり切るみたいなんで”全6話”は早とちりです。申し訳ない。)
というわけで個性豊かな水と油が、兎にも角にも一つの館に混ぜ合わされて一体何が始まるか、なかなかワクワクするスタートでした。
豪奢で華麗な絵の作り方が貴族の物語と感じさせていいし、影をつけないカラーリングも雰囲気とマッチしていた。
なによりデリコ家の天使 aka Akachang は大変可愛かったので、パパたちはその幼気を大事に守りながら、やべー事件に挑んでいって欲しいです。
初手は明るいコメディ色濃かったけど、個人的にはもっとドロネバでも良いな…吸血鬼ネタだから。
そこら辺の塩梅ひっくるめて、今後色んな面白さを見せてくれそうな真夏の吸血鬼物語、次回も大変楽しみッ!