黄昏アウトフォーカス 第6話を見る。
降って湧いたライバルとの同居生活は、高鳴る心音を加速させる。
燃える体温に突き動かされて囁いた”好き”は、二人の監督の間を繋ぐのか、引き裂くのか。
三年生と二年生、俺様の冠かぶった気遣い人間とわがままクリエーターの立場と心が、複雑なダンスを踊る第6話である。
大変良かった。
あっという間に上がった初恋温度のまんま、甘くとろけてハニーミルクな関係になると思いきや、そこら辺のネットリ感は殺さぬまま、学生としての立場の違い、クリエーターとしての資質の差が立ちふさがってきた。
ここで映画を作る行為、監督特有の悩み、部長の難しさに立ち戻るのスゲーわ。
AパートとBパートをモノローグ担当として、二人で仲良く分け合って進む今回。
柔らかな内面をどんどん語っていく中で、情欲と愛しさはガンガンに加速していく。
兎にも角にもイッチがエッチで、「そらー菊地原くんも狂っちゃうよなぁ…」という説得力があった。
第一章では頼れるリーダー、愛すべき映画バカだった男に心音上げたくない気持ちはありつつ、あまりに無防備に挑発してくる市川くんのセクシーは、まったく否定できない。
それは映画が絡まないと可愛く素直な、彼のチャーミングさとしっかり重なり合っている。
ピュアだからこそエロい…これは矛盾命題ではぬぁいッ!!
ゲイの自覚が欠片もないまま、葛藤も何もなくライバルを好きになった自分に素直に、告白まで行ってしまう菊地原くんも、やはり思ってたより遥かにピュアである。
今回は俺様な仮面の奥にあるナイーブな気遣いが前に出て、自分一人でひっぱるというより仲間全員と楽しく映画を作っていきたい、協調型の制作スタイルが顕になってもいた。
これは部長として部員皆の協調性を大事にして、思いの外細やかに仲間を繋いで場を作ってきた、思慮深い立ち回りにも通じている。
稲葉くんの言う通り、彼らの王様は横暴な態度の奥で苦労を背負い込み、皆を大事にしてくれる素敵な男なのだ。
だから、我欲は押し通せない。
仲間と最高のバカをやれるモラトリアムの終りが見えてきている、三年という立場。
二年だけにFocusしていた時は見えなかった、当事者だからこその悩みや難しさを抉り出せるのも、主役を変えて別の話をやる利点だ。
あのときは傍若無人な無敵軍団にしか思えなかった人たちも、個別の難しさを抱えつつ、必死に自分たちなりの最高を探して、最後の日々を駆け抜けている。
思春期の繊細な悩みと取っ組み合い、それでも答えを出すためにもがいている姿は、寿や真央に良く似ている。
あるいは後半、内心吐露を担当する市川くんにも。
そういう風に、見えなかったものにフォーカスが合っていく。
隠されている心根がなかなか見えなくてモヤモヤし、だからこそその内側を知りたいと思う。
少年たちの心に芽生えたピュアな恋心と、それを画面の向こう側窃視している視聴者の視点は、巧妙な語りの構造に助けられ重なっていく。
菊地原くんが王様の仮面の奥を赤裸々に語り、そこに踏み込みきれない自分に市川くんが悩む。
こういうモノローグの往復を経て、段々と二人を分かっていく、理解とコミュニケーションの悦楽。
遠かったはずのものが近くなり、解らなかったものを理解していく、根本的な面白さ。
微かなすれ違いと摩擦熱含め、そういう根本的な面白さが改めて、ググッと顔を出してきた感じがある。




離れていた二つが近づくには契機が必要で、この章では稲葉くんが素直になりきれない少年たちのクピドとして、間を取り持ってくれている。
皆に君臨しているようでいて気を使い、だからこそ窓枠の向こう側孤独な、愛すべき我らの王様。
真っ直ぐなクリエーター気質で彼を傷つける闖入者に、遠くから釘を差すようでいて、意外な踏み込みにその素顔が見えてくる。
生粋の映画バカだからこそ分かってしまう、ライバルの創作者としての才能と願い。
それを捻じ曲げてしまう、優しさと気遣い。
菊地原くんを一人、窓枠の外側に遠ざけてしまっている何か。
関係性と心理の変化を、窓枠を用いて極めて精妙に可視化した演出が、今回冴えていた。
稲葉くんは最初、何かと突っかかってくる二年坊主を、実は傷つきやすい彼の王様から守るべく、忠告のつもりでその内面を代弁する。
戦うべき敵だったはずの市川くんが、実はかなりライバルのこと好きすぎで、前回聞き届けたおお様の片思いが、実は両思いだったと気づく。
そこにはただの恋心だけでなく、映画に真剣だからこそ譲れない不器用な熱が…映画バカとしての共鳴が、確かにある。
それが窓枠の向こう側に、市川くんと稲葉くんの手を伸ばさせ、繋がせていくのだ。
部長とその想い人、両方の中間地点に立ってそれぞれの真実を覗き込める立場にいる稲葉くんは、第三章の恋の主役でもある。
第一章で真央と寿の恋の隣に立ち、真摯に映画に打ち込むことで熱いアシストをやってくれてた市川くんが、今物語の主役になって僕の視線を集めているように。
脇役になれるエピソードの中でいい仕事を果たし、誰かのために手を差し伸べてくれる魅力をしっかり見せることで、いざ主役になった時キャラを前のめりに好きになれる、準備をしっかり果たしているのは、巧妙な語り口だと思う。
でもそこには物語的計算だけでなく、物静かな態度の奥に誰にでも真摯に向き合う、稲葉くんの人格がある。
飄々と冷たいようでいて、窓の向こう側で苦悩する菊地原くんの姿も、いがみ合ってるようでいて熱く歩み寄る市川くんの顔も、しっかり見ている。
お互いが伝え会えないモノを変わりに仲立ちし、悲しい誤解が生じ合わないよう考えてくれるありがたみが、急上昇する好感度に繋がる。
こういうキャラの建て方と、複雑で純粋な心の描写が歩調をしっかり合わせて、的確に描かれている演出は大変良い。
キャラを好きになれるし、物語が何をいいたいのか、キャラが何に悩んでいるのか、しっかりと教えてくれる。
スキャンダラスな性愛要素が目に付くけど、こういう地道な所がメチャクチャ巧いアニメだと思う。
んでその性愛のこと…スウェーーーックスのことなんですけどもッ!
ためらいを投げ捨て愛に素直になることにした菊地原くんが、市川くんと仲違いしたくなくてガンガンにアプローチ強める中、ぶつかったとしても映画の話をしたい市川くんが迫られて涙を流すの、大変良かった。
不都合なものから逃げ出す便利な鍵として、己の性を扱っている間は、セクシャルな働きかけは愛の真実を暴くどころか、嘘っぱちの哀しみしか産まない。
寿の初恋にも伸びていた、厳しい性愛へのジャッジがこっちでも元気で、一貫性を感じれて良かった。
何かを黙らせる武器にするために、少年のファロスは屹立するわけじゃねーッ!!
ここで我が強いように見えてメチャクチャ気遣いの人な菊地原くんと、根っからの映画馬鹿でありエゴとこだわりを押し通せる市川くん、それぞれのクリエイティビティが対立するのは面白かった。
二年の平和な平部員と、卒業までのタイムリミットを肌で感じとりつつ、正論だけじゃ回らない部内政治を上手く取り仕切ってきた王様の、重なり合わない立場のズレ。
恋心があらわになり、その先にある性へと手も伸びてきたこのタイミングで、そういうモンが改めて立ち上がってくるの、めちゃくちゃ面白かった。
『それ、ここで出すの!?』と『出すしかねぇよなぁこの流れなら!』が同居する瞬間、マジで物語食ってて一番楽しい。
市川くんと言い争いしたくないから、部屋では映画の話しない。
周りをよく見れる…そのために自分のクリエイティブを二の次にできてしまえる菊地原くんらしい、オトナな選択肢。
それを生粋の映画人である市川くんは哀しく思っていて、お互いが本音でぶつかるしかない領域から遠ざけるべく、迫ってくる唇が辛い。
自分たちを深く繋ぎうる恋の熱が、何かをごまかすための煙幕に使われてしまうことに、映画に極めて純粋な少年は切なさを覚えるのだ。
「そんな状況で…好きだの嫌いだの本当の話が出来るわけがねーだろーがッ! マジで映画人たる自分に向き合え!」という状況が、ここに来てグンと際立ってきた。
見目麗しい少年たちが、性愛の熱に突き動かされてお互いを求める、ボーイズ・ラブの本懐。
そこに強く踏み込みつつも、どこかでその湿り気を広い場所に逃がす窓を開けているのが、このお話の凄く良いところだと感じている。
寿と真央の物語の最後が、特別な相手の片手をしっかりつかめばこそ新しい場所へと飛び立てるモノとして描かれたように、セックスとロマンスを大事にしつつ、世界はそれだけじゃないからこそ面白いと描く筆。
それが今回は、”映画を作る”という作品のメインテーマ、二人の監督の根っこにガップリ、深く食い込んできた手応えがあった。
この精妙で力強い横幅…マジたまんねぇぜ。
市川くんが映画に嘘をつけねぇ本物の映画バカであることが、第一章の物語の背骨を真っ直ぐにする、凄く大事な要素だったと僕は思っている。
それは彼というキャラクターの柱であると同時に、”映画”を主題に選んだこの作品の中核でもあるのだ。
致し方ない事情があるとはいえ、そこから目をそらして上手くわたっていこうとする菊地原くんの”逃げ”をそのままにして、体だけが結ばれてハッピーエンド。
そういうBLの表層だけなぞった決着より、青春のもっと深いところまで入る姿勢が、途中に終わった熱いアプローチからは感じ取れた。
この物語ではそういう誤魔化しに、セックスを使ってはいけないのだ。
同時にどうしようもなく唇を求めるほどに、ライバル同士の距離が近づき恋が高鳴っている事実も、思い切り発熱している。
このグラグラ煮立った状況に、どういう答えを見つけて歩み寄っていくのか。
第二章折り返しの状況として大変いい感じで、続きがとても楽しみです。
秘められた過去がベットの下から出てきたことで、お互いの運命がどう転がっていくのか。
いい具合に強いヒキも入れて、二人の青春とクリエイティビティがより眩しく輝く瞬間へと、物語が飛び出す期待感でいっぱいです。
いやー…マジこのアニメおもしれぇ。
次回も楽しみッ!!