イマワノキワ

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ラーメン赤猫:第7話『旧知の鬼/今日の鏡像/野望と獣』感想ツイートまとめ

ラーメン赤猫 第7話を見る。

 二本の足で立ち、業務に勤しむ立派な猫とはいえ、結局猫は猫。
 恩人に撫でられて相貌を崩し、スイカに夢中で口周りは真っ赤っ赤。
 しかしそれでもなお、文蔵くん達は考え喋る猫なのだ…という、結構振り幅のある回。

 背筋を伸ばして誠実に仕事する、立派な姿がここまで目立っていたので、絶対的強者である但馬のオババに撫でられ褒められ、猫らしい顔している文蔵くんはレアだった。
 毛を落とさない秘法、比較的リアル寄りな作品のチャーミングな幻想になってて、探りきれない部分があるからこそ可愛らしい絶妙な塩梅を、生み出してくれる要素で好きだ。

 

 このお話は文蔵くんたちの二面性…ってほど、対立も分断もしていないのだけど、まぁメリハリの効いた多面的な在り方を、話数またいで描くのが巧い。
 いかにも猫っぽくデレデレしたりスイカにかじりついたりしたと思ったら、人間以上の決意と賢さで怪しいビジネスを跳ね除け、自分たちの居場所を守ったりする。

 それは多分、彼らを取り巻く、人間の多様性の反射だ。
 但馬のオババや社さんみたいに、猫たちの生き方をリスペクトしつつ適正距離で付き合う人もいるし、テストステロン過剰分泌されそうなクソ社長みたいに、「しょせん猫」と侮り駒として見てくる輩もいる。

 あんだけ朗らかに油断した顔を見せてる佐々木さんが、「猫の商売はとにかくナメられる」と人生訓を心に刻むほど、赤猫を取り囲む世間は存外厳しい。
 その上でラーメン出してスイカ食って、皆で楽しく日々を過ごせる場所を頑張って守っているからこそ、赤猫の従業員は立派だ。
 話も折り返しを過ぎて、すっかり職場になじみハナちゃんもデレてきた頃合いだが、それが適正距離を見失わせるんじゃないかと自省する(自省できる)社さんの描写が、ちょっとした救いになって良かった。
 しみじみと、同僚のことを「好きだなぁ…」と思える職場は、やっぱ良いところだよ。

 

 但馬のオババとのやり取りが、後の拡大型ビジネススキームを拒絶する前提になってたり、今回は硬軟明暗相照らす作りだったと思う。
 自立して働く猫は猫界でもマイノリティで、しかしそういう存在に居場所を作るべく、佐々木さんはナメられつつも誠実に、自分なりのビジネスを頑張っている。
 知的で温厚な彼がどうしても手に入れられない、凄みとこだわりで押し切っていく高貴な蛮性を文蔵くんが担当して、バランス良く赤猫が成り立ってるってのも、社長とのやり取りに見えていた。
 必要とあらば、佐々木さんも強く出れるんだろうけど、「文蔵くんがやっててくれるんなら僕は…」って信頼感が垣間見れて、あの場面好き。

 猫はおろか人間も駒のように扱う、利益最優先のビジネス主義は、赤猫のやり方ではない。
 猫の手も借りたい…どころか、猫の手しかない小さな店舗、金儲け主義に浸って忙しくなりすぎると、本来の目的が果たせない。
 飲食提供業務を通じて、”自立した猫”という究極のマイノリティが社会と接点を持ち、自分らしさを最大化出来る拠点として、赤猫を風通し良く、無理なく楽しく維持していく。
 それが佐々木さんの経営ミッションであり、相手の背骨を事前に調べてこなかった社長は、戦う前から負けていた感じがある。
 手駒なはずの秘書が、重度のネコ好きだってことも把握してなかったしな…。

 

 接客第一味二番、利益は目の色変わらぬほどに。
 自己実現と人の輪を最重要課題に据えて、ブレない経営を続ける赤猫を鏡にすることで、人間も自分が今どんな顔をしているのか、確認できる。
 秘書さんが自分を取り戻し、悪行の駒であることを辞めるのも、猫様のご高徳…っていうには、人間相手にはフツーに従っていた過去が重たくて、なかなか良い皮肉だなぁと思う。
 二本足で立って喋る猫という、素敵なファンタジーを鏡にすることで、人のあり方を改めて問いただす話でもあるわな。

 ここら辺の鏡像関係を、第2エピソードでコミカルに、迫力ありすぎな自分を鏡で見てビビるクリシュナちゃんで書いてるのも、なかなか面白い呼応だった。
 どんだけ狙って置いてるのかは定かじゃないんだけども、それぞれテイストが異なる短編を連続して一話にまとめる形式が、思わぬ共鳴を生んでエピソード全体に面白さを生むのは、結構好きな作りだ。
 こういう思いがけない呼応が随所にあるのは、やっぱ話の真ん中に何を据えて描いていくか、ブレずに鮮明だからこそって感じはある。

 

 猫のふり見て我がふり直せな、そこら辺の奥行ある面白さ。
 それこそがやっぱ、作品独自の魅力だと思える回でした。
 次回も楽しみ!