黄昏アウトフォーカス 第8話を見る。
三年生も引退し、市川新部長のもと新たに動き出した映画部。
そこに迷い込んだ新入部員は、挨拶代わりの彼氏募集をぶちかますスーパービッチだった!?
第二章では優しい王様の良き理解者だった礼くんの、想定してなかったぶっ壊れ方にも衝撃を受ける、超純情BL第三章開幕である。
いやー…全然想定してなかった方向に転がりだしたが、むしろその裏切りが心地よくて、マジで面白い。
今まで超ピュアいい子が沢山出てきた作品が、恋に恋して色んな人を裏切ってきた小悪魔ちゃんと、人の心全くわかんないロボ人間を主役に据えて、どんな話を作っていくか。
読めねーおもしれー!




まず新たに主役になった詩音ちゃんのキャラが、スパイシーで凄く立っててた。
リアル恋愛は未経験だけど、少女漫画に脳幹まで焼かれてて、漫画みたいな恋がしたくて自分を求める運動部を次々退部。
競技で結果を出しても「時間無駄にしたわ!」と顧みることなく、流れ流れて映画部の乱入してきて、一発目で三年の映画妖怪に一発キツイの食らうという…。
波乱万丈勢いよし、ルッキズムと身勝手と不人情を妖精系ボーイの形に塗り固めた、最悪から始まるラブコメディは初手から全開だッ!
ここまでのお話、容姿がどーこー言うボーイ全然出てこなかったので、まず面の良さを問題にしてくる詩音ちゃんの顔面即物主義は、なかなか新鮮だ。
礼くんがとっととキスしたのもそうで、ここまでずっと心が通いあった証としてロマンティックに扱われてきた口づけは、今回「それやっとけば、眼の前の厄介事が片付くかも」という、冷徹でズレた判断でぶっ放される。
ここまで話を貫通してきた、心が先にあって身体が後に付いてくる、精神主義的ロマンティシズムが第三章の主役たちには、全然ない。
だからこそ、連作の最後を飾るのに相応しい批評性を備えている感じもある。
詩音ちゃんはあんだけ運動部で寄せられた信頼や期待を、すげー尻軽に裏切って次の場所へ移っていたのに、映画部では他の一年に馴染めないのを気にしている。
礼くんのクズっぷりに文句言う割に、自分も相当なクズである自覚がなくて、だからこそ愛されたい気持ちだけは山盛り抱え込んでいる。
その上でロマンチックな”お手本”ばっかり見すぎて憧れが先行し、本当に人を愛するとはどういうことなのか、実感がないまま形にだけ憧れている。
この実態と形式のズレは、実はここまでの二章、少年たちが歩んだ純情青春物語の序盤と良く似ている。
寿も真央も、市川くんも菊地原くんも、本当の恋、本当の自分が解らぬまま迷ってた。
そこに「コレしか無い!」と確信できる愛の実感を、抱きしめ抱きしめられる性の手触りを、与えてくれるからこそボーイズラブと青春は離れがたく結びつき、恋を通じ自分を見つけ実現していく物語に、眩さと熱が宿っていった。
角度は違えど、三章のポンコツ人間共が追い求めるものはここまで描いてきたものと同じで、しかし今までと違った”悪さ”があるからこそ、削り出せなかった深さで改めて、テーマを掘り出すことも出来そうな予感がある。
真実の愛を真っ向勝負で探す第一章、反発し合っていた二人が近づく引力がチャーミングな第二章ときて、人間の大事な部分を全然解ってない二人が描く、新たな最終章。
性傾向が不鮮明だった所から、たった一人の番を求めてゲイである自分に踏み出していった二章に対し、初手からオープンに彼氏募集宣言ぶっかます所も対照的だし、別の人間、別の話を一つの部活にぶち込んだからこそのバラエティと面白さが、コミカルでパワフルなスタートにグラグラ煮立っていた。
身勝手で元気満載な詩音ちゃんに引っ張られるように、ハイテンションなギャグの切れ味が良かったの、楽しくて好きだな。
こういうテイストから繰り出される、湿ったシリアスこそ火力高いっての、俺知っとるよ!
脳内どピンクな詩音ちゃんはとにかく出会いを求めて、尻軽に色んな場所を飛び回る。
その時後ろ足に蹴り飛ばしたモノの意味に、この後ドクズ彼氏と映画に向き合う中改めて気づいていくと思うんだけど、そういう断層をどう描くかも結構気になっている。
映画をめっちゃナメた所からスタートしたのも新しいけど、ここも集団製作の面白さ、部活という共同体で色々ある中で変わっていくだろうし、クズ主人公だからこそ何かを見つけ、変わっていくドラマは鮮烈になりそうだ。
これが相手役である礼くんも、感情と理性の違いはあれど似たような匂いしてるのが、なかなか面白ぇんだよなー。
詩音ちゃんは言葉にならない情熱に押し流されていて、礼くんは他人の気持ちがわからないほど冷徹な理性に支配されている。
最悪で真逆に思える二人は、お互いに欠けた部分を交換できればバランス良く、足りなかった部分を補って新しい世界を開いていけるだろう。
ここら辺も寿と真央の交流なんかに描かれていた部分だけど、あの時みたいな真っ直ぐなロマンスで紡ぐというより、もうちょい下世話で楽しい雰囲気で、二人らしく書いてくれそうな期待感がある。
互いの余計な部分を欠けた部分に突っ込んで満たす、性と心の重なり合いは、ボーイズ…に限らずラブ&セックスを扱うお話では、ちゃんと書いて欲しい部分だからなぁ~。
寮に入ったら即座に性獣共にファックされると思い込み期待してる詩音ちゃん、すげーナチュラルに全方向失礼人間なんだけども。
まぁここまでの二章、寮の私室でメイク・ラブしてる男の子ばっか出てきとるけど、そこには魂の交歓がまずあって、繋がった心が相手を求めた結果、肉体が重なっていた。
詩音ちゃんが夢見てるただれたセックスが、どんだけ人間を傷つけるかってのも寿で書いてて、ここら辺の性の実像(あるいは美しき理想)に夢見るスーパービッチがどう近づいていくかは、なかなか楽しみだ。
礼くんの方もなかなかにぶっ壊れた人格してるけど、情緒溢れすぎてる恋人とヘンテコな恋愛ごっこしていく中で、例えば菊地原くんに向けていたような情を、他の人にも届けれるようになるのだろうか?
僕はこのお話、少年たちが恋の中で自分を見つけていく成長物語として楽しんでいるので、”悪い子”である彼らこそがその真価を刻んでくれるのではないかと、凄く期待している。
ロボ人間と恋愛中毒、相性最悪の二人が面の良さと成り行きで繋がって動き出す、ハイテンション・ラブロマンス。
一体どこに行き着くのか…”映画”はそこにどういう意味を生み出していくのか。
第三章もとても面白くなりそうで、次回も楽しみです!