イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

来世は他人がいい:第1話と第2話の感想

 

 来世は他人がいい 第1話と第2話を見る。

 親の都合で番わされた婚約者は、人格ぶっ壊れたドヤクザ野郎!
 ”ラブコメ”でくくるには血腥すぎ治安悪すぎな、ブレーキぶっ壊れ系青春群像劇…といった塩梅。
 正直見る前はもうちょいソフトな、「ヤバい男に愛されちゃうヤバい私」つう幻想を安全圏から弄ぶためにヤクザをネタに選んでいる話かと思ったが、いざというときの主人公のブチギレ加減含め、なかなか本格派のロクでもなさだ。
 明らかにヤりすぎてる暴力が宿す、笑っちゃうしかない面白さをしっかり制御して、どこまで沈むか読めない恋模様と合わせて”ラブ・コメディ”という…。 
 その二人混ぜるな危険、劇薬系ラブコメッ!

 

 運命に流されるまま、激ヤバ男に番わされバカにされ泣き寝入り…。
 と思いきや、なすりつけられたクソを主役の手弱女がブチギレ腎臓売却行動でなすりつけかえし、その爆裂ぶっ飛び加減にイヤなスイッチが入った激ヤバ人間が恋愛に本腰入れて奇妙な日常開始ッ!
 という第1話が、勢いもあり心地よい裏切りもあり、短編として良くまとまっていた。
 こっから地獄カップルが今後身を置く環境が、どんだけ当たり前に暴力にまみれているのか、二人のヤクザ適応度はどんなもんかをチュートリアルする第2話に繋いで、「自分、こういう作品です」と挨拶してくる手際は大変良かった。
 いやー…随分エグい味するねこのラブコメ

 暴力を飯の種にしつつ”スジ”とやらは通す、ファンタジックな正義のヤクザではなく、利害関係と血みどろの因縁に縛られ、一番手っ取り早い解決をいつでも取り出せるくせに、付き合いやすい人格者を平然と演じられるクズ野郎集団として、暴力集団を描いているのは結構好きだ。
 そういう生っぽい荒々しさに飲まれないように、ヤバすぎる状況に呆然とする常識人のようでいて、その実ナメられたら即座にブチギレ、後先考えず侠気を見せつけ周囲を制圧できる生粋のドヤクザ娘を、シンデレラ役に配置しているのもいいバランス。
 これで異常な環境に翻弄されてるだけだと、可愛そうだしストレス貯まるからな…。

 

 とにかく深山霧島という男の、天高く屹立したキャラクター性が作品を支えていて、大変よろしい。
 ヘラヘラ笑いからスルッと超暴力が飛び出し、女は売り飛ばす男はブッ刺す、ド最低のクズ中のクズ…でいながら、過去や人格の深い部分は全然見えず、命がけの行動の裏にどういう欲や祈りがあるのか、サッパリ分からない。
 この不鮮明で強烈な結像は、主人公・吉乃が作中観ている彼の姿とピチッと重なっていて、ヤバすぎるけど…ヤバすぎるからこそ観ていたくなる不思議な引力を、胸焼けするくらい濃厚に死んだ眼から放っている。
 ロマンスを牽引するためのミステリは、読みきれないほど面白いからなぁ…。

 霧島という謎めいた機構は、常に暴力を出力する。
 普通の人間だったらもうちょい穏当な、話し合ったり心を繋げたりして関係を作っていく場面で、相手を殴り飛ばし勝手に殴り込み、自分の意志を押し付け押し通す。
 尋常ならば考えた末に選ぶだろう暴力が、当たり前に肌に馴染みすぎていて軽く、しかしその結果は血が出て目を抉り、蔑ろにされた相手が本気でブチギレる、洒落になってない重さを当然宿してしまう。
 彼が巻き起こす破壊と、それを生み出す人格回路が全く繋がっていなくて、なんでこんな事するか、次に何をするか読めない、巨大な謎。
 多分物語は押し付けられた吉乃の恋を道糸に、それを探っていく方向で進むのだろう。

 爬虫類というか宇宙人というか、人間の皮を被りつつ解りきれない異質性を霧島は持っているわけだが、現状はみ出しているヒントを拾うと、どうやらヤバい状況でメチャクチャにされたい願望が強い…らしい。
 それが生来欲望へのブレーキがぶっ壊れた自分に釣り合う誰かを求めた結果なのか、なんかあって心についた傷の代償なのかは解らないけども、兎にも角にも霧島の壊れ方に、吉乃のブチギレ方はピタッとハマった…らしい。
 その熱狂もポイッと投げ捨てて、畜生めいた行動にいつでも出そうな読めなさも漂っていて、恋人としても仲間としても全く信頼出来ないのに、主役との距離はピッタリ近い。
 なかなかいい感じの安心できなさだ。

 

 霧島が巻き起こすハチャメチャに疲労困憊、常識人で被害者担当…に見えて、吉乃も魂の色は生来ドヤクザ。
 ナメられたら即座に殺すという獣の思考回路を、脳髄の奥に秘めたおもしろヒロインである。
 このブチギレ加減がどっかで釣り合って、猛獣の番を遠くから見守っているような、不思議なハラハラとドキドキが元気なのは大変良い。
 どっちも人生の表街道を真っ直ぐ歩ける感じが全くしない、どっかぶっ壊れた人間なわけで、その欠落がいい塩梅にハマるのなら、血まみれになりながらどうぞ抱き合ってくださいッ! て感じだ。
 つーか吉乃、良くも大阪では十数年普通人やってこれたな、この性根で…。

 霧島という危険な触媒に出逢うことで、吉乃の秘めていた本性が目覚めた…という見方も出来るが、今後加速していくだろう腐敗と自由と暴力の真っ只中で、一般人気取りの吉乃のメンタリティが、ドヤクザ覚醒を果たしていくのなら、それも面白そうである。
 つーかそうやってブレーキ壊していかないと、霧島のぶっ壊れ加減にはついていけないわけだし、性根は結局ナメられるのを許せない猛獣なんだから、ヤバ男に引っ張られてどんどんヤバくなーれ! って感じ。
 …あるいはそうやって破滅に突っ走っていく引力に、抗いながら相手を知っていく物語になる…のかなぁ?
 扱ってる暴力のマジっぷりが濃いので、どうバランス取るのかは読めんね

 

 軽い気持ちで五億かき回して、マフィアとのいざこざ作ったクソ女。
 その尻尾を掴んで、スナック感覚でチンピラの目を刺し、ボッコボコに殴り殴られ。
 「だいたいこんくらいの塩梅で、金と暴力を煮込んでいきます!」と、作品の標準的レシピを教えてくれる第2話はたいそうロクでもなく、いい塩梅に血みどろだった。
 吉乃を安全圏に置く気は毛頭なく、かといって霧島が身を置いている逸脱には簡単に追いつけず、奇妙な断絶を孕みつつ暴力機構の中で転がる、奇妙な関係。
 そこに仁義はなく、大金は熱なくやり取りされ、血はひどく気楽に飛び散る。
 この湿り気のない深刻さ、重たさの割に気楽な暴力は、何度もいうが結構好きだ。

 涼しい顔で日常にしてはいけないものを、実際日常にしてしまっているヤクザという職業。
 霧島がそのスタンダードかと問われれば、一応人間の形を獣に背負わせるために重視されている建前を、溢れ出す本音で蹴り飛ばしすぎている感じがある。
 イザというときしか抜かないからこそ…イザというときには全く躊躇いなく行使すればこそ、重みを増すはずの仁義なき暴力。
 それを常時抜き身のまま、カッターナイフのような気楽さで振り回し続けている霧島は、やはり表層と内部が繋がらない…というか無軌道な暴力を生み出す中身が全然見えない、不気味で引力のある存在だね。

 

 コメディにしちゃいけないのにコメディになってる、顔面ぶん殴られたり腎臓売ったりの地獄絵図。
 その奥にどんだけマジな気持ちがあって、暴力をネタにしているかという作品への問いかけも、今後霧島の見えざる奥を探っていく中で手応えを得ていくと思う。
 それは吉乃が霧島という男を知り、ヤバさに巻き込まれ運命に流されるのではなく、自分の意志と決断で彼を選ぶという、ロマンスの本道ともシンクロしていく道だ。
 いやまぁ、どう考えてもとっととバイバイしたほうが良い人間なんだが、吉乃の中の獣もいい感じに霧島に共鳴しちゃってるし、行くトコロまで行くしかねーだろもう!

 霧島は暴力と陰謀を飯の種にする最悪職業に、高校生ながらしっかり適応している感じがある。
 小学生で超☆問題事件引き起こしている、暴力エリートとしての早熟がどっから来ているのか、高校生ゆえのギャップも掘り込んでいくと面白そうではある。
 ここら辺の歪さ、明らかに捻れ狂ってるだろう家庭環境(あるいはその不在)に起因してそうで、ドロドロしたもんが吹き出してきそうだなぁ…。
 まーそういう突沸をこそ楽しみに待ってる話なので、超ロクでもなくて洒落にならない獣の故郷へ、吉乃がしっかり踏み込めるくらいにヤクザレベルが上っていくと良いねッ!
 それはつまり、真人間ルートからガンガン外れるってことだけどね!

 

 クソロクでもない暴力を、どこかコミカルに軽妙に描く筆からして、最悪の展開へ下向きに落ちていくしかないと思える話なのだが、どっかで何か、人間として真っ当な命綱を用意してくるかも、現状読めない。
 霧島が身を置くヤクザ稼業は、甘っちょろいファンタジーを抜きにした銭と暴力満載のリアル路線であるが、彼と吉乃を繋いでいる”恋”は必然的に、どっか甘く温かい人間味を想起させる題材でもある。
 そんなん嘘っぱちの脆い糸だと、残酷に引きちぎっていく方向に行くのか。
 それだけが獣を人に戻しうる、地獄の蜘蛛糸なのだと純情を削り出していくのか。
 こっからどういう角度で、ロマンス要素を転がしていくかも楽しみだ。

 ニヤニヤ笑いの奥が全く読めない霧島を筆頭に、爆発力ある諸要素をどう結び合わせ、どういう絵を描いていくかワクワクと読みきれない、面白いスタートでした。
 吉乃のキャラクター性や乾いた暴力描写、そこにミスマッチな魅力を放つ軽妙な笑いと、面白くなりそうなネタはゴロゴロしている。
 それを今後どう生かし、繋ぎ合わせて作品独自の味わいを煮出していくのか。
 もうちょい話数を重ねないと、作品が持ってるコクを堪能しきれなそうで、大変続きが気になります。
 もう二転三転、ムけそうな気配があんだよなぁ…。

 

 血と華に彩られたラブコメヤクザ地獄道、上手く見取り図を描いたこの先に何が待つか。
 次回も楽しみ!