らんま1/2 第1話を見る。
4クールの長きにわたり、名作SFジュブナイルラブコメを見事蘇らせた”うる星やつら”。
その勢いを借るように高橋留美子二度目の大ヒット、80<s格闘青春群像劇の傑作が令和に大復活! である。
リバイバルブームの昨今、果たして”今”やる意味とかやりきる気概とかを感じられる仕上がりになるのか。
実は結構不安だったけども、蓋を開けたら昔の良いところと今イケてる要素を上手く組み合わせ、作品のコアである『格闘と青春』もバッチリ活き活き表現されていて、大変良かったです。
自分は令和うる星めっちゃ楽しんだので、らんまもいい仕上がりで嬉しいねぇ…。




どうやったって思い出の中燦然と輝く過去の傑作と、色々比べられる作品なのだが、アニメ初回放送より34年、色々変わりに変わった制作技法の恩恵を、格闘アクションが真っ先に受け取っていた。
めっちゃしっかり尺を使って、躍動感あるバトルを初回から元気に暴れさせてくれていて、見ていて大変気持ちがいい。
女らんまの軽功に長けた靭やかな身のこなし、どっしり腰を落とし真っ直ぐ拳を突き出すあかねの実直さ。
この頃はマジで強かった玄馬が放つ上段蹴りに宿る、大木すらへし折りそうなパワーと、それを受け流す乱馬の技量。
どれもラブコメの添え物ではない”本気”に満ちている
殴り合いにマジになりすぎて、生来の軽やかさを忘れることもなく、程よいバランスで青春アクション物語の良いところを生かし続けれたのが、この作品の良いところだと思う。
ほとばしる青春のエネルギーを、なかなか素直に扱えないな辞める十代たちが騒々しくぶつかり合い、思いを拳に託し笑いに炸裂させるお話にとって、アクションシーンの仕上がりがしっかりしているのは、何より良いことであろう。
現状乱馬に匹敵する強キャラがなかなか顔を出さない状況が続くので、ヒリついたバトルが展開された時どういう味わいになってくるのか、シリアスな拳の描き方に期待も高まる。
水をかぶると女になっちゃう、天才的発明によってジェンダーとセクシャリティの垣根を軽妙に飛び越え、笑いに交えてポップに描く。
「原作発表から時が経ち、逆に今かなり良いコク出てるネタなのかもな…」と、見ながら思わせられたりもしたが、この物語の主役とヒロインは最初、お互い拳の道を志す少女として顔を合わせる。
そこであかねはすごく素直で優しくて、初対面の相手を思いやれる、高感度めっちゃ高い子である。
「…こんなに可愛かったっけ?」と思わず思ってしまったが、こっちがあかねの素顔であり、恋心とか女らしさとか、もう子どもじゃない彼女を縛る色々を取っ払うと、ああいう顔をするんだと思う。
乱馬も初対面では(イカれた秘密は抱えつつ)極めて素直に、拳法少女同士いい感じの距離を保てていたのに、”男と女”になった途端ぶつかりあって、素直になれず挑発的な言葉も口をつく。
男女の垣根を軽やかに飛び越える立場にいるようで、乱馬が「男である自分」とも「女であるあかね」とも、「男でありきれない自分」とも上手く向き合えない、思春期真っ只中のめんどくせーシャイボーイであることが、この第1話ではしっかり示されてもいた。
ここら辺、全編通して他者を通じた自己発見の物語だった”うる星”から共通している部分で、スタンダードなジュブナイルとしての強度を、大事に話を作ってんだなぁて感じね。
とはいえあかねと乱馬は、親が押し付けた許嫁。
しかも呪泉郷の呪いで、素直な恋路を進んでいくにはあんまりにこんがらがった状況から物語が始まり、自分たちの本当が一体どこにあるのか、探り当てるには障害が多い。
ドッタンバッタン殴り合いの大騒ぎ、ツンツンぶつかり合って時折相手の大切さに目を向ける日々を元気に走り抜ける中、二人はお互いを通じてあるべき自分の姿を探すことになる。
この青春マラソンに、恋敵であり青春の伴走者でもあるハチャメチャ人間どもが、凄い勢いで投入されてワイワイやかましいのが、らんまワールドの良いところである。
やっぱこの元気と品がいいカオスは、浴びていて気持ちがいいね…。
男女の垣根が自分たちを引き裂き、また引き寄せもすると分かる前に、らんまは「男の子には、絶対負けたくない」というあかねの、素直な声を既に聞いている。
可愛くねぇ色気がねぇと、散々煽って喧嘩ばかりなコミュニケーションしか取れなくなっちゃう許嫁が、凄くピュアな気持ちで「女である私」に向き合ってる姿を、乱馬は物語が動き出すこのタイミングで既に見ているのだ。
普通の話だったら、「男である俺」とのダイレクトな繋がりだけが存在するんだろうけど、ここで呪泉郷という物語装置を持ってくることで、「女でもある俺」という別軸が発生して、関係がこじれたりポップに跳ね回ったり、独自の面白さを生んでも行く。
女らんまは「女らしさ」にコンプレックスを抱くあかねの悩ましさを、急に降って湧いた恵まれたプロモーションでもって軽やかに飛び越え、嘲り挑発していく。
自分が生来揺るがせないものとして縛られている女性性を、メチャクチャで突発的で外部的な「女らしさ」でもって、退避可能なレジャーランドのように玩弄出来るらんまの存在は、あかねにとって表面上の対立を超えて、結構なストレスの種であろう。
この軽快さは男らしくあり続けることを許されていない、乱馬固有の苦悩と鏡合わせだったりするので、複雑に絡み合って良いコク出るポイントなわけだが。
降って湧いた許嫁相手の、突発性ツンツンラブコメディ。
そこに主役のセクシャリティを軽やかにスイッチするアイデアを盛り込むことで、あくまで軽妙にマジになりすぎず、しかし道具として便利に使いすぎるヤダ味からも距離を置いて、面白い角度から”男と女”を照らしていける道具立ては、物語が始まるこの第一話からすでに結構元気である。
すれ違いと思い込みを燃料に加速していくラブコメエンジンが、バラエティ豊かな呪泉郷の呪いでもって色々加速し、明かせぬ秘密と混ざり合って話を面白くしていく余白の多さ含め、やっぱ天才の発明だよなぁ…。
呪泉郷という変身装置を最大限活用して、「相手の本当を知らない」という、物語的に大変美味しい要素が山盛り詰め込めるのは素晴らしい。




そこら辺が炸裂するのは次回以降として、ややゆったりと物語全体の雰囲気、80Sリバイバルの空気を味あわせてくれた第1話。
POPアートワークに北村みなみを迎え、実は現実の80年代にはそういう色も形も存在しなかった、ユートピアとしての80’sアートが大変いい感じである。
令和のコンプライアンスギリギリ、後退のネジを外した裸体表現に心騒ぐものを感じつつ、いい感じに洗練されたポップさが書き文字や色使いに元気で、大変良かった。
このやや派手目な心地よさに対置するように、居候ホームコメディの舞台となる天道家が、”我が家”としての顔をしっかり見せてた。 おっとりお姉ちゃん属性の始祖にして完成形であるかすみを不在なる母の代理に据えて、ワイワイ賑やかで喧嘩するほど仲が良い、大家族の物語として展開していくこのお話。
ホットパンツの眩しさや晩酌の準備に漂う夏の気配をまといつつ、木目も爽やかな天道家はゆったりした落ち着きを家全体に宿し、あるいは生み出し、これからの物語が進んでいく道のりを静かに示す。
「らんまたちと一緒にここにいれたら、凄く楽しいだろうな」と思える”我が家”として、お話の中核に座る建物をしっかり描いて話をスタートできたのは、僕は凄く良いことだと思う。
ここら辺、諸星家の心地よい小市民感と面白い対比であり変化だなぁ、やっぱ……。
ぶつかったり反りが合わなかったり、降って湧いた同居人との衝突もまた、みんなの楽しい日々の彩りになってくれるような鷹揚な懐深さを、第1話での天道家の描き方はしっかり宿していたと思う。
ここら辺あんま話の展開を焦りすぎず、ひとつ屋根の下で暮らす家族の紹介にスケールを抑え、しっかり時間を使って描写を深めていったのが、良く効いてたかな。
目の前に描かれているものが今後どういう仕事をするのか、じっくり噛み締めて腹に落とす余裕があったのは、アクションシーンの受け取り方とおんなじ感じ。
作品の良いところを見落とさず、ちゃんと「今のアニメ」として削り出してくれそうな、期待感と信頼が生まれる描き方だった。
天道家の夕涼みをしっとり描く筆運びが良かったことで、ハイテンションに騒ぎまくるアクション&コメディの合間、鋭い切れ味で展開されるシリアスな温かみも、しっかり書ききってくれそうな腕力を感じれもしたしね。
高橋作品はあらゆる要素が面白くて最高なんだけど、やっぱふと真顔になって話のテンポを落とし、どっしりいちばん大事なものに向き合う場面の暖かさが、いっとう好きだからさ…。
ここら辺のマジな面白さと、ボンボン弾けまくる狂騒の楽しさを、良いバランスでしっかり書いた第1話であり、今後も描いてくれそうなスタートだったと思います。
いやー…マジ良かったな…。
というわけで、ノスタルジーを慰撫するだけで終わらず、思い出引っ掻き回して傷だらけにするのでもなく、色んな要素のバランスをしっかり取って、『令和のらんま』をやってくれた第1話でした。
作品全体のテストケースとなる今回、どういう要素をどのくらいの配合で、どういう味わいで描いていくか慎重に考えてくれてる手応えを得れたのは、大変良かったと思います。
つーか久々に出逢うあかねが、記憶の中の五十倍可愛くてありがたかった。
この塩梅であの子もこの子も描かれたら、頭がおかしくなっちまう予感に震えつつ、次回を楽しく待つ。
山盛りのキャラたちをどう捌くかの手際にも、期待大ですッ!