鏡となる他者を二人間に挟んで、少し変化した…ようでいて、不鮮明な手触りを残す、危険な恋人たちの距離。
吉乃の故郷・大阪へと舞台を移して、微笑みの仮面の奥を探る前編、来世は他人がいい第6話である。
全体的にやがてくる爆発に向けて、チリチリきな臭い気配をばらまく感じの回であり、不穏ではあるがおとなしめ。
良いツラで女にモテて、心なく食い散らかして夜を泳いできた霧島と、故郷に戻ってきてまとう空気を変えた吉乃。
それぞれの”日常”が描かれる回だった。
「ヤクザの豪邸」って感じじゃないお家、スーパーでの買い物。
あんだけの侠女がなんで普通人面出来ていたか、その根っこが見えた気がした。
愛を語りつつ傷を付け、執着のわりに奇妙な繋がり方を求める。
霧島というミステリは一貫して不鮮明な謎のままであり、その不気味さを知りたいと思う足場は、ここ二三話で吉乃の中に固まってきた。
ここら辺の化学反応を生み出すべく、別のキャラクターを触媒として活かす技量がこのお話高いなぁ、とも思っているわけだが、さて今回の新キャラクター、人生の勝ち組でありながらヤバい男に惚れちゃった汐田菜緒さんは、一体どんな仕事を果たすのか。
「名前が植物ではないので、レギュラーにはならんだろうな」という、命名則からのメタ読みは出来るし、ヒドイことになるオーラしか出ていないわけだが…。
テキトーに相手が心地よく思うだろう言葉と距離感を投げて、便利に使える間合いを維持して、セックスはしても心根は明かさない。
吉乃に出逢う(あるいは再開する)まで、霧島にとってどんな恋愛が”日常”であったか、三年前の元カノが照らしてくれてる感じもある。
まー控えめに言って最悪であるが、それが霧島の普通だってんなら、そういう動物なんだからしょうがない。
汐田さんはあくまで霧島に狂わされた女たちのサンプル、その一つでしかなく、こういう犠牲者を食い散らかしながら生きてきた獣が、妙に人間臭くなってしまう唯一の相手が吉乃…つうことなのだろう。
そういうヤバい肉食獣に、唯一食い散らかされない特別な餌食として、吉乃の値段を上げるエピソードでもあんのかな…などと思ったりもするが。
「ナメられたら、死んでも殺す」を行動理念とする吉乃も、霧島に負けず劣らずの獣ではあり、そういう意味はで凸凹噛み合ったからこそ、二人の運命は惹かれ合っている。
当人無自覚なその引力に気づいているから、鳥葦くんはむっつり不機嫌、爆発寸前の冷たさで霧島を睨んでもいるのだろう。
ここが炸裂すると血を見ないわけがない気配があるので、いつ噛みつき合うのか、恐ろしいやら楽しみやら…。
世慣れた風でいながら狂気が足らない、全く普通な汐田さんでは、霧島がまとうエグみには全く釣り合わないと、端から見ていても解る。
海外留学から局アナ内定、顔面にも恵まれ社会の荒波を乗りこなす知恵もあると、自分を買っている人だからこそ、獣の本性もその餌食となる末路も、見通すことは出来ない。
霧島を惚れさせた唯一の女である吉乃が、けしてたどり着かないバッドエンドを体現するために、作品に投げ込まれた起爆剤。
そういうイメージが、汐田さんの描写からは現状する。
彼女というキャンバスを汚しひっちゃぶくことで、霧島というミステリを解くヒントが出てくる…みたいな。
最後まで紳士的な優しさを取り繕って、巧いこと平和に大阪を去っていくルートも無いわけじゃないが、彼女が吉乃の存在を認知してしまったのが、導火線に火が付いた感覚を強くする。
獣の中に唯一ある人間性、深山霧島の”日常”を崩す存在。
その特別さに、花の名前を背負わぬ己が届かない現実が今後、計算高いリア充女子を襲うわけだが…ドクズが蹴り飛ばすには、うってつけの素材すぎんだよなぁ…。
吉乃の手前そこまでヒドイことは…と思いたいが、そういうイカれた部分既に知ってて関係継続中なので、霧島の本当を知ろうとたどり着いた大阪、結構エグ目に血を見るかもしれん。
しかしまぁそういう壊れ方もまた霧島の真実であり、そこを見ておかなきゃ彼という謎が解けないのであれば、外面だけ取り繕った人の心がないクズな部分も、しっかり書いて欲しいモンである。
そういう獣の部分と、病身の吉乃に見せた人間の部分が併存(同居ではなく)してしまっているのが、霧島の難しさであり面白さなのだろうから。
あるいは容赦なく他人を使い潰せる冷たさが、汐田さんを素材に暴かれることで、そうしない吉乃の特別さ、そこから生まれる思いの色合いが、上手く可視化されるかもしれない。
この話のこういう、新しいキャラクターを投下することで物語の反応を促していく手際、結構好きなんだな。
一応汐田さんが冷徹彼氏をギャフンと言わせるルートもないではないが、諸材料をかき集めるとまーなかなか勝ち目がない感じで、せいぜい鮮烈に散って欲しいと願うしかない。
まー俺もロクでもないもの見たいから、人間の皮を被った外道共が集うこのお話見ている部分はあるわけで、剣闘士の死闘を高みから見下ろしてるローマ貴族みたいな心持ちで、次回後編を待つ。
霧島が”日常”にしている共感性のなさって、身内への仁義で自分を動かす吉乃の古臭いヤクザ気質と結構相性悪くて、それをダイレクトに突きつけられた時どう反応するかは、ちゃんと見ておきたいんだよな…。
タイプの違う若いヤクザ達が、その心意気をゴツゴツぶつけあう話としても楽しんでます。