人恋しさをちらつかせる誘蛾灯に、惹かれて進めば地獄絵図。
付いて離れて、喉笛に食らいつく瞬間を探り合う猛獣たちの求愛行動、来世は他人がいい第7話である。
いやー…ロクでもないねぇ…。
大学見学に水族館デート、なかなか普通であったかい距離感でもって関係が前に進むか…と思いきや、他人を餌食にするカスが別の他人の餌にされる、超ロクでもない畜生界の物語が元気に展開していった。
上手く世間泳いでるつもりでハメられた菜緒が可哀想な犠牲者で、彼女を餌にゴミを釣ろうとする霧島が捕食者…というシンプルな構図に、”侠”にして”凶”にして”狂”たる吉乃が待ったをかけてきた。
菜緒ちゃんが知る霧島の過去に惹かれてる素振りが嘘ってわけじゃないんだろうけど、その男と出会って火が付いた「ナメられたら、死んでも殺す」という行動理念が強火に燃え盛って、相も変わらずネジのぶっ飛んだ主役である。
ここで霧島のぶっ壊れ方に歯止めをかけるマトモさではなく、同じ方向性でもっと強くぶっ壊れて波長を合わせてくる生き方が、ヤクザ主役の真骨頂という感じがあっていい。
惚れたりはれたり、近づいてみたり離れたり。
当たり前な人間の幸せを手探りするフリで、コイツラの壊れ方が回収されるわけもないのだ。
霧島の策士っぷりに踊らされ、人生揺るがす餌芝居に震えていた菜緒ちゃんはご愁傷さまであるが、あのぶっ壊れ人間を心底惚れさせるためには、手のひらの上で素直に踊るのではなく、そっから飛び出し横っ面を殴り飛ばす意外性が、やっぱり必要なのだろう。
全部が全部計算の上、狙った通りの”仕事”に余裕ヅラで挑む霧島が、事態の展開に取り残され、吉乃の行動に驚いている様子は、なかなか痛快でもあった。
あるいはこの心地よい痛みをこそ、何かがぶっ壊れてる青年は求め続け、吉乃こそがその切望に答えている…のかもしれない。
次回描かれるだろう決着が、ちらり覗いた怪物の素顔を照らしてくれるかと、僕もウズウズしている。




今回は、縦方向の分断/融和に特徴があったと思う。
垂直な境界線を挟んで付いたり離れたり、様々な人間が関係性の火花を瞬かせていく。
故郷に肩の力を抜いた吉乃は、霧島とピッタリ肩を並べ、あるいは不意打ちにグイと近づいて心を許され、まるで年頃の乙女が築くかのようなマトモな恋の間合いを示していく。
そんな彼女に暗い炎を燃やす菜緒ちゃんは、利用し利用される関係で他人と繋がり、向き合っていても一筋境目が入る。
あるいはそうして作り上げた便利な距離感を、不意打ちで切り崩され、餌食に落ちても行く。
主役二人の距離感はこっから二転三転するとして、他人を見定め、勝ったの負けたの勝手に値段を測る菜緒ちゃんが、吉乃を簡単に食える餌食と思い込み、あるいはその足元をすくわれて餌食に転落し、ガンッガン立ち位置が揺らいでいくのに、悲惨なスペクタクルが宿っていた。
霧島の隣に立ち、吉乃と互角にやり合うにはあまりに普通な、器用で馬鹿で普通の女。
彼女の危うい足取りが丁寧に描かれればこそ、そういうマトモな失敗を軽々飛び越え、意地と面子で鉄火場のど真ん中に飛び込んでいく、吉乃の壊れ方も際立っていく。
クズ一人手玉にとれない、震えるだけのお姫様には、霧島は荷が重いということも。
看病以来の空気を引き継いで、前半の吉乃と霧島はなんだかとっても”人間的”で、その温かな歩き方にうっかり体重を預けてもしまった。
この親しく近い距離…あるいはそれが本当に適切か、慎重に探る”お見合い”の間合いは、腎臓売って気合見せたり、性愛と暴力を気軽に切り売りするヤバい距離感よりも大概マトモで、だからこそこっちが本当なんだと、思いたくなる心地よさがある。
しかし猛獣の住処はそんなところにはなく…あるいは「ないのだ」と教えるために、獣達がお互いの喉笛を狙い合うジャングルの空気を、しっかり切り取っても来る。
なんにしたってフツーじゃ収まんない連中を、相手取るには菜緒ちゃん、マトモすぎたね…。
同時に殺すの裏切るのが介在しない、マトモな間合いに身を置ける性質が獣達にあることも、幾度か示されている。
慣れ親しんだ海遊館を共に歩き、お互いの誕生日を教えあい、他愛のない会話で日常を埋めていく。
そういう体温のある関係構築を、利益のためのただの作業にしない/出来ない何かが吉乃と霧島には確かにあって、だから二人の関係は複雑な色を帯びる。
騙し、利用し、殺し、捨てる。
そういう人非人の距離感こそが自分の居場所なのだと、開き直れない人面獣心の迷子たち。
彼らが複雑な距離感を刻みつけながら人界をウロウロする様子は、妙にチャーミングで目を引く。




家族同然に育った鳥葦くんが、吉乃のこういうマトモさへの希求の受け皿になるかと思いきや、その距離は相変わらず思いの外遠い。
自分をナメた相手をブッちめるための戦化粧に血を滾らせる吉乃の、顔が直接見れる距離に鳥葦くんは入れず、肝心な時は常に駅にいる。
家ではない場所。
自分を何処か遠く、相手の心が見えない場所へ運んでいってしまう機械の近くが、鳥葦くんの定位置だ。
そこは傷つけ合いながら近づき、許し合いながら遠ざけ合う、霧島の距離よりも冷えているように、僕には感じられる。
吉乃に置いていかれるのは、菜緒ちゃんと肌を重ねつつも心は遠く、いつでも首をねじ切れる餌食の間合いを維持してきた霧島も同じだ。
人当たりのいい微笑み、社会に溶け込む人間の皮を維持しつつ、結局食うか食われるかのルールでのみ息をしている男が、己の想定を上回られた瞬間の衝撃。
一人高いところから、自分をナメた餌食を見下ろす肉食獣の独走に、果たしてぶっ壊れ人間は追いつけるのか。
なかなかいい感じに、ろくでもなさがグツグツいってる状況で…大変いい感じだ。
いやー、水族館デートでマトモに収まっちゃいそうな気配漂ってたから、ちょっと心配したんだよ。
結局クズが譲り得ぬ己の本性に導かれるまま、周り道連れになんもかんもメチャクチャにしていく所が見たいの俺はッ!
菜緒ちゃんハメてクズが書いた絵がどんなモノかも見きれてないし、それを食い破って己の生き様を示すだろう吉乃の、鉄火場大暴れも見届けたい。
他人を便利に食い物にする側なのだと、己も世間も見誤っていた菜緒ちゃんがあんまひどい目に合わないことを祈りつつ、結局血を見ることになった吉乃の短い帰省がどう収まっていくのか。
いやー、全然いい感じの所に落ち着く気配がねぇなッ!!(素晴らしい)
結局ヤクザな生き方へ突き進んでいく主役の、破天荒と穏やかさを対比し照応させながら描くことで、キャラとドラマの立体感がでてきているのは、大変いいと思います。
霧島くんが吉乃の速度について行けるかも含め、次回が楽しみです。