新たな強敵(とも)との出会いが、苦難の過去を未来に繋ぐ!
「頑張ったからこそ今輝ける」はお互い様、いのりちゃんの新たな挑戦…に見えて新米コーチ覚醒の一歩目となる、メダリストアニメ第7話である。
京都弁のかわいい泥棒に、寡黙なる努力家。
おまけに大会本番では新たな妖精たちが山盛り顔を出して、どうにも選手の方に目がいく展開…ではあるのだが、軸足は司くんの方にオカれてる回かなぁと思った。
隠し事なくアドバイスをくれるけど、同時に競い合うライバルでもある蛇崩先生も登場して、コーチとしての(そしてアスリートとしての)司くんの強みが”眼”にあることを教えてくれた。
出来たはずの新たな二回転が降りれなくて、「そんなに!?」ってほど萎縮してるいのりちゃんを前に、司くんはその苦難こそが後の飛翔を支えるのだと告げる。
しかしそうやって固めた外面の奥には、遅すぎたデビューと願い届かず終わってしまった現役生活への痛みが確かにあって、勝利によって己を証明できなかった(と感じ続けている)司くんは、誠実だからこそ重たい荷物を背負い続けている。
これを司くん自身、飛躍のための翼に変える戦いがこっから始まっていくわけだが、そのスタートを前に前回、加護家との関わりを一話丸々使って描いたのは良かったな、と思う。
いのりちゃんを勝利へと導く、完璧な大人なんかではけしてない、コンプレックスに折れ曲がった心。
それをどうにかこうにか、決意と祈りで真っ直ぐに見えるよう取り繕って、気高い強がりで”大人”をやろうと頑張っている男。
既に一度夢破れ、運命的に出会った教え子に挫折のリベンジを押し付けるわけでもなく、あくまで対等な一人間として、大それた願いを共に叶えようと心に決めた男。
いのりちゃんから見れば「元気になれる言葉をいっぱいくれる、太陽みたいに凄い人」が背負ってる陰りを、しっかり描いた後だからこそ、司くんが卓越したコーチとして新たに飛び立てる武器が、より印象的だった。
目元のほくろがセクシーな司くんだが、あれは太陽の中にある黒点、光の象徴が背負う影なのだなぁ…。
「恥ずかしくない自分になりたい」という、冷たい気持ちを振りちぎる決意から、いのりちゃんのスケートは始まっている。
そんな彼女を影から引っ張り上げて、栄光のメダリストへと育て上げてくれる神様もまた、自分なりの挫折と屈折を抱え、己自身を「恥ずかしい」と信じきれない部分がある。
そういう、大人も持ってしまっている歪みや弱さをかき消すことなく、どう戦いに挑み、己を誇れるようになっていくのか。
W主人公の挑戦はそんなふうに、年齢を超えて響き合う魂の戦いの色合いを、複雑に描いてくる。
ここら辺は味方同士の対照だけでなく、ライバルとの対比にも複雑にきらめく魅力で、群像劇ゆえの面白さでもある。
「辛い記憶が、あなたの未来を高く飛ばせる」といういのりちゃんのエールは、実は今回コミカルな出会いを果たした絵馬ちゃんにこそ象徴されるテーマであり、主人公チームだけが苦労を背負い込み、勝つ権利を持っているわけではない。
あらゆる人が自分たちの全てを賭け、奇跡を当然のごとく形にして競い合う氷上の戦いには、様々な熱と美しさが燃えている。
ここら辺の多彩さを示すべく、ばんっばんかわいい妖精たちが出てきては飛び、大会が進んでいく様子も楽しみである。
アニメで鬼寅カンナちゃんがどう描かれるのか、マジ楽しみなんだよな…ミケちゃんの描き方マジ良かったんで、最高の”ひょこひょこ”マジお願いしますッ!




というわけで前回意固地な迷路を抜けて、加護家というヤドリギに身を寄せることとなった司くんの日常で、今回の物語は幕を開ける。
全体的にコミカルで楽しい場面が多く、勝敗に汲々として辛いばっかりじゃない、ユカイな子どもと大人の時間が楽しく綴られていくのは、とても好きだ。
いのりちゃんと司くんが二人三脚で進む物語には、楽しい笑顔がいっぱいあって、それはライバルとの出会いも例外ではない。
ここら辺の”抜き”の作り方が上品かつ力強いので、お互い敬意を持って楽しく競い合える理想を、無理なく書けてる部分は大きいと感じている。
鳩に襲撃されてる絵馬ちゃんを助けようとして、逆にメコメコに負けるいのりちゃんとか。ありえんほど親身に色々教えてくれる蛇崩先生に、メラリとジェラシー燃やす司くんとか。
頑張り師弟のロクでもない所が沢山見れて、大変良かった。
そういう情けなさや面白さも彼らの大事な一部で、真剣にメダリストを目指すからといって消えてなくなるわけじゃない。
この楽しさ全部を嘘にしてしまうほど、失敗や敗北は重たい傷にもなるわけだが、それでもこうして皆で笑いあえた思い出を痛みでなかったことにはしない強さというもの、この輝きを生贄にして強さだけを求めない生き方を、物語は模索していくことになる。
CV:伊藤彩沙がドンピシャなハマり方してるすずちゃんが、道化師めいた表情の奥…あるいは探っても探ってもミーハーな笑顔ばかりが出てくる”本物”の風格を見せてくれるのは、残念ながらアニメの範囲外なわけだが。
しっかしまー、寡黙な絵馬ちゃんと喋りすぎなすずちゃんのコンビはメリハリが良く効いてて、そんな二人を受け流し抱きとめ、良い距離感で導いている蛇崩先生の描かれ方も良かった。
主役だけが理想的な”大人と子ども”じゃなくて、色んな人が色んな繋がり方で、尊く楽しい時間を共に過ごせてる様子が沢山積み重なってるの、俺ホント好きだ…。
ここら辺はミケちゃんとナッチンの描かれ方でも、冴えてた部分だね。
遥か遠い高みにあるはずの光ちゃんの演技に、どこか通じるものがある絵馬ちゃんのジャンプ。
そこには挫折と鍛錬を積み重ねたからこそ、当然の事実として自分が降りられると確信出来る余裕が滲んでいる。
必死に力み頑張って降りるジャンプは、過酷な奇跡を山程積み上げて一つの演技を構成していく、審美競技の理想ではない。
軽やかな飛翔の背後に分厚い鍛錬を感じさせ、指先まで華やかに理想の美を形作りながら、物言わぬ滑走を雄弁に踊らせる。
そういう矛盾を求められる競技において、努力も奇跡も、当たり前に見える余裕は極めて大事だ。
そして遅咲きの主役コンビは、ここらへんに全く自信がない。
「出来なかった」という惨めさは、挑戦を決意してもしぶとく心のなかに響き続け、その陰りが鎖になって余裕を奪う。
ムフフ顔で自信満面、先生に自慢の二回転を見せたくて降りれなかったいのりちゃんの狼狽え方は、自分の行動がどれだけ大人を…特にお母さんを恥ずかしく思わせたのか、良く見えてしまう子どもだからこそのモノだと思う。
ここに冷静に手を差し伸べ、分析と指導とエールを手渡せる司くんもまた、自分の武器がどこに在るかをしっかり見れていない。
挫折や痛みを超え、傲慢に驕るでもなく、一つの事実として自分たちがどんな奇跡を成し遂げうるのか、当たり前の心持ちで受け止める。
そういう姿勢を作るのは難しい。




あるいは自分では見えない強さを見つけてくれるのが、コーチ筆頭に他人のありがたみでもあり、蛇崩先生との対話は司くんに自分の”眼”の特別さ…それを信じる強さを意識させる。
かつて現役時代、師に告げられた言葉が今更蘇り、司くんの心を揺さぶる姿は印象深い。
「現役生活は一度切り、打てる手は全て打つ」というガムシャラな献身は、そうしても届かなかった自分の後悔から、生まれている部分もある。
こんだけ重たい荷物を過去に繋いでると、やっぱ自分の代理走者として子どもを見てしまいそうなモンだが、意識してそういう「あなたのために」な危うさを遠ざけているの、偉いよね。
”見る”とは物理的な現象を捉える視力の良さでも、それを細かく解析し違和感を下に問題を掘り下げる能力でもない。
自分は「出来ない」存在だと諦めてしまう心を、飲み干し受け止め「出来る」自分へと変えていく、心根の強さだ。
蛇崩先生との対話を通じて、自分をいまだ縛っている影に気づいた司くんは、”見る”己の異能を活かして、あるいは改善点を冷静に把握し訂正していく努力を通じて、翔べなかった二回転を着氷させる。
そこには自分ひとりだったら信じられない…暗い自己卑下の影に隠れて”見えない”可能性を、見つけ信じさせてくれる関係性が、確かにある。
憧れと敬意は、変革にたどり着くための何より大事な起爆剤で、いのりちゃんは「司先生みたいなスケーターになりたい」という思いを支えに、派手なジャンプだけでなく繊細なスケーティング、華麗な表現力を求める選手に自分を変えている。
強がりを引っ剥がせば思いの外クラい司くんも、自分が背負うと決めた少女への敬意に支えられて、いのりちゃんを高く飛ばせられるコーチになるために、ガムシャラに全てを注ぎ込む。
そこには対等でありながら、相手を遥か高みに見上げる不思議な視線があって、そういう体温のある敬愛こそが人間と人間を繋ぐのだと思う。
これが主役の専売特許じゃないのが、やっぱ良いのよね。
出来なかった過去に引きずられ、今目の前で眩しく輝いている教え子を真っ直ぐ見れない自分は、果たして結束いのりに相応しい存在なのか。
司くんが自問自答する鏡は常に、一人だと冷たい気持ちに飲まれかねない少女の形をしている。
それだけで足らないなら、そうやって誠実に教え子のためにガムシャラになれる男に、共感して手を差し伸べてくれるライバルの力だって借りれる。
あるいは前回一話使ってしっかり描かれたように、選手としてのキャリアを終え一度離れた後でもなお、司くんがその魂から放つ輝きを信じ手を差し伸べてくれる、大事な赤の他人だっているのだ。
弱さや惨めさを自分一人に引き受ける、誇り高い自立があってこそ成り立つ沢山の繋がりが、虚心坦懐に自分たちの在り方を”見る”姿勢へと繋がっていく。
今回は作品が大事にしている他者の存在義、そこに経緯を持つことの意味が鮮明な話で良かった。
…こんだけ「他人がそこに在ること」の尊さを書いてる話で、唯一孤独なガキであり続けられる夜鷹純の特異性はやっぱ異様なものがあるし、だからこそフィナーレまで追い続ける遠い星に必要な、存在の質量と暗い光を保てるのだろう。




かくして新たな武器を形にした主役コンビであるが、OPで意味深に顔見世だけしてた少女たちがどっさどっさ出てくる中、奇跡を掴むための翼たるスケート靴が無いッ!
メダリストになることでいのりちゃんが、なんとか振りちぎろうとしている「出来ない自分」が顔を見せた展開だが、優秀な選手であるためにはこういう、競技の外側にあるようでいて足元を支える要素を、自分でしっかり出来るようにならんといかんのだね…。
でもパニクって泣いたり誰かを頼る前に、絶望に狭まる視界で必死に記憶を探って解決への糸口探してるのは、「恥ずかしくない自分」になろうと足掻いた成果だよね…。
どんだけ努力を積み重ね、出来なかった奇跡を当たり前の現実に変えていったとしても、思わぬ要員が未来への道を塞ぐこともある。
そんな理不尽を前にどういう足掻き方をして、どういう心持ちで勝負に挑み続けるかを、この後の師弟の頑張りはまばゆく描くだろう。
そしてそれが主役だけの闘いではなく、ライバルもまた思い鎖を背負えばこそ軽やかに舞うのだ、とも。
高みに向けて支え合い進んでいく、師弟の新たな勝負。
様々な輝きが眩しい一級大会を、どういう風にアニメにしてくれるかも、大変楽しみです。
もう「頑張ってる」じゃないと、作品の仕上がりで証明してきとるからな…。
次回もとっても楽しみです!