疾走する列車型の煉獄の中で、決意を込めて選ぶ道は。
まーた主人公が負けて記憶が削られる、ぷにぷに可愛いハードコア冥府譚、RINGING FATE第8話である。
暴走サブローと隼風の決戦は、強者同士ギリギリのせめぎあいで大変迫力があったが、状況自体は謎が深まったような少しは前進したような、心地よいもどかしさが強まるエピソードだった。
やっぱ冥府コロッセオのシステムが最悪すぎて、まーた関係値リセットされた要ちゃんが可哀想でしょうがなかったが、しかし同じ境遇でも明るくたくましく生きてる彩子とイチャイチャしてる様子見て、それもこっちの勝手な感傷だなと思い直した。
たとえ地獄でも、皆譲れぬ願いに突き動かされ、必死に生きてる。
そうならざるを得ない定めが、黒サブローが提示する優しい微睡み、偽りの永遠に強く照らされてもいて、お話の芯を改めて感じるエピソードだった。
ここら辺、最新鋭のポップな感覚で冥府譚を語り直せばこそ、地獄めいた現世を必死に言い切る人へのエールを綴ろうとしている感じでもあって、ファンタジーの原義にきわめて忠実なお話だなと改めて思う。
要ちゃんはやっぱぷにぷにド根性野郎で、優しい悪魔が手渡してくれる永遠を跳ね除けて、自ら奈落に落ち直す。
どんな悲劇が待ち受けようが、与えられる結末ではなく自分の手で納得できる終わりを掴み取るべく、誇りある敗北へと自らを投げ込む。
負けまくってはいるものの、コロシアムが用意してる決着以上のものを要ちゃんはその度掴んでいて、しかしその気高さすらカンを奪われれば忘れてしまって、少女は幾度目か、彼女の敵であり相棒でもある鋼と「はじめまして」する。
純情少女がガンガン記憶を失って繰り返す様子が、大陸で泣きエロゲの遺伝子が異形の芽を出した感じもあって面白かったが、この燃え盛る闘志を見る度に、要ちゃんが好きになれるのはありがたい。
絶体絶命の窮地から、勝ちを譲られる形で生き延びた隼風が、初めて殺さずにすんだ対戦相手とどう関わっていくか。
謎の沢城仮面も颯爽登場し、つーかあの冥界列車と黒サブローのこともサッパリ分かんねぇし、謎は深まりつつキャラのドラマはより深く、繋がりを強めていってる感じだ。
どーもエデンくんの秘めたる過去が、もう一発二発波乱を巻き起こしそうな感じではあるが…さてはて、どうなることやら。




というわけで現実世界では、白サブローが眼真っ赤にして暴走バトルを復讐の魔剣士と繰り広げ、閉ざされた空間では主役が優しい夢を拒んで魂を燃やす。
暴走サブローと隼風との限界バトルは、荒々しさと技術のせめぎあいが復讐鬼の譲れぬ願いを見事に暴いていて、大変良かった。
練達の剣技が生み出す変化を、暴走サブローの獣の如き反射神経が軒並み捌き、情け容赦のないフルボッコ叩きつける様子は、血湧き肉躍る…けどどっか哀しい、大変いい塩梅だった。
要ちゃんお姫様抱っこして止まってたし、やっぱサブローもなんか抱えて、縛られてる不自由な獣なんだな…。
暴走サブローがありえんほど強かったことで、隼風がしっかり追い詰められ、魂の地金が見えたのは大変良かった。
復讐に呪われ他者との対話を拒んでいる彼は、その殻が硬いからこそ強いわけだが、サブローの荒々しい一撃がそれをこじ開けた形だ。
愛を奪われ命を奪い、殺し殺されの宿命を良く知る剣士だからこそ、殺せたはずの自分を見逃し、記憶を削られる敗北を選んだ要ちゃんの選択は、深く刺さったと思う。
一見何もしてねぇ負け方なんだが、ここで隼風が本当は/本当に”いい人”だったと解ってくる契機になるなら、要ちゃんは何より難しい戦いに確かに勝ったのだ。
そこら辺、ちゃんと描いてほしいなと思う。
黒サブローが差し出す、一車両しか無い満たされた永遠。
リンボの住人は皆、個性的で即物的な夢に閉じ込められて、二人が隣りにいることにも気づかない。
それが果たして人間の…あるいは亡者の幸せなのか、カンに縛られた冥府にもうちょい生きてみないと判別はつかないが、黒サブローの言ってることには確かに一理あると思う。
大熊師匠の顛末を見ても、冥府コロッセオで終わりのない戦いを続ける道は、人間の闇を深く暴く。
かわいいかわいいプニプニちゃんが、そういう嵐に耐えられるかって心配する気持ちは俺も同じだが、しかし見た目通りのベイビーちゃんじゃないのが、要ちゃんの良いところだ。
世間知らずで人間経験値が少ない自分を自覚しながらも、友達を傷つけられたくないし、見込んだ人が悪人ではないと信じたい気持ちに、己の全部を賭けられる。
人を斬り殺すのが上手いとか、獣のように襲いかかれるとか、コロッセオの中で演じられている”強さ”とはまた別種の強さが、元寝たきり少女には確かにあるのだ。
優しい誘惑者たる黒サブローとの対話を通じて、そういう主人公の根っこが改めて見えてきたのは、大変良かったと思う。
俺は要ちゃんがプニプニ可愛い無邪気ちゃんであり、同時に燃え盛る闘志に突き動かされる戦士でもある所が、やっぱり好きなのだ。
悪魔が囁く安楽に身を投げず、多くを奪われる敗北にあえて飛び込んだ要ちゃんは、戦いの果てにある現世への転生か、全てを失う地獄での敗北か、どっちかを選ぶしか無い定めに身を置いている。
これはエデンくんが告げている、崆でどっちつかずの亡霊として生き続ける道と真っ向対決する道で、今後ここがどう衝突するのかは楽しみだ。
「全てを失う」とは書いたけど、んじゃあ愛娘に全てを捧げ消えていった大熊師匠の生き方が虚しかったかといわれれば、全然そんな事はない。
謎めいた転生システム、残酷な闘技が押し付けてくる定めを、跳ね返す強さは確かに、冥府の亡霊にも宿っている…はずだ。




僕はタイトルの”RINGING FATE”は、リングの中で戦い続ける戦士の宿命を意味すると思っていたわけだが、記憶をリセットされてまた始めから始め直す、終わらぬ輪廻の運命も重なってんだなー、とノンキに元気に喪失を生きる要ちゃんを見て思った。
やっぱ記憶喪失モノって、当事者がその惨めさや哀しみすら忘れ去って健気に(という自覚すらなく)進み続ける哀しさを、第三者が客観的に観測せざるを得ない状況、そこで喪失に対し何も出来ない虚しさが、猛烈に刺さるよなー…。
要ちゃんが無邪気なほど、見てる俺らは辛い。
だろッ!(唐突に同意強要マン)
まーたクソみてーなシステムの犠牲になり、要ちゃんが今まで積み上げてきたものがリセットされちゃったわけだが、刃で全てを断ち切る生き方がそうそう巧くは行かないのだと、身を持って示したことは無意味ではなかった。
ここまで全く対話に応じなかった隼風が、ティムくんの懇願に胸筋を開く描写があったのも、サブローが実力において拮抗し、要ちゃんが誇り高き敗北を選んだからこそ、起こった変化だと思う。
つーかそう思わないと、要ちゃんが色々奪われてる現状を飲み込み難いのッ!
俺はあの子の決意と戦いに、なんか意味があってほしいの可愛いからッ!!!!!
ここで「武器は死者の憎悪や怒りが、形になったもの」つう設定が生きてきたのも、なかなか面白いなーと思う。
隼風が忠告するように、刃を調べて灯の真実を見つめれば、ティムくんは傷つくかもしれない。
しかし自分の中の真実から逃げず、傷を受けても前に進む決意を、このアニメは常に尊いものとして描き続けている。
喪失と奮起を繰り返す要ちゃんもそうだし、避け得ない消滅に己の愛を賭け取り戻した、大熊師匠もそうだろう。
…となると、記憶を失うほどの大罪を都合よく忘却し、永遠の平穏に留まろうとするエデンくんって、話を律するルールに反した存在なんだよな…。
でもさぁ…俺はゼロから関係を始めつつ、悪くない感じにキャッキャ出来てるエデンくんと彩子の”今”が好きなワケッ!!
やっぱ彩子が要ちゃんに親切なの、見てて幸せな気分になるいい描写で、ずーっとこんなふうに無邪気に、幸福に暮らして欲しいと思わされる。
でもその平穏が”逃げ”でしかないなら、輪廻を望むからこそ冥府に繋がれている執着の奴隷たちは、どっかでそれを思い出し立ち向かわなければいけない。
ここら辺の宿命が、今後どういう角度で要ちゃん達に襲いかかってくるのか。
ホンワカに見えて油断ならねーロクデナシ世界観を、背負って登場沢城仮面!
いやマジ、アンタ誰っすか…。
というわけで、隼風との因縁を一回激しく炸裂させつつ、それを超えた先にある物語への地ならしが手際よく行われる回でした。
黒サブローの思惑、白サブローを縛る鎖、エデンくんの過去と罪、復讐鬼に訪れた変化。
色んな要素がわんさと出てきて、そのどれもが有機的に連動しながら、花開く時を待っている手応え。
やっぱストーリーテリングが、とにかくつええアニメだぜ!
ハードなバトルや可愛らしいコメディを豊かに踊らせつつ、群像がそれぞれの宿命に向き合う様子を同時進行させる熱気が燃えてるの、本当に凄いなと思います。
あと要ちゃん、格好良く可愛く描けているのも最高。
輪廻の果てに何が待つ!
次回も楽しみ!