最後の黙示を前に、愛は高らかに奇跡を響かせない。
いよいよ最終決戦…どこへ行くのかアクエリオンMoE! な、第11話である。
サヨちゃんが死んだ不可解な事件と重なる形で、モモヒメが約束された未来の生贄として死ぬルートが道を開けたが、神話宇宙での体験もあってサッコは運命に立ち向かい、己の感情を叫ぶことを選ぶ。
第11話にしてようやっと、醒めきって壊れていた主人公が主体的に何かを選ぶ展開となったが…ふーむ、やっぱ収まりどころが難しいな。
メチャクチャな話数を使って生み出してきた、ぼんやり不鮮明で不安な空気感は、乗り越えるべき過ちとして(悪堕ちトシを巻き込んで)設定された未来を、戦いの果て取り戻した感情に突き動かされ、主人公が選び取った”正解”で否定していく流れになる。
しかしリキ入れて醸造してきた不鮮明な空気感は、視聴者にその選択がこの物語の必然だと、明瞭に示し切るにはノイズにもなり、ずーっと「多分MoEくんはこういう事がやりたいんだろうなぁ…」と、作品の真意を見ている側が推察する構造が崩れてくれない。
作品を観ることはすなわち会話なので、相手が言いたいことを先回りして推測し、敬意を持って手を差し伸べるのは基本ではあるのだが、当意即妙に胸を打つコミュニケーションを成り立たせるのなら、問答無用に力強く理解らせる何かを、一発強くブチ込んでほしくもある。
それは消費されていく話数の中で示される、「そろそろクライマックスですよ」というサインに乗っかっていれば作れるわけではなく、一つのセリフ、一つの場面、一つのデザイン選択の積み重ねによって、礎石から積み上げられていく大伽藍だ。
そういうデケー一発が、「MoEくんならこうなるしかないよね! 待ってました!!」と突き刺さる土台を、正直な話このお話は作りきれてはいない。
11話にして未だ何を言いたいのか、僕はあんま解っていないし、「こうなんだろうなぁ…」と推察して(凄まじく思い上がった言葉選びをすれば、してあげて)いたものに、揺るがない確信を手渡してくれる一瞬はこない。
その卒啄同時の機こそが、アニメを観るうえで一番気持ちが良い瞬間だということは、アクエリオンらしく”合体”を重要視して話を展開してきたMoEにも解っているのだろう。
しかし適切に、切実に、描かれ示しきれない理念や狙いは表現たり得ず、世界存亡のスケールに拡大した(「もともとそういう話だったのが、本来の形に戻った」が近いんだろうけど)お話に、サッコが愛ゆえに食らいつき運命に抗う、実はかなりベーシックな物語が彼の必然であるのか、イマイチ判然としきらない。
僕は未だ、アクエリオンMoEと”合体”しきれていないのだ。
エレメントになりきれなかった自分を、情けなく未熟だとも思う。
欠けているからこそ取り戻す物語に熱が宿り、狂っているからこそ正気を描ける。
オカルティックな陰謀論的世界観が全部、世界の真実だとして上京が転がっていくこの物語は、不鮮明であやふやだからこそ本当のことを描くという、転倒した語り口を選び取っている。
ストレートを禁じてストライクを取るのは極めて難しいわけで、カトゥーン調のキャラデザ含めてそういう試みをどう結実させていくのか、勝手ながらワクワクと見守ってきたわけだが、幕引きが近いこのタイミング、極めてスタンダードな熱血へとサッコを押し出す話運びを見ていると、このヒネクレた語り口がMoEを描ききるのに最適であったか、いち視聴者として疑問には思う。
例えばモモヒメの死と犠牲は、前世での女神を巡る闘争、そしてサヨの量子力学的葬列と重なり合う、リフレインの強いモチーフだ。
そこにテコを効かせて、三度目の過ちをサッコが決意によって乗り越えていく構造を強調するのであれば、ここら辺はある程度セリフで告げても良いんじゃないかと思う。
しかしこのお話は衒学的ネタ撒きに救急として、自分たちがどういう構造によって物語を駆動させているかという内部意識へ、あまり言及を伸ばさない。
熱血ロボアニメ(その一環としての”アクエリオン”)を、意識的にメタ視し捻って醒ます(その操作で、新しい何かを描こうとする)クセ球投げるなら、そこら辺への意識は濃いほうが好みだ。
前世で結局何が起こって、その余波がどう現世に影響しているかも雰囲気で察してもらう感じであり、明瞭な言語化は避けられている。
視聴者が探り考えて奥行きを造っていく、インタラクティブな劇作を狙ったのかもしれないが、どうにも作品に引き寄せられていく引力が弱く(その一因として、ロボバトル表現の弱さは間違いなくあると思う)、前のめりに何かを探り当てるためのカロリーを、積極的に支払いたいとは思えない作りになってしまってもいた。
まぁ俺はこのぼんやりと不親切な空気感好みだし、アニメを観るときは極力好きになろうと試みるのが礼儀であり本懐でもあると考えるので、自分なり前のめりではあったつもりだけど。
心の一部が欠けたキャラクターたちは他人と触れ合い、支え合う理由を己の中に持たず、それぞれの繋がりもクリティカルな絆がなかなか見えず、時間の割に熱の薄いものになった。
ここら辺の冷えた感じを、敵の本拠である神話宇宙での体験を経て反転させ、一番熱くて本当のものは倒すべき相手の中にあったと、だから愛し惹かれ合って宇宙が合体するのだと、キャラと視聴者に得心させる構成…だったんだろうけども、前半戦の種まきがあんま上手く行っていなかった感じで、その仕掛けがそこまで爆裂しなかった印象を受ける。
神話宇宙側をキャラ化してわかりやすくさせるのは、過去作でやっとったから避けたのかなぁ…。
これら様々な要因が響き合って、偽りの女神が用意したシナリオを跳ね除け、三度目の悲劇を乗り越えるべく主役が叫ぶ展開が、どっか胸に刺さらないまま上滑りもしていく。
…と断ち切ってしまうには、俺はサッコのことが好きだし、ようやく叫べるようになった彼の変化にも、それを望んでいただろうサヨちゃんとの因果にも、結構響くものはあるのだ。
しかしそういういい感じのネタを、もうちょいよろしく膨らませ、もっと熱量と勢い込めてこのクライマックスへ突入できた…俺とMoEが”合体”しきれた道は、あったんじゃないかなぁという気持ちが、どうしても拭えない。
俺が悪いのか、MoEが悪いのか。
多分、両方かな。
神話学だの量子物理学だのを衒学的にコスリつつ、曖昧で世紀末的な不安感を、鋼鉄の巨人の絶大な力に乱反射させながら描く物語類型は、エヴァ以降山程作られ、挑まれてきた。
”シン・エヴァンゲリオン”が既に放送されたこの現代、あえて”そっち”を触るのであれば独自のヴィジョンと野心を込めて、鮮烈に新たな答えを叩きつけてくれる躍進を望んでいたわけだが、MoEにそれが出来たとは…残り一話で出来るとは正直思えない。
どっかで見たことがあるような何かを、やるつもりがないからこそ可愛らしいデザインでエグい話をやろうとしたんだろうけど、そのギャップを活かしきれたかと問われると、そこにも疑問は残る。
それでも確かに、何かをやろうとした熱は結構感じれて、それがチャーミングだから俺は、MoEを好きなままでいるわけだけど。
迷走の果てようやく舞台に上がった、アクエリオン最新作という看板を再び輝かせるエネルギーが、この不鮮明であやふやで、何言いたいのかなんとなく感じられるけどやっぱ全然分かんなくて、そういう不親切な手つきまで作品のムードやテーマに重ねなくても良かったんじゃないかと、最終話一個前に思ってしまうアニメから放たれてはいなかったと、残り一話まで見届けた視聴者として、言ってもいいとは思う。
もっとワケがわからなくイカれた方向へ…それこそ登場キャラ全員ハナちゃんレベルの血圧の高さで突っ走ってくれてたら、また別の爆発力(と厄介さ)があったのかもしれないけど。
何かを既に諦め、世界と上手くやっていく道を選んだ物わかりの良い(それが”今どき”なのかは、慎重に考えるべき課題なのでここでは明言しない)子どもたちから、感情の一部を選んで主役に据えた以上、そういう温度感はなかなか難しかったんだろうなと思う。
その冷えた初期状態が、世界の謎やキャラクターの関連性へ踏み込んでいきエネルギーを、物語から奪ってしまった結果が、この乗り切れないけど見捨てられない、妙なクライマックスかなとも感じるのだ。
一つ明瞭に批判できるのは、現在進行系で反理性の方向へ世界が転がり落ちている時代に、戯画化された陰謀論を真実として打ち出し、シンプルに”敵”として据えた無邪気さだ。
ここはもうちょい、”シュタインズ・ゲート”など先行作品を前提とした掘り下げを行い、正気と狂気、真実と虚偽の二項対立(あるいはその変奏)から半歩踏み込んだ、自分だけの思弁が必要なパーツだったと思う。
今回立ち向かうべき真実として突き出された、支配者達の秘密サークルを巡る物語は、もはや衒学オタクのネタに出来る火力を超えて、世界を地獄の淵へと突き落としかねない生っぽさを有している。
もはや”隠された真実”は世界から見捨てられたマイノリティ(それこそカミサマのような)が自分を慰め、蟷螂の斧に選ぶ儚いよすがでも、欺瞞に覆い隠された真実を暴いてくれる陰智でもなく、バイラルの波に乗っかってアホみたいな銭と力をブン回す、メジャーな脅威なのだ。
そしてそれを触るに相応しい慎重さは、MoEにはない。(としか、俺には思えなかった)
ヤバネタ扱う時にオタクくんから欠けがちな倫理の話だけじゃなく、シンプルに今刺すネタとして、「偉くて悪い人たちが、自由を信じる僕らの世界の裏にいるんですよ」つう”衝撃の真実”は、手垢にまみれ火力が低すぎると思う。
それが物語の中に収まらないからこそ、アレやソレが現実で起きて、未だその残響が長く大きく響いている世界の中で、わざわざ”世界の真実”を戯画化する必然と意義。
そこはアリモノで済ませるのではなく、自分たちなりの鋭さを表現の刃に宿して、本気でぶっ刺すべきだったんじゃないかと思う。
もっとMoEに狂っててほしかったんだな、俺は…。




主役チームで感情が繋がっているのは、サッコとモモヒメ、前世の因縁引っ張ってリミヤの三角形だけで、トシはサンくん、ハナちゃんはカミサマと、そっからはみ出した連中に思いの受け皿がある。
「抱きしめるべき相手、ホントにそいつでいいの…?」つうハマらなさは、自分的には結構飲み込めていて、MoEはまぁこういうお話である。
身内のサークルで閉じず、電波ゆんゆんな街のおじさんとか、マトモに話ししてくれない夢見る救世主とか、訳わかんねぇ他人に大事な仕事を任せているのは、かなり好きなんだよな公平で。
唐突に過ぎる悪堕ちをキメたトシが、コンプレックス故にサンくんに相当依存してて、強ぶった顔をしきれていないのは大変良かった。
神話宇宙をぶっ倒してエンドって方向じゃなくなった以上、二つに分裂してあやふやな世界卵から目覚める未来には、人間的な希望の手触りがないといけない。
サンくんが、一人で必死に戦った挙げ句闇に落ちたトシの、不安を受け止めてくれる存在だと描かれたことで、子ども達サイドで幸せに終われそうな気配は立ち上ってきてて、最終話前に一安心である。
なんだかんだ、クソみてーにイカれた世界に運命好きにされてきたエレメント達には、幸せになって欲しいんだよね。
その一人としてハナちゃんも、自分に自信が持てなくてメソメソグスグスしてた。
「やっぱ可愛いなぁ…」って感じではあるが、ここへのケアをカミサマがやれてるの、前世の業に何もかも支配されておんなじこと繰り返すわけじゃないって希望があって、かなり好きな描写だった。
前世ではさんざっぱら間違えたボケカスだったが、今生ではイカれた支配者の手先をやりつつ、泣きじゃくる女の子を抱きしめられる存在にちゃんとなっとるわけで、因縁を超えて未来を掴める希望が、結構良く滲んだ場面だったと思う。
こういうかなり重要な役を、外見ボロッカスな電波おじさんに任せるの、俺は好きだがウケるわけねーだろッ!!
サヨちゃんの葬列をリフレインさせつつ、生き死にあやふやなシューレディンガーのモモヒメを巡る戦いも進展していく。
11話にしてようやっと、サッコが何をしたいのか、自分で決めて自分で吠えたわけだが、ようやっとの展開に安堵と応援を送りつつ、「11話で初めて!?」という気持ちは、やっぱ相当にある。
全宇宙の命運をぶち破って、掴み取った感情が神話になるためにはこの決断の更に先、より激しく魂を燃やすアセンションが必要なわけで、やっぱこんくらいの決断は、感情欠けて他人も自分もよく解んない主役でも、もっと早くにやっといたほうが良かったんじゃねぇかな…。
サヨちゃんが死んで悲しいはずなのに泣けない、喪失に怯えられないサッコの歪さは、作品全体を支配するかなり大きなファクターだ。
そこを大事に、話数使ってここまでたどり着かせた優しさは結構好きなんだが、そういう慎重さを保った上で、「コイツはここにたどり着きますよ! 思いの外熱血ですよ!」つう要素は、サヨちゃんに手向けた撫子の花だけでなく、もうちょい数と火力が欲しかった。
しかしまぁ、サッコがそういうところにたどり着いて欲しいと、それに引っ張られて話の温度が上がって欲しいと、ずっと思っても来たので、今回吠えれた事自体は嬉しいんだよな。
そう思えてる自分は、全然イヤじゃないんだ。
偽ゼーレも何企んで何がしてーのか、いまいち不鮮明なまんまの最終決戦であるが、恐れを知り愛を知り、だからこそ勇気を知ったサッコが勝利へと駆け抜け、良く解んないなりに良いエンディングにはたどり着きそうである。
ここら辺、真実の愛を知らなかったモモヒメが戦いの中、喪失を学び愛を知って、あらゆる理不尽を超える勇者になろうとしたこと(それをサッコが継ぐことで、ようやく”主人公”になったこと)と重なってて、結構好きな運びだ。
「痛みを感じる受容体すら壊れてしまっている、一番壊れた少年」つう造形なんだが、まぁまぁ上手く人生泳げてしまっているので、悲惨さと哀しみが伝わりにくいよなサッコ達…。
ここら辺、思惑を隠して子どもたちを抑圧するボケ大人と、同じくぶっ壊れたエレメント以外の”常識人”つうのが、作品世界にいなかった故に鮮明にならなかったポイントかな、と思ったりもする。
そういう不純物が混ざると、登場人物のきなみ正気ではなく、全てが不安定に揺らいでいる世界観のチャーミングな壊れ方が濁っていた感じもするので、やっぱ難しいな…。
んなことは作者側も解った上で、あえて鏡を置かない不親切を選んだ意味と意思ってのを、自分なり感じ取りながら見ては来たので、やっぱ嫌いにはなれんアニメだ。
確かに、何かをやろうとしたアニメなのだ…多分。
そんな祈りが形になるのか、幕引きがなされれば否応なく答えは出てしまう。
「最後まで見たけど、やっぱ良く分かんなかったね…」つう、霧の向こう側に遠ざかっていくような答えでも、だ。
そのあやふやさ自体が作品の魅力…の一つだと、確かに感じながら見てきたお話しが、自分たちの結末として何を選ぶのか。
見届け、そこで自分が何を感じるのか、俺は結構ワクワクしている。
失望、感嘆、納得、憤怒。
どれが飛び出してきたとしても、それはMoEと俺が12話睦み合った結果、生まれる卵だ。
「貴方と合体したい」つうアクエリオン定型句、ここで使うことになるとは思ってなかったよ!
最終回、楽しみです。