日本屈指の農耕機メーカーが、若人に届けとぶっ放したアニメ爆弾…”未ル”折り返しの第3話は、SCOOTER FILMS×白組でお送りするエピソード・ゼロ!
ここで人助けに精を出す我らの機械神・MIRUが感動を手に入れた瞬間を描くのも、AIというテーマが第1話と響き合っているのも、オムニバスの強みを活かしていて大変良かった。
ここまではMIRUが助ける側(擬似的な強者)だったわけだが、自分の鏡といえる悪のAIと電脳殴り合いを経て、人間に大事なものを教えられる側(擬似的な弱者)になったのは、5話通して作品の柱と為るキャラにしっかり陰影をつける話運びといえる。
音楽✕AI✕サイバネ義手という道具立ても程よいエモさであり、雨音によって活きる意味を知るセレンディピティが、人間のピアノ弾きから時を超える機械神へと継承されていくのも、この後のMIRUの活躍を知っているだけにグッと来た。
こういう出会いを繰り返しながら、MIRUは人間と自分と世界について学び、自分が守るべきだと信じたもののために手を尽くしているのだと、謎めいた機械神のルーツを知れた思いだ。
人間主役の物語が、それを助ける機械に軸足を移した感じもあって、”未ル”全体の横幅がひろがる回だったと思う。
もちろんAIによるアイデンティティ侵食に苦しむアメちゃんも、一人の主役としてテクノロジーの進化に悩まされ、自分なりの答えを得るドラマを背負っている。
今回のエピソードが抜群の見応えをもっていたのは、人だけでなく機械も己の在り方に悩みつつ、お互いの音が響き合って答えを導き出していく、複層的な構造を24分にしっかり作れたからだと感じた。
ヤンマーの理念を形にした機械の神様が、ただ特別な助けを上から手渡すだけでなく、一緒に悩んで戦ってくれる相棒になったような味わいだ。
ここら辺、前二話全然違う切り口でやったからこその新鮮味なんだろうなぁ…複数制作者によるオムニバスの、一番うまい味だ。
まー24分で収める関係上、義手に宿った邪悪AIの問題点は分かりやすく戯画化されすぎてる感じもあり、バトルの熱量で強引にまとめた匂いもあった。
でもお陰でしっかり収まってもいるわけで、トータル正解な話運びだったかなと感じる。
アレだけが細谷MIRUの葛藤だったら食い足りなかったんだろうけど、アメちゃんが事故にあった時、初めて鋼の本性を顕にして人命救助するシーンがあったことで、「ヤンマー本当の戦場はここや…ジャッキで瓦礫を押し上げて、下にいる人を助けるんやッ!」という、大型機械メーカーの叫びを感じれたのがデカい。
やっぱヒーローの存在証明は、人命救助だよなぁ…ここまで全話やってるの偉い。
第1話ではあまり掘りきれなかった、「人間の領分を侵襲してくるAI技術」つう要素が、MIRUの始原である今回描かれたことで、AI技術が当たり前に広がった未来を後から裏打ちする感じにもなっていて、良い感じの奥行きが生まれたと思う。
ここでMIRUとアメちゃんが示した可能性あってこそ、デブリ除去が職業と成り立つほどの宇宙進出が、AI技術のサポートによって可能になったんだろうし、これは話数をまたいだ”バタフライ・エフェクト”といえるんじゃなかろうか。
こういう制作会社の枠を超えた繋がりを感じたかった自分としては、見たかったものが見れた感じもあって大変良かった。


シーンの繋ぎが遊び心ある感じで洒落てたり、動きの付け方がちょっとストップモーションぽかったり、表現面でも結構挑戦的なことをやっていて、どっしり腰が落ちた語り口と巧く響き合っていた。
せっかくトンチキ極まる企画なので、表現としてもアバンギャルドなものが見たいわけだが、ヤンマーの金看板背負ってるとただただぶっ飛ばせばいいというわけでもなく、バランスが難しい所だろう。
その上でエピソード全体に漂うしっとりした情感を活かし、響き合って高めるような見せ方が多数見られたのは、非常に良かった。
キメどころの情景がバチッと仕上がってて、メリハリ効いたエモさで押してくれた感じだなー。
アメちゃんを食い殺すのも救うのも、両方AIという技術であり、そこに込められた人間の意思こそが、技術の善悪可否を決めていく。
異常加速した経済の波に後押しされてこそ、革新的な技術が形になっている現在、少しロマンティックに過ぎる見識かなと思わなくもないが、絶望と諦観だけを未来に描くより全然良い。
ここで描かれた希望の未来を自分たちに引き寄せるべく、僕らとヤンマーに何が出来るのかを考えるのが、このトンチキなプロジェクトが残す宿題として、いちばん大事なんじゃないかなとも思う。
「その大それた夢の一ピースとして、”お前”の小さな羽ばたきこそが大事なんだ。そしてヤンマーは…そんな”お前”の隣に立つッ!!」という、青臭くも大事なメッセージ。
これを堂々大上段に振りかぶり、真正面から打ち下ろしてくる生真面目な一本気こそが、やっぱこのアニメの魅力だと思う。
俺はメッセージが強く前に出てくるお話しが好きだから、解釈を観客に委ねてくれる心地よさを削ってでも、全力でぶん殴ってくる物語は高評価なんだけど。
ヤンマーという企業の魂を広報する使命を背負った事で、そういう真っ向勝負に熱量高く挑めているこのアニメは、やっぱ好きだ。
今回描かれたMIRUの始点で折り返して、残りは二話。
どんな個性が暴れ、どんなメッセージが飛び出してくるのか…とても楽しみです!