「ごちそうさま」はまた明日、一緒に食べるための約束の言葉。
年を越したら年が来る、続いていく少女たちの日々を描くひびめし最終話である。
大変良かった。
二期やってくれマジ。
前回に引き続きあんまデカいエモを投げつけず、肩の力が抜けた食分研の日常を描いていく回。
…なんだが、大晦日ら元旦にかけて一年が移り変わる特別な節目を舞台に選んだことで、一旦の終幕に相応しい特別感がしっかり出ていた。
物語の始まりからリンクさせるなら、桜の季節を舞台にするはずなんだが、それはエピローグに回して大晦日を選んだのは、大変良かったと思う。
年越しそばという、”めし”が付き物な日なのもね。




最終回でもいつも通り、仲良く楽しくご飯を食べて色んなところに行く食分研。
その最初に、まこのひとり飯が描かれているのが僕は凄く好きだ。
無論この話の真ん中には皆でいる輝きがあって、まこもそれに後押しされて色んな楽しさに踏み出していったわけだが、それが一人でいる価値を傷つけるわけじゃない。
僕はこのアニメ、メチャクチャバランスが良かったことを何よりの強みに上げたいんだけども、最後にそれを確認するような描写から始まってくれて、とても良かった。
パット見の印象より、全然飯テロでもないし食事だけ大事にしてる話でもねーのよね…。
一年前なら物怖じしてただろう局面で、まこは前に出て町中華を堪能する。
面倒くさいはずの掃除も皆で楽しく、部室に残った思い出の欠片を慈しみながら進めていく。
ここまでどんな物語が積み上がってきたか、最終話にちょろっと確認する舞台としても、大晦日は良かった。
事務員さんがいつもどおりのソリッドな対応しつつ、1年分縮まった距離を反射して柔らかく笑ってくれた場面、マジで良かったな…。
あの人は部室の外にある社会を背負って、必要なだけの厳しさで非実在美少女の日常をピリッとさせてくれた、作品有数の功労者だから、体温ある描写が最後に来て嬉しい。
フィジカルな写真が持ってるエモさはここ最近、様々な作品で面白い活用のされ方をされているけど。
季節を駆け抜けながら、偶然出会った他人が絆を深めていったこの物語でも、まこの変化を刻みつける証拠として、凄く良い使われ方をしていた。
写真が持ってるエモーションは”残る”ことと”増える”ことにあると思うが、硬い顔の春と柔らかな微笑みの夏、二つの写真の間には時間と変化が確かに存在している。
その先にある景色も、まだまだカメラで捕まえて部室に飾っていける未来も、今回しっかり刻んでくれた。
こういうベタ足のエモがしっかり強いからこそ、トボケた日常描写に特別な味も滲み出してくる。
まるで一つの群れのように、皆でこたつに潜り込み幸せに時間を融かしていける年末。
くれあ堂々の掃除したくねぇ宣言を見ても、みんなの”らしさ”は全然変わってはいなくて、しかしそれらが繋がって生まれたものがある。
そしてそこから飛び出して、新しい何かに夢中になったり、喜びを増やしていったり出来る。
安心できる居場所を得たからこそ、取りこぼした思い出に立ち戻り、見知らぬ可能性へ踏み出していける姿を、このアニメは色んな角度から照らしてくれていた。
彼女たちは結構頑張って、日々が楽しい思い出になるよう藻掻いてきた。
この大晦日も、その1ページになっていく。




まったりした癒やしを大事に日々を描くのと同じくらい、その中で確かに変わっていく彼女たちの足取りを、しっかり見せてくれたのが僕には合っていた。
物語の最初にはただ座って出来上がるのを待つだけだった人々が、自分も手を動かして調理を手伝い、日々を特別にしてくれる糧を一緒に作り上げるようになった。
生活と生き方に密着すればこそ、じっくりとしか変わらないそういう変化をちゃんと見せには、”日常系”の時間間隔が一番あってたのだろうし、ジャンルの定番に甘えすぎず独自の流動をちゃんと作る姿勢が、確かな手応えを生んでもくれた。
大掃除から年越しの食事、そして初詣から更に続く日々へ。
一年で一番時の流れが濃いとも言える日を、わざわざ選んで肩の力が抜けた日常スケッチを描くことで、食分研が何処から来て何処へ行くのか…この物語が何を紡いできたのか、凄く鮮明に感じられる最終話だったなぁと思います。
新しく増えた思い出をボードに刻んで、手際良く見せるエピローグも凄く鮮烈だったし、それが終わりではなく始まりで、また楽しい日々を作り上げていく新しい仲間に扉を開く春で幕を閉じるのには、凄く大きな希望を感じた。
日々は積み重なり繰り返すけど、けして同じではない。
そこに失われていく寂しさよりも、新たに出逢う喜びを刻むことを選び続け、つねに”日常”というものを慈しんでくれたアニメだったと思います。
各話数ごと結構味が変わっていて、オムニバス的な面白さが色濃くあったところとか、人を繋ぎ喜びを増やす大事なメディアとして”食”をすごく大事にしつつ、あくまで人あっての食ということを忘れず、食事以外の楽しさを、豊かに描いてくれたところとか。
まこを筆頭にちょっと凸凹がある性格の少女たちが、出会いを通じてその噛み合わせ方をちょっとずつ学び取って、関係が変化していく確かな手触りとか。
色々好きになれる所が多くて、本当に素晴らしいアニメでした。
大学一年生という年齢設定が絶妙に効いていて、自由だけどある程度の責任もあるし、感情掻き立てて突っ走れるけど周りも思いの外見えてる季節に捕まえた、かけがえない出会いが花咲いていく様子を、たっぷり堪能させてもらいました。
自分たちで車も運転できるし、書類仕事もしなきゃいけない年頃だからこそ掴める、自由でやりがいのある日々。
そこに漂う空気を一緒に嗅がせてくれるような、自然で温かな筆致が作品の内側へと見るものを誘ってくれて、まこ達の一年をとても楽しく見届けることが出来ました。
とぼけたコメディの背後で、季節の描写が毎回しっかり美麗で、流れる時間に説得力があったのも良かった。
あとクセの強い仮想美少女たちが織りなす楽しい日々を、とにかく可愛く楽しく面白く書こうという気概が毎回元気で、とても嬉しかったです。
なんだかんだこういう、「こんなの現実にいねぇよ~~(いたら嬉しいけど)」と思える味の濃いキャラを眺めているのが、本当に幸せな自分を思い出せて、「深夜アニメ食ってる…」って感じがしました。
でもこの味わい、今の時流に合わせてスゲー丁寧な下処理をして、ジャンル特有のヤダ味を消さないと生まれなかったと思うので、自然に思えるものほど手が入ってるなぁ…とも思う。
ななの強めの人工甘味料風味が、他キャラのプレーンな味わいといい噛み合いしてるのとか好き。
あと女の子たちの関係と感情を、過剰に力むことなく自然に、心地よく尊いものとしてしっかり書ききってくれたのも良かったです。
傑作回第7話で、猛烈な花火をぶち上げたまこくれも、一緒に騒いでるのがもう当たり前なつつななの温度感も、浴びててメッチャ気持ち良かった。
組み合わせ的にあぶれてしまうしのんが、考えなしだからこそ話を動かし笑いを生む強いエンジンとしてしっかり機能し、存在感と可愛げがあったのも素晴らしい。
みんな可愛くて素敵な子たちで、そんな彼女たちが楽しく騒ぐ食分研自体を好きになれたのは、本当に良かったと思います。
”場”がもってる空気感と引力自体に、強い魅力があった。
なにしろ食べるということは人間の根本で、力強く情動を動かせてしまうからこそ、ともすればそれをメインに据えた物語は妙にガッついた余裕のなさを、時に宿してしまうと思います。
でもこのお話は、まこが自分を譲らず追求してみたいと思った”食”へのこだわりが、豊かに広がって誰かを笑顔にし、絆を育む様子をずっと真ん中に据えてきた。
食べ物があえて幸せのツールでしかないからこそ、魂の糧としての意味と価値を、大上段に構えることなく自然に伝えられた事は、テーマに選んだものとの向き合い方、料理の仕方として、本当に上質だった。
成し遂げるにはかなり巧くないと無理なんだが、それが悪目立ちしなかったのも偉い。
結構最初は頑なに打ち解けず、妙な遠慮と距離がある中ジリジリジワジワ、お互いの間合いが詰まっていく様子を見ているのも、本当に楽しかったです。
最終話に描かれた麗しい到達点(出発点でもある)も素晴らしいんだけど、そこに至るまでの探り探りの日々とか、思い切って新しい間合いに踏み込んでみた瞬間とか、全部の時間に意味があると思える、素敵なアニメでした。
”日々”をタイトルに入れている以上、時間の描き方は大事だったと思うけど、見事にやり遂げてくれた感じです。
というわけで、大変いいアニメでした。
ひつじちゃんもず~~~~っと、ヘンテコ素直で可愛かったしな…。
ありがとう、ごちそうさま!