中学生とヤクザ…それぞれの勝負が迫る中、奇妙な絆が紅に染まる!
四話完結起承転結の”転”をパワフルに叩きつける、カラオケ行こ! 第3話である。
まさかまさかのギガバイオレンス、岡くんの奇妙な青春はどこに転がっていくのかさっぱり読めなくなって、大変良い感じの最終コーナーである。
眼鏡の奥に鬱屈を隠し、物静かな良い子ちゃんこそ自分の肖像画なのだと思い込んでいた少年は、トンチキヤクザといるときだけ獣の地が出る。
胸の奥に秘めた激情を吐き出し、メガネを外して涙を拭うことで、どうしても譲れない小さな願いに…それを心から心配してくれていた後輩に、ちゃんと向き合う。
気づけば家族もコンクールを訪ねることになり、波風多かった青春の旅も遂にクライマックス! …と思ってたら、飛び散る血しぶき衝撃の別れ!
いやー…良いタイミングと良い演出で、しっかり最後の一発を入れてきた。
岡くんが日常を離れ、周りにいなかったズルくてヤバい大人と二人きりになる「移動する密室」だったヤクザカーが、グシャグシャになることで狂児との日々も壊れたことを描くの、めちゃくちゃフェティシズムが巧い。
ぼんやり顔のメガネボーイであることがセクシーの源泉だった少年から、メガネを引っ剥がして裸眼で現実と自分を見つめさせたのと同じ、精妙な記号の操作を感じられる回だった。
同時に愛も怒りもガラス越しぼんやり抱え込んでいた少年が、奇妙な縁で出会ってしまった珍獣だけに思いの丈を吐き出し、ワケの分からねぇ思いと向き合う瞬間には、心揺さぶられるアツさが力強い。
そういうモノに出会ってしまえば、曖昧模糊な青春時代はもう戻ってこないからこそ、サブタイトルが『別れ』でもあるのだろう。
やっぱ迷える青春をユーモアと愛しさたっぷり、洒脱に描く物語だからこそ、笑いもスカシも交えずただひたすら、岡くんが吐き出せずにいた感情に向き合い、炸裂させる瞬間は大事だ。
自分勝手でセクシーな、面白中年だけがヤクザの顔じゃないように、普段敬語なのにキレるとフリーザな獣だけが、岡くんの本性ってわけじゃない。
でもそれは、たしかに二人の奇妙な日々の中で削り出され、浮かび上がってきた本当の顔なのだ。
変声期に振り回され、ようやく掴んだ自分の居場所、中学最後のソリを手放さなければいけないかもしれない不安は、和田くんの善良さをあるがままの姿で見つめる邪魔もする。
それは心配される自分もちゃんと見えなくしてしまっっていて、岡くんはひどくありふれた思春期の雲に、自分と世界を隠しかけていた。
学校でも家庭でも取り外せない、ありふれて厄介なその曇りを、急に岡くんの日常に迷い込んできたヤクザはかき乱し、カラオケボックスや車の中で二人きり引っ剥がし、ガムシャラな活力に満ちた…言うならば「ヤクザっぽい」自分と出会わせる。
真逆に見えた中年ヤクザは、思春期ボーイの大事な鏡だったのだ。
そういう男が本来身を置いている、ドラッグもバイオレンスも稼業の中な暗い世界(大人の世界)に、岡くんは狂児が好きだからこそ踏み込み、洗礼を受ける。
自分が狂児のいる世界には立てない事実を思い知らされ、勝手に好きにさせて勝手に守って勝手に遠ざける罪な男にキレることで、岡くんはヤクザ的な自分を自覚する。
それはとても奇妙な旅だけど、思春期の少年が自分の形を見つけ、譲れないものに挑むための普遍的な歩みだと思う。
ぼんやりベビーフェイスの奥に、ドヤクザなオラオラ感を秘めているところが岡くんのセクシーなんだよなぁ…。
やっぱ己を知らぬ少年が、自分に出会う物語は最高に気持がいい。
ジャンキーに絡まれたときは、狂児が大きな手のひらで守ってくれた紅の洗礼。
それを岡くんは、二人だけの聖域だったヤクザカーがグジャグジャに壊れる現場で浴びる。
画面の向こう側、遠い世界だと思っていた暴力と死は狂児にとっては日常で、岡くんの世界でも無縁ではないことを、今回思春期の少年は思い知らされる。
過酷で強烈で、大事なレッスンである。
自分を迷いの向こう側に連れて行ってくれた、勝手でハチャメチャで素敵な恩人の命と縁が壊れてしまう衝撃に、果たして僕らのギークボーイは耐えれるのか。
中学三年間…そして狂児と出会い共に過ごした物語の総決算となるコンクールに、岡くんはどんなソリを響かせるのか。
果たして狂児は歌ヘタ王となり、最悪入れ墨を”掘られ”てしまうのか。
…罰として柔肌に刺青を刻まれるの、直球にゲイファックで力強えーなと、今更ながら気づいたが、良い最終話一個前だ




というわけで作監・森田莉奈の味なのか分かんねぇけども、今日はとにかく聡実がセクシー!
憂い・恐怖・当惑・激怒。
胸の奥の思春期爆弾が全力で炸裂する回だけあって、色んな岡くんが見れて大変良かった。
俺はこのお話、兎にも角にも男の顔が良いので見始めたので、岡聡実がどんな顔をするのか、贅沢ヴァラエティパックでたっぷり食べさせてくれるのはありがたすぎる。
本来こんだけ百面相出来る感情を秘めていたのに、学校や家では煮えきらないぼんやり顔していたってのが、金の卵を胸の中で殺してた証明なんだよなぁ…。
それを孵化させたクソヤクザ…罪な男よ。
俺はこの話、岡聡実が実は感情豊かな自分に出会い直し、迷いを抜けて魂の歌を鳴り響かせる物語だと思ってみてきたので、彼が殻を破って色んな顔したのはとても嬉しい。
そういう本来の己と出会い、向き合うにはときにとびきりの非日常が必要であり、そこで「ヤクザにカラオケ指南」を選んだところに非凡なセンスがあるわけだが。
”はてしない物語”から”ペルソナ”シリーズまで、「これが僕」と思い込んでいた過酷な試練の中で殻をぶち破り、思いも寄らない…でも間違いなく本当の自分と出会うまでの物語は、とても普遍的な青春の旅だ。
こういうオーソドックスな強さを、トンチキなユーモアに交えてしっかり練り上げているのがこの物語の腰の強さを支えていると思う。




岡くんは狂児に思いを告げるまで、傾いだ青い牢獄にその心を閉じ込めている。
ヤクザの先生役から解放され、歳も性格も住む世界も違う非日常から解放される瞬間を、待ち望んでいたはずなのに、岡くんは二人の聖域の中で唇を強く噛む。
胸の中に閉じ込められた鬱屈も愛も、ハジけ飛ぶための啐啄の機を待ち望んでいて、だからこそ自分ひとりでは殻を破れない。
それはヤクザを物語の相方に選んでしまった運命にふさわしく、赤い炸裂によって解き放たれていく鎖なのだ。
狂児は地獄のカラオケ大会を前に、彼なりの鬱屈を抱え彼なりの運命と出会って、岡くんに声をかけた。
そんな出会いを語ってくれることで、岡くんを閉じ込めていたピロティの牢獄は真っ直ぐな画角を取り戻し、和田くんも自分の地位を奪う敵ではなく、心から自分を心配してくれる味方として受け入れられるようになる。
それは心配されて然るべき弱い自分、変化と必死に戦っている自分を、岡くん自身が肯定する決断でもある。
そうやってちょっとずつ、幼い声のままあって欲しかった自分ではなく、勝手に変化してあるがままの自分を受け入れていく旅が、子どもには絶対必要なのだ。
なので好き勝手絶頂ヤクザは、結果として大変偉い。
過程はマジでメチャクチャだけども。
しかしそういう正道から外れた忘八者こそ狂児の稼業であり、岡くんは自分を解き放ってくれたお礼にお守りを届けようとして、血みどろな狂児の世界…カラオケやったりイチゴ食べてるときは、まぁまぁ頑張って見せないようにしていたモノに衝突する。
岡くんの前ではタバコを控えていた狂児は、彼を守るために吹き出させた紅から大きな手で岡くんを守るけども、その優しさは自分のいる世界から彼を突き飛ばす、ある種の離別のサインでもあろう。
そういうところに踏み込んで、もっと狂児を知りたいからこそ暗黒街に足を踏み入れた自分に、全く無自覚で無防備なところが、岡くんの可愛げだ。
子どもやな~(愛と羨望の入り混じった揶揄)
狂児もヤバすぎるジャンキーに手を出したら、何がどうなるかは予測していたと思う。
後に襲い来る極めてヤクザ的な厄介事を背負ってでも、岡くんを守ることにした…つう話なんだが、彼が真実大人ならそもそも声はかけていないし、この街にも踏み入らせていないだろう。
狂児もまた岡くんに惹かれ、離れがたく何かを感じていたからこそ、ここで二人の運命と相いれぬ世界は衝突し、紅く染まっていく。
出会いの曲であった”紅”を、ここで彼ら二人らしく変奏して高らかにかき鳴らすの、詩学が巧すぎてビリビリ来る。
やっぱロマンティックなお話には、詩の巧さが伴ってほしいんだよな俺は…。




厭気と愛着の入り混じった名前のつかないアマルガムが、確かに胸の中ぶっ刺さって自分を揺らし、未踏地へと走り出させる。
そういう体験をして、知らなかった自分、知らなかった世界に飛び込むことでのみ、確かに掴めるものがある。
岡くんの世界にとって心かき乱す異物だったものが、思いの外大事な存在であったことを庇護と衝突、グチャグチャにかき乱された心の爆発で自覚した岡くんに、物語はより厳しい試練を与える。
そこで過ごした思い出ごと、二人だけの聖域がぶち壊されてしまってなお、狂児と出会ってしまった岡くんは岡くんでいられるのか。
コンクールは待ってくれない。
一人で走り出すしかない。
そこに狂児はいなくても、一回も合唱指導なんて受けてなくても、確かにあのクソヤクザとの非日常は自分に大事なレッスンを与え、今もなお彼との日々が自分を包んでいるのだと、岡くんは感じられるのか。
最後の勝負は愛のない一人舞台になるのか、実は命がけのクソヤベー場所にいたヤクザとの、運命を越えた合唱となるのか。
最後に描くべき主題はとても鮮明で、どういう色合いと激しさで描ききってくれるのか、最終回期待しかねぇ。
LINEのやり取りで一段落ついたと思わせておいて、緩んだ腹筋を交通事故でぶん殴ってくるのも、クライマックスへの温度をバチ上げる素晴らしい手筋だと思う。
岡くんの動揺は、最終話を待つ俺達の気持ちと完全にシンクロしちまってるもんな…。
”紅”は暴力の嵐を振りちぎって、一人新たな天地へ進み出す友を見送る男の歌であったけども、どーも狂児が殊勝に守護霊に収まるタマじゃなさそうだからなぁ…。
狂児に教えられた剥き出しのヤクザイズムを抱え、一人だけどひとりじゃない場所へ走り出した岡くんと並走して、あのクソボケも力強く自分だけの戦いに挑み、先生の教えを活かしてちゃっかり勝ちそうな気がしている。
つーかそういう原典超越を見せて、今”紅”を引用する意味を高らかに響かせてほしい気持ちが、狂児らしくタフに惨劇を生き延びてて欲しい祈りと重なってる。
つまんねーだろこんなありきたりの結末ッ!
お前らしくめちゃくちゃヤれ!
岡くん自身の葛藤は、狂児との別れ…それを型どおり飲み込めずお守りに切ってヤクザの領域に踏み出し、紅の衝撃で己の思いを吐き出したときに、一つの決着を見ていると思う。
あとはいきなり横殴り決めてきた暴力の嵐を振りちぎり、ヤクザの荒々しさと天使の歌声を”合唱”させて、彼だけのソリを歌い上げるだけだ。
ああいうメチャクチャな男に振り回され、愛と紅が入り交じる奇妙な世界を垣間見なきゃ、岡くんのありふれた思春期は殻を破れなかったんだから、そんな不思議なレッスンに報いるだけの歌声を、最後に聞き届けたいね。
ここまでの物語で積み上げられてきた階段を、素直に蹴り飛ばして高く飛べそうなクライマックスであるが…こんだけの傑作だとこっちの予測なんて軽やかに飛び越えて、自分だけが描ける最高を成し遂げてくれそうでもある。
一体、どんな最後を見届けられるのか。
次回最終回、とても楽しみです。