イマワノキワ

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ウィッチウォッチ:第20話『迷い狼と通い猫』感想ツイートまとめ

 ウィッチウォッチ 第20話を見る。

 

 

 

 

 

 

画像は”ウィッチウォッチ”第20話より引用



 「前回激メロモイニコ話やったし、ここでケイネムを起爆して畳み掛けるぜぇ!」という、気合の入ったエピソード。
 主人公カップルが既に出来上がった関係と感情を、ニチョニチョ甘酸っぱく煮込んでいくのに対し、こっちの二人は新鮮な出会いと変化を重ねていく感じで、なかなか新鮮である。
 ニコモイはもう完璧に”仕上がって”動かない(その代わり深く深く潜れる)感じなので、全然セクシーな毛羽立ちを感じない所から悦楽のパラシュートまで、乙女回路全開で突っ走るこっちの温度は、作品に新しい可能性を切り開いてくれる感じがあった。

 

 音夢ちゃんもケイゴもなかなか興味深い軌道修正をもらいつつ、他キャラとは別の仕事を背負って、作品世界を立体的に面白くするべく、しっかり二人三脚を走っていた。
 登場時はモイちゃんに矢印出てた音夢ちゃんが、ニコとの関係強化に従ってそっちのラインを潰し、ウルフと既に築いていた関係を足場に、ケイゴとのマッチアップに舵を切り直す…ていう作りか。
 明らかにエロティックな含意がある、猫状態での猫猫エクスタシーが、最初ケイゴを雄として認識していないところから始まるのが、変化球にして王道だなと感じる。
 やっぱスクリューボール・コメディの王道は、ゼロもしくはマイナスからのスタートだよな!

 色んな男の上をフワフワ蝶のように揺れる、音夢ちゃんの乙女っぷりは、モイちゃん一筋な(そしてそこが良い)ニコには演じられない面白さだ。
 ここを音夢ちゃんが担当することで、「誰選ぶんだろうな~」つう選択型ラブコメの根っこが新たに生えてきて、作品のラブコメ強度が多彩にもなる。
 ニコモイだけだと、ある意味一本調子になっちゃう部分を変奏して、主役カップルの善さを更に強める意味合いもあるので、ここでそういう場所に音夢ちゃんを引っ張ってきたのは面白い打ち筋だと感じた。
 猫変化で逃げちゃってる自分を自己開示するかしないか含め、すごくフラフラしていることがある種のリアリティ持ち込んで、作品世界の実在感が強くなるのは興味深かったな…。

 

 このフラフラなトキメキを強化するには、メロつく相手が100点満点じゃないと困るわけだが。
 リング・オブ・フロートをニコから手渡されたケイゴが、ピーキーな魔道具を一度は諦めたはずの過去と混ぜ合わせて、見事なヒーローっぷりを燃やしていた。
 やっぱ自分のことヘナチョコだと思っている(が、仲間からは既にその魂の強度を信頼されている)男が、腰抜けのままじゃイられねぇ大ピンチを前に奮い立ち、誰にも出来ない活躍をブッかます瞬間ほど体温上がるモンないから…。
 指輪の魔力で、街全部をリンクに変えて自分の強みを発揮していくの、魔道具アクションとしてもアガる展開で大変良かった。

 「ケイゴ、ウルフ抜きだと色んな意味でキャラ弱くね?」つうのは正直作品の瑕疵だったわけで、それをちゃんとメタ認識した上で1エピソードまるまる与え、ケイゴ単品で強くなる(強くなれる自分を信じる)まで引っ張り上げたのは、とても良かった。
 音夢という鏡をズタボロな彼の前に置くことで、彼自身がなかなか認められない自分の強さを、視聴者にも分かりやすく可視化し納得させていく話運びは、非常に手堅い。
 挫折を乗り越えスケーティングを強みに変えるアクションが、そのまま過去を克服し肯定する精神的成長を体現しているところとか、巧すぎてビリビリ震えるね。
 正統ジャンプイズムの強度が太いの、このお話の強み。

 

 ケイゴの秘めたる輝きを信じて、信頼の言葉とともに魔道具を手渡すニコちゃんには、モイちゃんのメロッてるときには見えにくいカリスマ性があったし、メイン二人だけで完結しない横の繋がりも話に広がりを与えていて良かった。
 ケイゴの後ろめたさもニコちゃんの信頼も、彼らが仲間だからこそ湧き上がってくるもので、このお話はそういうベタ足で泥臭い善さを、すごく大事にしてくれてるなぁと改めて感じる。
 こういう地道な感情の手応えが湧き上がってくると、降って湧いた同居シチュにも体温が宿ってきて、ただの物語的快楽発生装置で終わんない意味が出てくる。
 ありがたいことだ。

 あとケイゴと音夢、二人とも過去と親子関係にキズがある存在として描くことで、横幅だけじゃなく時間的・心理的な奥行きも作れていた印象。
 精神状態がダイレクトに反映される浮遊魔術を活かすことで、音夢ちゃんが母親の影に深く囚われ抜け出せてない感じとか、挫折を力に変えて”今”を飛ぶケイゴの飛翔とかが、アクティブに描写されていた。
 ケイゴは競技の最前線からは降りて、過去を過去に出来るある意味ラッキーな立場だけど、音夢ちゃんは現在進行系で「歴史ある魔女の末子」だもんな。

 

 完璧であることを当然と思われ、感情を押し殺し隙を見せない牢獄から、なかなか抜け出せない。
 だから高く危ないところをフラフラ彷徨い、受け止めてくれる誰かの声に従って落ちることで、安全と新たな恋の予感を手に入れる…と。
 現在進行系のアクションの中に、音夢が今後家族の鎖とどう向き合い、誰にどう助けられて未来を切り開いていくかの予言を盛り込んであるのも、まー巧妙だわね。

 命がけの魔道具アクションという、すごく具象的な場面と青少年の心を混ぜ合わせることで、どこか象徴的で未来志向な味わいが芽生えてくるのは、今後この予感が成就するさまを見届けたくなる楽しさがあって、すごく良かった。
 こういう自己成就への期待感が、恋の芽生えと重なると、ロマンスの純度と強度がグンと上る感じがするな…善い恋が待っててくれてる期待感。

 

 

 つーわけで、作品を支える新たな軸がニョッキリ芽生えてくるお話として、大変パワフルな仕上がりでした。
 ちゃんとケイゴと音夢ちゃんじゃなきゃ動き出さないロマンティックに満ちてて、二人のフラつく弱さと心の輝き、両方がとても元気だった。

 ニコが手渡した信頼の魔道具が、ちょっとした騒動と力強い覚醒両方を連れて来る展開も、魔女不在のまま魔法ジュブナイルの芯に踏み込んでて、めっちゃ良かったです。
 そろそろ再び牙を剥いてきそうな、黒魔女との新たな戦いで、誰かのために戦える己を抱きしめたケイゴがどんだけ暴れるかも含めて。
 次回も、とっても楽しみです!