新キャラクターに新役職、そして嘘と投票先を見抜く新機能!
アップデート満載の宇宙人狼三周目、グノーシア第3話である。
ユーリと視聴者も議論と死のループに慣れてきて、システムとルールを活用してゲームを”攻略”しに動き出す。
外見と態度から吊られやすいラキオとしげみちが、グノーシアを割り振られた幸運にも助けられ、四周目にして初勝利!
…と思ったら、全然ループが続いてどういうことだよッ! という回だった。
んーむ、やっぱ小ゲームとしての宇宙人狼をループしながらこなしつつ、それを生み出している大きなゲームの背景と勝利条件を探っていく事が、ゲームの根源的体験なんだろうな…。
出会うヒロイン軒並みグノ顔ブッ込んでくるユーリくんは、白紙の記憶に翻弄されつつも状況を見通し、ゲームを制しようと頑張ってくれる良い主人公だ。
彼が最初の混乱から落ち着き、繰り返される惨劇を支配しているルールを学んで、使える手段を活用して勝利を目指す姿勢は、見ているこっちも共感しやすい。
彼の混乱は作品世界にいきなり投げ出された僕らの混乱であり、彼の納得は見ているこっちの納得でもある。
それは宇宙人狼におけるルールとセオリーだけでなく、異様な状況にどういう感情を抱けば良いのかという、エモーショナルな部分でのシンクロも生んでくれる。
程よくハニトラされ、程よく理性的で、程よく誠実なのだ。
この一人称的没入をここまでの三話でどう作るかは、ゲーム的体験をアニメに落とし込む中で凄く考えられ、表現を磨き抜いた部分だと思う。
ワケの解んねぇまま仲間を吊り仲間に殺される牢獄に投げ込まれ、おまけに殺し合いが終わっても新しい殺し合いが始まる、過酷な惨劇のループ。
この過酷さになれたあたりで、人数が増え新役職が提示され、使えるギミックと勝ちへのセオリーが見えてくる。
参加者には周回が変化しても、グノーシアに乗っ取られていても変わらない個別の性格と能力があり、意見の通しやすさや吊られやすさに濃淡があること。
このキャラ固有の傾向を把握した上で、望む方向に投票を持っていくこと。
そのためにはセオリーを駆使して白黒を見抜き、適切に自説を開示して周囲を誘導する必要があること。
その誘導の仕方も、参加者個別の思考パターン/周回で割り振られた役職に応じて変化していくこと。
ユーリくんは異様な状況に未だ震える感性を残しつつ、時代遅れの鉛筆でメモを取り、四周目の勝ちやすい盤面でしっかり勝ち切る。
その上でループは続き、今まで親身に助けてくれたセツに起こされない孤独な覚醒を迎える。
どんだけ人狼の勝ち筋が解ってきても、ループの抜け方…より大きなゲームがどういうロジックで成立しているかは、全然見えてこない宙ぶらりんだ。
つーか誰だよあの黒髪意味深女…。
小ゲームである人狼を勝つために必要な、参加メンバーの傾向性を探るための個人的親交を深めるほどに、そいつがグノーシアになった時のダメージがデカくなる構造は面白い。
抜け出せない檻の中、「とりあえず出来ること」として提示された吊るし合い/噛み合いを勝利で終わらせるために、同卓するメンバーがどういう人間かを知っていく。
それはクールにゲームのルールを乗りこなすための必要条件であり、そいつがどういう人間か知っていくほどに、冷酷な疑念と処刑に乗っかっているのが辛くなる。
…そもそもグノーシアが無差別に発症し、不可逆に凍らす以外解決法がない状況が良くねーんじゃねぇの!?
グノーシアという役職はあらゆる盤面で固定されたものではなく、殺すべき悪と共に戦うべき善という区分は、ループを繰り返す中で複雑に揺れ動く。
グノーシアへの憑依が(偽装を強化する意味合いもあって)元の人格を損なわないのもあって、みんな一緒に生き残るべき良いヤツなのに、吊るす以外に勝ち筋がないループの中で、誰かが死ぬのは避けられない。
ラーメン屋での短い交流、会議での小さな会話でも、異様な外見をしたしげみちが思いの外いいやつであるのは伝わって、つまり印象と予断で吊るす相手を選ぶしか無い初回のエグさが、より際立っても来た。
マジ思い込みゲーだよな、情報無い段階での投票…。
第4ループ二日目のように、相互の投票先やエンジニア能力などを駆使して、情報を集め論理を組み立てることで、人狼には勝てる。
でもそこに至る前段階では、直感と印象が誰を吊るすか操作する、極めて非論理的な感情戦がゲームを支配している。
毎回初手吊り安定なロジックマシーンの失態を見ていても、論理を越えた愛嬌は極めて大事なのだが、それをグノーシアが悪用してこないわけもなく、直感と感覚(あと運)だけで何かを決めるのは極めて危険だ。
だがこのゲーム、少なくとも情報が不足しすぎている初手はそういう勝負にならざるを得ない。
…やっぱ人狼ゲームを成立させてる、グノーシアの存在自体と戦わなきゃじゃねぇの?
とは言ったものの、そもそもグノーシアってどういう存在で、どういう文化的/社会的背景から発生してるのか全然解んねぇし、どういう因果でループが発生しているのかもサッパリである。
ここら辺を解っていくためにも、移り変わる盤面を乗りこなしつつ色んな人と話し、その人となりに触れつつ情報を集める必要があるのだろう。
こうして考えると、白紙のまんまループ構造に巻き込まれて始まる物語は、情報収集と関係構築によって育まれる世界観とキャラへの愛着と、それを否応なく裏切る疑念と処刑のゲームへの違和感を、自然と生み出す見事な設定だといえる。
訳分かんねぇ記憶に、自分の足でループを踏破し、見つけた真実を記す。
だってどう考えても、誰かを疑い吊るすことでしか勝てないゲーム、しょーもないしろくでもないでしょ!
なんか四回も繰り返して、宇宙人狼するのが当たり前みたいな感覚に僕らもユーリもなりかけているけど、初回の「え? なにこのエゲツなさ…」という呆然とする違和感は、忘れちゃなんないと思う。
どんだけ繰り返されても、ユーリたちが囚われてしまった地獄のゲームは、人間にとって凄く大事なものを壊すろくでもないモンだという意識を、持ち続けるのが大事かなと思う。
ここら辺は動揺したり気を強く持ったり、勝ったと思ったら再ループで凹んだり、感情豊かなユーリの描写で上手く担保できてる感じあるね。
どんだけループを繰り返しても…繰り返すからこそ、一回一回の”ゲーム”には同行者それぞれの人柄と物語があり、グノーシアが在ってしまう状況、そこから必然的に導かれた非情な処刑投票は、そういうモンを踏みつけにしていく。
だからループを抜けゲームを終わらせなきゃいけないわけだが、各キャラの能力と感情、思考パターンと割り振られた役職が複雑に絡み合う人狼ゲームは、攻略するだけでも相当に難しい。
この難しさが当事者の視野を狭め、悲惨な状況を包みこんでいる大きなゲーム…立ち向かうべき本当の試練を、見えにくくしてんのかなぁと思う。
この隠蔽は、真実に気付いた時の衝撃をデカくするので巧い構造だわね。
ルールがあり役職があり、あくまでゲームでしかなくそこで展開される死も疑念も、「本当の自分」を傷つけない一種の嘘であるからこそ、僕らは人狼ゲームを”楽しめ”る。
しかしユーリたちにとって友を疑う苦しさも、裏切られて殺される辛さも一回こっきりの現実であり、”楽しむ”どころの騒ぎじゃない。
ここら辺の俯瞰と没入の断絶を埋めるべく、キャラクターを可愛げに満ちて親しみやすく、あるいはそれが反転して恐ろしく描けているのは、凄く良いことだと思う。
”楽しむ”どころじゃあないユーリたちの主観に、上手いことモニタの外側から潜り込めるよう、場の雰囲気や温度感が調整され、演出されている印象だ。
この巧みなエモーショナルの筆致が、ゲームに勝たなければいけない切迫感を支え、ロジックを磨き上げる必然性も生み出すわけだが。
嘘を見抜く直感とか、誰が誰に投票したのか確認できる仕様とか、エンジニアという役職とか。
嘘を見抜き真実をえぐり出す論理の刃が、勝率を上げる助けになる描写もしっかり追いついてきて、作品全体のムードがちょっと変わってきた。
まぁロジック一本で突き進んでも、反感買って吊られるだけってのはラキオが身を以て教えてくれてるわけだが…。
ここら辺、作中現実に共感する前のめりと、やや引いた視線で”ゲーム”を見る俯瞰が同居しているからこそ生まれる、独特の面白さとも繋がってる感じね。
論理と共感、ループを重ねて見えてきたルールと人となりへの理解を活用して、ユーリは初の勝利を掴んだ。
でもそれは、ループからの脱出を意味しない。
ただ一回勝っただけじゃクリアできない牢獄から抜けるために、一体何をすれば良いのか。
次からの周回は、この異様な状況…に巻き込まれた、記憶を失った自分自身を探っていくのが、結構大きなファクターになりそうだ。
三周目と四周目のステラの違いを見るだに、ループ開始点の前に設定されてる過去もまた、周回ごとに変化するっぽいからなぁ…。
何もかもが流転し不確かな輪廻の中、何が変わらぬ輝きを放つか。
探っていく旅の中でも、仲間はどんどん死んでいくのだ。




というわけで新メンバー足しての七人体制三周目…慕情を秘めてステラの瞳が熱いッ!
まぁそれも最終的にグノ顔に反転するわけだが、ほんっとユーリくんを好きな女軒並みユーリくん殺しに来るな…。
こうもハニトラが続くと、人間状態で好意寄せられて拒絶しちゃいそうだけど、そういう周回後遺症もループ脱出の足を引っ張りそうだ。
どんだけ愛が本物でも、グノーシアに感染すれば殺戮衝動は止められない。
…つーかGnosisからネーミング引っ張ってきてんだから、グノーシアにとって人間を殺すのは現世からの救済、なんだろうなぁ。
反出生主義人狼ッ!
どう見てもグレイなしげみちが、付き合ってみると気さくないいヤツであり、偏見で吊るすには勿体ない人格していると解るのは面白かった。
そういう思い込みはより良い結果を導く邪魔になるけど、ラキオの可愛げのなさと同じく、どんだけ周回重ねても「らしさ」の凸凹は変わってくれない。
隣人がどういう長所と短所を持っていて、それが彼らの物語の何処からやってくるのか、周回繰り返しながら知っていくのが大事なんだろう。
まぁそういうの知ってても、グノーシアは容赦なく感染するし、寝てる間に殺されるかもしれないけどなッ!
やっぱ良くないよ~、宇宙人狼を強制される状況それ自体がさ~。
嘘を見抜く能力がユーリに発現したけど、上手く議論を誘導できなければ自分の中にある事実は共有されず、悲惨な結果が導き出される。
情に訴え論理で斬りかかり、使える全てを動員して求める結果を掴み取る、ある種の”政治”が必要なこともよく解る、三度目の悲劇である。
まだまだ新メンバーは控えてるっぽいし、人間同士の相性、割り振られた役職の噛み合わせでもって、議論の趨勢はどんどん変化しそうでもあって、ユーリくんの悩みはどんどん深くなる。
周回繰り返しゲームに慣れてきて、誘導しやすいコマとして他人を見るようになったときがマジヤバいと思うね!
…人間を人間として見れなくなる機構が、あらゆる場所に仕込んであるのは見事だ。
それに抗うという”選択”をすることで、ゲーム的体験はかけがえない個人の物語へと変化していくからだ。
そういう非人間的な潮流に晒されたときこそ、眼の前の相手がかけがえない人間であり、繰り返される一瞬がたった一つの人生でもあると思い返すことが、物語への没入感を深めていく。
作品を支える大きな構造は、極めて冷徹なゲームの繰り返しなんだけども、それを裏切るようにキャラは魅力的で生き生きしていて、そういう奴らを疑い吊るし殺されなきゃいけないという、より感情的な矛盾。
それを突破するために、「ゲームをクリアする」という動機にドンドン火が入っていくの、巧い作りだなぁと思う。
自分は物語をメタ思考で体験しがちな人間なので、この素晴らしいアニメーションの奥にある原作…ゲーム体験を勝手に推察し、構造を妄想して楽しんでいる部分がある。
あってるか間違ってるかは分かんねぇし、それを読むことがアニメを見る体験にどう寄与するかも不鮮明だが、まぁそういう気質なのはしょうがない。
ただ勝手に推察する限り、凄く巧妙にゲーム的体験をアニメーションに落とし込んでいる感じはあって、ここの上手さがアニメ単体としての見応えにも繋がってると思う。
見るものを作品世界に引き込み、嘘っぱちを本物と感じさせる魔法を追い求めてるって意味では、ゲームもアニメも変わらんからな。




というわけで四周目、新役職エンジニアを活用して初勝利を目指せ!
議論の誘導の仕方、各種情報の活かし方、ループで積み重ねた参加者への理解。
震えながらもゲームに勝つためのロジックを握りしめ、勝つべくして勝っていく流れは大変爽快だった。
だからこそ、ようやく生き延びてセツと笑いあえた瞬間が儚く霞み、一人目覚めて頭を抱える五周目開始は良い絶望だった。
そうだよなぁ!
人狼ゲーム勝ったからってループ抜けれるとは、誰も言ってねぇもんなぁ!!
予断はあらゆる局面で、プレイヤーの敵。
作品の基本ルールを、ビシバシ教えててくれて容赦がない。
四周目の勝利は、ラキオとしげみちという、極めて詰めやすい相手がグノーシアだった幸運に助けられたのが大きい。
思い込みブッパするしかない第1ターン、息してるだけで敵を作るラキオがグノーシアなのは敵からすら最悪だろう。
二人残して第2ターンを迎えられるならまだ勝ち筋もあるが、初手自滅で数的劣位を背負わされ、エンジニアも生存じゃあ分が悪すぎる。
それでも手持ちの材料を駆使し、勝てる盤面でちゃんと勝ったのはとても偉いと思う。
今まで手に入れた情報を的確に使えてなかったのが、落ち着いて適切に開示することで議論を誘導できてもいたし、ド素人が経験者になっていく手応えがあった。
まぁンなもん掴み取ったところで、非情なループが新たに幕を開けるだけなわけだが…。
無様に殺されても、見事に勝っても永遠に続く、グノーシアの牢獄。
それを突破し、みんなで明日にたどり着くにはどうしたら良いのか。
未だ疑念と断罪の檻からユーリたちを解放する鍵は見えぬまま、次回はセツ抜きでの周回っぽい。
毎回新しいヤバさを叩き込み、どんどん新鮮な局面にユーリと僕らを巻き込んでいくサスペンスの作り方、本当に凄いなぁと思います。
それを楽しみつつ、作品全体を構築する大きなルールに思いを馳せて楽しませても貰って、全く贅沢なアニメだ。
次回も楽しみ!