友達という距離に、この胸の高鳴りが収まるのか。
ドキドキの大縄跳び大会を描く、”太陽よりも眩しい星”第5話である。
研修旅行終わったと思ったらすーぐ大縄大会で、メチャクチャ学校行事の比重が大きいラブコメである。
あまりに真っ直ぐ大縄跳びに打ち込む青年たちを見てると、「高校一年生、こんなにピュアだったっけ!?」という気分にもなるが、自分が忘れているだけで結構そういうモンかもしれない。
友達と必死に練習している姿を見て、クラスメイトもよく知らないグループの子の評価を改め、だんだんクラスの輪が出来ていく。
四月からこっち、凄く地道かつ丁寧に共同体形成の過程を追いかけ続ける作品だ。
色々グラグラ揺れ動いた挙げ句、光輝くんとの距離感を「友達」ってところに収めた朔英ちゃん。
そのおかげで作品全体の画角が安定し、学園生活全体がどんな感じなのか切り取れもしたわけだが…大縄大会に勤しむ中、「友達」で収まらないほつれが朔英ちゃんの心、光輝くんの振る舞いに溢れ出しても来た。
やっぱどう考えても…て感じではあるし、それを朔英ちゃんも自覚している感じなのだが、爽やかボーイの内心はどういう感じなのさ! と、大変ヤキモキもさせられる。
あの間合いと立ち回りで「友達」はねーよな…って感じではあるのだが、本当のところは全然解らず、このもどかしさが主役の内面とシンクロし、作品にのめり込ませるね。
朔英ちゃんは後ろに一歩引いて周りをよく見るタイプなので、社会が求めてくる「べき」はよく解っている。
同時に自分がどうしたいのか、「べき」をはみ出した欲求をどう扱っていけばいいかに関しては、経験値が足りてない感じがある。
そのバランスを探り、なりたい自分とあるべき自分の均衡を見つけていくのが、色んな学校行事に「教育」されている高校一年生の、大事な旅路なのだろう。
このお話、学校という場がどんだけ色んなイベントを用意し、生徒に体験させることでドウイウ体験や能力を手渡したいのか、凄く希望を込めて書いているところが好きだ。
ある種のファンタジーっぽさというか、御伽噺的な質感。
無論当事者としてはキラキラキレイなことばっかじゃなく、迷ったり戸惑ったり振り回されたり、年相応に凸凹道なのだが。
しかしその難しさが児童を振り落とさないよう、可能な限り手を添える(そして添えすぎて、自主性と成長の機会を奪わない)のが学校という場のあるべき姿で、そこに抱きとめられて朔英ちゃんたちは、凄く真っ直ぐに自分や世界や他人を探ってる最中だ。
物わかりよく後ろに引いて、高校生になったら忘れなきゃいけない過去と距離を取って、「友達」って事になったんだから気持ちに蓋をして。
そういう「べき」との違和感だって、否定されるべき嘘ってわけじゃない。
朔英ちゃんの中の、大事な本当なのだ。
大縄大会生真面目に頑張りつつ、自分の気持ちがどう波立つのか確かめ、一人では抱えきれない大荷物を、一緒に未来へ運んでくれる友達の手を取る。
子どもが大人に、人が人に成っていく時凄く大事な物を、朔英ちゃんが一個一個見つける過程が丁寧に描かれていて、やっぱり見てて面白い。
「恋」なるものを無条件に人生の正解とするのではなく、高校一年生が生きる上での一つの(とても大事な)ファクターとして扱い、友情や学業と結び合わせて描いてる印象だ。
太陽よりも遠く、諦めるには眩しすぎる星を探っていく道は、一人で歩くには難しすぎる。
だからこそ、友達が友達になっていく一歩ずつが大事なのだ。




というわけで、翡翠ちゃんと美織ちゃんと一緒に歩いていく、青春があまりに眩しい大縄大会である。
クールな美織ちゃんが自分の不甲斐なさに耐えかね、熱い特訓に勤しむ姿も良かったし、それにつき合うダチどものいい奴っぷりもすごかった。
その努力をクラスメイトがちゃんと見てて、まだ動き出したばかりで連帯感が薄かったクラスが、行事を通じて一つになっていく手触りも面白い。
やっぱ「学校行事」が生徒に何を生み出すのか、メチャクチャ細かく書いてる話だ。
ぎこちない他人との繋がりが、だんだんスムーズになってく過程自体が、見てて面白いものよね…。
「友達」という形を得たことで、研修旅行の時の光輝くんベッタリな距離感から、ちょっと離れた間合いで描かれる今回。
おかげで朔英ちゃん達を取り巻く小さな社会が、どんな雰囲気と力学で回っているかも見えてくる。
生っぽい暗さを(多分意識して)遠ざけた風通しの良さで、善良な子ども達が爽やかに過ごしている様子は、美しい理想郷を目の当たりにしているようで、煤けた中年にはダメージが大きい。
でもこの、自然とお互いを気遣い尊重できている雰囲気あってこそ、朔英ちゃんの揺らぎが優しく抱きとめられている感じもある。
女子三人組がスゲー力まず仲良しで、そのスルッとした感じが良かった。
今回の大縄大会、美織ちゃん周辺の小さなサークルで起こっていたことが、クラス全体に明るく広がっていって、共同体の中が深まる感じが良かった。
この幅広い変化って、光輝くんに強くフォーカスした狭い視界だと、多分切り取りきれなかったと思う。
好きな人の引力に引き寄せられるのを一旦止めて、「友達」って事にして落ち着いたことで、朔英ちゃんが今いる場所をカメラ引いて書けた感じがある。
あまりにも強く心惹かれて、コントロールがままならない近さだけが、青春の全部じゃない。
そういう巧みな遠近法でもって、朔英ちゃんがいる季節を書こうとしてくれているのは、僕にはとてもありがたい。




同時にどんだけ「友達」って事にしようとしても、その一挙手一投足に心乱されてしまう引力も、否定しがたい少女の現実で。
なんだかんだずーっと光輝くんを見てるし、振る舞い全部に「意味」を見出そうとしてしまう自分の気持ちも、朔英ちゃんはじっと見つめていく。
それはやっぱり、「友達」なんかじゃない。
そう思えるのは、お互いの悩みに寄り添って進んでいける、かけがえのない「友達」がいればこそ。
一旦離れて、また近づいての話運びの中、朔英ちゃんが今いる場所がどこなのか、鮮明になっていく回だといえる。
悩みや震えひっくるめての(ひっくるめているからこその)健やかな内省って、想い人以外の他人と適切な繋がり方をする上で、とても大事だと思う。
自分がどこに立ってて、誰に支えられて、何を願っているのか。
落ち着いて見渡せるチャンスを共同体や友達が手渡してくれるから、あるがままなりたい自分へと近づいていける。
そういう未来への足場を自分の足で踏み固めていくのが、朔英ちゃん達がいる時代のとても大事な任務なのだろう。
その掛け替えない一欠片として、「友達」ってことにしてもずっと燦然と眩しい、特別な恋がある。
あのさぁ光輝くん…君が素敵なのは天性だからしょうがないけど、つくづく罪作りだねぇ…。
朔英ちゃんが勝手に好きになって勝手に振り回されて勝手に傷ついてんだから、光輝くんに罪ないのは、僕もよく解っている(…つもりだ)。
というか朔英ちゃん自身が、「べき」がよく見えてしまう優れた視力でもって、自分の勝手な気持ちをちゃんと把握している。
なんだけども、一旦「友達」って距離に遠ざけても死んでくれないこの気持ちと、どう付き合っていくのが良いのかは全然解んない。
「自分で解んねぇなら他人に頼ればいいだろッ!」って話であり、ダチの荷物もつの全然嫌がらねぇ気の良い連中が、悩める背中に声を掛ける。
今回描かれた朔英ちゃんの優しさに、ド正面から報いようとする侠気が嬉しいぜ…。
ここで「友達」じゃ収まんない自分の気持ちと、でもそれとは別に凄く良いものだった「友達」の価値を確かめたことで、朔英ちゃんも新たな未来へ、力強く踏み出せると思う。
それは遠回りであっても間違いではなく、遠い星を追い求める旅の途中でこそ、学べるものも沢山ある。
そういう若造の旅路の全部を、爽やかに眩しく描く物語の底力、たっぷり感じられる回で良かったです。
大縄大会を通じて地歩を固めたクラスが、朔英ちゃんがこっから歩いていく道を支えてくれると良いなぁ、などと思いつつ。
次回もとても楽しみです!