友達と定めたはずの距離が、偶然と決意で揺れ動いていく。
青春のグランドクロスはまだまだ遠い、”太陽よりも眩しい星”第6話である。
神城光輝…難しい子ッ!!(開幕白目で絶叫)
恋のモヤモヤが送信事故で当人にバレ、それはさておいて新たな学校行事がポップアップし、なかなかに忙しない朔英ちゃんの青春。
近づいたかと思えば離れ、諦めようとしたら近づいてくる眩しい星が、一体どんなつもりで自分と向き合っているのか。
朔英ちゃんの解らなさに、見てるこっちも心を寄せられる男子高校生というミステリーである。
いやーアイツマジ難しいな…この読めなさ癖になってきたな…。
実際「どうせくっつくんでしょぉ~」と、ナメて見つめるロマンスほどつまんねぇものはない訳で、解っている結末にどう引っ張っていくかが戯作者の腕前であり、作品の独自性ではある。
そして他人の心が解らないからこそ、解ろうと諦めず近づいていく一歩一歩がコミュニケーションの基礎であり、そこに挑めばこそ若人の魂もより良く磨き上げられていく。
ここら辺の青春迷い旅の手触りと温もりを、しっかり伝えてくれる物語だからこそ、光輝くんのコト全然解んないまま惹かれていく、朔英ちゃんの純情にも心を寄せることが出来る。
そのためには、あの青年が難しい謎であることは大事だ。
それにしたって何考えてあの間合いと立ち回りなのか、マージで全然解んないのが本当に凄くて、解らなすぎて面白くすらなってきた。
彼が誠実な青年で、それが恋にせよそうじゃないにせよ、朔英ちゃんを大事に思ってくれていることはしみじみ感じる。
なので「煮え切らない態度にイライラ!」とか、「どっちつかずで不誠実!」みたいな濁りが生まれはしないのだけど、「んじゃあ何でその言動なんだよ!?」つう納得いかなさは、確かにある。
でもこれは、朔英ちゃんが諦めず初恋を貫いて、解らなさのヴェールを剥ぎ取った先で見えたものの衝撃力を、最大化するための工夫でもあると思う。
それが判るまでウンウン唸ったほうが、内幕が見えて「あ~なるほどそういうことだったのねぇ~」ってなった時の納得感とか面白さとかは、より強くなると思う。
このお話は誰かが誰かのことをわかろうとする難しさと尊さを、凄く大事に話を進めてくれていると思うし、だからこそ光輝くんというミステリを分厚く作ってもいるんだろう。
そういう話じゃなきゃ、朔英ちゃんの親切にあんなにド真っ直ぐに、美織ちゃんが感謝の言葉を述べないでしょ。
俺はクールな鉄面皮人間の血管に、自分に向けられた仁に感じ入る熱い血液が流れていて、それを真っ直ぐに伝えて感じ入る描写が一等好きなので、アレは最高に良かった。




そんな作品への信頼感を柱に、みなぎる決意と気弱な迷いの間でふらふら動く、美しい星たちを描く物語。
今回は思わずクスッと笑っちゃうギャグのキレと、ときめきシーンを独自の色彩で描く演出の両輪が良く回っていて、エピソード特有の面白さがある回だった。
ちょっと色鉛筆テイストがある、色合いをあえて分割して特別なムードをまとった場面の描き方が、凄く特別な瞬間がドンドン押し寄せてくる、朔英ちゃん達が身を置いている季節を、上手く伝えてくれた感じ。
あんま他の作品では見かけない表現で、凄く良かった。
朔英ちゃんは英会話劇でも黒子役だし、とにかく優しさが目立たない月の女なわけだが。
そういう子が自分なりの当たり前だと思っている優しさが、すごく特別で一生覚えているような輝きを持ってるよと、美織ちゃんが凄く真っ直ぐ伝えるシーンが、何度もいうけど良かった。
そういう特別で眩しい瞬間を切り取るには、特別な画角と筆致ってのがやっぱ必要で、それが時に過剰に溢れ出し、このお話独自のグルーヴ感に繋がってもいるわけだが。
すれ違いと偶然と決意が入り混じって、色んな瞬間がヒリヒリした切断面を顕にする、青春という季節。
その味わいを切り取る上で、このやり過ぎ感は僕は好きだ。
その上で思わず笑っちゃうトボケが程よく効いて、真面目な胸キュンだけが彼女たちの全部じゃないと、上手いこと空気を抜きメリハリを作ってくれるのが良い。
今回で言えばこんだけときめき満載なキラキラに包まれつつ、朔英ちゃん達がどんくさくラーメン食べるし、恋に浮かれて食べ過ぎるし、それすらも笑いに包まれて、重くなりすぎずに明るい。
色々悩みはあるけども、日々を楽しく過ごせている気楽な感じ…というか、そんな悩みすらも愛おしいと抱きしめたくなるような、エールを送るちょっと遠い僕の立場を、作品全体が支えてくれている感覚はやっぱありがたい。
みんな一生懸命青春駆けてて、とにかく眩しいわい…。




ひょんなことから淡い恋心が当人にバレたわけでが、そこで改めて自分の気持ちに向き直り、揺れながらも一本芯の通った決意を固める、自称・目立たない普通の子。
そこでハラ決めて心地よい宙ぶらりんより、譲れない体当たりに舵を切れるあたり、もはや勇気の美徳は朔英ちゃんのモノであろう。
まーた新たな学校行事がポップアップしてきて、素直に全力尽くして頑張る日々の中でも、視界を占める眩しい星は近づいたり離れたり手を添えたりしてきて、少女の心を激しく揺らす。
泣かない少女のプライドを、優しく守るように携帯の画面に涙雨が降る演出、情があって好きだぜ…。
朔英ちゃんは人間関係の視力が良いので、光輝くんと親しく触れ合えた時代が遠くになってしまった現実を客観視出来ている。
そういう変化の裏には、変わらない絆や変わってほしくない気持ちが確かにあるのは、多分光輝くんも同じ…だとは思う。
そうじゃなきゃあの土砂降りの中、濡れるも厭わず駆けつけてはこねーよなぁ…。
朔英ちゃんが遠く眩しく輝く星になってしまったと、不釣り合い(だと思い込んでる)な自分を比べる光輝くんの成長も、世話されるばかりで終わりたくない背伸びが生み出した結果のようだし。
こういう可愛げや純情が上手く滲むから、この底が見えない青年を嫌いになれないッ!!
つーか言葉通り態度通り、ただの敬愛で繋がる気さくな友人関係を保っていくのに、ライオンに欠けている”勇気”がいるのか!? つう話ですよ。
こういう細かいヒントを拾っていかないと、あの男の謎解きが出来ない構造になっているの、いい塩梅に作品に前のめりにさせてくれてありがたい。
惚れた男の一挙手一投足に振り回され、高鳴る乙女の心音にこっちの感覚を寄り添わせながら、果たしてこの通り雨どこへ流れていくのか…楽しく次回を待つ!
朔英ちゃんが凄くいい子で、「このコ好きになんないのバカだろ…」って気持ちが自然に溢れ、それが好青年の振舞いと素直に繋がらないもどかしさ。
振り回されるのが気持ちいいぜ!