太陽よりも眩しい星 第9話を見る。
運命の後夜祭に向けて、色んな準備が整っていく回。
あいも変わらず朔英ちゃんの世界はトキメキに満ちて、色んなことで心弾んで大忙しであるが、物語の方はクライマックスに向けて、着々と必要な描写を積み上げている感じだ。
一見ダイレクトに関係がないように見えて、やっておくと足場が整う場面とかを時にコミカルに、時にエモく積み上げているのは、このお話らしい着実な足取りだなと感じる。
大体の人が「無理~」って言うだろう井澤くんをダシに、告白することの繊細さとか文化祭の忙しさとか、早い段階から筆を伸ばしてきてるの、上手いなぁ…って思った。
どう見ても真っ直ぐで好い人な昴先輩をライバル視せざるを得ない歪みとか、そこで積み重なるモヤモヤとか、なんだかんだ距離が縮まってる陽太くんの活かし方とか。
丁寧に外堀が埋まって、後夜祭での大勝負に向かっていよいよ感が高まっているのが、そろそろアニメも幕を閉じるのだという感じを強めもする。
まー極めて端正に、ピークに向かって的確に綴られてきた正統派なので、終わってしまう寂しさよりも頂点へ駆け抜けてくれる期待感の方が大きいが。
見えてるはずの答えを全く確信させてくれない、神城光輝というミステリーが最高の舞台で解体されていくのを、俺は今から心待ちにしている。
マジ神城わっかんね~。




宿泊学習で一回玉と砕けた後、不屈の闘志を燃やし運命の瞬間まで時を待つ朔英ちゃん。
彼女の内面と世界が、主観と客観の境目を越えて一体化している過剰な内面性が、僕の考えるこの作品…青春を舞台とした少女漫画というジャンルの、一つの大きな特長だ。
今回は画面にキャラクターが覆い焼きにされるカットが多くて、具体的な表現がそういう精神性を追いかけてくるような感じが、とても面白かった。
感情の揺れに従って世界の光量は大きく変わるし、恋する相手を見つめる視界は常に特別なフィルターで覆われ、冷静に見つめるなんぞ出来やしない。
この軋んだ主観を疑うことなく、主役当然の視界として展開していく、ナイーブで精神主導な世界。(自分の隣に立つインナーチャイルドの幻影も、極めて自然に描写され話の流れをせき止めることがない)
そこにおいては、幼いままなにかに向かって駆け出す瞬間を待っている”もう一人の私”が常に側にいて、臆病なまま立ちすくむ自分に正しさを問いかけてくる。
気づけば控えめであることが自分らしさとして張り付いてきた”成長”から、半歩はみ出して欲しいものへ手を伸ばすわがままを、自分に許して世界を輝かせる。
そういうバランスの再獲得は、点数によって客観的に図られるものでも、誰かに分かりやすく言葉にしなければいけないものでもない、主観的で内面的だからこそ大事な体験だ。
疑われそうな状況に行き合って、グラグラ揺らぎながら一緒に笑いあえたという、スゲー小さな出来事。
そこにじっくり時間を使って潜り込む前半戦は、朔英ちゃんの柔らかな内面がどんな揺れ方をしているのか、不確定に揺らぐことそれ自体…そうならざるを得ない季節自体を肯定しながら、丁寧に追いかけるような作りだった。
この思春期へのアプローチが好みの手つきだから、僕はこのお話を心地よく感じているのかもしれない。
すごく狭くて、小さなことに大きく揺らいで、脆くて一生懸命で真摯な、固まりかけの時代。
朔英ちゃんの場合は光輝くんと初恋がその真ん中にあったから、このお話はロマンスになった。
恋ありきで恋書いてるっていうより、そういう感じを受ける語り口でありがたい。。
恋敵に為るかもしれない昴ちゃんへの歪な警戒感と、そこら辺のフィルター外した時の素直な好い人っぷりを、同時に書けてるのが好きなんだよな。
ここのブレって、朔英ちゃん自身の冷静さと熱狂の顕れなんだろうなと思うし。
光輝くん関係の話になると、絆であり鎖でもある過去が顔を出して冷静ではいられない主観と、それ引っくるめて俯瞰で物事見れる(だから誰かが困った時、すぐさま助けられる)客観が、あの子の中で同居してる。
それはどっちも大事な本当だから、上手く釣り合いを見つける意味でも、良い告白が出来ると良いなぁ…。
朔英ちゃん自身「傷ついても踏み出したほうが、多分良い」と思ってること含めてね。




そんな勝負の瞬間に向けて、クラスも本格始動!
…なんだが、調子に乗りすぎて自分を客観視出来てないムードメーカーくんが、眠れる鬼神を目覚めさせてそらもぉ大変なことに。
井沢くんの生っぽいヤバ感を、程よくウザく洒落になる塩梅に料理しているのは絶妙だなぁ、と思う。
とりあえず彼を出してドツイておくと、場の雰囲気が明るく軽くなってくれる。
不遇だが、物語全体に果たす仕事がデカい男だ…。
いやまぁだからといって、仕事はしねーし異様な自己肯定感ブン回すウザさは消えないがな!
その「あ~、おるわぁ~」感も含め、いいキャラだわ。
井沢くんを無様な(そして無様すぎていらないシリアス味が混ざらん程度に軽い)道化役にすることで、マジな空気感出して告白されるヤバさと、それを適切に切り離す難しさがスケッチされていた。
この後後夜祭での大勝負が待ち構える朔英ちゃんにとって、これはとても大事な前哨戦であり、上手いこと足場を固めたなぁ、という感じ。
ハタから見てりゃスーパーリア充な光輝くんも、彼なり色々大変なことは当然あり、「んじゃあ顔以外に恋に大事なものってなんなの?」という疑問を、主役の脳髄にねじ込む事にも成功していた。
そらーまー、誰も見てない所で優しく強くあり続ける、朔月の奥ゆかしさとかじゃないんスかね…。
鬼神モードに入った美織ちゃんの感情出しっぷりとかも、クールなロボ人間が思いを剥き出しにする場面が大好きな視聴者としては、大変ありがたい。
井沢くんが上手く受信できない、感情と関係の機微。
美織ちゃんもそれを巧みに操れるタイプじゃないけど、生真面目な地金を友だちに受け取ってもらって、苦労に共感し一緒にキレてもらえる、楽しい時間を掴み取っている。
そういう、人間関係の表層のちょっと奥の方まで踏み込むことで生まれる熱みたいのが、美織ちゃんに注目していると良く届く。
そしてそういう機微は、このお話が相当大事に取り扱っている、物語のエッセンスだとも感じるのだ。
ここでみんながみんなその難しさと上手く向き合えるわけでなく、誠実に生きるの向いてない井沢くんもレギュラーに入ってるのが、扱うネタの立体感を出す足場だと思う。
色んな凸凹が人間と世界にはあって、だから昴ちゃんの絵に傷つけるクズもいるわけだが、そういう不快なノイズ引っくるめて、世の中色々あるんだと飲み込むための準備期間。
高校一年生がどういう場所に身を置いているのか、その空気感が楽しい凸凹とともに見てる側に届くのは、多彩で面白い。
後半に差し掛かるにつれ存在感を増してきた、陽太くんの落ち着いた人格がどういう効き方しけてくるかが、そういう視点ではとても気になるね。
つうわけで、青春の大勝負に向けていろんな準備を整えていく回でした。
元々焦ることなく丁寧に、少女たちの思春期に寄り添う画風ではあるんだけども、今回は特にその穏やかな歩幅を堪能させてくれる感じで、とても良かった。
伸びた背丈に追いついていない、幼く真っ直ぐな気持ち。
色んな連中が肩寄せ合って、時に衝突しながら進んでいく学校という場所。
朔英ちゃんの世界には色んな難しさがあるけど、それが苦しいノイズではなく幸せなハーモニーになるよう、お話は一歩一歩、穏やかに進んでいってくれている。
そういう実感を得れる話数でした。
学園祭本番が近づく次回も、とても楽しみです!