異様な温度で燃え盛る、限界ライダーワナビ懇親会第二戦ッ!
この作品の強さを支えるロジックが、だんだん見えてくる東島ライダー第10話である。
前回暴れ狂った異常兄弟の熱気に負けず、延々不死身のライダーおじさんと無敵のタックルオタクが殴り合うエピソードである。
追うべき”本筋”ってのもサッパリ見えず、何がどうなっていくのか話の大きなダイナミズムは全然わからんが、局地的に異様にアツい激闘が繰り広げられていた。
元々世間がどーの社会がどーの、そういうせせこましいことよりも、極限ライダー人間共の内的宇宙に深く潜り込み、激しく衝突させて熱を生み出す話なので、狭くてアツいには狙い通り…なのか?
ギトギトに煮詰まった情念が顔面から吹き出し、茅野愛衣がキャリアハイを更新する熱演をブッ込み続けて、タックルがライダーを倒す大金星を成し遂げるまでで24分。
声も上げず顔も見えない不死身のバケモノを、擬似的に”怪人”として演出することで、蜘蛛男にビビったユリコが過去を乗り越え、真の戦士に覚醒する筋立てが、何故かキッチリ立ち上がってしまっていた。
東島もユリコも、んなこと考えて殴り合ってるわけじゃないと思うのだが、お互い総身にみなぎらせたライダー愛が混ざり合うと、結果としてなんかデケーことが起こってる感じになる。
しかし一旦頭が冷えると、地獄ライダーサークルの仲良し内ゲバでしかないのだ。
この冷静と熱狂の振り幅に、サークルで唯一”本物”で正気なユカリスが飲み込まれ、成人二名による血みどろライダーごっこは、醒めた常識を飛び越えた”本物”に見えてきてしまう。
明らかに狂っているわけだが、この場所においてはそれが真実であり、イカれた熱量に釣り合い飛び越えていくだけの同志が隣に立つ時、そういう逸脱は全面的に肯定される。
…清潔に経済化された”推し活”が活況を呈する中で、オタク集団がどういう引力で集い、溜め込んだエネルギーが爆発するか吠えている作品でもあるなと思う。
それは不格好で制御不能で、SNSにはとても載せられない狂気に満ちているのだ。




つうわけで夕日輝く山中閑居…どんだけ吠えても迷惑にならない環境で、大人二人がガチンコライダーごっこである。
「今それ!?」としか言いようがない、憧れのヒーローの死に様への激情を迸らせ、特訓の果てに身に着けた真・電波投げをブッ込むユリコであるが、どんな状況でも立ち上がるバケモン相手に、小手先の理屈は通用しない。
ここら辺は合気の秘奥に耐え続け、ワケ分かんねぇ意地で噛みつき続けてきた、一葉兄貴にも通じる強さである。
理にかなった常識よりも、グツグツ煮立った情念のほうが強い。
作品を貫通する、血みどろのロマンティシズムである。
一葉兄貴にしても東島にしても、血中ライダー濃度の濃い”本物”は攻めるより耐える美学に身を染めて、勝者をダメージで追い詰める闘い方にならない。
不屈、不当、不退転。
改造人間として世間の真ん中から外れ、人知れず影の激闘に勤しむライダーを理想とする男たちは、自分が信じた狂気にアクセルをベタ踏みし、人生燃料にして突っ走る生き様を選んでいる。
ここら辺、ファミレス店長と教師という職業を手に入れ、一般社会に順応できる”仮面”を付けている連中は、ちいとハラ決まってない感じもある。
なのでゾンビのごとく立ち上がり、倒されないことで仲間の本気を試し続ける。
この身内トーナメントに勝った所で、栄光が得れるわけでもショッカーが倒せるわけでもない。
ヤバ人間が集う身内サークルで、ちょっとスッキリして体中傷だらけってだけだ。
だからこの闘いは、今後リアルな死闘に身を投げていく彼らにとっての”修行”なんじゃないかな、と思う。
心の強さが全てに優先するロマンティシズムを、物語の駆動装置としているこの作品に、骨を埋めるに値するだけの熱を、偽装社会人どもから引っ張り出す。
”仮面”を剥がし、素面の己で本気で狂うところまで、テンションを引っ張り上げる。
いやまぁこの話狂ってるので、この後ガチバトルが待ってるとも限んねぇけどさ…。




というわけで一足先に蜘蛛男に”勝った”東島は、声も顔もないコミュニケーション不可能な怪物として、二代目タックルの前に立ちふさがり、真の恐怖を教える。
冷静な見方をすれば、素人のテレフォンパンチを武道経験者が見切って、超危険技を叩き込みまくって勝った…とも言えるが、実際に対峙しているユリコにとって、これは心を摘む闘いなのだ。
あまりにも本気でライダーごっこをやり続け、人間の技術を学ぶことすら拒絶した、偉大なるド素人(あるいは永遠のライダー少年)のヤバい迫力。
それを飲み干し、仮面の下の素顔を暴く。
赤い目を輝かせ、無言で不気味に迫るライダー(40才)は、あの夜の公園で自分を呑んだ、蜘蛛型の恐怖の似姿だ。
それを乗り越え、ただのおっさんという正体に勝利を吠えるところまで、自分の魂を引っ張っていかねば、ユリコが貼り付けた正気と怯懦の仮面は剥がれ落ちない。
人体秒でドロドロにするイカれたバケモンとやり合うんなら、形だけの仮面は邪魔なだけであり、無形のまま憧れと同化できるところまで己を引っ張っていかねば、戦士の資格はない。
…ここら辺、素面でありながら役を舞台に降ろしてくる能の達人めいた部分があり、妙に幽玄なのが個人的には面白い。
ユリコが己の中にあるライダー器官をフル回転させ、恐怖を乗り越え勝利へひた走るほどに、東島は技名を叫び、仮面の下の素顔をのぞかせてくる。
逆にいえば、東島を不死身のバケモノにしていたのはユリコ自身の恐怖であり、一人間の精神状態は己を飛び出し、敵という鏡に反射していく。
心のあり方が強さに直結し、敵の存在すら定義してしまう、過激な心理主義こそがこの作品のルールであることが、改めて示される展開といえよう。
その脆さを打ち砕いてくるショッカーに対し、限界ライダー仲間は倒されないことで心を試し、新たな境地に引っ張ってくれるんだから、なんだかんだ響き合うものがあるよね、この人ら…。
一撃必殺の怖さをブン回してユリコを追い詰めつつ、何度即死級の投げ食らっても立ち上がり、その真価を試す東島。
その強さが極めてレスラー的なのが、この作品が讃歌を捧げるもう一つの至高天を、改めて感じる展開でもあった。
ほぼ”受け”の凄みだけでアツい試合を成り立たせ、二代目タックル覚醒まで温度を高めていく東島は、しかし師匠ぶった言葉をかけるわけではない。
ひたすらにその不死身、それを支える狂った愛を肉体にみなぎらせて、ただただ戦うだけだ。
誰に見せるわけでもない内輪の肉弾懇親会に、明確なメッセージが生まれてしまう異様さが、劇的闘争の本質を眩く照らしていく。
かくして東島と自分自身、二つの仮面を引っ剥がし赤心を確かめたユリコは、傷だらけのベストコンディションで決勝へと挑む。
ライダーマン VS 電波人間タックル。
本家ならぜってーライダートーナメントのてっぺんにならないと、クソニワカでも理解るマッチアップだが、ここまでの歩みがその必然性を熱く叩きつけてくる。
燃えるぜ…。
トナメ前は”本物”に至れてなかった二人が、決勝の舞台でぶつかり合う展開が、このアツすぎる寄り道が「特訓」だったことを語ってるとも感じるけど。
果たしてその決着がどんな温度と色彩で炸裂し、その先に何が待っているのか。
次回も楽しみ!