役者も増えてきた無差別格闘ラブコメ、次の演目はドタバタロミジュリだ!
何やったって元気で騒がしいらんまイズムが、大変元気な令和らんま第22話である。
シャンプーにうっちゃんと、らんま狙いのヒロインがドシドシ投入されたセカンドシーズン。
「あかねだって追われるだけのタマなんだぞ!」と、色んな有象無象が暴れる回になった。
脳髄イってる暴走剣士と、睡眠薬投入も辞さないヤバボーイと、妖怪ハラスメントジジイ。
…女の子チームに比べると、並んでる顔ぶれがヤバい感じはあるけども、遠慮なく顔面叩けるので景気は良い。
あと乱馬一本槍な距離感が、ボンクラを横に並べるとより鮮明に為るわな。
親まで引っ張り出してのロミオ争奪戦は、大変賑やかでこの話らしくて良い。
ドツきドツカれ、退場したと思ってはしぶとく食い下がり、クドく繰り返しつつも独自のリズムがあって、殴り合いしながらも本気になりすぎない。
格闘家ではない五寸釘くんが、今お出しされるとかなりギョッとなる剥き出しのストーキング力で食い下がってるところとか、無差別格闘の真骨頂って感じであった。
天道家総出で応援したりかき回したりした挙げ句、最後はお茶の間にご招待でオチが付くのも、作品の真ん中にずっとあるファミリーコメディな感じが、濃く味わえた。
リメイクで見返すと、本当イエの引力が強いよなー…。
ここら辺、ずっとハッキリした答えを出さないことで永遠の祝祭を続けていく、モラトリアム・コメディであることと地続きなんだと思う。
天道家という大きな箱に、どんだけドタバタしようが戻ってこれることで、乱馬くん達は好きなだけハチャメチャな日々を送れる。
許嫁との婚礼がそういう”家”を継いでいく行為なのもあって、未だ何かの庇護を必要とする、殻付きの小鳥たちが何かに守られながら自分を探す身動ぎが、今見返すと元気だ。
ここらへんの引力と束縛を、早雲を笑える妖怪に進化させたことでネタに変えているのは、かなりタフな物語操作だなと思う。
匙加減間違えると、スゲーヤダ味でてると思うポイント。
今回は学校での出し物ってのもあって、いつもの格闘ガチメンツとはちょっと違う味がする。
男の子(超老人一名含む)があかねを追いかける構図も、何かと乱馬争奪戦になりがちな展開をひねっていて、そこでトロフィーさせられてる時より、今回のあかねはアクティブでズルかったように思う。
フラフラ高いところを彷徨ってる乱馬くんに、さんざん翻弄されてる日々に仕返しするように、悪戯なキスでかき乱すあかねちゃんの姿には、風通しの良い対等さがあった。
このエピソードがあってくれるから、作品全体のバランスが取れてるってのは、確かにあると思う。
思い込みで突っ走って人の話を聞かない上に、すーぐ目線がブレる久能先輩。
思いが一方的な上に、あかねのことを真実考えてるならパなせないヤバ行動に迷いがない五寸釘くん。
セクハラは普段より抑えめだが、まー色々論外なハッピー。
クソボケな当て馬共を暴れさせることで、乱馬くんの本音をあぶり出していく回でもあろう。
好きだからこそ素直になれず、何かの対価としての口づけは出来ない、少年拳士の純情。
可愛すぎるヒロインが増えてきて、ちと本音が見えにくくなったタイミングだからこそ、あかねに振り回され本音でぶつかる、骨の太いラブコメをやった感じもある。
これはあかね側にも色濃く、格闘小町として(姉の母性と常時己を比べながら)”女らしさ”を削っている裏で、濃厚なヒロイン願望を煮えたぎらせている内面が、ボーボー燃え盛っていた。
乱馬くんがその望みのまま素直に、自分を奪ってくれる王子様をやってくれるはずもないのだが、あかねお望みのシチュエーションは今回かなり分かりやすく、作品に刻まれたと思う。
昭和元禄の景気が良いC調に乗っかって、永遠の猶予期間を踊り続けるこのお話。
何かとマジになるのは難しいわけだが、だからこそ情熱と純情が狂騒を下支えて、作品に独自の芯を与えてもいる。
ここら辺のマジ感が、コミカルないたずらの奥、色濃く出てる回だ。
女になったり、中国旅行に目がくらんだり。
乱馬くんはいつもどおり、あかねちゃん一途になりきれない浅ましさを暴れさせるわけだが、話がクライマックスに差し掛かると、そこら辺が全部蒸発していく。
男に戻りたい我欲が本音なら、とっととキスして勝っちゃえばいいのに、そういうショートカットはできない。
普段は軽やかに宙を舞い、足の置き場に迷わない風を装っているけども、純情硬派な地金、結局あかねが一番な気持ちが、普段の軽薄さを裏切るのだ。
そういう瞬間にこそ、仮想のキャラクターは魂を輝かせると僕は思っているので、迷い戸惑い決断できない今回の半端ボーイは、たいへん良かった。
そういう”らしくないらしさ”を爆裂させる乱馬くんを、あかねちゃんのチャーミングな不意打ちが見事に仕留める反撃も良い。
久能先輩を相手取ったときはギャグの小道具だったガムテープが、クライマックスではお互いのマジを守る保護具になってるのが、エピソード内部の転調としてキレてんだよなぁ…。
このギャグからマジへの逆転劇を、絶対に許されていないのが九能帯刀のキャラクター性であり、だからこそ作品内部に位置を占めれてる…つう話なんだろうけど。
こういう便利な置物になれず半端に”人間”だったからこそ、東風先生は存在が消えたんだなぁ…。
気兼ねなく殴れる相手は、粗暴ラブコメにはとても大事だ。




というわけで、降って湧いたジュリエット役にテンション爆超なあかねちゃんから、今回の物語は始まる。
時代的背景もあって、トランス要素を作品の根っこに置く割にジェンダーとセクシャリティに深い問いかけは投げない話なんだけども、今回はあかねちゃんが望む自分らしさと、”女らしさ”が繋がってる様子が濃い。
小学校時代の思い出は、ヤンヤと持ち上げられる中”王子様”から降りれなくなった少女の悲哀を、コミカルな回想に苦く滲ませる。
回りが望む”らしさ”と、自分がなりたい”らしさ”の乖離って、今見るとかなり思春期ど真ん中だな…。
この願いを満たすためには、自分をお姫様として抱きしめれるだけの王子様が必要になり、自分が押し付けられていた”らしさ”を他者に強要する、結構歪なループが発生してたりもするわけだが。
メラメラ燃え上がりながら集まってきた王子様候補は、どれもこれもボンクラ揃いで、まー乱馬くん一択ではある。
前回描かれた良牙くんの姿を思い出すに、あかね…というかこのお話が肯定する恋愛観とは「目の前にいるたった一人を、心から真っ直ぐ見つめ手を伸ばす」なんだと思う。
浮気に思える乱馬くんの地金が、そこにアプローチしうる生真面目さを宿していることと、そういう真の”らしさ”を貫けないことを書く回でもある。
調子が良くてずる賢く、いざ決断となると意気地がない。
軽妙だからこそ腰が軽い乱馬くんの弱さは、あかねちゃんの願いを抱きとめれそうでいて、マジになりきれない弱腰に透けている。
ギャーギャー騒がしい騒動に巻き込まれつつ、夢のお姫様役を結構本気で涙しながら求める、メインヒロインの健気さ。
それに応えるだけのマジを、我欲引っ込めおふざけ止めて、どんだけ自分の中から絞り出せるかを、無差別格闘演劇は元気に照らし出していく。
「騒々しい祝祭の中でこそ、揺るがないキャラの根っこが見えてくるようなエピソードが自分は好きだなぁ…」と、改めて気付かされるのはリメイクの利点だわな。




男親二名による外圧追加イベントやら、お姉ちゃんによるエールやら、妙に過程的なイベントなんぞも投げ込まれつつ、無差別格闘演劇は熱を増していく。
アクションシーンのキレが良いのが令和らんまの長所であり、久能先輩の本業でやり合う剣戟描写は、大変冴えていて良かった。
ここでもあかねは、乱馬のように真っ向からせめぎ合う強さを与えられず、あっさり押し込まれる立場になってるのは、連載安定期入ってからの一傾向だと思う。
この”求められ自衛できないヒロイン”への引力を内面化し、「あかね自身が”弱く”なりたがってる」つうアリバイを打ち立てる回…でもあるか。
久能先輩は自分に釣り合う(と思い込める)美少女だったら誰でも良くて、らんまのガムテープ攻撃はワイワイやかましかった彼を見事にKOし、ジュリエット戦線から遠ざける。
この誰でも良さ/それが原因の選ばれなさは主人公の歪な鏡でもあり、結局一途にあかねを求める真摯さが、らんまくんをこの多人数ラブコメの主役たらしめている。
まー出会った時から”答え”は出ているわけだが、そこにまっしぐら突っ走られちゃあ話が終わってしまうわけで、どっちつかずの軽薄さはこびりついて剥がれないキャラ性として、乱馬くんを覆いもする。
しかし時折、こんな風に”答え”を確かめないと、物語全体が迷うわけでね…。
親のゴリ押しだったり、中国旅行という物理的利益だったり。
ただひたすらに愛に疾走る純粋さを試すように、色んな横槍が飛んでくるエピソードでもある。
これは楽しいコメディの火種でもあって、あくまで軽やかに笑いに満ちて走れるところに、このお話の地力と魅力があるわけだが。
余計な誘惑が押し寄せればこそ、たった一つの答えを選び取る嘘のなさも際立ってくるわけで、これは色んなサブヒロインが乱馬くんを誘惑してくるのと、おんなじ構造なんだろう。
「脇目をふるのもしょうがないよね!」と思えるくらい、楽しい横槍を山盛り用意できることが、この終わらない祝祭を支えてもいるのだ。
あまりのハチャメチャに折れかけたあかねが、かすみのエールで夢を取り戻すのも、妙に響く描写だった。
父たる早雲はあの通り婚礼妖怪になってしまったので、不在なる母の役割はかすみが全部やるわけだが。
今とはかなり空気感が違う序盤戦で、そこら辺への湿ったコンプレックスを掘り下げた後、かすみは天道家のバランサーとしての仕事が多くなる。
そこにいてくれないと困るけど、だからこそ”母”の座から動けない、不自由な”らしさ”。
ここら辺を撹拌して、かすみお姉ちゃんを”人間”に戻すエピソードをやらない視力があってこそ、祝祭の檻が維持されてんだろうなぁ。




散々迷って、ひた隠しにしていた本音も大声で叫んで、それでも煮えきらない乱馬くんは最後、あかねに一本取られる。
嘘で本当なキスの後、ぺろりと舌を出して純情を弄ぶ笑顔は、ズルくてタフでチャーミングだ。
こうして自分がただのトロフィーでなく、少年拳士を翻弄する意志主体であると示した後、二人はひどく懐かしい距離感で持ってお家に帰る。
一期序盤、あかねがロングヘアーだった時には幾度も描かれていた、1ON1のズレた横並び。
結局”ここ”が、二人の始発点であり終着点なんだろうなぁ…。
劇の中、お遊びでしかないはずの死を眼の前にしても、乱馬くんは口づけに踏み出せない。
このマジになれなさは、作品を常に軽妙なスタイリッシュさで浮遊させ、ベタついた重さから逃がす強みと裏腹だ。
「乱馬くんが、愛と死に対しマジになったら話が終わる」ってのは、完結を見届けた僕らには既に自明のことであるが、今回の大騒動はその楽しい予言だった感じもある。
そこで攫われるのを待ってるお姫様から、男の子を翻弄するズルい魔女へと、あかねちゃんがタフに自分を進めるラストが、爽やかでいい。
長期連載の引力が色んなモノを歪ませるけど、やっぱその平等な靭やかさは大事だ…と、僕は思う。
恋人たちの夜で話が終わらず、ギャフンなオチを天道家客間でズッコケさせ、結局お家で〆るのが、”家”が持つ巨大な引力で物語を安定させている、この作品らしいなと感じる。
色んなモノに浮かれつつ、イエが持ってる安心感と束縛が未だ濃かった時代だからこそ、許嫁を巡る格闘コメディが成立していた…のだろう。
そこはどんなドタバタが巻き起こっても、全てを広間に収めて楽しい日常にまとめ上げ、リセットして新たな日常を始められる、魔法の装置だ。
いつでもそこに戻ってこられるという安心感があればこそ、野放図な大暴れもやれる。
この良くまとまったサイズ感は、やっぱうる星とは味が違うね…。
というわけで、ドタバタな無差別格闘要素と、純情眩しいロマンスが絶妙なバランスで混ざりあった、大変”らんま”を感じるエピソードでした。
格闘ガチんないと、あかねちゃんが結構図太く強く立ち回れる感じで、心地よい対等さを味わえ嬉しかった。
こっからどんどん、手弱女トロフィーに押し込められて安定していく印象だからなぁ…。
クソボケロミオ共の大暴れを通じて、人数が増えてきたからこその面白さも、たっぷり堪能できました。
沢山いるキャラを意外な組み合わせで暴れさせ、何でもありな無差別格闘に投げ込んで生まれる、化学反応の面白さ。
そこは今後より強くなるので、次回もとっても楽しみだ!