霧尾ファンクラブ 第3話を見る。




謎のファミレスを定点観測地点に、化学室の呪術師とかドラゴンに取り憑かれた店長とか霧尾くん本人とか、色んな場所に話が広がっていく回だった。
奇人コメディにおいてトンチキ面白人間は多ければ多いほど良いので、こうしてガンガン人が増えていくのはありがたいし、そうして縁が広がっていくことでちょっとずつ変わっていく(あるいは変わってくれない)二人の関係を、定点で見れるのは面白い。
やっぱ初回で波ちゃんを巡るミステリを明かしたのは正解だったな…と思った。
奇行に思える全てに、裏が見えて切ない。
Fanaticな勢いを暴れ狂わせつつ、いざ当人が目の前に来ると即座に限界になっちゃって波ちゃんに介護されてる藍美ちゃんを見ていると、やはり波ちゃんの熱のなさが目立つ。
怒涛のごとく溢れる100万の”好き”が、自分に向いていないのが悲しくなっての冒頭の涙なのか。
答え合わせは見ているコッチが勝手にやるわけだが、波ちゃん自身が作り出した”霧尾ファンクラブ”の共犯関係を維持するためには、しんどかろうが霧尾訓に狂ってるフリは続けなければいけない。
しかしそれは屈折した多重の嘘であり、波ちゃんはとても無理をしているので、楽しいはずのバカ騒ぎは常に辛さを伴う。
それでも、バカ騒ぎは終わらない。
その捻れた渦が、想像より早く霧尾訓を捕まえたのはとても意外で、かなりありがたかった。
二人だけが勝手に霧尾くんで盛り上がり、異様な妄想を好き勝手絶頂ぶん回してる状況は、やっぱアンフェアに見えてしまう部分があったからだ。
いやまぁ、連絡先交換するだけであんな大はしゃぎの関係性が、お互いの人間性をちゃんと眼球に入れた付き合いに発展していくのも難しいとは思うし、狂って身勝手な大盛り上がりが全部間違いだとも思わんのだけど。
霧尾くん自身が何かを抱えている様子も、前回スケッチされていたし、舞台の真ん中に近い場所に彼を引っ張ってくるのは、自分的には結構大事だ。
このお話、奇人のぶっ飛び加減で笑わせておいて、「テメーらが笑ってる連中にも、当然体温があり傷つき弾む心があるんだぞ!」と、どっかで足払いを食らわせてくる作品だと思う。
というかそういう、こちらの体重のかけ方を面白さで操作し、タイミングを見計らって別の面白さを突き刺される体験が好きなので、そういう作品だと期待している…という方が正確か。
出てくる連中全員裏がありそうなのも含めて、結構丁寧にそこら辺の下地は作っている感じがあり、奇行を堪能しつつ人間性の爆弾が炸裂する、その瞬間を待っている。
というか、小爆発はすでに幾度か起きている。
霧尾くん相手に限界にならないからこそ、藍美ちゃんのケアできてる波ちゃんとかね…。
やっぱこー、二人だけしか共有できない異常な熱狂で繋がっているようでいて、そこかしこに熱量の不均衡があるのが、イカれた青春に妙に普遍的な味を付け足していて面白い。
恋愛に限らず何かが”好き”であることは、とても強く人を繋ぐけども、他人同士である以上その矛先がズレたり、取り繕った熱が食い違っていたり、その嘘に気づかれないように”好き”で繋がれる関係を頑張って維持していたり、色んな事がその内側には生まれていく。
そんな風に色々チグハグで、それでも一緒に笑えている日々を描く筆は、大爆笑の後に少しの切なさが、じんわり押し寄せる。
この味がいい、好きだぜ俺…。
藍美ちゃんがどんだけ霧尾くんが好きなのか、ぶっ飛んだ思いの量と質を高速回転させることで、この奇人コメディは成り立っている。
つまり藍美ちゃんの”好き”は素直に腑分けされ僕らの目にさらされる権利を持ってるけど、そこに隣り合いつつ響き合ってない波ちゃんの”好き”が、本当は誰に向いててどんだけ狂っているのかは、隠そうとして漏れる余波でしか観測できない。
ある程度以上自分のヤバさを自覚しつつ、それも全部受け止めてくれる同志でありライバル(って事になってる)波に、甘え信頼して藍美ちゃんは”好き”を嘔吐している。
波ちゃんも自分と同じ気持ちで、同じ相手を見ているのだと無邪気に信じながら。
霧尾くんへの”好き”が矢継ぎ早には出てこない、本人眼の前にしてもぶっ壊れて止まっちゃわない波ちゃんが、それでも「霧尾くんが”好き”」って共通プロトコルを偽装し、波ちゃんの隣りにいるのは嘘つきだ。
これが破綻するのか、それとも貫き通すのかは全然解んないけども、でもそうやって何かを偽ってでも欲しい”好き”が波ちゃんにはあって、その上でそれは嘘でしか現状近づけない。
そんな多重に折れ曲がった気持ちが、一体どんな色と温度を宿していて、誰に向かって放たれているのか。
明かされれば話が終わっちゃうだろう大ネタだが、終わる時は真っ向堂々、強く強く叫ばせてあげて欲しい。
俺は愛の嘘つきが好きだから…
そういう欲望のプレイグラウンドに、強引に引き込まれた化学室の呪術師であるが…”呪い”がアリになるとまた一つ、ぶっ飛びのネジが飛ぶなッ!
髪の毛スープにブタの糞…下ネタのギアが世間のスタンダードから、三段階くらいぶっ飛んでいるこのお話に、強烈なエンジンが入ってきたと思う。
満田くん藍美ちゃんとはまた違ったタイプの狂人で、お天道様の元をキラキラ歩けないタイプの教室内アウトサイダーとして、今後も陰気な笑いを暴れさせて欲しい。
そういう戯けた仕草をさんざん積み重ねた後(あるいはその最中)、「あ、コイツも”人間”なんだな…」と思える瞬間を、たっぷりと味わいたいね。
今回霧尾くんがファンクラブに接近してきたことで、顔のない不在の中心もまた、人間としての表情を書き込まれそうな気配が強くなってきた。
お下劣方面も含め”好き”の材料にしているファンクラブは、ある意味霧尾くんの実存全部を受け止めた上で肯定する、真っ向勝負の下地は整ってる…部分もあるが、藍美ちゃんは実物眼の前にするとあーだし波ちゃんは実はあーだしで、ガッチリ真っ向噛み合うフツーの感動は、まだまだ遠いわなッ!
でも顔を書かれないから話のエンジンになれる、透明な王様として霧尾くんを扱うつもりがないと解ったのは、やっぱ嬉しい。
作品に滲むヒューマニティの話もあるが、アッチもトンチキの鉱脈ありそうでな…。
というわけで、「いつものカフェ」という定点観測地点を据えることで、藍美ちゃんたちの青春がどんな距離感でうねっているのか、良く見えてくる回でした。
やっぱ波ちゃんの卓越した”受け”があってこそ、出力調整ぶっ壊れた藍美ちゃんのエンジンが機能している感じ。
放課後ファンクラブは無邪気に浮かれ騒いでいるようでいて、すげー危ういバランスで成り立ってるなぁ、と思った。
その壊れ物感が、青春を扱う手付きとして好きだ、俺は。
満田くんや店長なんかも舞台に上がって、さらに加速していきそうな青春狂走曲。
笑いに滲むペーソスを堪能しつつ、こっからどんな爆発を見せてくれるのか。
次回も楽しみです!