イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

刀剣乱舞 花丸:第2話『言いたいことなんて…、何もない』感想

非常に良いスタートを切った日本刀付喪神タイムパトロールほのぼの日常戦闘アニメ、今週は雪の如月。
世界観全体と物語の方向性をしっかり示した第1話に引き続き、本丸と審神者について掘り下げるAパート、織田組の複雑な心境を見せるBパートと、手際の良い話運びでした。
大人数を捌く筆は相変わらず快調で、新しい刀剣男子の顔見世あり、既存キャラのちょっとした見せ場ありで、賑やかに楽しい仕上がり。
ファンサービスの安定性と、本丸を中心としたホームコメディとしての仕上がり、織田組の心のドラマがいいバランスで並び立つ、見事な第2話だったと思います。

今回は非常にカッチリ分かりやすい作りで、鶴丸くんと同田貫くんを案内する体で本丸と日常業務に潜り込み、細かい設定説明をする所から開始。
説明的なモノは後に回して、第1話はとにかく雰囲気と方向性を体験してもらうっていう作り方は、やっぱ良く出来てるよなぁ……実際説明パートが来てみると、俄然見やすいもん。
ただ座って説明を聞かせるのではなく、内番のお仕事を小気味よく流していくことで、キャラクターのちょっとした掛け合いを促進している所が、なかなか上手いですね。
やっぱキャラが笑って楽しい姿が見れると、記号ではなく生き物として受け止めれるようになるし、人間味のない『説明』ではなく人格と人格が噛み合う『物語』の方が、楽しく飲み込めるしね。

このお話は『異形の戦士によるタイムパトロールバトル』であると同時に、『麗しボーイズてんこ盛り、ゆるふわ暖か日常モノ』でもあるわけで、本丸が普段どのように衣食住をまかない、刀剣ボーイズたちはどんな日々を過ごしているのかちゃんと見せるのは、なかなか大事だと思います。
戦士たちは戦いに備えると同時に、衣を洗い食事を作り、『馬』という別の命を慈しむ。
そういう『人間』の基本的な生活を楽しく、しっかり過ごしている部分をちゃんと見ることで、キャラクターは記号の集合体から独自の意思を持った人格になってくる気がします。
衣食住は刀剣の付喪神ならざる僕らにも身近な部分なので、『あ、おんなじことしてる』という親近感をキャラに抱いて、彼らが好きになる足場にもなるしね。

刀剣男子は人間のふりをした怪物なので、衣食住を切り捨てて戦争の道具として扱うことも出来るんでしょうが、少なくともこの本丸において彼らは『人間』として着飾り食べ、笑ったり悩んだりする。
本丸の『外側』の世界は審神者と同じように直接的には描かれないのですが、刀剣男子に歴史と人格を背負って『人間』らしく悩む権利をこのアニメが認めてくれているのは、結構良いなと思います。
まぁ原作ゲームの仕様として刀剣男子は葛藤を背負って存在し、内番の仕事もゲーム内行為をアニメに引き写しているってメタ事情は当然あるんだけども、季節の描き方が柔らかいのもあって、世界を包む柔らかさを強く感じることが出来るのは、僕がこのアニメが好きな大きな理由だな。
それに押し流されることなく、戦士としての意志、永世者のプライドを真ん中に据えて大事に話作っているのが、とても良い。


今回は本丸という生活基盤を描写することで、不在の中心である審神者の人格に関しても、結構描写できていました。
ズボラで飽きっぽくて、しかし刀剣男子たちのことは細かく気にかけ、それぞれのわだかまりを解消できるよう手をつくしてくれる存在。
性別や外見が描かれなくても、『なんだ、結構審神者良いやつじゃん』と思える描写がそこかしこにあって、作品世界の優しさをクッションかかった描写で体現しているのは、とても良いと思います。
前回は世界全体を描写するのに忙しくて、本丸の生活感までは切り込めなかったわけで、審神者も『これ即身仏とかじゃないの? 長谷部くんが色々偽装して行きているように装ってんじゃないの?』と思える塩梅だっけども、今回グッと生活感が増したのはナイスでした。
セリフも直接の描写もなしに、ここまで『人間味』を出す演出力、話運びの巧さはやっぱ図抜けてるね。

ほんわかとした描写の中で沢山のキャラが顔を見せ、あるいは目立つ人数の捌き方も堂に入ったもの。
炊事や洗濯といった『女性的』な仕事を比較的年かさのメンバーにやらせて、荒々しく『男性的』な手合わせを短剣ボーイズに担当させる所とか、いい具合にギャップでてて面白かったですね。
『どんだけ手弱女ボーイに見えても彼らの本性は武器であり、戦場で敵を切ることは本分なのだ』という短剣達の描き方、僕は好きだなぁ……プライドを大事にしてくれる感じで。

新キャラも沢山いましたが、Bパートで戦闘を担当する鶴丸くんを元気担当に、無骨な同田貫くんをむっつり担当にして落差をつけ、その場その場の盛り上がりをうまく作ってキャラを立ててくれてました。
同田貫くんは作風を写して戦バカっぽい描写でしたが、ぶっちぎりフェミニンな乱くんにドギマギしたり、晒された胸元が無自覚セクシー爆弾すぎたり、可愛いところもあるボーイだった。
基本的にはサラッとした見せ方なんだけども、燭台切さんの『戦う以外のことをやってみたかったんだ』という言葉とか、人間の底を感じる描写が挟まるのが、歯ごたえあっていいですね。
歴史的に関係の深いメンバーが、昔なじみのように気さくに話すシーンが沢山あるのも、『刀剣の付喪神』をわざわざ主役に据えた座組がうまく機能していて、面白い見せ場でした。


Bパートは本能寺の変を舞台に、織田信長に縁の深い刀剣をまとめて戦わせる展開。
信長への評価を鏡にして、長谷部に鶴丸、宗三、薬研それぞれの人格や価値観が見えてくるのは、なかなか面白い展開でした。
外見一番小さい薬研くんが、魔王・織田信長ではなく人間・織田信長を受け止めているのは、興味深いキャラ造形だよなぁ……良い声だし。
あと、第1話ではトラクター飼育係のトンチキとしか思えなかった宗三が、『昔の男の所有物であることを表す焼印』というトンデモセクシー爆弾を投げ込んできたのには、俺も興奮を抑えられん……オッドアイもエロいしなあの人……。

密室での切り合いだった池田屋に比べ、オープンエアで飛んだり跳ねたりできる本能寺は、正直チャンバラの圧力としてはやや薄め。
掛け合いとアクションが同時並列で進行し、濃密な緊張感が漂っていた第一話の殺陣に対して、今回はややボッ立ち気味の敵相手に喋る→切るというパターンが連続していたのも、ちと熱が逃げる絵面でした。
まぁ毎回カロリー過剰に使っていられないだろうし、ヒリッとした鍔迫りの興奮は次のアニメが本命ってことかねぇ。

Aパートでもそうなんですが、沖田組の二人がメインを食いすぎず、進行役に徹しすぎずの良いコンビネーションを見せてくれて、非常にありがたかったです。
Aパートでの鶴丸&同田貫の明暗くっきりした見せ方でも判るように、二人組のコントラストを印象的に使ってキャラを深く広く描く手際ってのは、このアニメの特長なんでしょうね。
安定くんが『人間』の機微を読みきれずちょっと幼いことが、他のメンバーのリアクションをうまく引き出しているし、至らない部分は加州くんがシニカルにまとめてくれるしで、キャラクターが噛み合う気持ちよさが凄くよく出ている。
安定くんの迂闊な発言は基本的には失点なんだけども、『織田信長が異世界に漂流して、那須与一島津豊久と国盗りしてるかも!!』という子供っぽい夢を口走ってみんなの気持ちが楽になるように、欠点は同時に長所でもあるわけです。
『負ける役』を負けっぱなしにせず、他のキャラの気持ちを救う『良いこと』をやるチャンスをしっかり与えてくれているのは、不公平さがなくて良いですね、やっぱ。


そんなわけで、プロローグを終えて通常営業へ移行した感じのある第二話でした。
流石に第1話の密度と圧力は薄れていましたが、達者な話運びとキャラ捌き、優しさとプライドを大事にした全体的なトーンは健在で、楽しく見ることが出来ましたね。
色んなキャラを扱いつつも、司会進行の沖田組、主役となる織田組という軸をぶらさず展開してくれるのも、非常にグッド。
人数がたくさんいることの魅力、その一人ひとりが複雑な歴史と精神を背負っていることの楽しさ、両方にアプローチできている欲張りなエピソードだったと思います。

第1話とはまた違った方向で、『このアニメはこういう話ですよ』という『型』が見えた後に続くのは、春迫る弥生。
歴史的な繋がりを活かしてグループで描いていくという『型』を使ってくるのか、はたまたまた別のアプローチを活かしてくるのか。
芸達者な制作陣がどういう手管を見せてくれるかも楽しみになってきた、刀剣乱舞第二話でした。