イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

善い社会

ロバート・N・ベラー他、みすず書房。冷戦直後に書かれた、崩壊しつつあるアメリカに個人的モラルによる連携を取り戻し、社会を再構築しよう、という本。当時の状況は、ところどころ意図的な議論誘導もあるがおおむね面白く、それなりに適格だと思う。ただ、この本の何よりの意味は、冷戦終結から15年たち、ボスニア空爆し、9.11が起こり、アフガンとイラクで戦争を起こし、政府が連邦制度準備会を通じて積極的に市場に介入する「今」になって感じる「いまさら」感である。この「ずれてるなぁ」という感覚はつまり逆に、冷戦終結から強力に覇権主義的になっていったアメリカの営みを強烈に浮き彫りにする。この本ではアメリカ人の制度嫌い、政府への不信感が語られているが、この本の発行からの15年のアメリカ政府の強大化は紛れもない事実であり、それがこの本を読むときに感じる違和感の原因なのだと思う。本としてはそこまでよくないが、考える材料としては良好。