イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

対立と協調の科学

ロバート・アクセルロッド、ダイヤモンド社ゲーム理論を応用したさまざまなシミュレーション結果をまとめた論文集。アクセルロッドはゲーム理論を社会科学に応用した第一人者で、流石に鋭利かつ手堅い内容となっている。また、分析対象が国家、文化、個人、民族集団などさまざまな領域に及ぶのも興味深い。なにより、論文集という形式が生み出した奇妙な産物なのだが、論文の前に挟まれる筆者の回想に見られる、強い現実への意思が面白い。シュミレーションと現実、理論と実際、数理と具象、学者と行動者という通常対立的なものと見られる二つは、実はそのなかに存在する人間の意志という強力な接着剤で固定され、相互補完的なものとなるのだ。実理相反する、という固定概念を打ち崩す、という意味でも素晴らしい本だし、ゲーム理論、カオス理論の展開書としても読みやすい。良い本だった。